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2010.02.26
新たに「患者さんの声」が届きましたのでお伝えしたいと思います。
90代 女性
症状:高血圧、動悸、大腿骨骨折後の後遺症による歩行困難
若い時から血圧が高くて悩んでいました。50歳の頃からは血圧が上が190~160の間でした。
頭は痛くなるし、眩暈はするし、胸がドキドキしていました。
薬を飲んでも胸はドキドキ、どうにもなりません。
マッサージにも病院にも随分通いました。
70歳の頃、旅行中に鼻血を出して救急車を呼ぶ始末でした。
その後、少しして、今度は雨の日に転んで大腿骨を骨折しました。
それ以来歩くのが不自由になり、杖をつく始末。
少しの庭仕事も不便を感じていました。
大分経った頃、主治医の先生に竹下先生を紹介していただきました。
90歳にもなって、どうかと思いましたが、「ワラ」をつかむ思いでした。
早速いらしていただき、診ていただきましたら、
「大丈夫です。何とか歩けるようになる様、努力してみましょう。」
と言われ、その力強い言葉に嬉しくなって早速お願いしました。
それから3年、雨の日も風の日も一生懸命に治療をしていただき、先生を見る度に、先生の手が「神の手」か「魔法の手」に見えると喜んでいます。
今では足も大分良くなり、体も楽になりました。これも先生のお蔭と感謝しております。
春になればまた少し良くなるだろうと楽しみにしております。
ありがとうございます。
今後ともよろしくお願いいたします。
【清明院からのコメント】
この方は、以前私が勤めていた治療院の時からの、古い患者さんです。
初診の時、年齢の割にとても大きな声と、ハッキリとした発音で、しっかりと受け答えなさる方だなあ、という印象を受けました。
足に関しては多少の筋肉の委縮はありましたが、年齢の割に筋力があり、「これならいける!」と直感したのを覚えています。
「腎陰虚(じんいんきょ)、少陽経(しょうようけい)の経気不利(左右差)」と証を立て、現在は副院長である松木先生に治療を任せ、今日に至ります。
経過も順調であり、血圧の方も安定しているようで、安心しております。
大腿骨の頚部骨折と言えば、高齢者の四大骨折(手首、肩、腰、大腿骨)の一つに数えられる、そのまま寝たきりになってしまうこともある、
大変重大な骨折ですが、この患者さんの場合は運良く何とか歩行できるまでに回復されていたので、筋力の低下が軽かったことが、経過が良かった原因の一つだと思います。
まだ現在も、どうしても歩行時の体の傾斜があるので、左右のアンバランスを整えながら、転倒にだけは細心の注意を払っていただき、治療を行っております。
たとえ95歳と高齢であっても、東洋医学ではその時点での「陰陽」バランスがいかほど取れていて、いかほど「治る力」があるかどうかを意識して治療します。
ですので、高齢だから、骨折の後遺症だからと言って、あきらめる必要は全くないと思っています。
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2010.02.25
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前回まで、
ⅰ.「表裏」
ⅱ.「寒熱」
ⅲ.「虚実」
という、3つのテーマについて書いてきました。
そして、東洋医学ではこれらの考え方を使って、患者さんの
「どこに(病位)」
「どういう(病性)」
病があり、
「その勢い(病勢)」
はどうなのかを、まず大まかに診断するんだよ、ということを述べました。
この考え方(診断方法)を、
「八綱弁証(はっこうべんしょう)」
と言い、これは東洋医学的な鍼灸治療をする上で、絶対にはずせない診断法(弁証法)の一つです。
歴史的には、清代の程国彭(ていこくほう)が1732年に撰した『医学心悟』の中の「寒熱虚実表裏陰陽辦」に説かれ、
その考えは1742年、呉謙の『医宗金鑑』にも引き継がれ、現代中医学の弁証法の基本の一つになりました。
なぜ「八綱」と言うのかというと、組み合わせとして、
「表か裏か」の2、
「寒か熱か」の2、
「虚か実か」の2
を掛け合わせると2の3乗となり、2x2x2=8パターンが得られます。
すなわち、全部は書かないけど、「表、寒、実」とか、「表、熱、実」・・・とかって組み合わせていくと、8通りの組み合わせが得られ、
それを「八綱(はっこう)」と呼び、大まかに病気を分類することが出来る訳です。
因みに、ここでしっかりと断っておきますが、上記は私の個人的な考えです。
中医学の教科書には、どの本にも八の要素を並列に並べて、陰陽、表裏、寒熱、虚実で八綱、という風に解説されていますが、個人的には上記の説に一票、という感じなんです。
(何の本で読んだか忘れたけど。。(^^;))
これは私の「八」に対する解釈にもかかわってきます。
奇経八脈の八、八法の八、八卦の八にしても、やはり総綱としての「二(陰陽)」があり、それの組み合わせや現れ方の違いのために他の「六」がある、
と考えた方が、個人的には納得できることが多いからです。
(まあ些末な話っちゃ話だけどね)
〇
患者さんの病気のパターンが、この8パターンのうちのどこに収まるか、ということは、我々にとってとても大事です。
なぜなら、これによって「治療の大まかな方向性」が決定づけられるからです。
病気というのは、患者さんが訴える、表面的な「症状」にのみとらわれて、治療や診断そのものが右往左往していては、なかなか治っていきません。
大事なのは、その症状を出さしめている本質は何か、要は病の本体は何なのか、ということを常に意識して治療を進めることなんです。
そうしないと、治るものも治らないんです。
これを中医学では「治病求本」といい、2500年前の東洋医学のバイブルである『黄帝内経素問』陰陽応象大論(5)に「・・治病必求於本.・・」とある通りです。
治療を技術論と考えると、本当に治療のうまい先生ほど、この「八綱弁証」が正確で、かつブレないんだと思います。
・・・ですから治療経過の中で、多少の症状の増減はあろうと、方向性が正しい訳だから、結果的には徐々に徐々に、確実に治っていく訳ですね。
ここが正確であれば、術者もフラフラすることなく、一貫性のある治療を進めることが出来るわけです。
まあ、ちょっとこのシリーズは難しかったかもしれないけど、とても大事な考え方なので、あえて書きました。
・・・ところで、清明院のHPにもこのブログにも、よく「弁証(べんしょう)」とか、「弁証論治(べんしょうろんち)」という言葉が出てきます。
コレ、聞き慣れませんよね?次回はそのお話。
〇
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2010.02.24
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・・・続いて、「表裏(ひょうり)」についてです。
日常会話の中でも、
「表裏一体」とか、
「表裏(おもてうら)のない人」
とか、よく言いますよね。
要するに「表(ひょう)」というのは見えてる部分、「裏(り)」というのは見えない部分のことを意味します。
この意味から、「表の病」というのは、「見えてる病」「表面的な病」という意味を持ち、要は病気の位置が浅いですよ、ということを示します。
浅い、と言うと、じゃあアトピーなどの皮膚の病気は「表の病」か、ということになりますが、そうではありません。
症状の出ている部位のことではなく、あくまでも、主な病変部位(言わば主戦場、症状の原因となる、陰陽バランスの崩れた場所)が浅い部位にある病を「表の病」と言います。
ですので、慢性のアトピーなどでは、症状が出ているのは皮膚であっても、主な病変部位は内臓(臓腑)の機能異常、バランス異常だったりするので、
「裏の病」という判断になる訳です。
「表の病」の例を挙げると、体の外からガンガン冷やされたり、あるいは乾燥して喉が痛いなどの、かぜの初期段階なんかが相当します。
これに対して「裏の病」というのは、「見えない病」「深い部分の病」という意味を持ち、深い部分、すなわち、繰り返しになりますが「臓腑」に病があるものを言います。
これも、簡単に「深い」と言ってしまうと、西洋医学的な肝炎とか腎炎とか胃炎などの、内臓の炎症疾患とかを想像しますが、そういう意味ではありません。
東洋医学の言う「臓腑」の病変と、西洋医学の言う「内臓=organ」の病変とは、意味が違います。
東洋医学では、内臓の形体的な異常に注目しているのではなく、五臓六腑それぞれの機能のバランスの乱れに注目しているのです。
ここは混同しないようにしたいですね。
ですので、慢性の頑固な病気などは、ほとんどが「裏の病」の範疇に入ってきます。
たとえ、肩こりであっても、です。
このように、東洋医学では”表裏”という概念(ものさし)を使って、病変(陰陽バランスの乱れ)が起こっている部位(位置)を考えますので、この考え方を「病位」と言います。
我々は、前回、前々回とお伝えしてきた「虚実(病勢)」「寒熱(病性)」「表裏(病位)」という、東洋医学独特の分類概念を駆使して、
「病の趨勢」「病の性質」「病の部位」という観点から、まず大まかに患者さんの病気を大きく「陰陽」に分析する訳です。
この「虚実」の2つ、「寒熱」の2つ、「表裏」の2つの物差しを使って、まず病を大きく「陰陽」の2つに分けることを、
「8つの綱領を弁(わきま)える」という意味で「八綱弁証」と言います。
因みに個人的には「虚実」の2、「寒熱」の2、「表裏」の2をそれぞれ組み合わせると、「虚・寒・表」「虚・寒・裏」「虚・熱・表」・・・と、組み合わせが8通りできるので、
その8通りの組み合わせに、とりあえず全ての病を概括できるという意味で「八綱弁証」という理解の方が好きだったりします。
この分類概念(弁証法)は、実は他にもまだまだあります。
そのうち気が向いたら書こうかな、と思います(笑)
それで、「ここぞ!!」というところに鍼灸を施し、アンバランスを整え、治療させていただく訳ですね。
東洋医学は、とっても科学的で芸術的な医学なんです。
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2010.02.22
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今日から、東洋医学独特のいくつかの考え方について、簡単に述べてみようと思います。
まずは「虚実(きょじつ)」についてです。
古代中国の自然哲学では、何もかも全てのもの(森羅万象)を「気」から出来ていると考え、それを「陰陽」の二つに分けて考え、その運動で持ってすべての事象を説明する、という話は、以前にしました。
・・・東洋医学では、この考え方を当然、人体においても用いている訳ですが、「病気」というものを考えた場合、問題になるのは、
その陰陽のバランスがどう崩れているか、
どうすれば元通りに出来るか、
というところですよね?
そこで使う考え方が
「虚実(きょじつ)」や、
「寒熱(かんねつ)」や、
「表裏(ひょうり)」
という概念です。
このうち、まず「虚実」ですが、
「虚(きょ)」というのは、字のまんまですが、「うつろ」とか「足りない」ということを意味します。
「実(じつ)」はその反対で、「充実している」「過剰である」という意味があります。
この考え方から、何かが足らなくなった病気を
「虚証(きょしょう)の病」
と言い、何かが過剰になった病気を
「実証(じっしょう)の病」
と言います。
「虚証の病」であれば、病気を試合や戦に例えれば、防戦一方、という感じになりますし、「実証の病」であれば、バチバチの殴り合い、激しい交戦状態を示します。
そこからして、この”虚実”のことを「病勢」と呼んだりします。
そして、さらに細かく具体的に、「どこの」「何が」足らないのか、「どこの」「何が」過剰なのかを考えて、それがいち早くもとに戻るように考えて、戦略的に治療します。
因みに、邪気と戦う「正気(せいき)」が過剰(実)で、「邪気(じゃき)」が足らない状態(虚)なんであれば、それは健康体ということですから、治療対象にはなりません。(笑)
「病体」というのは、必ず正気が虚、あるいは邪気が実、またはその両方が混在している、という状態になっている、と考えます。
我々が普段行っている診察(四診:望聞問切)というのは、ここからさらに
「虚」の中心(根本原因)
や、
「実」の中心(根本原因)
を突きとめ、明らかにするために行います。
そしてそれを突きとめたならば、うつろなところが充実するよう、あるいは過剰な部分が散って落ち着く(平均化する)よう、鍼灸を施したり、漢方薬を飲んでいただいたりする訳ですね。
故に、「虚実」は、鍼をする上で、絶対に外せない考え方の一つなのであります。
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2010.02.06
これまでのお話・・・
「七情」って何ですか?
「怒」について
「喜」について
「思」について
「悲」「憂」について
「恐」について
「驚」について
まあ長々と「七情」について書いてきましたが、今日が一応の完結編です。
日々生きる中で、人は精神的にも肉体的にも、あらゆる刺激にさらされています。
東洋医学では特に、精神的な刺激に対する様々な反応のことを「七情」と名付けて、まとめている訳ですが、現代人はコレの「過不足」が病気の根本原因となっていることが、
あまりにも多いように思います。
これは日々患者さんから話を聞いていて、ホントによく思いますね。
これについて、
「何でかな~・・?」
と考えると、1つには、例えば寒さや暑さといった、肉体的な刺激に対しては、文明の利器を使ってかなり回避することが出来るようになったけど、
精神的な刺激に対してはどうしても回避できないためなんじゃないかな~、なんて、思います。
なんぼ、クーラーや暖房を使って快適な空調環境で生活していても、そこに嫌いな人が一人いたらもう台無しですよね。(苦笑)
とたんにそこは不快な環境になりますよね?
また1つには、あらゆることがお手軽に、大した労力もなく出来てしまう世の中なので、いろんな場面で
「我慢する」
という考え方が出来にくくなっているんじゃないでしょうか?
だから、ちょっとした人間関係のもつれも我慢できない。
あるいは、職業選択にしろ何にしろ、生きる上での自由が保障され、生きる上での選択肢があまりにも多すぎて、結果的に余分なことまで考えるようになってしまい、
だんだん、何が何だかワケ分からなくなっちゃって、迷いに迷って、日々が楽しくなくなり、徐々に病気になる人もいます。
これらは要は、幸せすぎて不幸せになった、という、ある意味
「陰陽が転化した」
皮肉なパターンだと思います。
現代人というのは、高度な文明が生み出した様々な道具によって、外的刺激を上手に回避できるようになった分、もともと持っている、
外的刺激(精神的なものも含む)に柔軟に対応する力が弱くなっているんじゃないでしょうか?
(例えて言うなら、時には我慢して続け、時にはスパッとあきらめる、みたいなバランス感覚のことね。)
今後もますます文明は発達し、生活の利便性、快適性はもっともっと上がるでしょう。
それはそれで喜ばしいことなのは言うまでもありませんが、その分、内面、つまり「ココロ」を病んだ人間は増えるかもしれません。
現在、うつ病患者の激増が問題になっているのも、その前兆に思えます。
その時こそ、「心身一如」の考え方で「カラダ」を通じて「ココロ」にも同時にアプローチ出来る、東洋医学の出番でしょう。
〇
長年、鍼灸治療をしていると、患者さんの顔つきが段々穏やかになっていくのが分かります。
蓮風先生がよく仰るように、体がほぐれると心もほぐれる、ということなんでしょう。
これを西洋医学のように「強引に」やらずに、常に全体のバランスを意識して「無理なく」やろうとするところが、東洋医学の良さじゃないかな、と思います。
(もちろん場合によっては「強引さ」も大事でしょうが・・・。)
以前、どこかで
「21世紀は東洋医学の時代」
なんていう言葉を目にしましたが、ホントにそうだと思います。色んな意味で。
・・・ただこのキャッチコピー、一見いいんだけど、本当は「東洋医学」の前に”確かな”を入れるべきです。
治療に鍼灸を使ったから、漢方を使ったから即東洋医学、ではなく、それらをキチッと、東洋医学が本来持つ意味、意義を分かった上で使いこなせる人間が使って、
初めて「東洋医学の時代」と言えるんだと思います。
エラソーに言ってますが、もちろん僕もまだまだ精進しなくては、ですがネ・・・。
・・・ちょっと話がそれたけど、「七情」のまとめとしては、要するにバランスが大事で、「過不足」がなければ問題ないんだから、しっかりとした自分を持って、
日々伸び伸びと生きていこう、感情を変に抑えずに「普通に」表現していこう、そうすりゃ病気にならないで済むよ、ということです。
・・・そんなの難しいから出来ない?(苦笑)
ちょっとは努力しましょうよ。
人生は一回コッキリです。(笑)
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2010.02.04
続いて、「恐」について書きましょう。
「悲」と「憂」についてはセットで書きましたが、「恐」と「驚」については分けて書きます。
これは、後者の場合は意味的に違いが大きいからです。
「恐」というのは皆さんがよくご存じの「恐怖感」のことです。
生活、人生の様々な場面で感じることがあると思います。
これも出来れば避けたい感情ですが、僕なんかはチョイチョイ感じます。
でもこれも結局は「過不足」がなければ問題ナシです。
なので僕なんかは感じてもサッと乗り越えます。
・・・「サッ」とね(笑)
これが主に過度になった場合、体に悪影響です。
「恐」という感情は主には東洋医学の言う「腎」という臓を痛めつけます。
(西洋医学の腎臓=kidneyのことじゃないですぞ!・・・しつこい?)
(『黄帝内経素問 陰陽応象大論(5)』「・・恐傷腎.・・」)
東洋医学のいう「腎」とは、泌尿器系の機能をつかさどる他に、生殖機能や、他の臓と協調して全身の温度調節をしたり、腰や足の機能の調節などを担います。
(これもまあ、ざっくり言うと、です。 詳しくは「腎」って何ですか?(その11) 参照。)
「腎」が「恐」によって弱ると、主に「腎」の働きの中の生殖機能に影響し、男性ではED、女性では月経不順など、様々な症状を引き起こし、
酷くなれば精神障害、言語障害などが現れます。
余談ですが、小児に多いのですが、お父さんに怒られてビビって、
「おしっこチビッた。」
なんていうのも、まさに「恐」という感情によって「腎」の機能が障害された姿です。
僕の親戚は、よく怒られてはよくチビッていました。(苦笑)
彼は「腎」を鍛えなくてはなりません。
また東洋医学の聖典である『黄帝内経 素問』の挙痛論(39)という項には、
「恐れれば気が下がる。」
とあり、極度の恐怖感は、上半身の気をグーッと引き下げてしまい、頭がフラフラして、貧血の時のメマイのような感覚が出ることがあります。
ドラマなんかで、あまりのショックに地べたにへたり込んだりするシーンがありますが、アレはウソや大げさではなく、実際に起こりうる現象です。
気が極端に下がり、腰から下の丈夫さと大きく関わる「腎の臓」が障害された結果、下半身に力が入らなくなり、上半身はフラフラになり、
へたり込んでしまう、という訳です。
また、「〇〇恐怖症」という言葉を聞くことがあると思いますが、「恐」という感情は、一過性のものというよりは、過去のトラウマによって徐々に蓄積されたものであり、
「驚」と比べて回復しにくい面があるようです。
また、「腎」を痛めたことによって、「恐」を感じやすくなる、という、逆パターンもあります。
グッドウィンと言う人が書いた『恐怖症の事実』という本の中に、
「・・・下半身が麻痺になった患者は、なぜか恐怖を感じやすいが、首から下が麻痺した患者は、そういう例は少ない。」
という記述があります。
グッドウィンさんはこれを、動物的な本能に起因するものとして説明しますが、東洋医学をやっている僕なんかは、「腎」が下半身の機能に大きく関与することを知っているので、
「へえ~やっぱりね~!」
・・・と思ってしまいました。
近現代の様々な学者の本を読むたび、しっかし東洋医学の数千年の知恵は、かなり真実(ものの本質)を突いてるよな~・・・と、悦に入るのは僕だけでしょうか?(苦笑)
次回は「驚」についてです。
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2010.02.02
七情シリーズ、続いて「思」についてです。
人間は普通、何か行動する時、常にその前にそれを、
「しようと思って」、
行動する訳ですよね?
これが思慮「深い」行動だと、人様から高く評価されたり、思慮が「浅い」行動をして、争いごとの種になったりすること、ありますよね??
しかし、東洋医学では、思慮深かったら無条件にイイ!という訳ではなく、「思慮過度」と言って、思慮しすぎてもいけないし、思慮が不足し、
遂げられなくても、体に悪影響だ、と考えます。
(ここでもやっぱり、問題は”過不足”、”バランスの不調和”です。)
「思」という感情は、東洋医学では五臓の中の「脾」という臓に悪影響を与え、食欲不振やお腹が張る、といった、様々な症状を出します。
(これは西洋医学の脾臓=spleenとは違いますよ!僕はこれを何度でも言います!)
【参考】
『素問 陰陽応象大論(5)』「・・在志爲思.・・」
『同 五運行大論萹(67)』「・・其志爲思.・・」
・・・まあ、クヨクヨ思い悩んで、食欲不振や消化不良、こういう経験、思い当たる人も多いのでは?
ちなみに東洋医学の言う「脾」というのは、いわゆる現代医学の言う、「胃腸の働き」そのものを指して言うことが多いです。
さらに、東洋医学では、短期記憶や、血流そのものや、血の生成などにも大いに関与する、と考えます。
(ざっくり言うとね。)
また、「思えば気が結す」と言って、思い悩んだ状態が長く続くと、全身の血行が悪くなり、ひどければ出血傾向(不正出血、鼻血etc..)の原因にもなります。
(『黄帝内経素問 挙痛論(39)』「・・思則氣結.・・」)
また、飲食の不摂生などによって、先に「脾の臓」(胃腸の働き)が弱って、結果として精神的に思い患いやすくなる、という
「逆のパターン」
もあります。
(これけっこう大事!)
現代人は、食生活のメチャクチャな人があまりにも多い気がします。
(時間といい、食べてるモノといい、です。)
現代は、昔と違って、欲望のままに簡単に何でも食べるものが手に入る、まさに飽食の時代ですので、これが、あらゆる病の原因となっているケースは非常に多いと思います。
(しかも欧米型の、添加物、着色料満載の加工食品ばっかり!)
・・・気を付けたいものですね。(苦笑)
江戸時代中期、観相学(南北相法)で有名な水野南北(1760-1834)は、
「食は運命を左右する。」
と言って、節食こそが運気を好転させる秘訣だ、という意見を述べています。
彼がもし現代にいたら、現代人の食生活を見て、どういう感想を持つでしょうか・・・。(苦笑)
・・・次回は「悲」と「憂」についてです。
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2010.01.31
今日は「喜」について書きます。
「喜」という感情なんて、あればあるほどイイに決まってんじゃん!
なければそりゃあ病気になるだろうけど、ある分には病気になんかなる訳ないじゃん!
・・・と思った方は、すでにして「喜」の少ない毎日なんじゃないかとお察しします。(苦笑)
まあそれは半分冗談ですが、東洋医学では、一見プラスに思える「喜」という感情も、過多になったり、過少になったりすれば体に不調を起こす、と考えます。
「喜」は基本的には(正常範囲ならば)「喜は気を緩める」「喜は気を下げる」と言って、精神的、肉体的な余分な緊張を緩和し、気を下げてくれます。
【参考】
『黄帝内経素問 挙痛論(39)』「・・喜則氣緩.・・」
『同 調経論(62)』「・・喜則氣下.・・」
ですから、強い緊張を強いられる仕事をされている方なんかは、定期的に「喜」という感情がどうしても必要です。
これが「笑い」であったり、恋人や家族との「安らぎの時」であったり、趣味や何かに「没頭する時間」であったり、人それぞれ違うでしょうが、
要は「満足感に浸る時間」のこと、と言えば分り易いかと思います。
・・・しかしこれも、「気が緩み”過ぎ”」になると問題です。
東洋医学では、「喜は心をやぶる」と言って、「喜」という感情が過度になると、五臓の中の「心」という臓に悪影響を及ぼす、
と考えます。
(ここでいう”心”は、西洋医学の言う心臓(Heart)のことじゃないよ!)
(因みに出典は『黄帝内経素問 陰陽応象大論(5)』です。)
特に「心」の機能のうち、主に正常な精神活動をつかさどる機能が障害されて、情緒不安定や精神異常、不眠など、様々な症状を引き起こす、と考えます。
ですから、東洋医学では、健康な人生には、好きなことをして、
「気が緩む」
時も必要だけど、ここ一番、
「ピシッと緊張する」
時も人間には必要だ、と考えている訳です。
これもやっぱりバランスなんです。
・・・なるほど、確かにそうですよね?
自身の日々を振り返った時、実感される方も多いのではないでしょうか?
・・・ところで、今回は“緊張”と”緩和”の話になりましたが、
「緊張と緩和の法則」
と言えば、落語会の巨人である2代目桂枝雀さん(1939-1999)が提唱した「笑いの法則」ですね。
知ってる人は知ってるでしょうが、人は緊張する場面で、それが緩和する時笑うのだ、というやつですね。
東洋医学では、「笑い」という感情表現も「心(しん)」の働きと関与する、と考えます。
【参考】
『黄帝内経素問 陰陽応象大論(5)』「・・在聲爲笑.・・」
『同 調経論(62)』「・・神有餘則笑不休.・・」
『霊枢 本神(8)』「・・心氣虚則悲.實則笑不休.・・」 など
お笑い番組や落語を見ていて「笑う」という現象を東洋医学的に考えると、
まず面白いものを見て「喜び」、
↓
そして「気が緩み」、
↓
それにより「心(しん)」が正常に働いた結果、
↓
「笑う」
となる訳です。
・・・ま、そんなこと考えながらバラエティー番組見てる人もいないけど。(笑)
東洋医学ではこのように、五臓(肝・心・脾・肺・腎)が、それぞれある感情、ある感情表現にも関与している、と考えています。
そこらへんの話も、そのうち書こうかな。
では次回は「思」についてです。
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2010.01.30
日常で、「怒」という感情を感じること、ありますよね??
ちなみに僕はほぼ毎日あります(苦笑)
・・・ただ、大事なのは、不愉快なことがあった時にこの「怒」という感情を感じること自体はまったく普通(当たり前)のことであり、
いたって健康的なことです。
これが過度になったり、変に我慢したりすると体に悪影響が出る、と東洋医学では指摘しています。
よく「怒」という感情を感じた時、「頭に来る」とか、「てっぺんに来る」とか、あるいは「怒髪天を衝く」なんて言い方、ありますよね。
これは要するに、体の上部に「気」が集まる、つまり上半身、頭部にのぼせる、ということを言っております。
こういった記載は、『黄帝内経』の中にも出てきます。
【参考】
『素問 挙痛論(39)』「・・怒則氣上・・」「・・怒則氣逆・・」
『霊枢 邪気蔵府病形(4)』「・・若有所大怒.氣上而不下.・・」
『霊枢 五変(46)』「・・怒則氣上逆.・・」、)
だから怒ってばかりいる人は「気」が頭部で渋滞を起こした結果、頭部の血行が悪くなって、鬱滞して鬱熱を生じ、結果的にハゲやすいんです。
(苦笑・・これは半分冗談、半分本気です。)
また、東洋医学には、
「怒は肝(かん)をやぶる」
という言葉があります。
(『黄帝内経素問 陰陽応象大論(5)』です。)
面白いですね。感情の種類によって、ダメージを受ける部分が違う、という考え方は、現代の最先端の脳科学にも通じるものがあるそうです。
とはいえ、まあいつも言いますが、ここで注意しなくてはいけないのは、東洋医学の「肝の臓」と、西洋医学の「肝臓=liver」は別物だ、ということです。
ですので、怒ってばっかりいる人が西洋医学的に肝炎や肝硬変になりやすい、という訳では無いです。
東洋医学の言う「肝の臓」の病変を発症しやすい、ということです。
この場合、東洋医学の言う「肝」の色々な機能のうち、特に
「全身にバランスよく気血を巡らせる働き(中医学のいう”疏泄(そせつ)”の働き)」
が低下し、頭痛やめまいなどなど、上半身を中心に、全身の様々な症状が出てくることが多いように思います。
毎日患者さんを診ていますと、この「肝の臓」の異常によって症状を出している患者さんが、非常に多いです。
(ほとんどと言ってもいいと思います。)
現代人は、怒り過ぎ、あるいは我慢しすぎなんでしょうかね・・。(苦笑)
愉快なことがあれば、その分不愉快なこともある、これは当り前の話です。
それに対して「普通に」怒れる日々を送りたいですね。
(・・・コレがなかなか難しいんだけどネ(笑))
次回は「喜」についてです。
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2010.01.26
清明院では、「一本の鍼の効果」というものに、大変こだわっております。
これはなぜかというと、一本の鍼で患者さんがどのように変化したかを正確に捕まえることによって、自分の診断が正しかったかどうかが明確になり、
正しくなかった場合は「どこがどう」間違っていたかがハッキリするためです。
あっちもこっちも鍼を打ってしまうと、患者さんの肉体的な負担が増える上に、治療の焦点がボケるため、何が効いてて、何が効いてないかを考えることが非常に難しくなります。
(しかしもちろん、そのやり方でも治ることはあります。その場合はいいのですが、大事なのはむしろ治らなかった場合だ、と僕は考えています。)
ですので、まったくごまかしのきかない治療であります。
「鍼の究極は一本だ!」というのは藤本蓮風先生の言葉ですが、僕も全くその通りだと思います。
・・・これまでこのブログに書いてきたように、患者さんの「陰陽」のアンバランスを整えるのが鍼灸治療だ、という考え方で、「五臓六腑」だとか「邪気」だとかいう存在を意識して治療を行う場合に、
問題点を色々な方法で絞り込んで絞り込んで、突き詰めていくと、最終的には二者択一になる、というのは当然のことだと思います。
結局、それが一番シャープな変化を患者さんの体に起こさしめる訳ですね。
毎日患者さんを治療していると、このことを非常に実感します。
あっちこっちいじくり回した結果、結局治らなかった、あるいは治ったけども、いま一つどうしてだか分からない、という苦い経験を、僕は何度もしています。
今日も明日も、「一本の鍼の効果」というものを凝視し続けようと思います。
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