東洋医学 伝統鍼灸 清明院

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金木犀の呼吸

 

 

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こんばんは、三鬼です。

 

 

 

皆様、いかがお過ごしでしょうか。

 

 

 

連載「指先の文明と、からだの古地図」の只中ですが、きょうは小さな寄り道を。

 

 

あまりにも冴えた金木犀の香りに促され、今宵はこの花の話を。

 

 

定型を半歩外れることは、からだのこわばりをほどく静かな養生です。

 

 

 

街角を曲がった瞬間、ふっと時間が緩む

——そんな秋の合図があります。

 

 

 

金木犀の香りです。

 

 

見上げれば橙の粒が葉陰に灯り、風が通るたび、匂いは見えない波紋となって胸郭の奥へ届く。

 

 

 

今日は、この香りを東洋医学のまなざしで読み解いてみます。

 

 

 

秋は「収」の季、鼻は肺の門

 

 

東洋医学では、秋は肺に配当され、「収(おさめる)」の気が働く季節と考えます。

 

 

暑気でひらいていたものがゆっくり閉じ、外へ発散していたものが内に帰る。

 

 

皮毛が締まり、呼気はやや長く、心は静けさを好む。

 

 

鼻は肺の竅(きょう、出入口)であり、季の移ろいはまず嗅覚と呼吸に映ります。

 

 

 

そんな折、金木犀(桂花)の香りが現れるのは象徴的です。

 

 

甘やかでいながら澄み、輪郭のある芳香は、鼻から肺へとまっすぐ届き、散じすぎた夏の名残をそっと収め、乱れた呼吸の拍を調えてくれます。

 

 

 

香りに触れる——呼吸が思い出す拍

 

 

金木犀が秋に芳香を放つのは、偶然の贈り物というより、季節が仕掛けた小さな合図なのかもしれません。

 

 

香りにふと出会うと、人はそっと息を迎え入れる。

 

 

鼻翼がわずかにひらき、胸がゆるみ、横隔膜が静かに落ちる。

 

 

深まった吸気は、つづく吐息を自然に長くし、肺は本来の身振り

——宣発・粛降(ひらいて、おさめる)——を思い出します。

 

 

香りをかごうとする、その無意識の所作こそ季節の調律。

 

 

大げさな努力ではなく、見えない招きによって呼吸は整えられ、からだは秋の「収」へ抵抗なく移り変わってゆく。

 

 

吸って、手放す

——その一往復が澄んだ拍となり、胸の内にやさしい余白をひらいてくれます。

 

 

 

芳香は気をめぐらせ、湿をほどく

 

 

秋は乾きの季でもありますが、日本の初秋は「長夏(ちょうか)」の湿りを引きずりがちです。

 

 

湿は重く停滞し、胸やみぞおちの鈍さ、思考の粘着として現れます。

 

 

古来、芳香は「行気(こうき)」「化湿(かしつ)」といって、気のめぐりを軽くし、湿の粘りをほどく働きがあるとされてきました。

 

 

金木犀の香りは、その典型です。

 

 

ふわりと上向きに立つ香気が、胸郭の奥で沈みがちな気をやさしく持ち上げ、滞りに隙間をつくる。

 

 

先ほどの「呼吸が思い出す拍」が長い吐息を生み、胸の重さを外へ送り出します。

 

 

秋の「収」は、ただ閉ざすことではなく、余計なものを手放すこと。

 

 

香りは、手放すための通路を開くのです。

 

 

 

強く、しかし長居しない——香りが教える「ほどほど」

 

 

金木犀の香りは遠くまで届き、印象は強いのに、花期も、残り香も長くはありません。

 

 

これは秋の倫理をよく映します。

——強すぎる収斂はしない、過ぎた執着は置いてゆく、しかし締めるべきところはきりりと締める。

 

 

濃く在りながら、執しつこく留まらない。

 

 

その「ほどほど」は、私たちの暮らしの呼吸にもヒントを与えます。

 

 

仕事も、食も、会話も、香りのように“立ちのぼっては消える”ほうが、からだにはやさしい。

 

 

残香だけが、次の動作の質を決めます。

 

 

 

心神を撫でる、見えない鍼

 

 

秋は感情でいえば「憂」に傾きやすい季でもあります。

 

 

別れや終い、余白と静けさ。

 

 

金木犀の香りは、その胸のくぼみに滲み、ぎゅっと掴んでいた手をゆるめてくれます。

 

 

東洋医学の言葉に置き換えるなら、香りは「開竅(かいきょう)」し、「神を安んず(安心)」る働きを助ける

——見えない鍼のようなもの。

 

 

一本の香りが、胸の結び目をそっと解き、長くやさしい吐息を引き出します。

 

 

 

暮らしの中の小さな養生

 

 

・香りを“聞く”散策

夕刻、ひと駅ぶん歩く。

口は軽く閉じ、鼻で呼吸しながら、香りの濃淡に意識を預けます。

立ち止まり、三呼三息。

肺は香りを入口に、拍を整えます。

 

・温かい一杯に香をのせる

湯気は香りの船。

白湯、番茶、米粥。

器を両手で包み、立ちのぼる湯気を鼻で受けとめるだけで、胸がほどけます。

 

・眠り前の“収”の儀式

窓を少し開け、外気の温度と匂いを一度だけ確かめ、

つぎに静かに閉じる。

開いて収める、その所作が夜の自律神経に合図を出します。

 

 

ここでは「香りに気づく」程度のやわらかな実践を勧めます。

 

 

季節に咲く理由を、からだで受け取る

 

 

金木犀が秋に咲くのは、偶然ではありません。

 

 

肺の季に、肺の門である鼻から差し込む透明なメッセージ

——それが金木犀の芳香。

 

 

香りに気づき、思わず吸い込む

——その小さな反射こそ、季節の「収」にそっと歩調が合うようからだに伝える自然のレッスンです。

 

 

ひとつ締め、ひとつ置き、そして深く息を吐く。

 

 

そうして空いたところに、冬支度の静かな力が満ちてゆく。

 

 

その年の秋は、その年の香り。

 

 

足を止めて、胸いっぱいに「金木犀の呼吸」をどうぞ。

 

 

 

 

 

【参考文献】

『黄帝内経 素問・霊枢』東洋学術出版社

『難経』東洋学術出版社

張仲景『傷寒論/金匱要略』東洋学術出版社

神戸中医学研究会 編『東洋医学概論』緑書房,2019年

神戸中医学研究会 編『中医診断学』緑書房,2020年

伊藤 剛・伊藤 裕『中医気血津液学』燎原,2014年

 
 
 
 

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第2回|心神と睡眠

 

 

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こんばんは、三鬼です。

 

 

 

 

皆様いかがお過ごしでしょうか。

 

 

 

 

布団のなかで「あと一分だけ」とスクロールを続けているうちに、眠りの入口がどこかへ遠のいてしまう

——そんな夜はありませんか。

 

 

東洋医学では、心(しん)は神(しん)を蔵すといい、注意力・情緒・眠りの質といった“こころの光”を心が守っています。

 

 

眠りとは、この光を一度そっと内側へ収める儀式。

 

 

ところが、夜の光・音・終わらない会話(DMやコメントの往復)は、その光を外に散らしてしまいます。

 

 

 

 

なぜ、夜のスマートフォンで眠りが遠のくのか

 

夜は陰を回収し、陽を静める時間帯です。

 

 

強い光や刺激は陽を立て、気を上向きに動かします。

 

 

胸が落ち着かない、考えが止まらない

——これは心神の散乱のサイン。

 

 

 

さらに、返信や判断は小さくても決断行為です。

 

 

東洋医学で火に属する心は、議論・決断で温度を上げやすい臓。

 

 

夜の判断は、たとえ“軽い”つもりでも火をあおり、眠りの準備を遅らせます。

 

 

 

「デジタル日没」が効く理由

 

就寝90分前に通知を切り、画面を温かい色・低い輝度へ落とす

—これが“デジタル日没”。

 

 

 

ポイントは段取りにあります。

 

 

 

急に真っ暗へではなく、暮れる順番をつくる。

 

 

 

光と情報の量を一段ずつ下げることで、体内の陽も静かに降りはじめ、心神は巣へ戻る準備ができます。

 

 

眠れない」の多くは、能力の問題ではなく切り替えの欠如です。

 

 

 

 

ベッドにスマートフォンを持ち込まない——空間に役割を与える

 

寝室は“眠る部屋”として役割を一本化すると、身体は入室しただけで眠りのモードに入ります。

 

 

逆に、ベッドで仕事・鑑賞・会話を続けると、部屋は「活動の場」として学習され、陰へ沈む合図が鈍くなります。

 

 

 

充電器は別室へ。目覚ましはシンプルな時計で。

 

 

空間に余白と静けさを置くことが、もっとも確実な睡眠介入です。

 

 

 

 

“明日箱”で思考を畳む

 

布団のなかで湧く「明日のToDo」は、頭に置いたままにせず紙へ退避しましょう。

 

 

書く行為は、「考えの火」を紙の器へ移し替える作業。

 

 

心神の散乱を防ぎ、夜の内側へ静かに戻っていけます。

 

 

メモは箇条書きで十分。

 

 

書いたら閉じる

——ここまでが儀式です。

 

 

 

 

呼吸で心を着地させる

 

眠りは努力ではなく落下に似ています。

 

 

 

落ちるには抵抗を手放すこと。

 

 

 

4秒吸って、6秒吐く呼吸を3分。

 

 

吐く息は、胸の前にかかった薄い幕をそっと引くイメージで。

 

 

長い呼気は、上に集まった気を下へ戻し、心の火を静めます。

 

 

 

頭のなかがにぎやかな夜ほど、言葉ではなく息で静けさをつくってみてください。

 

 

 

 

昼の過ごし方が、夜の眠りをつくる

 

良い眠りは、夜だけの努力では生まれません。

 

・朝:起きたらまず自然光を浴び、体内時計を立ち上げる。

   起床直後のSNSは避け、体を先に起こす。

 

・昼:重い判断は午前の集中帯にまとめ、夜に持ち越さない。

 

・夕:仕事の終わりを自分で宣言し、境界をつくる(メールは翌朝に“送信予約”でも良い)。

 

 

 

 

 

きょうからできる三つ

 

①就寝90分前に“デジタル日没”:通知OFF/温色/低輝度。

 

②寝室から充電器を退避:ベッドは“眠る”だけの場所に。

 

③4–6呼吸を3分:吐く息で、心を静かに着地させる。

 

 

 

眠りは、からだと心が同じ方向へ傾くことで訪れます。

 

 

光を弱め、声を小さくし、判断を明日に預ける。

 

 

外へ散った光をもう一度内にしまうとき、夜はやわらかく私たちを受けとめてくれます。

 

 

 

【参考文献】

『黄帝内経 素問・霊枢』東洋学術出版社

『難経』東洋学術出版社

張仲景『傷寒論/金匱要略』東洋学術出版社

神戸中医学研究会 編『東洋医学概論』緑書房,2019年

神戸中医学研究会 編『中医診断学』緑書房,2020年

伊藤 剛・伊藤 裕『中医気血津液学』燎原,2014年

 
 
 
 

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