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2017.05.10
↑↑落雷現場。恐ろしいですね。( ゚Д゚)
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先日、学生さんから質問をいただいたので、ちょっとまとめておきます。
◆胃の気の脈診とは
北辰会方式では「胃の気の脈診」という脈診法を行います。
これは、明代の名医、張景岳の言う「弦急脈」という考え方を、北辰会の藤本蓮風先生が、鍼灸臨床家の立場から再解釈し、
我々鍼灸師の臨床に使いやすいように新たに編み出した脈診法です。
東洋医学で「胃の気」という時は、基本的に「生命力そのもの」を指します。
北辰会方式では主にこの脈診法で、患者さんの胃の気(生命力)が活発なのか、そうでないのか(衰え気味なのか)を見極めています。
病気というのは、要は胃の気(生命力)が活発、旺盛でない状態。
治療が上手くいくと、胃の気が活発、旺盛になる。
それを見極めるのが「胃の気の脈診」です。
胃の気が活発、旺盛な脈には、色々な現れ方があるのですが、その中の一つに、「四時陰陽に従う脈」というものがあります。
これは、「春夏秋冬」の四季の流れが、脈にきちんと反映されているかどうかを見極める脈診法です。
長くなったんで続く。。
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2017.04.06
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昨日から、東洋鍼灸専門学校での講義が始まりました!
今年度の学生さんも、なかなか熱心で、たくさんの質問をいただきまして、嬉しかったです。
色々な質問がありましたが、印象的だったのは、
「先生は、治療を断ることはありますか?」
という質問。
このブログで何度も書いていますように、東洋医学というのは、気を動かし、陰陽バランスを整える(治る力を最大化する)、結果的に病気が治る、
治る力が増す、ということを説いた医学です。
それを「鍼灸」でやる、というのが東洋医学的な、伝統的な鍼灸治療、ということになります。
毎日毎日、ひたすらそれをやらせていただいているのが、「清明院」という施設です。
「気を動かして、鍼灸をする前よりは、陰陽バランスを整える」
ということ自体は、どんな重症であれ、すべての症例において、理論上は可能です。
ただしかし、もちろんそれですべてが治せるという訳ではないです。
例えば、毎日、あるいは1日何回も、鍼灸治療が出来れば治せるかもしれない症例でも、経済的、物理的な問題で、月に数回しか診せに来れない、
といった場合、陰陽バランスを調整する力、鍼の力が病の勢いに追い付かない場合もあります。
臨床家は結果責任ですから、そういうものについては、悔しいけど「治せない」ということになります。
そういう場合なんかに、専門病院などに「紹介状」を書いてその患者さんを送る、ということをやる場合があります、と答えると、学生から、
「え!?鍼灸師が紹介状を書いていいんですか?」
「病院は受け取ってくれるんですか?」
という質問が出て、度肝抜かれました。。。( ゚Д゚)
いやいや、いいに決まってるっしょ。(苦笑)
逆に、何でダメなの?
治らないからって、相談されてんのにほったらかしにするのは無責任でしょ。
(因みに、自己判断で、全く無断で来なくなってしまった患者さんについては論外ですよ。これはフォローできません。)
清明院も、大変な重症難病に関わらせていただくことが多い関係上、これまで、何枚も紹介状を書いています。
まあ、相手が大学病院や総合病院で、いわゆる「保険医療機関」からの紹介状しか受け付けていないところだったり、そもそも鍼灸や東洋医学に否定的なドクターだったら、
紹介状を受け取らない、というケースもあり得るかもしれません。
(大変嘆かわしく、残念なことですけどね。。。)
しかし、普通の良心的なドクターであれば、大変丁寧な文面のお礼状とか、診療情報提供書を返送してくれます。
これまでに実際にあったケースとして、総合病院などで、病院の窓口としては「保険医療機関」以外からの紹介状は受け取りNGであっても、
ドクターのご配慮によって、診察の際に直接ドクターに手渡す形でお渡しし、その後、ご丁寧な返信を下さった、というケースがありました。
鍼灸師は国家資格。
公的に認められた、医療技術職です。
鍼灸師は医業類似行為者だから医療じゃないとか、医療に関わっちゃいけないとか、鍼灸師の側が、変に自虐的な認識を持つのは、患者さんの不利益に繋がると思います。
誇りと自覚をもって、やれる最大限のことをしましょう。
(もちろんキチッとした学術を身に付けた上で、ね。)
こういう認識の学生さんが居る以上、学校教育の中で、「紹介状の書き方」という授業があってもいいんじゃないかと思いますねえ。
東京衛生学園の臨床教育専攻科(教員養成科)にはありましたけど、鍼灸師養成校にもあっていい。
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2017.03.26
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これまでのお話
「伝統」とは何か。 3 参照
では続きいきます。
◆「伝統」と「易の三義」
前回、易の三義を説明しました。
「変易」「不易」「簡易」ですね。
そもそもこの易が持つ意味は三つあるよ、という考え方は、漢代の緯書である『易緯乾鑿度(えきいけんさくど)』に「 易一名含三義」と書かれてあるようです。
僕ら伝統医学をやっているものは、単に古典研究をやっているのではなく、あくまでも現実の臨床医学、医療をやっているわけですから、
古典に書いてあることを、ただそのまま忠実にやることだとか、古典の文章を暗記したり、文献研究することに重きを置くのではなく、
現実に目の前で病んでいる患者さんのために、あくまでも古典の世界観、人体観を参考に、実際にどれだけのこと(治療)が出来るか、
を徹底的に追求するべきだと思っています。
この立場を北辰会では「臨床古典学」と言っています。
たとえ『黄帝内経』に書いてあることであっても、現代の現実の病人に対して利用価値が無ければサクッと捨てる、また、古典に書いてあることでも、
現代風にアレンジした方が良い部分があればためらいなくアレンジして運用する(変易)、そういうスタンスです。
ただ、数千年もの間、この医学に通底する「本質」「根本哲学」は変えずに(不易)、医学を志す人であれば誰でも理解できるようにシンプルに(簡易)、
論理的に運用することです。
まさに「簡易」シンプルに、「変易」臨機応変に、「不易」本質は変えずに、です。
因みに、伝統としての鍼灸医学の本質は、いつも言っているように「気一元」「太極陰陽」の世界観に基づいて、
鍼灸で気を動かし、人体の陰陽のバランスを調整する、安定させること、ですね。
この意味からすると、鍼灸を一種の物理療法と考え、鍼灸による神経への物理的刺激によって、特定の反応を期待する療法である、
という考え方は、そもそもの世界観自体が違うので「伝統」や「伝承」ではない、ということになります。
(もちろん、だからといって否定はしませんが。)
・・・まあ、現段階ではこれが僕の考える「伝統」であり、「伝統医学」の現代での理想的な在り方かな。
易については、いつかまた折を見て語りましょう。
一先ず終わり。
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2017.03.24
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これまでのお話
「伝統」とは何か。 3 参照
では続きいきます。
◆「易」の三義
「気」とともに、我々の医学のもとになっている「陰陽」という哲学。
これが一体どういうものなのか、ということについては、『黄帝内経』の中には詳述されていません。
『黄帝内経』は、陰陽についてある程度理解していることを前提に書かれているような雰囲気があります。
その「陰陽」について詳しく書かれている大古典が『易経(えききょう)』という書物です。
北辰会も以前からそうですし、近年では他の様々な流派の先生方も、この『易経』を非常に重視するようになってきました。
鍼灸師が、『易経』に関する内容を書いた本も、いくつか出て来はじめました。
いいことです。
でもこれ、なかなか難しいんです。
あんまり東洋医学の基本的なことが分かっていないうちに、興味本位で噛り付くと、普通に歯が折れます。(゚∀゚)
また、ある程度基本が分かった段階で、『易経』に関する色々な説明を受けても、
「うんうん、なるほど分かった。・・・で?それをどうやって臨床に使ったらいいの??」
と、なりやすく、そこで脱落しやすいお勉強の一つでもあります。(苦笑)
こういった、「根本哲学」なんてモノは、結局、実際には役に立たない!とか言っちゃう人がいるのも分からないではないくらい、
なかなか取っ付きにくい学問だと思います。
僕もこれまで、『易経』、「易学」、「医易学」については、このブログ上でもあまり触れてきませんでした。
(易に関してはエキスパートを何人か知っているので、理解が曖昧な状態で何か書くのが、怒られそうで怖くてね。。。)
でも「補瀉」とか「三陰三陽」の時みたいに、そのうち、気が向いたらバーッと書こうと思っていますので、少々お待ちを。(笑)
・・・前置きが長くなったけど、「易」には三義と呼ばれるものがあります。
これは、「易」という言葉が持つ、三つの意味、というほどの意味です。
長くなりそうなんで、続く。(*‘∀‘)
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2016.09.10
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これまでのお話
東洋医学は宗教か。 15 参照
さて、ここらでいったん、まとめましょ。(*‘∀‘)
このシリーズは、ここから波及する諸問題にまで手を付けていくと、キリがないです。(苦笑)
・・・まあ、語っている途中で、様々な興味深いテーマが出ましたので、追々、機会があったらそれぞれ個別に、詳しく書いてみましょう。
◆とりあえずの結論
平たく言えば、最初にも言ったように、
「東洋医学はあくまでも医学であって宗教ではないが、ある意味では、宗教的側面もないではない。」
というのが、今の僕の結論であります。
(まあ、フツーだね(苦笑))
医学であって宗教でないというのは、東洋医学は歴史的に見ても、巫術、呪術から脱却し、「気や陰陽」という自然哲学をもとに、病人の健康回復のために特化して展開された、
れっきとした「医学」であり、死後の世界や、輪廻や霊魂の存在を説き、民衆を幸福に向かってあまねく教え導き、救済する「宗教」とは、
対象も目的も内容も、性格が違うと思うからです。
東洋医学が対象にしているのはあくまでも「患者さん」や「医者」であり、目的は病の治療です。
東洋医学は、その目的も対象も、宗教よりも、的を絞り込んでいると思っています。
従って、分けて理解するべきだと思います。
また一方で、宗教的色彩を帯びていると思う理由として、「信じる」というのがキーワードかな、と思います。
現代日本の医療界で、圧倒的にイニシアチブをとっている「西洋医学」の根底にある、最新の現代物理化学においては、
東洋医学がその理論のベースに置く「気や経絡経穴」というものの存在は証明されていません。
むしろ否定的、と言っていいでしょう。
でも、我々現場の東洋医学の医者は、それらの存在をある意味「信じて」「前提において」治療を行っています。
何故、そんなものが信じられるのかと言えば、我々は日々それらの存在を実感し、それらの存在を前提とした学術を駆使して治療にあたることで、
現実に病める患者さんが、実際に治っている現実に、日々接しているからです。
しかも、現代西洋医学が治せなかったような病が、治る場合があるからです。
そこに、現代における東洋医学(中国伝統医学)の大いなる存在意義や使命、可能性があると思います。
また、東洋医学が、『黄帝内経』以降、2500年もの風雪に耐えてきた伝統医学であるという、世界最古の伝統医学であるということも、
我々に自信をもたらしてくれている面もあるでしょう。
(西洋医学の歴史はせいぜいこの200~300年ですからね。)
意味のある未進化 参照
このような理由から、鍼灸臨床をやる上で、東洋医学の理論、学術に「僕は」依拠するようになった訳です。
依拠する上で、我々がこの、目に見えない、現代の最先端技術でも捕まえきれない、「気」という存在をある意味「信じている」というところが、
神仏や霊魂や死後の世界を「信じて祈る」行為なんかと、似ていると言えば似ているのかもしれませんし、その意味では、
宗教的と言えば宗教的と思います。
また、患者さん自身がその先生を「信じる」、鍼灸のことを「信じる」ことで、大きな安心感につながり、経絡経穴、臓腑の気の動きが結果的に良くなり、
鍼灸治療の効果が最大化する側面も、大いにあるでしょう。
ここも、宗教的と言えば宗教的。
そしてそういう、熱狂的に先生のことを信じている患者さんを、傍から見たら「熱狂的な宗教の信者」的な見方をされる場合も、あるかもしれません。(笑)
それも、宗教的と言えば宗教的。
〇
でも、いくらそうやって信じたからって、やはり限界がある、なんでも治るというワケではない、ということも事実。
それを我々は、現代の医療のプロの端くれとして、よく理解していないといけません。
(東洋医学の限界というよりも、自分自身の学術の、現時点における限界を。)
・・・まあ、そもそも「医学」というものは、東洋であれ西洋であれ、それ以外であれ、100%、人間の心身をコントロールするなんてことは出来ません。
(それが出来ればもう神様だし、病人なんてこの世にいなくなります。)
ただ、蓮風先生が仰るように、人間の生老病死という自然の摂理(仏教の説く四苦)の中で、唯一、人間の力で抗うことが出来るのが「病」であり、
それに応える学問が「医学」です。
長い歴史の中で、人間の知恵が生んだ様々な自然哲学、人体観をベースに、色々な医学が生まれた訳です。
その中で、非常に強い存在感を放つものの一つが東洋医学、鍼灸医学なわけです。
・・・まーそういうことなんで、近年様々な事件を起こしているカルト宗教や、金儲けが主目的の連中や、胡散臭さが売りのオカルト論者なんかとは、
どうかステレオタイプ的に一緒にしないでほしいと、本当に思っています。(苦笑)
鍼灸医学は、悠久の歴史と、現代における確かな実効性、有用性を兼ね備えた、れっきとした伝統医学なのであります。
(部分的、一面的ではありますが、科学的根拠もあります。 日本鍼灸エビデンスレポート 参照)
だから東アジアだけでなく、世界中の多くの国々が国家資格や開業権などの制度としても認めている訳です。
あとまあ職業上、人の生き死にに大きく深く関わったり、病を治療することが、その人の人生そのものを救うことにも繋がりますから、
東洋医学の医者たる者は、宗教や哲学について、大いに学ぶべきだとも思います。
〇
こういうことをよーく踏まえて、自分が医者として、人間として成長し、不動心で患者にあたれるようになればなるほど、
鍼灸の効果は素晴らしいものになっていくのだと思います。
(もちろん、基本となるような学術は徹底的に踏まえた上で、ですよ。)
あと、東洋医学は、東洋医学の医者の一生を、こうやって、最高に向かってずーっと指導しますから、医者にとっては、
宗教といっていいのかもしれませんね。(笑)
・・・まあ要は、何でもいんだよ、世のため人のためになりゃあ。
このシリーズも長くなったんで、次回、目次を付けて終わりますネ☆
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2016.08.29
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これまでのお話
東洋医学は宗教か。 8 参照
さて、どんどんいきましょう。
◆「鍼道」という言い方
さて前々回、宗教と医学の距離、関係性を示し、前回、吉益東洞(1702-1773)先生の医学に対する考え方を紹介しました。
ところで日本には「〇〇道」という言い方があります。
柔道、剣道、空手道、書道、花道、茶道、陰陽道、修験道などなど。
この「道」という言葉は、もともとは古代中国の道家や儒家が言った言葉だそうです。
(特に道家)
カテゴリ 儒教・儒家思想 参照
まあ要するに、哲学用語として、「宇宙自然、森羅万象に通じる普遍的な法則」あるいは「真理、根元」というような意味で使われる言葉です。
本来は「〇〇道」という言い方は、全てを〇〇中心の生活にし、その道を極めることに一生を費やす、というような意味になります。
(現代では随分軽く扱われてしまっていますが(苦笑))
だから、「道」を通じての人間的な成長や、「道」の対象となるものを極めようと一生精進することがあって、初めて本来の「〇〇道」になるわけです。
仏教なんかでもよく「求道者(ぐどうしゃ)」なんて言いますよね。
鍼にも、江戸期に「鍼道」という言い方をした有名な書籍があります。
「腹部打鍼術」の創始者、夢分斎の伝書である『針道秘訣集』と、葦原検校の『鍼道発秘』です。
これの詳しい解説は、藤本蓮風先生の『弁釈針道秘訣集』、横田観風先生の『鍼道発秘講義』に詳しいので、そちらを読んでいただくとして、
ともかく日本にも「鍼道」という考え方がありました。
また、明治期の、近代鍼灸教育の父と言われる奥村三策(1864-1912)という人物が、
「鍼(しん)は神なり、心なり。」
という言葉を残しています。
僕も随分前にこのブログ上で「鍼灸道」という言葉を述べさせて頂きました。
「鍼灸道」 参照
まあ現在、自分自身が鍼灸に関わってからの16年余りを素直に振り返れば、鍼灸道に只管邁進することが、自分自身の行動基準まで差配してきた面は、
実際に「ある」と思います。
であれば、僕にとって鍼灸はまったく宗教、信仰とも言えるか。(笑)
続く
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2016.08.25
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これまでのお話
東洋医学は宗教か。 6 参照
さて、どんどんいきましょう。
◆「魂」の存在をどう考えるか。
私が2008年頃から講師を務めさせていただいている、鍼灸学術研究団体である北辰会は、その理念の中に、
「東洋医学で、患者さんの心と体と魂を救う」
と掲げております。
北辰会の理念は こちら
ここだけを読んだら、多くの人は
「いやこれ、宗教じゃん」
という感想を持つかもしれません。
(苦笑・・・私の身内(理系)なんかはそうでした。)
よく、一般人や、無知な鍼灸学生などから侮蔑、嘲笑気味に”宗教臭い”とか言われがちな東洋医学、鍼灸医学の中でも、
北辰会は正直”特に”だと思います。(苦笑)
まあ近年になって、そのイメージもだいぶ払拭されてきたようにも思いますが。
この理念に関して、僕が分かる範囲で、簡単に説明致してみます。
北辰会では「心・体・魂」という三位一体の生命観を持っていますが、この「魂」というものの存在に、蓮風先生は若い時分から非常に興味を持っていたようです。
これは非常に多義的な言葉だと思いますが、北辰会の理解を平たく言えば、人間の持つ、心(精神)の内面の、もっともっと深い部分(在意識的、本能的なもの)
を包含し、意識や時間や空間すらも超越した、霊的で、スピリチュアルな部分、というか観念(想念というべきか。)のことです。
北辰会方式の鍼灸治療では、患者さんをやる時に、そこまで射程に入れなければいけない、実際に入れられる、と、理念に掲げた訳です。
北辰会、蓮風先生の言う「魂」を、もっと細かく、もっと分かりやすい言語でもって説明した場合、どういうものであるかについては、
蓮風先生のブログや、北辰会機関誌の『ほくと』の中に、講義録として、ある程度掲載されています。
(興味のある人は、まずそれを一通り読んでもらったら宜しい。)
ブログについてはこちら(『鍼狂人の独り言』の”魂”を含む記事)
北辰会が、その前身である大阪経絡学説研究会から始まって、昭和54年(1979年)に正式に北辰会として設立、発足し、その後、
徐々に数百人規模の大きな団体となっていった、昭和40年代~60年代というのは、戦後の復興~高度経済成長の極みから、
急転直下のバブル崩壊、そしてそれ以降の就職氷河期、という極端な時代背景があり、日本人が経済的、物質的に非常に豊かになっても、
心の内面は本当は満たされない、ということを思い知り、物質的に豊かな時代も、厳しい時代も、結局は精神面の不満足、不安、
不満などのストレスから、あらゆる病になる人も多く、それを解決するために、そういう患者を診療する側の医療従事者はもちろん、
一般人も含めて、当時は社会全体にそのような
「目に見えない、人間の内面のディープで不可思議な世界への探求」
を志向する空気が、ある意味で非常に盛んだったのではないでしょうか。
(この時代のこういったムーブメントを指して、新宗教ブーム、オカルトブーム、なんていう言葉もあります。)
そうした時代背景もあり、蓮風先生をはじめ、北辰会の諸先輩も、患者さんを治療する日々の中で「魂」というものの存在を強く意識するようになっていったのでしょう。
ただ、北辰会が宗教団体と違うのは、魂を救うのに、宗教的な呪い的な儀式などではなく、あくまでも『黄帝内経』に基づく
「東洋医学(中国伝統医学)の論理でもって」
しかも
「鍼灸治療でもって」
それをやる、むしろそれをするのは鍼灸じゃないとダメなんだ、というスタンスを堅持しているというところが重要だと思います。
だから、北辰会はどこまでいっても宗教団体ではなく、東洋医学の学理を学び、鍼灸治療の技術を磨く、「鍼灸学術団体」なのです。
もう一つ大事なのは、一般的な東洋医学、つまり『黄帝内経』に端を発し、立脚する中国伝統医学の世界には、ほとんど「魂」であったり、
「霊的なもの」の存在というのは説かれていません。
約2500年くらい前に成立したと言われる東洋医学のバイブルである『黄帝内経』よりもさらに以前は、巫術(まじない)が医療の中心であったようで、
そこから『黄帝内経』に至って、「気」と「陰陽」という自然哲学に立脚した、「臓腑経絡学説」に基づく、科学的な医学医療が確立され、
展開されていった、という流れがあります。
『黄帝内経』は、「呪い医療」の詳細な説明や実践方法の紹介は、意図的に排除し、避けた訳です。
(ところどころ、仄めかしてはいますが。)
ですので、人間存在を考える時に「魂」というものの存在を「あるもの」として意識し、それをどうこうしようとするならば、その人間観自体は、
東洋医学的というよりも宗教的、呪い医療的にはなります。
なりますが、それをどうこうする際の「論理と手法」が徹底して東洋医学的、中国伝統医学的であるならば、むしろそれこそが真の東洋医学なんではないでしょうか。
(『黄帝内経』以前の歴史をも踏まえている、という意味で。)
東洋医学の世界観というのは「気一元」です。
この世界、万物、森羅万象は「気」から出来ている、と説きます。
であれば、上に述べた「魂」も「気」で出来ている、となります。
その「気」に、直接働きかけ、操作するべく考え出されたシンプルな道具が、鍼灸なのです。
だから当然、気の流れを調えることで、結果的に「魂を救う」ことも、鍼灸治療の射程圏内に入ります。
ある意味単純明快であり、悪く言えばルーチンワーク的な「How to 治療」みたいなものがいつまでたっても跳梁跋扈する鍼灸業界において、
北辰会、蓮風先生が、この難しい問題を中途半端に扱わず、変にごまかさず、真正面から理念として述べている姿勢を、
「僕なんかは」リスペクトしている訳です。
要は日々の鍼灸治療の実践を通じて、真剣に人間学をなさっているわけで、その一つのあり方の主張な訳です。
ただし、あまり変にこういうところを強調したり、初学者や素人に対して、伝え方を過てば、妙な誤解のもとになり、話が前に進みにくくなる面もあります。
この辺のバランスは、教わる側のリテラシー、理解力、スタンスの問題も絡んでくるので、現代日本社会の中で、東洋医学教育に携わるものとして、
大変難しいところだとは常々思っています。
続く
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2016.08.21
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これまでのお話
東洋医学は宗教か。 2 参照
さて、続きいきましょう。
◆東洋医学の論理に基づいて鍼しないと、自信が持てなかった。
僕は19歳で鍼を持ってからは、臨床能力では誰にも負けたくない、最強鍼灸師を目指そう、とか思って、ひたすら毎日、
治療に明け暮れました。(笑)
鍼灸学生の頃から、クラスメイトも友人も、友人の友人も、そのまた友人も、全て患者(というよりも献体)にしてしまいました。
(もちろんお金はとらずに、です。)
ほぼ毎日、夜中の二時三時まで、時には朝まで徹夜で、あーでもないこーでもないと考え、悩み苦しみながら、鍼をしました。
免許を取ってからは、少しだけお金ももらうようにし、結局その生活を、開業前まで、10年くらい続けました。
もちろん最初は、治らない患者とか、鍼したらかえって壊れる患者ばっかりでした。
それでも強引に頼み込んで、治療(献体)に来てもらいました。(笑)
誰よりも鍼が上手くなりたかったし、何故治らないのか、全症例、完璧に論理的に検証したかったからです。
そうでないと、何を反省したらいいのかすらわからないので、上達しない、と思ったからです。
その経験の中で、徐々に分かってきました。
鍼灸治療は、東洋医学の考え方でもって実践し、その結果を慎重に、緻密に検証しないと、何故その配穴や手法でおかしくなったのか、
理由が分からない、鍼灸した後に患者に起こる全現象を、術者が的確に理解することが出来ない、ということが分かってきました。
西洋医学的な考え方でも、治療らしきことは出来るのですが、術後に起こる、実に様々な患者の変化に対して、理論的に検証することが、
非常にしにくかったです。
(僕の場合は)
患者に起こった一つ一つの現象そのものを、西洋医学的にクリアに説明することは出来ても、それと、自分がやった鍼灸治療の具体的な関連はどうか、となると、
やれ自律神経がどうのとか、やれドーゼオーバーでどうのとか、全くザックリとした仮説しかなく、それでは具体的な反省が出来ないために、
同じようなミスを何度も繰り返しました。
確かに患者さんは、病態にしろ治療効果にしろ、一般社会にも広く普及している、西洋医学の言葉で説明すると、納得しやすいとは思います。
筋肉や骨や神経など、一般人でもある程度知っているような言葉で説明した方が、分かりやすい面はもちろんあります。
でも、それで効果が出なかったり、やっている本人自身が、自分が鍼灸をした後に起こる諸現象に対して、理解できていなかったら、意味ないし危ないです。
そこで、東洋医学独特の考え方である気や陰陽五行、臓腑経絡経穴学説に則って鍼灸治療を進めていくと、実に安定的に効果を上げながら経過を追うことができ、
ある症例に対して、何をすることがリスキーで、何をすることが安全策なのか、徐々に分かってきました。
プロとして医療をやる場合、起こった結果に対して、的確に医学的に理解し、対処することが出来る、これが非常に重要だと思います。
それが出来れば、もし失敗しても、具体的に何を反省し、次回に活かすべきかも、明確になります。
また、プロの鍼灸師としては、「鍼灸」という道具のもつポテンシャルを、最大限活かし切る努力をすることが重要だと思います。
こういう経験を繰り返す中で、
「あー、やっぱり鍼灸という治療道具は、東洋医学の考え方、古代中国の自然哲学の中から生まれた治療法であり、
それに則って使うべき治療道具なんだナー。」
ということが、毎日診る患者さん達の体に起こる現実、現象を通じて、分かってきたのです。
(僕の場合は)
また、患者さんへの説明だって、東洋医学の考え方や用語を、工夫して分かりやすい、かみ砕いた言葉に置き換えれば、素人にも分かりやすく、
上手に説明することは出来る、ということも分かってきました。
(ただ、これをサラッとやるには、それなりの勉強量や知能は必要ですが。)
まあ、どんなに理路整然と説明できたとしても、そこに効果、実効性が無ければ、価値は薄い。
また、どんなに効果、実効性があったとしても、それの説明がイマイチでは、価値は薄い。
ですので、プロの鍼灸師として、その両面を満たしつつ、鍼灸という道具の効果を自分なりに最大化し、しかも自分自身が健全に安定した状態で、
鍼灸臨床家生活を進めることが出来る方法論、学問として、かつて
「こんなもん無くなっちまえばいい」
とすら思っていた東洋医学を、消去法的に選択していった、というワケです。
続く
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2016.08.19
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前回のお話
思いのほか反響が大きいので、すっかり気をよくしたので、続きを書きます。(笑)
つい先日、Facebookなるものに手を出したのですが、どうもFacebookの方が、皆さんコメントしやすいらしい。
なるほど、これがSNSの使い方なんですね。
僕のような情報発信したがり人間にとっては、割かし、いいものですね。(*‘∀‘)
まあ、単にブログの記事の一番下に「いいねボタン」を付けてるだけでは、なかなか拡散はしないってことなんだね。
しかし、こうやってどんどん、俺みたいに感じる人間が増えていって、みんな米国の巨大マーケットに飲み込まれていくわけか。。。
そしてそれが、戦争や核兵器の元金になる。。。(;゚Д゚)
ただまあ、いいものはいい。(笑)
情報を発信した以上、反響が気になるのは当たり前。
それをするのに優秀で、有効なツールを使うのも、当たり前。
〇
◆「気」や「経絡」を、”ある”と信じないと、東洋医学的な治療は不可能。
まあともかく、前回の最後に言ったように、東洋医学の論理の根拠となる人体観に、「気」や「陰陽五行」、「臓腑経絡」という概念があります。
これの肯定、是認、理解なくして、東洋医学的な治療の実践は不可能です。
そしてこれは、西洋医学の人体観には出てこない、むしろ全く否定される考え方です。
この先、ナンボ西洋医学が発達しても、発達すればするほど、「気」だの「経絡」だのには行きつかないんじゃないか、と、私は思っています。
また、西洋医学の概念で、東洋医学のこういった概念を捉え直すということに無理があるということは、このブログで、
随分前から再三書いている通りです。
カテゴリ「経絡」 参照
(上記カテゴリは、一般人向けに簡単に書いたものなので、専門家向けの本格的な説明ではありませんが、概要は分かるんじゃないかと思います。)
東洋医学を患者さんに運用する場合、これらを「実際にあるもの」と、前提にして話を進めていきます。
ある意味で術者側が「あると信じて」運用する訳です。
(患者さんが信じていようがいまいが、です。)
ここが、宗教家が神の存在やら輪廻やら、天国地獄、極楽浄土なんかを「あると信じて」生きていて、それらの存在を前提に、他者を教え導いている雰囲気に、
近いと言えば近いのかもしれません。
因みに僕は、身内に開業鍼灸師が二人もいる家に生まれたくせに、「気」や「経絡」の存在なんて、最初は全く、
1ミクロンも信じやしませんでした。(笑)
むしろ、20歳くらいの頃は、
「この科学万能の時代に、いつまでもそんなワケの分からんこと言ってるから、鍼灸業界は発展しないのだ!
東洋医学なんてハッキリしないものは、この世から無くなるべきだ!」
と、息まいていました。(苦笑)
その一方で、患部と全然関係ないところに浅く鍼をして、場合によっては鍼を翳して、劇的に痛み痒みが取れる、呼吸が楽になる、
こういう現象が現実にある、ということは知っていましたが、そういうものも全て、西洋医学の脳科学や神経反射等の理論等で、
いずれ説明がつくんじゃないか?と思っていました。
だから要は、鍼灸はいいものである、でも、その根拠が東洋医学では、世界(というより現代日本社会かな。)を納得させることは出来ない、
だからやめた方が良い、という考えを持っていました。
そういう私が、何故に東洋医学の使い手(ある意味で信奉者)になっていったのか。
ここに、この問題を考える一つのヒントがあるように思います。
続く
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2016.06.25
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前回のお話
頭から汗が出る人 参照
2.『傷寒論』の辨太陽病脉證并治中第六.に、
「太陽病中風.以火劫發汗.邪風被火熱.血氣流溢.失其常度.兩陽相熏灼.其身發黄.陽盛則欲衄.陰虚小便難.
陰陽倶虚竭.身體則枯燥.但頭汗出.劑頸而還.腹滿微喘.口乾咽爛.或不大便.久則讝語.甚者至噦.手足躁擾.
捻衣摸床.小便利者.其人可治.」
とあります。
まあ要は、カゼ引きで、汗かきまくって体力をかなり失ったものは、頭に汗が出る場合があるよ、っちゅうことだね。
前回は湿邪持ちの人、今回は正気の弱った人。
これは東洋医学をちゃんとやっている人であれば、簡単に見分けることが出来るでしょう。
続く
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