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こんばんは、松木です。
続きを書いていきます。
「EBM(根拠に基づいた医療)」について(その1)
「EBM(根拠に基づいた医療)」について(その2)
「EBM(根拠に基づいた医療)」について(その3)
「EBM(根拠に基づいた医療)」について(その4)
「EBM(根拠に基づいた医療)」について(その5)
「EBM(根拠に基づいた医療)」について(その6)
「EBM(根拠に基づいた医療)」について(その7)
「EBM(根拠に基づいた医療)」について(その8)
「EBM(根拠に基づいた医療)」について(その9)
とうとうEBMのお話も10記事目に突入です。
今日は「症例集積」について書いていきます。
「症例集積」とは、関心ある転帰を示す一連の患者の報告で、対象群は含まないものを指します。
対象群とは、これまでのお話にも出てきましたが、何も治療をしていない人たちや、他の治療を行った人たちのことです。
・無作為化比較試験(RCT)
・コホート(追跡)研究
・症例-対象(case-control)研究
これらの研究方法では対象群を設定してありましたが、「症例集積」には対象群は設けていないわけです。
お忘れの方がいらっしゃるかもしれませんが、
「EBM(根拠に基づいた医療)」について(その3)
に書いたように、EBMでは研究方法によってデータの信頼度に差を設けています。
「症例集積」はそれほど信頼度の高い研究とは言えません。
しかし、鍼灸において昔から行われている研究の多くは、この「症例集積」です。
そして「症例集積」には、EBMの信頼度とは別に、重要な意義がある場合があります。
日本統合医療学会のホームページにこのような事が書いてあります。
以下引用させて頂きます。
近代西洋医学の医薬品のEBMで広く使用されるRCT(ランダム化比較試験)だけでは、伝統医学や相補・代替医療の科学的根拠を研究するには限界があるとの討議が2000年のミュンヘンでの国際会議でなされています。
実際、米国の国立癌研究所(NCI)や国立相補・代替医療センター(NCCAM)でも、RCT研究にそぐわない伝統医学や相補・代替医療は、ベストケースシリーズ(Best Case Series)として取り上げられています。
ベストケースとは、伝統医学や相補・代替医療の実施によって得られた、以下のような様々な症例を集積し、臨床試験実施に向けた情報の収集と基礎資料を提供するものです。
1、1回あるいは数回の治療によって、劇的な症状の改善あるいは治癒が見られた症例
2、近代西洋医学に伝統医学や相補・代替医療を併用することによって、症状の進行を顕著に遅らせ改善させた症例
3、近代西洋医学に抵抗を示す病態に対し、伝統医学や相補・代替医療によって症状の明らかな改善が認められた症例
4、その他、伝統医学や相補・代替医療で特異な効果が得られたケース
伝統医学や相補・代替医療のEBMでは、有効性や安全性、経済性が症例によって異なる場合が多くなります。今後、伝統医学や相補・代替医療の適応や 有効性を検証するためにも広く情報の共有を図り、ベストケースの集積からエビデンスの検証へと繋がる研究体系が望まれています。
引用終わり
EBMの信頼度は低い「症例集積」ですが、上記のような印象的な症例は、「ベストケースシリーズ」として重要であるという事です。
鍼灸の古くからある「症例集積」は、EBMの観点からは価値が薄いように言われることがありますが、
このように考えるとまた違った価値を持っていると思います。
つづく
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