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暈厥(一過性の意識障害)と東洋医学 3

2018.02.16

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前回のお話

 

暈厥(一過性の意識障害)と東洋医学

暈厥(一過性の意識障害)と東洋医学 2   参照

 

 

では続きいきましょう。

 

 

◆暈厥の弁証

 

 

暈厥には、どんな証が考えられるかというと、以下の通り。

 

1.気虚

2.血虚

3.血気上逆

4.肝陽上亢

5.痰濁上擾

6.暑熱

 

『症状による中医診断と治療』には、以上の6つが挙げられています。

 

(成書によっては、多少多かったり、少なかったりする場合があります。)

 

 

1.2.は虚証、3.4.は肝の病変、5.6.は実証です。

 

 

臓腑では「肝の臓」の異常が中心であり、病態に虚実あり、ということですね。

 

 

だから、一口に暈厥とっても、治療法は、倒れたメカニズムによってそれぞれです。

 

 

もし失敗すれば悪化して、深刻な状態になることも考えられます。

 

 

ですので、やはり「的確な診断」が重要です。

 

 

・・・で、こないだの先輩のケースはどれに該当するかな~・・・、と考えていく訳ですが、ここ(成書)に挙げられているのはあくまでもひな形的なパターンの羅列であって、

 

これらが時には複合的に、あるいはここに書かれていないパターンでも、暈厥は起こってきます。

 

 

ですので、あまり上記の弁証分類に縛られ過ぎて、無理やり当てはめて考えるのも、失敗のもとだったりします。

 

(教条主義を排す、ってやつね。)

 

 

また北辰会方式としては、どういった機序(病因病理)で、上記の証による暈厥に至ったのか、の把握が重要でしょう。

 

(これは、予後にも関わるからです。)

 

 

まあ、あくまでも実際の体表所見、当日の患者像を参考に、何が起こったのかを考えるべきだと思います。

 

 

そういったことを十分に鑑みつつ、慎重に考えると、あの日、その先輩は倒れる直前に、ホテルの豪華な食事を、普段よりも多くとり、普段ほとんど飲まない酒(ビール)も多く飲んでいました。

 

(瓶ビール二本ほどかな?)

 

 

この時点で、脾胃に常ならぬ負担を強いていたことは十分に考えられます。

 

(飲食不節→湿困脾土、湿熱中阻、脾失健運、胃失和降などの”病因→病理”が考えられます。)

 

 

しかも朝から早起きし、熱海への移動疲れもあったことと思いますし、研修会ですから、精神的緊張もあったことと思います。

 

(睡眠不足→気虚や血虚、新幹線での長時間同一姿勢、精神的緊張→肝鬱気滞、気滞血瘀などが考えられますね。)

 

 

しかも倒れる直前に、露天風呂にて長湯をしている。

 

 

長風呂では、肉体的緊張は緩み(理気活血疏肝)つつも、あまりに長ければ、疲労(気虚や血虚)は助長される面があります。

 

 

また、冬場の露天風呂ですから、そこで風寒邪を感受した可能性もある。

 

(その場合は気が急激に上逆傾向になります。)

 

 

ただ、横で見ていましたが、湯舟には肩まで浸かっておりましたし、一緒に入っていて、そこまで風も強くなく、冷たい風を受けていた感じはしませんでしたね。

 

(そして、風呂から上がった瞬間、一瞬”左に”フラッとよろめいたのが少し気にはなりました。)

 

 

風呂場での会話にも特に参加しておらず、そこで何か七情が乱れるようなことはなかったのではないかと思います。

 

(これは推測ですが。)

 

 

その後、脱衣所で急に後ろにバターンと倒れた時、すぐさま駆けつけて脈を診ていた先生が、

 

「沈んで細くて堅いけど、力はあります。重按がやや弱いです。」

 

と仰っていました。

 

 

この脈は、その後すぐに意識がついた時、その瞬間に、緩みながら浮いてきたそうです。

 

 

ここで、気虚や血虚の暈厥では、顔面蒼白、脈無力が特徴で、肝の病変や暑熱では顔面紅潮が特徴ですが、顔色としては、土気色、という感じで、蒼白でも紅潮でもなかったですね。

 

 

 

また、血虚で倒れると、目が落ちくぼんで輝きがない、というのが特徴のようですが、倒れた瞬間、目は一点を見つめ、妙にギラっとしていました。

 

 

血気上逆では歯を食いしばるのが特徴ですが、口は開いて、歯は食いしばっていなかったです。

 

 

倒れた時に上腹部を触った先生は、極端に冷えていたと仰っています。

 

 

また、ご本人が意識がついてから、

 

「倒れる寸前に悪心がして、気付いたら倒れていた。」

 

と仰っています。

 

 

舌診は、意識がついてすぐの舌は舌背が紫暗、舌腹は淡白傾向、特に舌下静脈が淡白気味だったようです。

 

(血虚と瘀血の所見が両方出ていますが、血虚が本と診てとれますね)

 

 

これらの情報を総合すると、成書の分類からいけば、5.の痰濁上擾が中心でありつつも、背後に若干、2.の血虚があるのでは??となります。

 

 

さて、これを治療して、今後同じ状況にさらされても、暈厥を起こさない体にするにはどうしたらいいでしょうか。

 

 

 

続く

 

 

 

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(一社)北辰会スタンダードコース東京会場に参加してきました!!

2017.11.28

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11.26日の日曜は、(一社)北辰会スタンダードコース東京会場に参加してきました!!

 

 

今回は午前中は実技訓練

 

「空間診」

 

の指導をさせていただきました。

 

 

私が担当した班はベテランの先生方が多かったですが、やはり各人、癖のようなものがあったり、基本的なことが意外と抜けていたりと、基礎の重要性を痛感しました。

 

 

今回は午前中だけで、ちょっと私用があったので中座させていただきました。<m(__)m>

 

 

しかし、午後イチの小倉千佳先生の講義「飲食」と、松田蓮山先生の講義「男性カルテ解説」に関しては、事前の資料添削やり取りに参加させていただきましたので、

 

内容は把握しております。

 

 

勉強会終了後、清明院スタッフに確認すると、二コマとも、大変分かりやすい講義だったようです。

 

(特に蓮山先生の講義は、なかなか刺激的な内容だったようです。(笑))

 

 

今回、蓮山先生が講義して下さった、「男性カルテ」の内容は極めて重要です。

 

 

これは、男性特有の生理について詳細に説明した「中医男科学」を参考に、北辰会が独自に作成した男性専用カルテです。

 

 

臨床上、非常に重要な内容を教えてくれます。

 

 

これをここまで臨床に落とし込んでいるのは、世界中でも珍しいのではないでしょうか・・・?

 

 

実に貴重な内容だと思います。

 

 

・・・さて、今週末は本部で奇経講義、気合い入れていきます!!(=゚ω゚)ノ

 

 

 

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糖尿病と東洋医学 3

2017.06.10

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これまでのお話

 

糖尿病と東洋医学

糖尿病と東洋医学 2  参照

 

 

◆消渇の病因病機

 

 

上海科学技術出版社『実用中医内科学』によると、消渇の病因病機は以下の通り。

 

1.飲食不節→邪熱→津液を損耗

 

2.情志の失調→鬱火→津液を損耗

 

3.先天的に五臓が虚弱

 

4.房事過多で腎陰を損耗

 

5.温燥の薬物を過服して、津液を損耗

 

の5つが挙げられています。

 

 

総じて、最終的に「津液が減ってしまうこと」に、この病の本質があると考えられてるようです。

 

 

このうち、5.の、薬物に原因のある消渇については、あまり言われていないが、個人的には多いのではないかと思っています。

 

 

よく最近の健康ブームでは

 

「冷えこそ害悪」

 

として、とにかく温めることが重要だと謳い、結果的に盲目的に温性の食品やサプリメントを過服、久服しているケースが多いように思います。

 

 

東洋医学では、冷えにも細かい分類があり、

 

「気の停滞」

 

 

「邪熱の内攻」

 

によって、見かけ上の冷えが起こることを知らないといけません。

 

 

また、1.の飲食にしても、2.の対人ストレスにしても、4.の性生活にしても、現状の間違った生活に、

 

「何かを足す」

 

のではなく、

 

「間引く」「減らす」

 

ことの方が有効な場合があることを知った方が良いと思います。

 

 

さらに、この病気は症状が出て気付いたときにはもう手遅れ、というケースもあり、消渇病になってから慌てたのでは遅い、ということを、よくよく知っておくべきだと思います。

 

 

 

続く

 

 

 

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糖尿病と東洋医学 2

2017.06.09

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前回のお話

 

糖尿病と東洋医学  参照

 

 

◆消渇(しょうかち、しょうかつ)とは

 

 

『実用中医内科学』によれば、

 

飲食の不摂生や情志の失調などにより引き起こされる多飲、多食、多尿、身体消痩、尿に甘味があるなどを特徴とする病証を言う

 

とあります。

 

 

韓国ドラマ『太陽人 イジェマ』で、ジェマが患者の尿を煮詰めて、それを舐めて、甘い味を確認するエグイシーンが出てきますが(苦笑)、

 

こうやって昔の医者は消渇を診断していたんでしょう。

 

 

まあ、消渇はおおよそ、西洋医学の言うところの糖尿病に相当するもの、といっていいと思います。

 

(まったく同一ではないともいますが)

 

 

この「消渇」の歴史は古く、『黄帝内経』の中にすでに「消癉(しょうたん)」という病名で出て来ます。

 

『素問』通評虚実論(28)、『霊枢』邪気蔵府病形(4)、師伝(29)、五変(46)、本蔵(47)です。)

 

 

これは、食欲があるのに徐々に痩せていくようなものを示し、詳しく述べられています。

 

 

以降、漢の時代には「消癉」の患者のカルテが残っていたり、張仲景(150?-219)『金匱要略』には腎、膀胱の病を中心に、肺の病の篇でも「消渇」について述べられていたりと、

 

随分古い時代からこの病気については重く認識されていたようです。

 

 

 

続く

 

 

 

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胃の気の脈診⑥ 胃の気の働きを直接うかがう脈

2017.05.17

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これまでのお話

 

 

胃の気の脈診① 胃の気の脈診とは

胃の気の脈診② 四時陰陽に従う脈

胃の気の脈診③ 名状をもってするに難しき脈

胃の気の脈診④ 有力無力による脈

胃の気の脈診⑤ 一定の恒常性の有無を診る脈        参照

 

 

 

◆胃の気の働きを直接うかがう脈とは

 

 

このブログにも何度も出てきている永田徳本(1513?-1630?)先生

 

「永田徳本」を含む記事 参照

 

 

この先生の『診脈論』という本の中に、

 

「食前食後で、脈が変わっていないものは胃の気なしとする」

 

と説かれています。

 

 

一般に、食事をすると脈は大きく、やや早くなります。

 

 

こういう変化がないものは良くない、と考えます。

 

(因みに個人的には、食事が入ったのに、かえって硬くなるもの、あるいは細く弱く遅くなるものは、非常に良くない、という印象を持っています。)

 

 

運動や入浴でも同じような現象が起こりますが、食事の方がより顕著であると、蓮風先生は教えておられます。

 

 

清明院でも、昔から往診をやっていますので、重症の患者さんと接する機会は非常に多いのですが、最終段階に入った時なんかに、

 

この方法はよく使わせていただいています。

 

 

吸い飲みで水を一口入れて、脈がどう変化するか。

 

 

これで変化しない、あるいは硬くなると、いよいよかな、と分かります。

 

 

まあともかく、飲食して脈が普通の変化をするのが胃の気のしっかりした状態、変化がない、あるいは逆の変化が起こるのは、

 

胃の気の弱っている証拠、と診ます。

 

 

 

続く

 

 

 

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「衛気」って何ですか? その18

2017.02.24

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これまでのお話

 

 

カテゴリ 「衛気」参照

 

 

 

長くなってきましたが、ここらでいったん締めましょう。

 

 

 

◆我々が動かしているのは、本当に衛気か?

 

 

伝統的な東洋医学の理論に基づき、精密に四診合参して弁証論治を行う、北辰会方式の枠組みの中に、

 

「手を翳して」

 

行う体表観察(東洋医学的診察術)のことを

 

「衛気診」

 

と位置付けて採り入れ、その観察結果に基づいて、

 

「鍼を翳して」

 

補瀉(※)を行い、東洋医学的に

 

「治る力を最大化する」

 

治療を行う、という診察術、治療術は今後、北辰会を超えて、鍼灸界のメジャーになるか。

 

(※)補瀉については 補瀉 目次 参照

 

 

 

・・・正直、微妙かも。(苦笑)

 

 

でもまあ、キチッと理解、習得し、方法論の一つとして持っておくと、臨床レベルで武器になることは間違いないと思います。

 

 

あと、もっと位置付けを明確にするなら、実際に

 

「どういう場合に」

 

衛気診と、衛気に対する治療を選択するべきか、という問題において、単純に

 

「小児などの敏感、過敏な患者」

 

という以外の、明確な診断学的な位置付けも必要ですね。

 

 

・・・ということで、まだまだ解決するべき問題は多くあると思います。

 

 

 

 

ところで、我々が動かしているのは、本当に衛気なんでしょうか?

 

 

実際にやってみると、時になぜ、あそこまで大きな変化が起こるのか、という問題については、

 

「衛気」って何ですか? その8

 

にいくつか仮説を挙げましたが、それ以外には何か考えられないか。

 

 

一つには、

 

「人体内外の世界の境界」

 

なんですよね、衛気の層は。

 

 

北辰会方式では、

 

「枢(すう、とぼそ)(※)」

 

つまり腹部や奇経、少陽枢機、少陰枢機を巧みに動かすことによって、一本の鍼で気を大きく動かす、という理論、手法をよく使います。

 

(もちろん、中途半端に配穴のみ真似すれば非常に危険です。)

 

(※)「枢」については 「三陰三陽」という考え方 8 参照

 

 

この考え方からすれば、衛気の層というのは、内外の気の境界線であり、一種の「枢」とも考えられます。

 

 

空気も飲食物も、人体の「外」、気一元論からすれば、外界にある「気」です。

 

 

人間は外界にある「気」を体内(ここでは外界に対して”内界”とでも言いましょう。)に採り込むことでしか生命を維持できません。

 

 

その、外界の外気と、内界の内気のバランスの調整を行うのが衛気の操作なのかもしれない、と考えると、色々と面白いことが妄想できます。(笑)

 

 

・・・まあ、僕ごとき青二才が、ここであまり迷言妄説を吐いても仕方ないので、この妄想は今後、臨床しながら、古典にも照らし合わせつつ、よーく検討していきたいと思います。

 

 

 

気が向いたら続く

 

 

 

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「三陰三陽」という考え方 4

2015.11.16

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これまでのお話

 

「三陰三陽」という考え方 1

「三陰三陽」という考え方 2

「三陰三陽」という考え方 3 参照

 

 


では続きいきます!

 

 

前回は、手の三陰三陽の経絡に関して、若干の考察をしてみました。

 


では、足の三陰三陽はどうでしょうか。

 


足の陰経が関わる臓は肝、脾、腎

 


足の陽経が関わる腑は胆、胃、膀胱です。

 


こちらはいずれも、中焦から下焦に存在するので、手よりも足と関係が深そう、というのは何となく感覚的に分かりやすいですね。

 


そして、肝、脾、腎の三臓はどれも管腔状ではない、ミチッと詰まった実質臓器です。

 

脾は胃と隣接し、胃の働きを助ける臓で、肝は血を蔵し、腎は精を蔵す。

 

ビッチリ中身が詰まっているわけですね。

 

胆、胃、膀胱の三腑も、胆は胆汁(精汁)、膀胱は濁液(尿)、胃は飲食物(水穀)を、一定程度ため込んで、必要に応じて送り出します。

 


単に通過するだけでなく、一定程度ため込む時間がある、という意味では、大腸、小腸、三焦よりも陰的なのです。

 


だから陽である手ではなく陰である足に、その気の反応が現れる、と。

 

次回、さらに突っ込んでいきます。

 

続く

 

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清明院玄関に式神が登場

2015.10.13

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昨日から、清明院の玄関に、私の式神が参上しました。

(さらに…)

患者さんの声(40代男性 痛風により多発する関節炎の痛み)

2014.12.03

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「患者さんの声」をいただきましたので、紹介します。

(さらに…)

「衛気」って何ですか? その8

2014.10.13

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これまでのお話

 


「衛気(えき)」って何ですか? 
「衛気」って何ですか? その2 
「衛気」って何ですか? その3 
「衛気」って何ですか? その4 
「衛気」って何ですか? その5 
「衛気」って何ですか? その6 
「衛気」って何ですか? その7      参照

 

では続きいきます!!

 

ここまで書いてきたことは、

◆衛気の基本的な働き

◆皮膚の西洋医学(解剖学)的構造と機能

◆衛気の「衛」という文字の字解き

◆そこから派生して、「気」という文字の字解き

でした。

 

最近、蓮風先生のブログ『鍼狂人の独り言』でも、最近、”衛気”についての話が出てきていますね。

 

蓮風先生ほどの先生がこれについて語って下さっているのであれば、私ふぜいから何も申し上げることはないのですが、一応ここまでの話をまとめると、

 


1.人体を養い、生命活動を正常たらしめる「気」には、働きによってさまざまな分類があるが、その中の重要なものの一つに「衛気」というものがある。

 


2.「衛気」は、飲食物と、呼吸によって取り込んだ天空の清気とが原料となり、主に「腎の臓」の働きが中心となり、主に下焦において作られる。

 


3.作られた「衛気」は、その字の如く、体表面と、体表面から少し離れた部位とを巡り、城壁の外を守る兵隊のように、様々な外的刺激から人体を守る。

 


4.また、皮脂の分泌や、発汗の調整など、皮膚の生理的な働きも、一部担う。

 

 


ということです。

 


・・・で、臨床的に大事なこととして、「衛気」という一番浅い部分に鍼でアプローチすることで、臓腑など、人体の一番深いところにアプローチできる、という仮説。

 


これ、実際に試してみると、確かにそういう場合が、大いにあるようです。

(ただもちろん、上手に出来れば、の話ですよ。)

 

これはどういう訳かというと、今のところの私見ですが、

まず一つには、人体の一番浅い部分と、一番深い部分は、部位的に「深浅」という陰陽をなしているから、浅い部分の気を動かすことが、そのまま深い部分の気を動かすことに繋がる、

という発想と、

もう一つは、「衛気」を操作するときは、皮膚に触れませんので、患者さんが身構えない(身構えるスキを与えない)ために、

余分な緊張ナシに気を動かすことが出来るので、転んだ時に受け身を取らないとか、ノーガードで死角から殴られたようなもんで、

非常に大きな衝撃(気の動き)を与えることが出来る、

という2点から、非常に大きな気の動きを、深い部分に与えることが出来るんじゃないかな、と愚考しております。


(繰り返しますが、正確な証と病因病理を踏まえて、技術的に的確にやれれば、です。)

 

 

まあしかし、「衛気」の操作を目的とした翳す鍼、皮毛に触れるだけの鍼をやるにしても、必ず的確に弁証し、「補瀉」を明確にし、施術後の脈診所見、舌診所見、

 

その他体表情報の変化等々から、その鍼が確かに効いたのかどうか、明瞭に評価できないのであれば、やるべきでないでしょう。

 

 


・・・また、蓮風先生が繰り返し、強調して書いておられるように、日々の飽くなき鍛練、勉強、その上での確固たる心持ちがあってこそ、

 

そういう治療が出来るのだと思います。

 

これらが揃わないのであれば、単なるカッコつけ、自己満足治療、ということになるでしょう。

 

 


衛気シリーズ、とりあえずここまでで一区切りとします。

 

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