東洋医学 伝統鍼灸 清明院

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“後谿”という経穴

2019.09.10

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こんばんは 浅田です

 

 

 

普段臨床でよく使う“後谿”という経穴。

 

 

 

非常に効きが良く、頻繁に使用するからこそ“後谿”に対しての理解を深めなければなりません。

 

 

 

今回、“後谿”という経穴名から、経穴の特徴を考察してみました。

 

 

 

◆“後谿”という経穴名について

 

 

 

『針灸経穴名の解説』には、

 

 

 

「“前谷”と“後谿”の両穴はともに少沢の沢をうけ、あたかも雨露が満ちあふれ、溝渠はみなぎり、経気が強く流れ、渓谷を流れていくようなので“前谷”、“後谿”と称した。」

 

 

 

と書かれています。

 

 

 

小指の中手指節関節の前のくぼみに取るのが“前谷”で、後ろのくぼみに取るのが“後谿”であり、小指にある前後の渓谷を形容して“後谿”と名付けられています。

 

 

 

◆“後谿”の「後」という字について

 

 

 

“後谿”の「後」という字を『漢字海』で調べてみると

 

 

 

・うしろ、あと、のち

 

・最後

 

・将来

 

・動作や現象が終了した直後

 

・子孫、継承者、後継ぎ

 

・時間的に遅れているさま

 

・他のものよりも後になる

 

・能力地位が劣る

 

・あとまわしにする

 

・重視しない

 

・遅い

 

 

 

などの意味があります。

 

 

 

遅い、遅れる、後回しという意味があることから、“前谷”よりも遅れて“後谿”に反応が出てくるのか?

 

 

 

と妄想することができます。

 

 

 

“前谷”の反応はあまり診ないので、今後“前谷”にも注目して診てみようと思います。

 

 

 

『中国針灸穴位通鑑』には、“後谿”ではなく、“后溪”と書かれています。

 

 

 

この「后」という字を調べてみると、

 

 

 

・天子、帝王、君主

 

・天子や帝王の正妻

 

・あと、のち、後ろ

 

 

 

という意味があります。

 

 

 

帝王や后妃などは常に後ろに控えている為、「后」には後ろという意味があるそうです。

 

 

 

「后」に、帝王、君主という意味があることから、“後谿(后溪)”は君主之官である心の臓に関与する

 

 

 

と考えることができます。

 

 

 

心-小腸は表裏関係だから、小腸経である“後谿”は心の臓に関与する

 

 

 

という考えだけではなく、

 

 

 

“後谿(后溪)”という経穴名そのものが君主という意味を持っているから、より心の臓に深く関与する

 

 

 

と考えることもできます。

 

 

 

◆“後谿”の「谿」という字について

 

 

 

“後谿”の「谿」という字は、「渓」や「溪」と書くことができますが、白川静先生の『字統』によると「谿」が正字となっています。

 

 

 

この「谿」という字には、

 

 

 

・山間の川、外界と通じない山中の川

 

・谷間、深い谷間

 

・空虚であるさま

 

・他の川に注ぎ込むことのない山中の水流

 

 

 

という意味があります。

 

 

 

小田規矩之助先生の『経穴名辞攷』にも、

 

 

 

「谷や谿は、筋間、骨間の陥凹を表す」

 

 

 

と記載があり、前述したように、“後谿”は本節(中手指節関節)の骨間に位置する為、「谿」という文字が当てられています。

 

 

 

「谿」の「奚」は「大」から構成され、大きいという意味を含みます。

 

 

 

従って、大きな谷という意味である「谿」の字を使っている“後谿”は、大きく反応が出る経穴であり、気を大きく動かす経穴であると考えることができます。

 

 

 

経穴名を細かく分解して考察してみると、その経穴に対しての理解がグッと深まりますし、様々な妄想が膨らみます。

 

 

 

調べていて非常に勉強になりました。

 

 

 

参考文献

・『中国針灸穴位通鑑』 青島出版社

・『針灸経穴名の解説』 燎原 高式国

・『経穴名辞攷』 小田規矩之助

・『字統』 平凡社 白川静

・『漢字海』 三省堂

 

 

 

 

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