東洋医学 伝統鍼灸 清明院

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「精神的ストレスで悪化、発症する病」について(その2)

2011.07.22

前回のお話・・・

「精神的ストレスで悪化、発症する病」について

続いていきます!


☆なんで「そこに」症状が出たのか。


前回のお話では、精神的ストレスで悪化、発症する病に、東洋医学の言う「肝の臓」が大きく関係している理由を述べました。

今回は、ではなぜ、「そこに」症状が起こったのか、という問題です。


強烈な精神的ストレスがあってから発症、悪化した病も、必ずみんながみんな、同じ病になる訳ではありません。


「肝の臓」に負担がかかったからと言って、それが出る”場所””症状”も一様ではありません。


頭痛になる人、メマイになる人、肩こりになる人、胃痛になる人、坐骨神経痛がひどくなる人などなど、実に様々です。


・・・さあ、これをどう考えるか。


これには、

「もともとのその患者さんの状態(体質素因)」

と、

「どうして、もともとがそうなのか」

に対する理解が重要だと思います。

まー、これを知るために、我々は長い時間をかけて、その患者さんの生活状況、生活環境、体質状況等を、詳しく問診するのです。

つまり、もともと弱点としてあった、その患者さんにとっての

「気の動きが滑らかでない部分」

が、「肝の臓」に負担がかかったことにより、

「さらに気の動きが悪くなった」

結果、今回の症状を発症した、あるいは悪化した、と考え、さらに、

「じゃあどうしてそこが元々気の動きが悪かったのか」

という風に考えていくワケです。


この、「病のメカニズムに対する理解」が正確、精緻であればある程、治療も、患者さんに対する生活指導も、シャープになっていきます。


・・・実はこれが、東洋医学的な診断の重要な部分であり、術者のウデの差が出る部分の大きな一つだと思います。

「肝の臓が悪いんだから、肝の臓を治療できるツボに鍼をすりゃあいいのさ!」

と言っちゃえば、なんかいかにも簡単だけど、

「肝の臓を治療できるツボって、いっぱいあるけど、どこにどういう鍼をするの?それはどうして?お灸はどうしてしないの?」

とかっていう、誰もが疑問に思う、細かい問題の解決は、

「この病気がどういうメカニズムで発生し、そこにどういう風に肝の臓が関わって、今回の症状が出るに至ったのか。」

が分かってなければ、適切さを欠きます。


そして当然それは、”治療効果”に反映されてきます。


ぼんやりと病を理解し、治療してたら、治療効果もぼんやりです。

ピンボケします。

シャープに病を理解して治療してたら、治療効果もシャープです。

(基本的には。)

しかし、実はまだ問題は残ります・・・が、言い出すとどんどん難しくなっていっちゃうので、とりあえずこれでおしまい。

 


気が向いたら続きを書こうと思います。(笑)

 

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「偏差」の恐ろしさ

2011.03.09

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東洋医学の内容というのは、鍼灸、漢方だけでなく、気功、養生などなど、実は非常に多岐にわたるワケですが、その中の「気功」の言葉で

 

「偏差(へんさ)」という言葉があります。

・・・これ、一体なんでしょうか?聞き慣れませんよね?

以前、このブログにおいて、「メンケン」という言葉を紹介しました。

「メンケン」って何ですか? 参照

鍼灸におけるこの「メンケン」という言葉と、気功における「偏差」という言葉が、たまに混同されがちなんですが、これは違います。

「偏差」というのは、間違った方法で気功やヨガの呼吸法や瞑想法などをやった場合に現れる、”明らかな悪化”を指して言うようです。

日本では、気功やヨガ教室を開くのに、特に国家資格も必要なく、中にはブームに乗せただけの生半可な知識、経験で教室を開いている指導者も少なくないと聞きます。


運悪く、こうした指導者についてしまい、間違ったやり方をすると、「偏差」というものに見舞われることがありえるでしょう。

具体的によく出る症状としては、

1.めまい、頭痛、頭が重い。

2.胸苦しさ、胸痛、両脇痛。

3.腹部膨満、腹筋のだるさ。

4.動悸。

5.腰、背中が凝っていて痛む。

6.体の冷え。

7.丹田(下腹部)の過熱、身体の過熱、口が渇く。

8.身体が揺れ動く。

9.疲労感。

10.不眠。

・・・などなど、実に多岐に渡るようです。

 


また、上記に挙げたようなものは気功教室などで、簡単な呼吸法などを誤ったやり方でやった場合に起こりやすい症状ですが、もっと本格的な、

 

修行や武術のレベルになってくると、上記のような症状では済まず、狂乱状態や精神錯乱など、極めて重篤な症状となる可能性もあるようです。

 

 

専門的には「四大偏差」といって、

 

1.内気不止(ないきやまらず):体内を流動する気が停滞し、改善しない状態

2.外動不已(がいどうやまず):体が揺れ動いて止まらない

3.走火(そうか):意念。呼吸法が強すぎて陽亢症状が出る

4.入魔(にゅうま):稀であるが、気功中に幻覚が見えて、酷いと精神錯乱や狂躁状態。

 

この4つには十二分に注意しなければならない、とされています。

 


この「偏差」の軽いもので、僕が個人的に問題だと思うのが、”道具”に頼っている場合です。

 

 

例えばブレスレットや指輪、ネックレスなどで、やれ「気の巡りをよくする」とか、「チャクラを開発」だのとうたった商品が後を絶たず、

患者さんがそれを信じて、常に身につけることによって軽い「偏差」的な異常が生じている場合があります。

 


この場合、鍼をすることによって症状が改善しても、そのアクセサリーを付けたら再び症状が戻ってしまうことがあります。

 

 

これはなにも、気の巡りをよくするという意味ではなく、ファッションで身に付けている物でもあり得ます。

 


気を付けなければなりません。

 

・・・まだ書きたいことはあるんですが、長ったらしくなっちゃったんで、今日はこの辺で。(苦笑)

 

【参考文献】

 

馬済人 著 『中国気功学』 東洋学術出版社

 

 

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「大腸」って何ですか?(その6)

2010.10.14

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前回までのお話・・・


「肺」って何ですか?(その12)

「大腸」って何ですか?
「大腸」って何ですか?(その2)
「大腸」って何ですか?(その3)
「大腸」って何ですか?(その4)
「大腸」って何ですか?(その5)

 

ぼつぼつ、「大腸の腑」に関する解説は終わりにしようかな、と思います。

 


・・・まあ、簡単にまとめると、東洋医学の言う「大腸の腑」というものは、

 

・上から送られてきた飲食物の残り物の、最後の通り道で、

・「肺の臓」や「脾の臓」や「腎の臓」などに働きを助けられながら、

・最終的な「使えるもの」を体の中に取り込み、

・大便をトイレにスムーズに伝え導く

というのが主な働きであり、その「大腸の腑」と最も関わりの深い「経絡(気の通り道)」は、

・手の人差し指、手首、肘、肩、首、顔面、鼻、目、額

なんかに深く関わるよ、ということです。

 


だから「大腸の腑の病」と言っても、東洋医学では決して下痢や便秘だけではなく、

 

テニス肘や五十肩、肩コリや頭痛、目の疲れや鼻炎などなど、

 

あらゆる病気が考えられるよ、というお話でした。

 

 


・・・ここで番外編を一つ。

 


☆「便が緑色!?」

 


患者さんからたま―に、

「先生、最近、野菜を食べてもいないのに、緑色の便が出るんですけど、どういうことでしょうか?」

と聞かれることがあります。

 

この、「緑色便(りょくしょくべん)」というものについて、西洋医学では、胆汁に含まれるビリルビン(赤血球の分解代謝産物)が、腸内の消化不良によって酸化し、

緑色の色素をもつビリベルジンに変化することによって起こるもので、多くは一過性であり問題ないが、まれに急性腸炎や食中毒で起こることもあり、云々・・・

などと説明します。

 


まあ要するに、単純に胃腸が弱っている場合か、あるいは胆汁が出過ぎている場合を示す、と考える訳です。

(あー、なんか久々に西洋医学の話したわ―。(笑))

 


東洋医学では、多くの場合、こういう患者さんを観察すると、「肝の臓」「脾の臓」に異常を示していることが多く、そこを治療することによって改善することが多いように思います。

 

つまりたいがいは、余分な神経の使い過ぎから胃腸を弱らせたり、暴飲暴食から消化機能を高ぶらせ過ぎた結果です。

 


他にも、大便の異常では、

「白い便」

「黒い便」

「タールのような便」

「スカスカの便」

「未消化のものが混じった便」

「粘液のような便」

「血が混じった便」

「カチカチの便」

「最初カチカチで、あとは軟便」

などなど、があります。

(経験ある人も多いのでは?)

 


・・・まあこのように、一つ一つ言っていくとキリがないんですが、大便の異常というのは、東西の医学に関わらず、重要な意味(診断意義)を持つことが多く、

 

診断上、非常に参考になりますので、恥ずかしくても、ぜひご相談いただきたいと思います。

 

 

こういう、便の種類によってどう診断するか、という話も、そのうち書きたいですね。

 


ちなみに、「いい便」というのは、

茶色くてバナナ状で、密度が高く、ズシっとトイレの水に沈み、便器にこびりつかない

ような便です。

 

(これは『アレルギーは鍼で治す!』を参考にしていますが、密にいえば、その人の食生活によって変わってきますので、一概に言えないですけどね。)

 


いつも便に異常を感じている人は、生活全体を見直し、毎日このような「大きな便り」に出会う日々を目指さなくてはなりません。

 

 


以上で「大腸の腑」シリーズ、いったん終わり。

 


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「胃」って何ですか?(その5)

2010.07.28

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これまでのお話・・・

「胃」って何ですか?
「胃」って何ですか?(その2)
「胃」って何ですか?(その3)
「胃」って何ですか?(その4)

 

・・・けっこう空いちゃいましたが、「胃」のお話、続けていきましょう。

 



☆脾は上げ、胃は下げる(続編)

 

 

「脾の臓」というのは、飲食物から取り出した「気血のもと」を、上焦(胸部から上の部分)に持ち上げます。

 


そこから後の流れについては、「肺」を解説する時に書こうと思います。

 


「胃の腑」というのは、飲食物から脾の臓が「気血のもと」を取り出したあとの”残りモノ”を、下焦(胃よりも下の部分)に送っていきます。

 


すなわち「小腸の腑」「大腸の腑」へと、下に下にと、送っていく訳です。

 


小腸、大腸にて何が行われるかは、それらを解説する時に述べましょう。

 


つまり、脾は「持ち上げる力」があり、胃には「下げる力」が生理的に備わっている、と、東洋医学では考えます。

 


そしてこれはなにも飲食物を消化する時にのみ働く力、と考えるのではなく、全身を巡る「気血」の、上下のうごきをバランス調整している、とも考えられます。

 


いわば脾胃は「人体」という小宇宙における「昇降のバランサー」なのです。

(笑・・・カッチョイー!)

 


なので、「脾の臓」が弱ると、消化器症状のみならず、気血がうまく上焦に上らないため、立ちあがった時にめまいがしたり、脱肛や脱腸、子宮脱や胃下垂などの内臓下垂になったりすることがあります。

 


同じように「胃の腑」が弱ると、うまく気血を下げられないために吐き気やおう吐、頭痛などが起こることがあります。

 

 

このようにして東洋医学では、「脾」と「胃」を、働きの上から「脾胃」、「脾胃」と呼んで同一視しながらも、実際に変調が起こった時は「脾」なのか「胃」なのかを明確にして治療します。

 


「脾」が悪い時と「胃」が悪い時では治療のやり方が違ってきます。

 

 

症状も違います。

 

 

東洋医学的な所見も違います。

 


こういったことを明確にしないままに治療しても、なかなかうまくいきません。

 


「弁証論治」の重要性ですな。

 


・・・人体を上焦、中焦、下焦と3つに分けると、そのど真ん中となる「中焦」にデ~ンと存在し、気血の上下、「昇」と「降」をつかさどる脾胃・・・。

 


昇るべきものを昇らせ、降るべきものを降す、脾胃はまさに、「生命活動の中心」なのであります。

 

 


次回に続く

 

 

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クーラーで冷えると・・・

2010.06.26

今日は朝一から猛烈に忙しかったです!(感謝)

 

狭い清明院の中を、1日中かけずり回っておりました(笑)

 

さて、今日の患者さん達を診ていて気がついたのですが、やはりこの時期、

「クーラーをつけっぱなしにして寝ちゃってから調子が悪いです。」

という訴えの多いこと多いこと!

 

・・・これ、単純になぜでしょうか?

 

 

なんで、クーラーつけっぱなしにして寝ると調子悪くなるんでしょうか?

 

 

そりゃ冷えるからに決まってんじゃん!・・・という声が聞こえてきそうですが、じゃあ患者さんの訴えが人によってバラバラなのはどうしてでしょう?

 

必ずしもカゼみたいな症状が出る人ばかりじゃなくて、神経痛が出る人、頭痛が出る人、痒みが出る人、怒りっぽくなる人などなど、

 

「クーラーによる冷え」

 

の後から出てくる症状は、メチャメチャ多岐にわたります。

 

・・・今日は、これがどうしてか、考えてみたいと思います。

 

本日は6月26日、この時期は24節気で言うと「夏至(げし)」に入って5日目であります。

 

この「夏至」とは、1年で一番日が長く、とても暑い時期、ということになっています。

 

 

ただ日本ではこの時期は梅雨であり、あまりこのことが実感されることは少ないようですが、いずれにしても自然界の”陽”の気が非常に高まる時期であります。

 

我々人間も動物ですので、自然界が陽に傾けば、人体も陽に傾きながらバランスを取るのが自然な、本来の姿です。

 

ですから、この時期は体の中には陽気が盛んになって、活動的で元気になってきます。

 

 

そしてたくさん汗もかきます。

 

 

陽気が盛んになる、ということは、ある意味「生理的に」「生理的な」熱を持つ、と言ってもいいと思います。

 

 

だから、たくさん汗を出して、その熱が体に籠らないように発散しようとしている訳です。

 

 

これを、クーラーで体の表面を冷やし、玄府(げんぷ=汗腺)の動きを鈍らせ、皮毛を閉じ、生理的な発汗を無理に止めてしまうと、マズイことが起こります。

 

 

要は、体に「余分な熱」が籠るのです。

 

 

具体的な症状としては、咽が異常に渇いたり、食欲が極端に亢進したり、便秘したりします。

 

 

そして、口渇や食欲など、その欲求にまかせてどんどん暴飲暴食してしまうと、もっとひどくなって、しまいには便秘したりします。

 

 

あるいは徐々に徐々に食欲が落ちてきて、ヤル気がない、元気がない、本来活動的になるべき陽気の盛んな時期なのに、いわゆる「夏バテ」状態になります。

 

 

また、局所的に冷やされた部位の血行が極端に悪くなり、そこに痛みやしびれが出たりします。

 

・・・ここまで書いたところで、支部役員前日勉強会のお時間になってしまいましたので(笑)、続きは次回に・・・。

 

参考 Wikipedia 二十四節気

 

 

 

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「泣く」とはどういうことか(その3)

2010.04.12

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これまでのお話・・

「泣く」とはどういうことか(その1)
「泣く」とはどういうことか(その2)


今日は、「感極まる」「感情が高ぶる」ということと、「肝」という臓がどう関わるか、というお話をしようかな、と思います。

 


以前、東洋医学においては、五臓と感情は関係が深い、というお話をチラッとしました。

(カテゴリ「七情について」の8つのお話参照)

 


その中で、「肝」という臓は「怒り」という感情と関係が深い、というお話をしました。

 


しかし、「泣く」という現象は、なにも「怒り」だけで起こってくる訳ではありませんよね?

 


うれしくて泣く、悲しくて泣く、恐くて泣く等々、「泣く」という行動に移るまでの感情は、実に様々です。

 


しかも単純に、目に対する物理的な刺激でも、涙が出ることはあります。

 


それなのに、なんで「泣く」ことと「肝」の関係が深いかというと、感情の過不足、というものは、つまるところ「気の正常な流れ」を障害するからです。

 


つまり、怒れば気が上がり、喜べば気が緩み、思い患えば気が結び、悲しめば気が消え、恐れれば気が下がる訳です。

(カテゴリ七情について参照)

 


そんで、感情の過不足によって乱れた、これ(気の極端な動き)を正常な状態に戻す、主たる臓こそが「肝」なのです。

 


ですので、この感情の過不足がきつければきついほど、「肝」の仕事は多くなります。

 


頑張らなくてはいけなくなります。

 


こうしたことから、「肝」は五臓の中では、

「将軍の官(しょうぐんのかん)」

とも言われ、外的な刺激(精神的、肉体的両面)に対しての対応を担い、適切な対処を考える臓、と位置付けられています。

 


この時、この働きがスムーズに、速やかに発揮出来れば、「泣く」という現象は起こりません。

 

(いわゆる感極まった状態になることはないわけですね)

 


しかしこれが「肝」にとって許容範囲を超えた、大きな負担になるほどの感情の過不足だと、肝の働きが阻害されます。

 


この病理的状態を、東洋医学では「肝欝気滞(かんうつきたい)」と言います。

 


これが長引いたり、あるいは短期的であっても急激に起こったりすると、「気鬱化火(きうつかか)」という状況が起こります。

(なぜ、そうなるのかという細かい話は、話が逸れるので割愛します。)

 


この「気鬱化火」という病理現象が起こると、気は一気に体の「上」に向かいます。

 


つまり、体の「上」「気」が急激に渋滞する訳です。

 


これが「目」で起こると、目は充血(血も渋滞した状態)して真っ赤になり、熱(鬱熱といいます)を持ちます。

 


これだけで終わったら、すぐに「目」がカラカラに乾いて、干からびて失明しちゃいますので、何とかこれを冷やそうと、「肝」やそれ以外の臓腑が協調して、

 

体の中の正常な「水(津液と言います)」が目に「急激に」集まってきます。

 


そして余剰な分が溢れて、目からその水が流れる、これが東洋医学的な「涙(るい)」です。

 


ちなみに、目で起こらない場合でも、この病理(気鬱化火)の場合は、頭痛であったり、肩こりであったり、必ず「上」で症状が起こってきます。


(感情が極まっても、泣く人ばっかじゃないもんね)

 

では物理的な刺激で涙が出るのはどうしてか、次回はそのお話。

 

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鍼灸には保険が効かない!?(その4)

2010.03.25

これまでのお話


鍼灸には保険が効かない!?(その1)

鍼灸には保険が効かない!?(その2)
鍼灸には保険がきかない!?(その3)

 


前回まで、

「その1」では鍼灸の保険制度の現状、

「その2」では国民皆保険制度の日本における歴史的な成り立ち、

「その3」では鍼の有効性の「政治的」アピールの難しさ

を、お話ししました。

 


今回は、鍼の現代医学的な研究のお話をしたいと思います。

 


前回までの話の流れでは、東洋医学的な鍼灸の有効性は、たとえ科学的に解明されていなくても、結果を集積して「数」でもって、統計的手法でならアピールできるけど、

日本では患者さんの絶対数が少ないから、西洋医学のデータに比べて相対的に評価が低くなりやすいであろう、という話をしました。

 


では「鍼がなぜ効くのか?」ということ(メカニズム)が「現代科学的」に証明できれば、誰もが認めてくれるんじゃないかな、という考え方も当然出来ます。

(まあなんて言うか、上手くいくとか、臨床現場で有効かとか、そういう問題はとりあえず抜きにした、「鍼の現代科学化」ですな。)

 


これはつまり・・・、

 


鍼が皮膚をやぶって神経を刺激する
   ↓
〇〇という皮下にある受容体が反応する
   ↓
脳や脊髄、あるいは末梢のレベルに「神経」を介してその信号が伝わり、〇〇というリアクションが起こる
   ↓
その結果、どこどこに〇〇という変化が起こるのだー!

 


・・・という風に、要は現代の解剖生理学(とりわけ神経生理学)的に明確に説明がつけば、医療界の誰もが納得して下さるんじゃないかな、と何となく思いますよね?

 


僕個人的には、こういう分野の研究をなさっている先生方にも何人か仲よくさせていただいている先生がおります。

 


そういう先生方の話を聞くに、そういう研究の現場の先生達の日夜の努力たるや、大変なものです。

 


・・・でも残念ながら、なかなか証明がつかない、特に〇〇という「経穴」に鍼を打ったら「必ず(あるいは高い確率で)」〇〇という変化が起こる、

 

というところの証明が難しい、というか出来にくい、というのが現状のようです。

 


しかし、そういう先生方とも、哲学は違えど、僕は反目はしません。

 


てゆーかしたくありません。たとえ方法論は違えども、鍼のために一生懸命になってる人を否定したくないんです。

 


あまりにも仲間が少ないんでネ・・・。

 


でもこれが結局、「変な住み分け」に繋がっちゃうのかもしれないんだけどね。

 


ただ!ただですねえ、巷によくある、「生理痛には〇〇(経穴名)!」とか、「偏頭痛には〇〇!」・・・とか、あたかも何でもいいからそこを刺激すれば間違いなく病気が治る、

 

みたいな表現をしている書籍なんかをみると、腹が立つを通り越して悲しくなります。

 


だってそんな訳ないじゃないすか!?

 


勘違いする患者さん、山ほどいますよ・・・?

 

 

真面目な臨床家や研究者の苦労も知らずに・・・、ムキィーーー!!!となります。(苦笑)

 


まあ、そういうものに対してあまりアツくなっても仕方ないので、僕自身の臨床とは考え方からアプローチから、まったく違ったとしても、

「どうにか鍼の凄さを分かってもらいたい」

という先生方とは、方法論の違いのみで、思いは一つであります。

(まあ研究者の中には鍼の発展なんかどうでもよくて、ただ単純に興味があるだけ、というクールな人もいますけどね(笑))

 


ということで、現状では、「鍼灸がなぜ効くかを現代科学的に解明する」という方法論も、なかなか進んでいない、というところらしいです。

 


まあでも、何もしないよりも、色んな考え方で、色んな方面からの、「確かな」アプローチをする、ということの「継続」が大事じゃないかな、

 

と、個人的には思っています。

 


・・・なんだか結論みたいな感じになってしまいましたが、まだあります。

 


(もう少し続く)

 

 

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「痛み」と「鍼灸」

2010.02.20

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今日は、「痛み」について考えてみたいと思います。

 


清明院にも、「痛み」を訴えてやってくる患者さんが多くいます。

 


頭痛、腰痛、生理痛、ひざ痛などなど、例を挙げ出したらキリがありません。

 


この「痛み」というものに対して、東洋医学ではどのように考えているのかというと、


1.「痛み」がある部分を流れる気が滞っている

2.「痛み」がある部分の気がうつろで、その部分に栄養がいかない

3.「痛み」を認識する仕組みそのものの異常


大まかに言うと、以上の3つと考えます。

 


大体は1.と2.でカタがつきますが、どうにもならない場合、あるいは1.2.の必要条件に当てはまらない「痛み」の場合に、3.を疑います。

 


1.の場合は「滞った気」をうまく流してやればいいし、

2.の場合は「気のうつろな部分」「気」がうまく集まり巡るように仕向けてあげればいい訳です。

3.の場合はやっかいで、これには色々なやり方があります。

 


「エ?なにそんなに簡単な分類なの!?東洋医学における痛みって・・。」


と思う人もいらっしゃるかもしれませんが、上に挙げたのは細かく診ていった先にある、最終結論部分ですので、1.~3.のどれに属するかを確定するまでには、

 

ホントは長い道のり(各種診察)があります。(苦笑)

 


要は、1.~3.がなぜ起こっているのか、どういうメカニズムか、が分かれば、その病気を理解することが出来て、治療したり、今後の変化を予測したり、

 

仮に治療途中で悪化したとしても、それがどういう意味を持っているのかが分かります。

 


こういう、「痛み」というものの、「東洋医学的な病態」をキチッと把握することが、我々にとって、非常に重要です。

 


また、上記の例の中の3.は、実は大変面白い内容を含んでおります。

 


(笑・・・そのうち書こうかな。。)

 

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「怒」について

2010.01.30

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日常で、「怒」という感情を感じること、ありますよね??

ちなみに僕はほぼ毎日あります(苦笑)

・・・ただ、大事なのは、不愉快なことがあった時にこの「怒」という感情を感じること自体はまったく普通(当たり前)のことであり、

いたって健康的なことです。

これが過度になったり、変に我慢したりすると体に悪影響が出る、と東洋医学では指摘しています。

よく「怒」という感情を感じた時、「頭に来る」とか、「てっぺんに来る」とか、あるいは「怒髪天を衝く」なんて言い方、ありますよね。

これは要するに、体の上部に「気」が集まる、つまり上半身、頭部にのぼせる、ということを言っております。

 

こういった記載は、『黄帝内経』の中にも出てきます。

 

【参考】

『素問 挙痛論(39)』「・・怒則氣上・・」「・・怒則氣逆・・」

『霊枢 邪気蔵府病形(4)』「・・若有所大怒.氣上而不下.・・」

『霊枢 五変(46)』「・・怒則氣上逆.・・」、)

だから怒ってばかりいる人は「気」が頭部で渋滞を起こした結果、頭部の血行が悪くなって、鬱滞して鬱熱を生じ、結果的にハゲやすいんです。

(苦笑・・これは半分冗談、半分本気です。)


また、東洋医学には、

「怒は肝(かん)をやぶる」

という言葉があります。

 

『黄帝内経素問 陰陽応象大論(5)』です。)

面白いですね。感情の種類によって、ダメージを受ける部分が違う、という考え方は、現代の最先端の脳科学にも通じるものがあるそうです。


とはいえ、まあいつも言いますが、ここで注意しなくてはいけないのは、東洋医学の「肝の臓」と、西洋医学の「肝臓=liver」は別物だ、ということです。

 ☞ 「五臓六腑(ごぞうろっぷ)」って何ですか?   参照

 

ですので、怒ってばっかりいる人が西洋医学的に肝炎や肝硬変になりやすい、という訳では無いです。

 

 

東洋医学の言う「肝の臓」の病変を発症しやすい、ということです。

 


この場合、東洋医学の言う「肝」の色々な機能のうち、特に

「全身にバランスよく気血を巡らせる働き(中医学のいう”疏泄(そせつ)”の働き)」

が低下し、頭痛やめまいなどなど、上半身を中心に、全身の様々な症状が出てくることが多いように思います。

毎日患者さんを診ていますと、この「肝の臓」の異常によって症状を出している患者さんが、非常に多いです。

 

(ほとんどと言ってもいいと思います。)

現代人は、怒り過ぎ、あるいは我慢しすぎなんでしょうかね・・。(苦笑)

愉快なことがあれば、その分不愉快なこともある、これは当り前の話です。

それに対して「普通に」怒れる日々を送りたいですね。

(・・・コレがなかなか難しいんだけどネ(笑))

次回は「喜」についてです。

 

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患者さんの言葉(生きる力)

2009.12.15

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先日、とある患者さんのお母様から、何気ない会話の中で嬉しいことを言われました。

母「先生の治療を受けるようになって、娘が見違えるように元気になりました!」

竹「あー、それは良かったですねー。」

母「こないだ娘がね、

「お母さん、なんか最近生きる気がしてきた!」

って私に言うんですよ~。ありがとうございます~。」

竹「・・・(一瞬沈黙)ああ~、それはいいことですね~!(笑)」

この会話の赤字部分に、僕はけっこう本気で感動しました。

 

 

面白いもので、対象者(この場合、患者さんご本人)から言われるよりも、第3者から言われる方が、人間の感情を揺さぶる効果は高いですね。

 


これがなぜ効果的なのか、という問題は今度語ることにして、たとえ癌とかアトピーとか、それ以外のいわゆる「難病」じゃなくても、病院で病名もつかず、

 

「ストレスでしょう」

 

とだけ言われ、様々な辛い症状を治らないまま抱えておられる患者さんにとっては、毎日がまさに生き地獄だったりします。

 


仕事もつまんない、友達もいない、恋人もいない、家族ともうまくいかない、体のあちこちに色々な症状がある・・・

「いったい私はなんで生きているんだろう・・・。」

とか、

「これから何を目標にして生きていったらいいんだろう・・・。」

とか、色々と悩み、しまいには、

「どうしたらここから逃げれるんだー!」

とか、

「何かにすがりたい―!」

とか、クヨクヨ、ウジウジと弱腰に考えてしまって、余計に悪循環に陥ってしまい、暗い日々を送っておられる患者さんを、多く見かけます。

 


そういう患者さんの多くを笑顔に変えることが、「鍼」には出来ると思います。

 


当然ですが、鍼にすがりゃあオールオーケーという意味ではないですよ。

 

 

誤解なきように!

 


自助努力が大切なのは言うまでもないです。

 

 

鍼は魔法ではなく、患者さん自身の「治る力」を手助けする大変優れたツールだ、ということです。

 


なぜそういうことが出来るかと言うと、東洋医学っていうのは、人間の「精神面も含めた」「全体的な」アンバランスを診る、正す、という観点を絶対にはずさないからなんだと思います。

 


ということは、人間の「心」と「体」も、分けて考えないんです。

 


西洋医学では心は心療内科、体は内科や外科、ですよね?

 


東洋医学では心と体を分解して考える、という考え方自体がそもそもありません。

 


専門的に言うと分ける考え方もありますが、それは便宜上分けてるだけで、結局は一つのもの、という考え方が貫かれています。

 


それを「心身一如(しんしんいちにょ)」と言います。

 

「心身一如」自体はもともと禅の言葉)

 

体の治療即心の治療、心の治療即体の治療、という考えのもとに成り立った医学であるため、この医学に基づいて「治療」を施すと、体の症状が良くなるにつれて心も穏やかになってくる、

 

前向きになってくる、という現象がしばしば起こります。

 


心の問題以外にも、肩こりの治療をしてたら胃痛が治った、とか、頭痛の治療してたら生理痛も治った、とか、東洋医学には副産物がたくさん付いてきます(笑)

 

 

副作用どころか副効果、です。

 


それで、上記のような言葉につながる訳です。

「人生を変える一本の鍼」

・・・これって、素晴らしいことだと思いません??

 


いや~しかし、冒頭の赤字部分の言葉、あとからじわじわ来ます(笑)

 


東洋医学は、鍼はほんとにスゴイです。今日も明日も明後日も、鍼が出来る、させていただける、ということを、誇りに思います。

 

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