東洋医学 伝統鍼灸 清明院

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身重(しんじゅう)とは

 

 

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こんばんは!樫部です。
 
 
 
本日は身重(しんじゅう)について、お話ししていきたいと思います。
 
 
 
身重とは、身体が重だるくて動かしにくく、体位変換も難しいことをいいます。
 
 
 
黄帝内経、傷寒論などには、「体重」、「四肢重」と記載されています。
 
 
 
中風による片麻痺でも半身が重だるい症状がみられることがありますが、この場合は「半身不遂」に当てはまります。
 
 
 
身重は、『張氏医通』に「身重は多く湿に属す」と記されていまして、湿邪との関連が強いとれています。
 
 
湿は、陰邪であり、重、濁、粘、滞の性質を有するため、湿邪に侵襲されると身体が重く感じられます。
 
 
弁証上は、表裏虚実の区別があります。
 
 
表証は悪寒、発熱、頭痛を伴い、裏証は脾腎虚衰による水湿内停の症候をともないます。
 
 
 
表証には発散、裏証には温運の治法を用います。
 
 
 
身重の弁証分類は、主に次の3つです。
 
1.湿著肌表の身重
 
2.風水相搏の身重
 
3.陽虚水泛の身重
 
 
 
まずは、湿著肌表と風水相搏の身重についてです。
 
 
 
ともに外感表証に属します。
 
 
 
この場合は、身重に痛みを伴います。
 
 
 
発熱、悪寒などの症状が早期に出現しますが、病態と症候が異なるため、違いをもとに鑑別していきます。
 
 
 
湿著肌表の身重は、水中を歩行したり、雨つゆにさらされたり、湿気の多いところに住むことで、外湿が肌表に侵入し、停滞することで発生します。
 
 
 
この場合、身重が強く、頭が締めつけられるような脹りがみられますが、浮腫はみられないことが特徴です。
 
 
 
その他にも、胸苦しい、食欲が無い、舌苔白膩などの湿阻の症候をともないます。
 
 
 
治法は、発汗祛湿を用います。
 
 
 
次に、風水相搏の身重についてです。
 
 
 
この場合は、風邪が肺を侵襲して、肺の水道を調節する機能が損なわれることにより、膀胱の気化作用にも悪影響が及んではっします。
 
 
 
邪が肌表にあり、経絡を阻塞するために身体が重苦しく、関節がだるく痛むといった症候がみられます。
 
 
 
特徴は、身重は軽度であり、浮腫がみられることです。
 
 
 
この浮腫は、特に顔面にみられる特徴があります。
 
 
 
その他にも、悪寒、発熱、咽痛、咳嗽などの表証をともないます。
 
 
 
治法は、宣肺利水を用います。
 
 
 
最後に、陽虚水泛の身重についてです。
 
 
 
老倦内傷、慢性病のために脾腎の陽気が不足して陰寒内盛となり、水液代謝が衰えて水湿が肌肉にあふれ、肢体が重だるくなります。
 
 
 
弁証のポイントとしては、身重あるも痛み無し、倦怠無力感、浮腫がみられて特に下肢が浮腫む、といった症状がみられることです。
 
 
 
その他にも、顔色萎黄あるいは蒼白でツヤがない、食欲不振、水様便、尿量減少、腰がだるい、四肢の冷えといった陽虚の症候をともないます。
 
 
 
治法は、温陽化水を用います。
 
 
 
【参考文献】
『鍼灸臨床能力 北辰会方式 理論篇 』
藤本蓮風 監修、(一社)北辰会 学術 編著、緑書房
 
『鍼灸臨床能力 北辰会方式 実践篇』
藤本蓮風 監修、(一社)北辰会 学術 編著、緑書房
 
『症状による中医診断と治療 上』
神戸中医学研究会、燎原書店
 
『基礎中医学』
神戸中医学研究会、燎原書店
 
 
 
 
 

 

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健忘(けんぼう)とは④

 

 

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こんばんは!樫部です。
 
 
 
本日は「健忘」の続きのお話で、「痰濁擾心と瘀血衝心の健忘」について、お話ししていきたいと思います。
 
 
 
前回までのお話はこちら!
 
 
 
痰濁擾心と瘀血衝心は、いずれも実証である点では同じですが、病因病理は異なります。
 
 
 
まずは、痰濁擾心の健忘についてです。
 
 
 
情緒の抑うつで肝気鬱結が生じ、このために脾の運化が失調して水湿が化さず痰濁が生じてしまい、痰が気とともに上逆し、神明が擾乱して発生します。
 
 
 
『丹渓心法』に、「健忘は精神短少によるものが多く、また痰を有するものは、この症多くは思慮過多により、その心包を損し、もって神舎不清を致し、事に遇いて忘れること多し」と述べられているとおりです。
 
 
 
特徴は、健忘が短期間のみ発生し、頭のふらつき、回転性目眩などの痰濁上擾の症候、
 
 
 
胸苦しい、悪心などの気滞の症候、痰やよだれが多い、喘鳴などの痰延壅塞の症候、言語錯乱、泣いたり笑ったりするなどの痰迷心竅の症候を伴うことです。
 
 
 
舌苔が膩、脈が弦滑は痰の存在を示します。
 
 
 
治法は、化痰寧心を用います。
 
 
 
痰が長期間停滞して鬱して化熱するか、情緒の激動で化火し、痰火となって神明を擾乱した場合、
 
 
 
健忘に加えて、イライラ、目眩、頭痛、顔面紅潮、咽の乾燥感、胸苦しさ、呼吸促迫、咳嗽、黄色痰、舌苔黄膩、脈滑数を呈します。
 
 
 
この場合、治法は、清化熱痰を用います。
 
 
 
次に、瘀血衝心の健忘についてです。
 
 
 
この場合は、瘀血が停滞して脈絡を阻滞したために、気血が行らず、心神が栄養を受けられないか、神識が擾乱されて発生します。
 
 
 
特徴は、健忘が突然発生して、治療しがたいことが多く、腫瘤、疼痛、出血、口をすすぐだけで飲みたくない、
 
 
 
便は黒くて硬いが排便はスムーズ、舌質が紫暗で瘀点がある、脈細渋あるいは結代などの瘀血の症候を呈します。
 
 
 
治法は、活血化瘀、攻逐蓄血を用います。
 
 
 
以上のとおり、健忘は、心、脾、腎との関係が密接であることが分かります。
 
 
 
心は神を蔵して神明を主り、腎は精を蔵して脳に通じ、脾は意と智を主ります。
 
 
 
その為、心脾の気血不足、心腎不交などが健忘を引き起こす原因となります。
 
 
 
治法は、養心安神、補益脾腎が中心となります。
 
 
 
 
 
 
【参考文献】
『鍼灸臨床能力 北辰会方式 理論篇 』
藤本蓮風 監修、(一社)北辰会 学術 編著、緑書房
 
『鍼灸臨床能力 北辰会方式 実践篇』
藤本蓮風 監修、(一社)北辰会 学術 編著、緑書房
 
『症状による中医診断と治療 上』
神戸中医学研究会、燎原書店
 
『基礎中医学』
神戸中医学研究会、燎原書店
 
 
 
 
 
 
 

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