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こんばんは 浅田です
普段臨床でよく使う“後谿”という経穴。
非常に効きが良く、頻繁に使用するからこそ“後谿”に対しての理解を深めなければなりません。
今回、“後谿”という経穴名から、経穴の特徴を考察してみました。
◆“後谿”という経穴名について
『針灸経穴名の解説』には、
「“前谷”と“後谿”の両穴はともに少沢の沢をうけ、あたかも雨露が満ちあふれ、溝渠はみなぎり、経気が強く流れ、渓谷を流れていくようなので“前谷”、“後谿”と称した。」
と書かれています。
小指の中手指節関節の前のくぼみに取るのが“前谷”で、後ろのくぼみに取るのが“後谿”であり、小指にある前後の渓谷を形容して“後谿”と名付けられています。
◆“後谿”の「後」という字について
“後谿”の「後」という字を『漢字海』で調べてみると
・うしろ、あと、のち
・最後
・将来
・動作や現象が終了した直後
・子孫、継承者、後継ぎ
・時間的に遅れているさま
・他のものよりも後になる
・能力地位が劣る
・あとまわしにする
・重視しない
・遅い
などの意味があります。
遅い、遅れる、後回しという意味があることから、“前谷”よりも遅れて“後谿”に反応が出てくるのか?
と妄想することができます。
“前谷”の反応はあまり診ないので、今後“前谷”にも注目して診てみようと思います。
『中国針灸穴位通鑑』には、“後谿”ではなく、“后溪”と書かれています。
この「后」という字を調べてみると、
・天子、帝王、君主
・天子や帝王の正妻
・あと、のち、後ろ
という意味があります。
帝王や后妃などは常に後ろに控えている為、「后」には後ろという意味があるそうです。
「后」に、帝王、君主という意味があることから、“後谿(后溪)”は君主之官である心の臓に関与する
と考えることができます。
心-小腸は表裏関係だから、小腸経である“後谿”は心の臓に関与する
という考えだけではなく、
“後谿(后溪)”という経穴名そのものが君主という意味を持っているから、より心の臓に深く関与する
と考えることもできます。
◆“後谿”の「谿」という字について
“後谿”の「谿」という字は、「渓」や「溪」と書くことができますが、白川静先生の『字統』によると「谿」が正字となっています。
この「谿」という字には、
・山間の川、外界と通じない山中の川
・谷間、深い谷間
・空虚であるさま
・他の川に注ぎ込むことのない山中の水流
という意味があります。
小田規矩之助先生の『経穴名辞攷』にも、
「谷や谿は、筋間、骨間の陥凹を表す」
と記載があり、前述したように、“後谿”は本節(中手指節関節)の骨間に位置する為、「谿」という文字が当てられています。
「谿」の「奚」は「大」から構成され、大きいという意味を含みます。
従って、大きな谷という意味である「谿」の字を使っている“後谿”は、大きく反応が出る経穴であり、気を大きく動かす経穴であると考えることができます。
経穴名を細かく分解して考察してみると、その経穴に対しての理解がグッと深まりますし、様々な妄想が膨らみます。
調べていて非常に勉強になりました。
参考文献
・『中国針灸穴位通鑑』 青島出版社
・『針灸経穴名の解説』 燎原 高式国
・『経穴名辞攷』 小田規矩之助
・『字統』 平凡社 白川静
・『漢字海』 三省堂
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