東洋医学 伝統鍼灸 清明院

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「胆」って何ですか?(その3)

2013.02.02

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これまでのお話・・・


「肝」って何ですか?(その13)
「胆(たん)」って何ですか??(その1)
「胆」って何ですか?(その2)

 

さて、今日からいよいよ東洋医学の言う、「胆の腑」とはどういうものか、を簡単に解説していこうと思います。


簡単に、です。

難しい、いかめしい話が好きな方は、そういう感じの解説サイトや専門書はいくらでもありますんで、そっちを見てもらうとして、

僕がやるのはチョーカンタンな、肝胆(カンタン)の話です。(笑)

 

・・・でも、ポイントは外さないように注意を払います。

 

分かる人が読んだら分かる、大事な話も入れていこうと思っています。

 


 

前回、「肝胆相照らす」という言葉が出て来ましたが、東洋医学的にも、「胆の腑」「肝の臓」は非常に密接な関係にあります。

 

以前書きましたが、この2者(肝と胆)を陰陽で分けると、「肝の臓」は相対的に陰、「胆の腑」は相対的に陽、という関係性にあり、これを”表裏の陰陽関係”なんて言います。


「表裏(ひょうり)」する臓腑 参照

 


「肝の臓」の詳細については以前書きましたので、
そちらをご参照いただくとし、要はそういう、「肝の臓」の働きをサポートするのが、

「胆の腑」の大きな役割の一つ、という訳です。

 


肝胆で協調して、一つの働き(漫才コンビみたいなもんです。)を成しているワケですね。

 

そういう意味では、機能における関わりの密接さにおいて、「脾胃」とも似ているものがあります。

カテゴリ 「脾胃」 参照

 


そして、肝胆は脾胃と同じく、中焦に存在し(ただし肝は下焦まで大きく垂れ下がっていますが。)、この4者で、飲食物を消化、吸収し、


「気血のもと」を調達するとともに、完成した「気血」を上下左右前後、全身へくまなく巡らせる、という役割もやっています。

 


コレは大変重要な役割でありまして、多くの患者さんでは、ここのところ(肝胆、脾胃の4臓腑)が機能失調を起こして、

それがあらゆる慢性病の原因になり、また、治らない原因になっていることが多く見受けられます。

 

なんていうか、このワンユニットは「生命のモーター」「自然治癒力のモーター」ですな。

 

まずコレが大事です。

 

 

そしてその中で、「胆の腑」は独特の役割を果たします。

 

次回へ続く。

 

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消化管は体の外

2012.12.07

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清明院には、消化管に病気をお持ちの患者さんが多く見えます。

胃炎、腸炎、食道炎、ひどいものでは食道がん、胃癌、大腸癌、クローン病、安倍元総理で有名になった潰瘍性大腸炎など、実に様々な病気の方が見えております。

消化管と言えば、口から肛門までの長い道のりであり、食道、胃、小腸、大腸という、長い長い道のりです。

消化管の内側の粘膜は、いつも外界の刺激と接しているワケではありませんが、外界から取り込んだ飲食物は、消火液とごちゃごちゃに混ざっているとはいえ、

ある意味、そのままの形で粘膜に触れます。

そしてそこから、栄養分を吸収し、代謝し、血肉にする訳ですネ。

外界のものと触れる、という意味では、消化管粘膜は「体の外」であり、「皮膚」と似ています。

消化管の異常は皮膚との関連が深く、その逆もしかりです。

アトピーの方の胃腸が整ってくると、皮膚の症状がよくなる、便秘の人がよくなってくると、皮膚がキレイになってくる、これは日常よく見かける現象です。

まあ、「中から美容鍼灸」です。(笑)

鍼灸治療は、鍼や灸での「皮膚」を介した刺激で、身体の各部に影響を与え、全身を調整する治療、とも言えます。

漢方薬での治療は、「消化管粘膜」を介した刺激で、全身各所に影響を与え、調整する治療、とも言えます。

皮膚も、消化管も、深浅でいうと「浅」なんです。

東洋思想には「表を以て裏をうかがう」という大切な考え方があります。

表(浅)から、裏(深)を動かす。

裏を無理に触ろうとしないことの追求の究極が、もっとも裏を動かすのでしょう。


一番手前は、一番奥。

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「木」が伸び放題の時

2012.10.24

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東洋医学の、五行論(ごぎょうろん)という考え方では、「肝の臓」「木」に分類します。

「五行」って何ですか?(その8) 
「肝」って何ですか?(その13)
 参照

 


現代人、都会人は、体を動かさず、毎日毎日パソコンに向かって、イライライライラ・・・。

 


職場の人間関係に、イライライライラ・・・。

 

彼氏や彼女に、イライライライラ・・・。

 


奥さんや旦那さんに、子どもに、親に、イライライライラ・・・。

 


自分自身に対しても、イライライライラ・・・。

 


なんで、そんなことになっちゃってんすか?・・・というぐらい、まさに「ハチ切れんばかり」の状態の人をよく見かけます。(苦笑)

 

こういうことだと、本来は伸び伸びと、縦横無尽に空間や土中に広がっていく「木」に例えられる「肝の臓」が、鬱々として伸びれなくなることがよくあります。

 

要は、「肝の臓」に機能失調が起こるワケです。

 

そうなると、「木」である「肝の臓」はなんとかせねばと、地面から「水」をぐんぐん吸い上げて吸い上げて、何とかいい状態を作ろう作ろう、

正常な状態を保とう保とうとしますが、そうすると今度は地面の水が枯れてくることもあります。

 

(これを「木旺水虧(もくおうすいき)」なんて言ったりします。)

 

ちなみに、五行で「水」に例えられるのは「腎の臓」であります。

「腎」って何ですか?(その11) 参照

 


要は、「腎の臓」の力を借りて、どうにか立て直そうとする訳ですが、この「水」が枯れてくる場合がある。

 


そうすると徐々に「木」は水分を失い、硬く脆くなっていき、ついには梢が擦れて火がついて山火事になるか、「ボキッ」と折れるか、です。

 


で、治療としては、そうならないために、早い段階でどうするか考えなくてはなりません。

 


まず、梢が擦れないように、地下の水が枯れないように、「木」そのものを間引くか、「水」を足すか、と考えます。

 


ここで、自然界における大地の地下水の原料はなんでしょうか。

 

雨ですよね?

 

では雨に相当するものは人間で言うとなんでしょうか。

 


原料は飲食物でしょう。

 

では飲食物はドコに入るんでしょうか。

 

「胃の腑」ですねえ。

 

「脾の臓」「胃の腑」は、五行でいうと「土」にたとえられます。

カテゴリ「脾・胃」 参照

 

 

つまり、「木」である肝の臓を立て直すための、潤沢で清浄な「水」を得るためには、「土」である脾の臓や胃の腑の働きが重要なのです。

 

飲食物は、ヘタに足しまくると、カラダ全体がびちゃびちゃのパンパンになって、結果的に「水」は淀み、「木」「根グサレ」を起こします。

 

飲食物が”その患者さんの体にとって”適量になるように、量を加減しなければいけないし、加工食品だらけの現代においては、質も考えなければいけません。

 

また、雨が降った場合にびちゃびちゃにならないように、土壌(脾や胃)の側の状況にも注意を払わないといけない。

 


「木」の異常一つとっても、対処法は様々なんですが、ごく当たり前の自然現象に基づいて考えれば、何が大事か、よく分かると思います。

 


ポイントは「木」、「水」、「土」です。

 

これは、「水」の異常や、「土」の異常の場合でも、こうやって、同じように考えていくことが出来ます。

 

なぜ、こうなる理論設計になっているか。

 

 

水害は、現代の中国でも大問題。

 

 

 

東洋医学が、長江、黄河といった、大きな河川の流域に発展した、農耕民族が作った医学であることと、関係が深いだろうな、思っています。

 

 

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4つの失敗(『黄帝内経素問 徴四失論(78)』)

2012.10.20

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我々にとってバイブルと言っていい、『黄帝内経(こうていだいけい)』という書物。

およそ2500年前頃に中国で成立したといわれる、言わば医学(哲学も含む)論文集のようなものです。

この中で表明されている学説や指摘の多くは、2500年経った現代において、中国から離れた外国である、この日本の東洋医学者にも、世界中に多大な影響を与え続けています。

その本の中に、『徴四失論(ちょうししつろん)』という篇があります。

ここでは、医者が決して犯してはならない4つの過ちが書かれております。

ここでの『徴』は、いわゆる「懲罰」『懲』という意味だと思います。

つまり、

”ここに書かれている4つの過ちをやる奴を懲らしめる!”

そんな刺激的な篇名です。(苦笑)

・・・で、そこに書かれている4つの過ちとは、以下の通り。

1.陰陽についてよく勉強しないこと。


2.師匠につかず、みだりに各種の療法を行い、でたらめな説を真理とし、勝手な名前を付けて自慢し、乱用し、勘違いと誤りを犯すこと。


3.患者ごとの様々な生活(貴賎、住環境、飲食、性格、寒熱)を考えず、自ら乱れ、迷うこと。


4.問診をせず、やみくもに脈を診て、でたらめな病名を付けること。

・・・と、書かれてあります。

 

(意訳by竹下)

これ、現代日本の鍼灸業界そのもののような気がしますが・・・。(苦笑)

『徴四失論』の中では最後に、

「この医学は、天地よりも広く、海よりも深い。その前提が分からないやつは、何を言っても理解できないから、救いようがない。」

と、吐き捨てるように非常に痛烈に指摘して終わっています。

こういう、金言至言が、『黄帝内経』の中にはたくさんたくさんありますが、それを活かすか殺すかは、読んだ先生次第なんだと思います。


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タバコと東洋医学(その6)

2012.09.05

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これまでのお話・・・

タバコと東洋医学
タバコと東洋医学(その2)

タバコと東洋医学(その3)
タバコと東洋医学(その4)
タバコと東洋医学(その5)

では、続きいきます!!

 

 

ちょっと空いたけども、やるっつったらやります!!(゜レ゜)

今日は、10年以上、1日1~3箱、タバコを吸い続けた人間が、急にやめるとどんなことが起こるか、という一例を紹介します。

(苦笑・・・僕自身の、実例です。)

急にタバコをやめて何が起こるかは、その人の体質によって違うと思いますので、以下はあくまでも一例です。

全員がこうなるとは限りませんので、ご注意ください。

このケースの当人(竹下)はある日、啓示があり、コンビニで「電子タバコ」なるものを買ってみました。

すると、割と普通のタバコを吸わなくても大丈夫でいられることに気付き、最初は普通のタバコと電子タバコと、交互に吸うような感じで始めて、

1カ月ぐらいかけて、電子タバコのみに変更しました。

そして、電子タバコを吸う頻度を徐々に減らしながら、2、3カ月吸った結果、人生初の完全禁煙に成功しました。

ちなみにその2,3か月の間、インターネットを使って、10ぐらいのメーカーの電子タバコを取り寄せて吸い比べましたが、味、たばこ自体の重量、吸い応え、煙(水蒸気)の量など、

 

自分の好みに合うものと合わないものがあるようです。

・・・で、禁煙した結果、どんなことが体に起こったかというと、最初は吸いたさもあって、イライラ感が強くなりました。

それでも徐々に禁煙生活に慣れてきたら、逆上せ感が以前よりも出てきて、頭に汗を多くかくようになりました。

そして、口内炎が多発しました。

口内炎に関しては、以前から比較的出来やすい体質ではあったんですが、せいぜい2,3カ月に1回ぐらいで、出来てもそれほど痛くなく、

飲食や喋りに影響が出るほどのヒドイ口内炎は滅多に出来ませんでしたが、タバコをやめてからできたやつは、生まれて初めて、

 

舌に出来ました。

 

(これは焦った・・・(^^;))

舌の表や裏に口内炎が出来ると、猛烈に痛くて、食べたり、喋ったりすることすらキツくなります。

しかも以前よりも、一度に出来る数が多く、一度に5つ出来た時は、さすがにキツかったです。(苦笑)

また、「鼻血」が出やすくなりました。

コレも以前からあったんですが、頻度、程度ともに悪化しました。

診療中に出てくることもあって、かなり難儀しました。

そして、禁煙してからたった半年ほどで、体重が5kg以上増えました。

明らかに禁煙と関係のありそうな、禁煙してから急に出始めた症状としては、こんなもんです。

・・・キツイでしょ?

禁煙したくなくなりますか??(笑)

でも長い目で見た場合、やはり禁煙した方がイイのです。

 

続く。

 

 

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乳製品は体にいい?(その2)

2012.08.03

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昨日の記事に、ムスタファさんからご質問いただきましたので、僕なりの回答含め、何回かに分けて、ちょっと補足しようと思います。

乳製品は体にいい? 参照

ちょっと専門用語が出てきたりしてややこしいので、つまんない人は斜め読みして下さい。(笑)

・・・まず、乳製品は冷やす冷やす、と、なぜ東洋医学では言われるのか、という問題からいきます。


コレは、乳製品の過飲が、胃腸に負担をかけるから、結果的に消化力を落とし、他の飲食物の栄養吸収力が下がり、結果的にエネルギーが産生されにくくなったり、

 

老廃物が停滞したりする場合があるから、ということだろうと思います。


少し専門的な話ですが、東洋医学では「四気五味説(しきごみせつ)」と言って、自然界の飲食物を

 

”寒・熱・温・涼”の四気

”酸・苦・甘・辛・鹹”の五味

 

に分けて考える学説があります。

(この学説についても、そのうち解説しましょう。)


あらゆる漢方薬や薬膳などの生薬、食品の配合も、基本的にはこの「四気五味説」に従います。

これで言うと、牛乳は東洋医学では

 

「乳ナイ(女+乃)」

 

と言われ、

 

四気では平(へい・・・つまり、寒熱どちらにも偏っていない)、

五味では甘

 

臓腑では脾胃に主に関わる

 

とされ、

 

潤・降の作用がある

 

ことから、

 

陰虚や血虚、通便に効果あり

 

とされております。

ここだけ聞くと、色々なものに効く、魔法の飲み物のように思えますが、「潤・降」の作用が強いということは、逆に言えば陽気の働き(体を温め、清らかな気を昇らせる)を抑えてしまう側面も持っている、ということです。

つまり専門的には、あくまでもその人のキャパを超えて「過飲すると」の話ですが、牛乳は主に脾の臓の陽気を傷める側面がある、だから結果的に冷えるのだ~!

という論なんだと思います。

脾の臓については「脾」って何ですか?(その9) 参照


ちなみに牛乳については、現代医学的にも、現代栄養学的にも、

 

ガン予防、安眠作用、血圧降下作用、骨粗鬆症予防作用など

 

が謳われていますが、これについて辛辣な反論もある、というのは、前回書いた通りです。


・・・まあただ、「過飲」という量の定義なんて、人によって違い過ぎるので、一概にこの量飲んだらいけません、なんて話は出来ませんし、

一切飲むな、というのも行き過ぎだと、個人的には思います。

そもそも「牛乳を飲む」という食文化が日本に入ってきたのは飛鳥時代以降だそうですが、最初は天皇や皇族のみが利用していたそうです。

一般庶民が飲むようになったのは明治以降、さらに、”アメリカンライフスタイル”なんつって爆発的に普及しまくったのは、戦後の話だそうです。

給食で出るようになったのも、戦後からです。

(・・・ここら辺が、一部の人の思想を大いに刺激して、偏った、感情論的であったり、謀略論的な論調がネットに溢れている一つの要因なんじゃないでしょうか。)

まあ確かに、明治政府や、戦後の日本政府が採用した栄養学の是非論については、僕も興味のあるところで、あれが果たして正しかったのか、

 

相当見直す必要があるのでは?とは思っています。

伝統食の復権』(島田彰夫 東洋経済新報社 2000年)には、

「高脂肪・高タンパクを説くドイツ栄養学を無批判に受け入れた明治日本。

戦後は、アメリカの食糧戦略に基づいた食生活改善運動により、伝統的な食文化は否定され破壊された。

高度経済成長の影響もあり、今や日本は “飽食の時代” を迎えている。」

とあり、この指摘は、参考にする価値が高いと思います。

しかしながら、最近のアレルギーベイビ―の問題であったり、三大成人病の問題を、すべてこれのせい、と短絡的に結論付ける風潮も、

いかがなもんか、と思っていますが。

一番イカンのは、最初に無批判に受け入れたことと、時代が変わっても、それに合わせて変えようとしない姿勢だと思いますが。


・・・話が逸れた、次回に続きます。(笑)

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「胃ろう」の是非

2012.06.28

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今日、こんなニュースが目に止まった。

【胃ろうなど人工栄養中止可能に、医学会が指針】

日本老年医学会(理事長・大内尉義東大教授)は27日、高齢者の終末期における、胃ろうなどの人工的水分・栄養補給について、

導入や中止、差し控えなどを判断する際の指針を決定した。

指針は医療・介護関係者向けに作成されたもので、人工栄養補給を導入する際は、「口からの摂取が可能かどうか十分検討する」などと指摘。

さらに、胃ろうなどの処置で延命が期待できたとしても、本人の意向などにそぐわない場合、複数の医療関係者と本人・家族らが話し合った上で合意すれば差し控えが可能とした。

人工栄養補給を開始した後でも、苦痛を長引かせるだけの状態になった場合などは、再度、話し合って合意すれば、

栄養分の減量や中止もできるとした。

医療側に対しては、患者側が適切な選択ができるよう、情報提供することを求めている。

国内では近年、口から食べられなくなった高齢者に、おなかに小さな穴を開け、管を通して胃に直接、栄養分や水を送る胃ろうが急速に普及。

認知症で、終末期の寝たきりの患者でも、何年も生きられる例が増えた。

一方でそのような延命が必ずしも本人のためになっていない、との声が出ていた。

(6月28日 読売新聞)

・・・だそうです。

皆さんこのニュース、どう思いますか?

僕は大賛成ですねえ。

一度胃ろうを付けてしまったら、本人がどうな状態にあろうが「外す」という行為が許されない、ということが、どんな状況を生むかを、

僕はこれまで何度も実際に見てきました。

「胃ろう」については、以前、実際の事例を示して、チラッと書きました。

「胃」って何ですか? 参照

これ以外にも、思い出せばまだまだあります。

口内で咀嚼し、嚥下された飲食物を胃腸で消化吸収する、自然の恵みを、同化し、異化し、身体の正常な状態を保つ、というのは、我々にとって、日々当たり前の営みです。

この営みが出来なくなっても、生きている、という状態を、果たして「生きている」と言っていいのだろうか、という議論は、以前からあります。

僕は20歳の頃、往診に行き、まったく何の意思の疎通も出来ない、体は手も足もカチコチに拘縮し、麻痺している恍惚の老人が、胃ろうだけで生き延びている姿を見て、

 

衝撃を受けたことがあります。


その患者さんは褥瘡(じょくそう・・・床ずれのこと)が出来ても、胃ろうの接合部分にばい菌がついて炎症を起こしても、膿から強烈な悪臭を発しながらも、

 

まったく表情を変えることなく、横たわっていました。

痛いのか、痛くないのかすら、分からない。

口からモノが入らなくなっても、東洋医学でいう「胃の気」を強引に繋ぐことを実現させた、この技術については、もちろん否定しないけれども、

それが本人の望む姿なのか、ご家族の納得する姿なのか、そこはよくよく、考えるべきだと思います。

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同気相求める

2012.05.10

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東洋医学(というか東洋哲学)に、

”同気相求める(どうきあいもとめる)”

という言葉があります。

これは、もともと『易経(えききょう)』という、東洋哲学の大古典にある言葉なんですが、まあ要は、

「自然界って、似たもん同士が集まるよね。」

って話です。

 

(『易経』乾卦「・・同氣相求・・」)


・・・ま、これ、感覚的に分かりやすいですわな。

自然界を見渡せば、犬は犬どうし、ネコはネコどうし、昆虫は昆虫どうし、人間は人間どうし、バンドマンはバンドマンどうし、ヤンキーはヤンキーどうし、

モデルはモデルどうし、政治家は政治家どうし、みんな時に仲良く、時に反目しながら、結局は似たもん同士が集まっておりますね。(笑)

似たり寄ったりの個性を主張し合いながら。

この考え方が、自然の一つの法則として、東洋医学でも採用され、組み込まれております。

どういう風に採用しているかというと、例えば、もともと飲食の不摂生なんかがあり、体の中に余分な水分の多い人は、

自然界の余分な水分の多い時期、つまり雨季にはカラダに「湿邪(しつじゃ)」という余分な水分がより多く生じやすく、

この「湿邪」による体の不調を起こしやすい、またはもともと症状のあった人は悪化しやすい、という風にです。

これを、内の邪気と外の邪気が合わさる、ということで、「内外合邪(ないがいごうじゃ)」な~んて、カッコよく呼んでおります。

要は、体内と体外の”似たもん同士”が集まる、っちゅうワケですな。

まあそういうのは細かい話だけども、自分がパワーダウンしていると、そこにおかしなモノが集まってきます。

そして、結果的にもっとパワーダウンしてしまうことがあります。

自分がパワーアップすれば、どんどんパワーが集まってきます。

「いい気」が集まってきます。

そしてさらにパワーアップしていきます。

コレはどうやら、自然の法則のようです。

パワーダウンのスパイラルに入ってる感じがしたら、まずは体を整えることです。


そういう時、精神的に色々あがいて思索してもがいても、余計ドツボな気がします。

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「血」って何ですか?(その4)

2012.05.05

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これまでのお話・・・


「血(けつ)」って何ですか?
「血」って何ですか?(その2)
「血」って何ですか?(その3)

 

 

続きいきます!

 

◆血が不足すると問題発生

 

これまでの話で、東洋医学における「血」というものは、基本的には「飲食物」が主な原料となり、足らなくなると「腎精」「血」に変化してくれることによって不足がフォローされ、

 

主として「血脈」の中を流れて、全身を隅々まで循環し、必要に応じてカラダを栄養するもの、でした。

 

また、睡眠時など、あまり使われない時は「肝の臓」に蓄えられている、というお話もしました。

 


そして、「血」が循環する際の原動力や律動性には「心の臓」「肺の臓」が、飲食物を消化吸収するためには「脾の臓」「胃の腑」が、


「腎精」から「血」に変化するには「腎の臓」の働きが大きく関わり、「血」の生成、作用は、実に様々な臓腑の働きに支えられているよ、

 

というお話でした。

 

・・・で、今日は、”「血」が不足する”とはどういうことか、を考えてみたいと思います。

 

上記のようなメカニズムで生成される訳ですから、当然、「脾の臓」「胃の腑」に異常があって、飲食物をうまく消化吸収出来なければ、


「血」が生成されにくくなり、不足が起こってきます。

 

それでも、「腎の臓」がしっかりしていて、「腎精」をガッチリ蓄えてくれていれば、不足をフォローできます。

 

また、「肝の臓」「血」がたっぷりと貯蔵されていれば、ここからも不足をフォローすることが出来ます。

 


ですので、”脾胃が弱い=必ず血が不足する”という短絡的な考え方はNGなのです。

 


しかし、脾の臓や胃の腑が弱く、飲食物から「血のもと」を取り込めない、しかも腎の臓も弱っていて、「腎精」による血のフォローが出来ない、

 

なおかつ肝の臓にもあまり貯蔵出来ていない、ということになると、これは”全身的な血の不足”が起こります。

 


まずコレが一つ重要。

 

こうなると、カラダを潤すことが出来なくなるワケですから、いたるところがパサパサになってきます。

 

具体的には皮膚、髪、爪がパサパサ、弱く脆くなり、全身的に血色が悪くなり、唇や舌の色も褪せて白くなってきます。

(コワイネ~)

 

もう一つのパターンとして、「血」の全体量としてはあるんだけど、巡る力が弱い、あるいは何かによって邪魔されてるために、停滞してしまって、

 

必要な部分に届かず、”部分的に”足らなくなるパターンです。

 

皮膚に足らなければ痒みを起こしたり、目に足らなければ眼精疲労を、筋肉に足らなければこむら返りやけいれんなどなど、実に様々な症状を引き起こします。

 

これが、”部分的な血の不足”です。

 

二つ目にはコレが重要です。

 

・・・ちなみにこの、「部分的な血の不足」の原因の一つである、”停滞してしまって、使い物にならん血”のことを東洋医学では「瘀血(おけつ)」と呼んでおります。

 

「瘀血」については、素人の方でも、聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。

 

 


以前、このブログでも紹介しました。

「痰(たん)」「瘀血(おけつ)」について 参照

 


要はこの瘀血が、正常な血の運行を物理的に邪魔して、必要な部分に届かないと、様々な症状が起こす場合があるのです。

 


それ以外にも、肝や心や肺の異常により、「気の停滞」が起こると、血の正常な循環が保てなくなる、というケースもあります。

 

・・・このように、「血の不足」と一口に行っても、東洋医学的にはまずそれが「全身的なのか、部分的なのか」を考え、それらのメカニズムまで考え、対処、治療しております。

 

 

ちなみにちなみに、言うまでもないですが、東洋医学の言う「血の不足(血虚)」と、西洋医学の言う「貧血」とは別物ですので、あしからず。(苦笑)

 

 


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「血」って何ですか?(その2)

2012.05.02

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前回のお話・・・

「血(けつ)」って何ですか?

 


続きいきます!

 

前回の話で、東洋医学における「血」の原料は、

1.飲食物から取り込んだ栄養分

2.腎精(じんせい)

ということが分かりました。

 


1.はまあ分かるとして、2.”腎精”ってのは一体、何なんでしょうか。

 

聞き慣れない言葉ですねえ。

 

これは、以前「腎」って何ですか(その6)や、「腎」って何ですか?(その9)の中で紹介したんですが、記事にある通り、

”腎精”とは、「腎の臓」が蔵する、人間の成長発育~死の過程を正常たらしめている根本的なエネルギーで、

もともとは「気」から出来たものであり、生殖能力にも大きく関わる、人間の正常なカタチ(形体)の基盤

のことであります。

(笑・・・何やらムズい~、でもこれ以上簡単に言えない~)

 


生殖に関わると言っても、当然ながら西洋医学の言う「精子」「卵子」というものとは違いまして、それらを包括した、もっと広い意味を含んだシロモノなのであります。

 

この「腎精」というものが、もし人体の「血」が不足した時には「血」に変化して、不足を補ってくれるんだそうです。

 


面白いこと言いますねえ、東洋医学は・・・。

 

このようにして、人体内の有形物質は、ある物質が足らなければそれに変化することで、一定の恒常性を保つのだ、という訳です。

 

なぜなら、すべてはもともと「気」から成る、という考え方が背景にあるから、こういうことが言えるのです。

 


「血」「精」も、もともとは「気」・・・。

 

 

これを「気一元論」と言います。

 

 


元(みなもと=源)は同じ、だから、一定の条件下で、「血」「精」になったり、「精」「血」になったりすることは、当たり前なのです。

 


なので「精血同源(せいけつどうげん)」という訳ですネ。

 


もちろんこれは我田引水的、牽強付会的な机上の空論でなく、

「実際にその考え方で医療をやってみた結果、患者さんを観察してみた結果、そうとしか考えられないから」

3千年もの間、この立場を堅持し続けているのです。

 

堅持し続けることが出来るのです。

 

なので、現代の医療人である我々が学ぶ価値も、あるのです。

 

 


続く。

 

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