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胞衣について、その3~養生と医学と宗教~

2013.02.27

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こんばんは、下里です




窓から見える日差しはとっても明るいですが、またまた寒い日々が続きます




今回も、胞衣について取り上げます。


胞衣とは、胎盤や卵膜などで、赤ちゃんを分娩後に排出されます。(詳細は胞衣について、その1~「胞衣」って何ですか?~をご参照ください)



前回、詳しく胞衣にまつわる症状について述べました。胞衣について、その2~お産と「胞衣」にまつわる症状~


最後に、「胞衣不下」という症状には、中医学的に見て、気虚・血オ・寒凝などのメカニズムが考えられ、鑑別できるというところで終わりました。


『症状による 中医診断と治療 下巻』の「胞衣不下」における鑑別分析を読むと、ある共通点が・・・・



それは、病の発症起点。



すべからく「出産をキッカケに」しています。



お母さんがヘトヘトになって胞衣を押し出すパワーがなくなってしまう(気虚)



子宮の中で余計な血の固まりができてしまう(血オ)



弱った体に寒邪がつけこむ(寒凝)




ということが起こる、と。


つまり、基本的には赤ちゃんが分娩されてから起こるトラブルとされているのです。

そう、胞衣のサイズやボリューム云々でなく基本的にすべて赤ちゃんの分娩をキッカケにお母さんの体に起きた変化により起こる症状なのです。

 


では、胎児分娩よりも前にすでに発症している、胞衣が厚くなることで起こる出産への弊害は、中医学の世界では症状としてはないのか、、、


胞衣の、メインとなるものを胎盤として考えてみます。

 

『竹林寺女科』にある「胞衣が厚くなり難産となる」という記載にこだわり、



『中医婦人科学』を見ますと、、胎盤が大きすぎる(直径21~26cm)場合に、その排出時間が長くなることについて、




分娩第3期に2時間以上を要する産婦の72.7%が、その胎盤が大きすぎることによることについて触れられています。




排出時間が長くなるということで、「胞衣不下」の原因に、入れられてもいいのではないの?と思いますが、




『症状による 中医診断と治療 下巻』では、あくまで弁証の基本パターンを載せており、「胞衣不下」の項目では母体の問題を探りそれを治療することを目的としているようですから、




もはや胞衣そのものについては着目しなかったのかもしれません。




『症状による 中医診断と治療 下巻』が現代中医学の基本的な鑑別学を網羅した本だとするならば、「分娩第3期が長引き難産になるのは胞衣そのものの問題でなく、胎児分娩をきっかけに母体に起きたことが問題である」これがメジャーな考え方なのでしょうか。




もちろん、もっと広い目で見たときに、胎盤だけをとってみても、胞衣に関するトラブルというのは、たくさんあるわけですが、今回は割愛します。



ここで、そもそも3週間もかけて胞衣について調べるきっかけになった書物『竹林寺女科』に立ち返ってみたいと思います。


本書では、「妊娠宜禁房労」という節にあるように妊娠中のセックスを禁止する以外にも、妊婦さんの養生がいろいろと紹介されているのは先日触れたとおりです。参考記事:妊娠中のセックスについて




中には「妊娠飲食禁忌」という食事の禁止事項についての節もあります。




全部は記載しきれませんが、大意としてはナマモノ、脂っこいものや刺激物、肉食をするとトラブルのもとですよ、という内容です。




確かに、赤ちゃんはお母さんの食事から栄養をいただいているわけで一理あるな、と考えさせられつつも



しかしながらその具体例がなかなか、、、、



やれ妊婦が犬の肉を食べると子供は声が出なくなる、

兎を食べると口唇裂になる、山羊を食べると子どもが色々な病気に見舞われるetc




ちょっとちょっと何言ってるの?これ何の本?医学?自然科学?統計取ったの?このお寺があったのは特殊地域なの?とツッコミを入れたくなる内容のオンパレードでして

 

医学的な根拠がある事実の記載というよりも、お坊さんから、親への宗教的な立場からの戒めのカラーが濃いのでは、と改めて考えさせられました。




「妊娠宜禁房労」についても、中心のテーマは禁欲であり、妊娠中のセックスにより流産、難産、子供の病気が起こると述べた後、節の結びは「ここに紹介したような、難産や子どもの不幸がおこるのは全て父母の淫欲が過ぎるからですよ」と結んでいます。




同節の、難産の理由として「胞衣が厚くなり、難産云々」とあったことから、胞衣と難産の関係を調べていたのですが、こうして見てみると、まあ事実として胎盤が大きいとか癒着していることでの難産ということは臨床現場であるけれども、この本ではそのメカニズムをきちんと明らかにして記述しているわけでなくて、




胎児をもつ両親の性生活を宗教的な立場から戒めるために例として挙げたにすぎない可能性というのも、否定できないと思います。

 

(このお寺の、宗派などわかればもっと裏付けができるのかと思います。。。が、わかりませんでした!)




今回は、以下を自分なりの結論にしたいと思います。



すなわち


『竹林寺女科』の一節「妊娠宜禁房労」においては、医学的な病院病理解析や治療方法でなく宗教的な戒めを説きたかった。



と、いうことです。

 


長くなりましたが、こちらのシリーズは今回で終了です。また、勉強してわかったことがあればこちらにつづってみたいと思います。




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