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こんばんは。齋藤です。
前回の続きです。
前回の話はコチラ。
この「井穴から始まる」という解釈に対して、歴代の医家達は以下の様に見解を述べています。
楊玄操は「臓腑はすべて井をもって始まる。井とは谷の泉のことであり、掘って作った井戸ではない。谷間で泉水が流れ始める所を井と名付けている。井には出るという意味がある」と述べています。
徐霊台は「霊枢の本輸編では、臓の井はすべて木に属し、腑の井はすべて金に属す」と述べています。
また、「五臓六腑すべて木に属すと解釈するのであれば、医学経典の語に反するものであり、難経の下文とも互いに矛盾する。もしも、ただ臓の井だけが木に属し、腑の井は木に属さないとすると、腑もまたその始めは井であるが、木に属していないという事になるであろう。その道理はどこにあるのか。下文はおろそかの至りである。」と述べています。
陰経は井(木)、榮(火)、輸(土)、経(金)、合(水)という事になっていますが、陽経は、井(金)、榮(水)、輸(木)、経(火)、合(土)という流れになっています。
ここで、「井穴は木に属し、東方と春を象徴している。春は万物が芽生え始める頃で、生物は活発に活動し、虫類も活動を始める。つまり全ての生物が新しい生活を始めるのである。」なので、井木穴が全ての始まりという事にしてしまうと、陽経の場合は、井金穴から始まってしまうから、おかしくない?と徐霊台先生は説いているのだと思います。
また、「したがって春は一年の頭とし、甲は日数の始まりとされ、経穴も木に属する井穴を始まりとしているのである。」の部分ですが、四季の順序も春から始まって夏、秋冬と数えられ、日の十干の数も、甲乙の木から始まって、丙丁(火)、戊巳(土)、庚辛(金)、壬癸(水)と数えられます。
だから、経穴も木に属する井穴から始まると考えますよと、十干の考え方を使用し説明しています。
この井木穴、井金穴の関係に関して、次の六十四難で説明しています。
続く
参考文献
『難経解説』 南京中医学院=編 戸川芳郎=監訳 浅川要・井垣清明・石田秀実・勝田正泰・砂岡和子・兵頭明=訳 (東洋学術出版)
『難経の研究』 本間祥白=著 井上理恵=校閲 (医道の日本社)
『難経鉄鑑』 伴尚志=訳 広岡蘇仙=著 (たにぐち書店)
『ハイブリット難経』 割石務文=著 (六然社)
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こんばんは。齋藤です。
そろそろクリスマスですね。
街はイルミネーションで彩られ、年末だなぁとしみじみ感じる、今日この頃です。
それでは、前回の続きです。
前回の話はコチラ。
「黄帝曰、諸原安合以致六輸。岐伯曰、原独不応五時、以経合之、以応其数、故六六三十六輸。」
陰経の場合は、五臓と五時で応じています。
しかし、陽経の場合は六腑の為、原穴が加わります。
その為、六腑の治療の際は、本経の原穴を使用すべきと書かれています。
「黄帝曰、何謂蔵主冬、時主夏、音主長夏、味主秋、色主春。願聞其故。岐伯曰、病在蔵者、取之井。病変于色者、取之榮。病時間時甚者、取之輸。病変于音者、取之経。経満而血者、取之於合、故命日味主合。是謂五変也。」
現代語訳は以下の通りです。
蔵は冬を主り、時は夏を主り、音は長夏を主り、味は秋を主り、色は春を主るとは、何を言うのか。
病が蔵にある場合は、邪気が深く侵入しているので、治療に際しては井穴を刺すべきです。
疾病の変化が顔の色に現れている場合は、治療に際しては榮穴に刺すべきです。
病状が軽くなったり、重くなったりするものは、治療に際しては輸穴に刺すべきです。
疾病の影響が声の変化に現れるものは、経穴を刺すべきです。
経脈が満ちて瘀血があるもの、病が陽明胃経にあるもの、及び飲食の不摂生による疾病は、治療に際してみな合穴に刺すべきです。
それゆえ、味は合を主るというのです。
以上が、五変の表す異なる特徴と、五輸と相応する鍼治療法であります。
五行の五輸をしっかりと意識して説明されていますね。
歴代の医家である馬蒔先生は「五変以て五輸を主る」に関して、以下の様に説明しています。
五臓は冬を主るので、およそ病が蔵にあれば、必ず五臓の井穴を取るのである。
例えば、肝なら大敦に取り、心なら少衝に取る。
色は春に生ずるので、およそ病が色に在れば、必ず五臓の榮穴に取るのである。
例えば、肝なら行間に取り、心なら少府に取る。
という様な感じで、説明しております。
霊枢「順気一日分為四時篇」では、五変の意味と、五変が病を決定する事、鍼治療の五輸との相関関係を説明していて、その運用に合わせて配穴を決定していることを説明しています。
井穴=心下満だけではなく、こういった色々な考え方を頭に入れて、色々な方面から考えていくことが大事だと思います。
『現代語訳 黄帝内経霊枢 上巻』 南京中医学院編 石田秀実監訳 (東洋学術出版)
『意釈黄帝内經霊枢』 小曽戸丈夫+浜田善利共著 (築地出版)
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