東洋医学 伝統鍼灸 清明院

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『皇漢鍼灸醫学雑誌』

2014.03.06

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最近、縁あって、この『皇漢鍼灸醫学雑誌』という書物に出会った。

この雑誌が書かれていた時代は明治。

書いていたのは「皇漢鍼灸醫学会」という学会の面々。

この明治時代は、維新があり、開国し、欧米列強に対する富国強兵政策の流れの中で、ついに、

”西洋医学を修めたもの「のみ」を医師とする”

と決まった時代。

 

(明治7年(1872年)「医制」の制定)


この、東洋医学としては不遇(というか受難)の時代に、浅田宗伯、山田業広、和田啓十郎、湯本求真など、アツいアツい東洋医学の医者がいたことは知っていたが、

どちらかというと漢方薬の話が多く、鍼灸の医者の話はあまり聞かなかった。

・・・でも、やっぱりいたのね。(笑)

アツい鍼灸医☆

雑誌の内容を読むと、それでもやっぱり西洋医学の話が多いが、随所に散りばめられた当時の先生たちの態度は、今の僕らと通じるところもある。

時代に迎合するではなく、この医学の本質をこそ訴えよう、この医学にはその力がある、という立場。

文章の端々から、鍼灸医学にかける真剣さが伝わってくる。

まだザッとしか目を通してないけど、面白かったのは、この皇漢鍼灸医学会の主幹である辰井文隆先生の言葉。

「湯液は内を治し、鍼灸は外を治す、という考え方は、間違って理解されている!」

という指摘。

湯液は湯液、鍼灸は鍼灸だ。

もっと言えば、鍼は鍼、灸は灸。

どれも独立した立派な医術だ。


この時代の真剣さと危機感が、うらやましく思う時もある。

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「柴胡桂枝湯証」という状態 その6

2014.02.25

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これまでのお話・・・

 


「柴胡桂枝湯証(さいこけいしとうしょう)」という状態
 
「柴胡桂枝湯証」という状態 その2
            
「柴胡桂枝湯証」という状態 その3
                
「柴胡桂枝湯証」という状態 その4
     
 「柴胡桂枝湯証」という状態 その5
                   参照

 


では続きです。

 

というか、そろそろいったん終わります。(*‘∀‘)

 


僕のような、しがない鍼灸師ごときが、この、非常に、専門的知識と経験なくしては語れない、漢方薬というものについて、あれこれエラそーに語ってると、

 

漢方家の先生方から怒られちゃいますんでね。(笑)

 


まあ今回、

「柴胡桂枝湯」

という、非常に有名な漢方薬の紹介を通じて、

「小柴胡湯」と「桂枝湯」

とか、それを考える上でバックボーンになる考え方としての

「六経弁証」

や、

「合病」「併病」「壊病」

という、いわゆる”カゼ”に対する東洋医学的な考え方の基本中の基本を紹介しました。

 

僕ら鍼灸師も、漢方薬と手法は違えど、いわゆる”カゼ”を治療するときは、こういう考え方の素養がないと、無理だと思います。

 


カゼだからどこそこのツボに鍼だとか灸だとか、そんなもんじゃないんです、東洋医学は。

 


だから、例えば「柴胡桂枝湯」を飲むことで起こるような変化を、鍼でやろうとすれば、参考として挙げられるツボはいくつかあるけど、

実際は無数のパターンが存在するし、手法(刺し方)も含めて無限にある、と思います。

 

大事なのは、その患者さんの病態が、今まさに「柴胡桂枝湯証」の状態に相当するかどうかが、その術者に分かっているかどうか、ということなんです。

 

そうであれば、ツボがどこであれ、手法がどうであれ、治療した後の変化から、その治療が間違っているか間違っていないか、あるいはもっといい方法はないか、という検討が出来るのです。

 

東洋医学的に。

 

「柴胡桂枝湯証」という状態 その7    に続く

 

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「柴胡桂枝湯証」という状態 その5

2014.02.18

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これまでのお話・・・

 


「柴胡桂枝湯証(さいこけいしとうしょう)」という状態
 
「柴胡桂枝湯証」という状態 その2
            
「柴胡桂枝湯証」という状態 その3
                
「柴胡桂枝湯証」という状態 その4
                         参照

 


では続きです。

 

前回、東洋医学において、いわゆる”カゼひきさん”を考えるうえでの基本となる、6パターンの分類を紹介しました。

 


そういう風にカゼひきさんを6パターンに分けて考えることを「六経弁証(りっけいべんしょう)」なんて言ったりします。

 


その六経弁証の六通り、一つ一つのパターンが、場合によっては「同時に」出てくる場合がある、というお話もしました。

 


この話のテーマである「柴胡桂枝湯」は、その6パターンの中の”太陽病”と”少陽病”が同時に起こった場合だ、という話もしました。

 

そうやって、同時に出てくる場合にも、実はその出方によって、分類があります。

 


それを「合病(ごうびょう)」とか、「併病(へいびょう)」と言います。

 


「合病」の場合は、上記の6パターンのうち、2,3のパターンが同時に、先後の別なく同時に発生するものをいい、

 


「併病」の場合は、あるパターンが治らないうちに次のパターンが生じたもので、先後の区別があるものを言います。

 


因みにちょっと話は逸れますが、「壊病(えびょう)」という考え方もあります。

 


これは6パターンのうち、あるパターンを呈していたものに対して、間違った治療をして、悪化させてしまい、違うパターンに移行(悪化)してしまったモノを言います。

 


・・・まあさておき、たとえ、太陽病と少陽病が同時に存在するケースであっても、「合病」と「併病」では、治療方法が違います。

 


漢方薬が違います。

 

ということは、鍼灸で言えば、ツボが違ったり、同じツボでも刺し方が全然違ったりするわけです。

 


こういう風に考えていくと、単なるカゼひきと言っても、東洋医学ではめちゃめちゃ多彩なパターン分けを想定している、ということです。

 

西洋医学では、鼻水やせきやくしゃみ、のどの痛みや節々の痛みなどがあった時、単なるカゼか、インフルエンザか、アレルギーか、ということを非常に重要視しますが、

 

東洋医学では、たとえば上記のような分類方法を使って、カテゴリー分けして治療します。

 

(もちろん、いわゆる”カゼひきさん”を考える上での物差しは、六経弁証だけではありません。)

 


「柴胡桂枝湯証」という状態 その6    続く

 

 

 

 

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「柴胡桂枝湯証」という状態 その4

2014.02.09

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これまでのお話・・・

 


「柴胡桂枝湯証(さいこけいしとうしょう)」という状態
 
「柴胡桂枝湯証」という状態 その2
            
「柴胡桂枝湯証」という状態 その3
                      参照

 

 


では続きです。

 

 

ここまでで、柴胡桂枝湯という薬は、小柴胡湯と桂枝湯を合体させた薬であり、東洋医学的なカゼひきのパターン分類である、

「”太陽病”と、”少陽病”が同時に存在する場合」

に治療する薬である、というお話をしてきました。

 


今日はこの、

1.東洋医学的なカゼ引きのパターン

と、

2.そのパターン分類が、同時に存在する場合

について簡単に触れておきます。

 

1.については、張仲景が書いた、東洋医学の大古典である『傷寒論』の中に、詳しく述べられております。

「張仲景(ちょうちゅうけい)」という人物
『傷寒論(しょうかんろん)』という本    参照

 


カゼを引いた経験なんてのは、ない人はいないだろうと思います。

 


軽いものでは、寒気が中心だったり、ノド痛が中心だったり、鼻水や咳、くしゃみや痰が中心だったり、熱が出たり、頭痛や節々の痛みがしたりします。

 


中等度のものでは、場合によっては下痢になったり便秘になったり、食欲不振になったり吐き気がしたり、めまいがしたります。

 


重症例では肺炎を起こしたり、内臓の機能不全が起こって、命を落とす場合もあります。

 

『傷寒論』にはこういう、いわゆるカゼ引きの各レベルの状況とその治療法が、詳細に述べられております。

 

これが約1800年前の話です。

 

1800年前も、人間はもちろんカゼをひいていたし、医者はそれに真剣に対峙していたんです。

 

『傷寒論』は、著されて以降、約1800年もの間、中国、朝鮮半島、日本で歴代の有名な医師達によって踏襲されつつ批判され、現代でもその価値を失っていないという、怪物のような書物です。

 

 

因みに、単純なカゼにとどまらず、西洋医学的には「腸チフス」や「インフルエンザ」、「マラリヤ」など、重篤な感染症の治療法も含む書物、という解釈もあります。

 

『傷寒論』では、浅いレベルのものから、深いレベルのものまで、

 


太陽病(たいようびょう)     浅い
  ↓               ↓
陽明病(ようめいびょう)    
  ↓               ↓
少陽病(しょうようびょう)
  ↓               ↓
太陰病(たいいんびょう)
  ↓               ↓
厥陰病(けついんびょう)
  ↓               ↓
少陰病(しょういんびょう)    深い

 


という名称を付けて分類し、論じています。

 

(この順番については、諸説ありますがネ。)

 


それぞれのレベルにおいて、

”どういう症状を呈し”、

”どういう所見を呈し”、

”どういう治療をすればよくなり”、

”それはどうしてか”

までが、キッチリと、理路整然と、説いてあります。

 


このパターン分けが前提となり、例えば太陽病と少陽病が同時に現れたり、太陽病と陽明病が同時に現れたりする場合についても論じられております。

 


今回のテーマである柴胡桂枝湯は、要するにこの中の太陽病と少陽病が同時に存在する場合に使う薬なんですね。

 

ちょっと話題が広がってきたので、調子に乗って「柴胡桂枝湯証」という状態 その5 に続く(笑)


(この話題、いいね少ないけど、お構いなし!(爆)・・・決して読者に阿らないアティテュード。)

 

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「柴胡桂枝湯証」という状態 その3

2014.02.05

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これまでのお話・・・

 


「柴胡桂枝湯証(さいこけいしとうしょう)」という状態
 
「柴胡桂枝湯証」という状態 その2
               参照

 


では続きです。

 

何やらちょっと難しい話が続いてしまいましたが、小柴胡湯という薬については、以前にもこのブログに何度か登場しております。

 


確認しましょう。
三禁湯(さんきんとう)?
病院での漢方薬の使われ方 その4   参照

 


まあ、よく話題になる薬なんですね。

 


それだけよく効くとも、応用の幅が広いとも考えられますが、どうであれ、薬というのは間違った使い方をすればただの毒です。

 


こないだも患者さんから、病院で漢方薬を出してもらっているが、全然効かない、どうすればいいか、という相談を受けました。

 


漢方薬を飲むならば、漢方薬専門で、何年も、何十年も、真剣に臨床を続けてこられた先生に処方してもらうのが一番いい、というか、その選択「しか」ないと思いますし、

 

僕は患者さんにはいつもそう伝え、場合によっては信頼できる漢方家を紹介するようにしています。

 

鍼灸にしても漢方にしても、生半可な知識や経験で扱える代物じゃない、と思っています。

 


生半可な知識、経験で扱う鍼灸、漢方を受けて、効かなかったり、悪化するという経験をしてしまった人は、大変不幸だと思います。

 


 

まあともかく、柴胡桂枝湯ですが、歴史的には漢の時代の『傷寒論』という古典に初登場します。

『傷寒論(しょうかんろん)』という本 参照

 


そこには、

「寒邪に侵襲されて5、6日経って、発熱し、少し悪寒がし、節々が痛く、少し吐き気がし、みぞおちがつかえるようなものは柴胡桂枝湯で治る!」

と記されております。

 

上記の文章のうち、発熱、悪寒、節々の痛みという症状が”太陽病”、つまり桂枝湯でカバーできる症状であり、

吐き気やみぞおちのつかえ”少陽病”、つまり小柴胡湯でカバーできる症状なのです。

 

では鍼灸ではそれをどうするか、という話も含め、「柴胡桂枝湯証」という状態 その4   に続く。

 

 

 

 

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「柴胡桂枝湯証」という状態 その2

2014.02.04

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前回のお話・・・

 


「柴胡桂枝湯証(さいこけいしとうしょう)」という状態
   参照

 

では続きです。

 

前回、柴胡桂枝湯は、「小柴胡湯+桂枝湯」である、というお話をしました。

 


・・・ということは、柴胡桂枝湯を理解するためには、まずは小柴胡湯と桂枝湯を理解せねばなりません。

 


まず、「小柴胡湯」という薬は、

・柴胡
・半夏
・生姜
・黄芩
・人参
・大棗
・甘草

という、七味の生薬で構成されています。

 


この薬は、東洋医学的には無数にある、カゼひきの病態パターンのうち、”少陽病”という概念でとらえられるパターンの代表格です。

 


ここで、「少陽病」というのはどういうものかというと、

 


「口が苦くて、咽が乾いて、めまいがして、暑がったり寒がったりし、脇腹から肋骨の辺が詰まった感じがし、食欲不振、

胸がモヤモヤして嘔吐したり、あるいは胸がモヤモヤするだけで嘔吐しなかったり、あるいは腹痛し、あるいは動悸し、

小便の出が悪く、あるいは咽の乾きがなく、微熱があったり、咳が出るもの」

という、長ったらしい、しかもややこしい定義の、カゼの1パターンです。

 


これは非常に幅が広い概念だといえます。

 


でまあ、これを治す代表選手が小柴胡湯、ってわけです。

 

・・・で、「桂枝湯」はどうかといえば、

・桂枝
・芍薬
・生姜
・大棗
・甘草

という五味で構成されております。

(因みにこのうちの生姜、大棗、甘草の三味は、小柴胡湯とカブっていますね。)

 


桂枝湯は、”太陽病”というパターンの中の、”太陽中風証”というカゼ引きの、代表的な薬といわれます。

 

ここで「太陽病」というものの定義は、

「脈が浮いて、頭やうなじが痛くて寒気がする状態」

であり、その中の「太陽中風証」というのは、上記の状態に加えて、

 

「汗がダラダラ、ジトジトと止まらないような状態」

 

のことです。

(かなりザックリ言うと、ですが。)

 


太陽病というのは、カゼを引いた、つまり、風邪(ふうじゃ)や寒邪(かんじゃ)を中心とした外邪に侵襲された場合、最初(初期)になりやすい状態です。

 


まあ、それを治す代表選手が桂枝湯、ってわけです。

「風」「火」について
「寒燥」について   参照

 

 

この「桂枝湯」という薬は、実は漢方薬の王様みたいな薬でして、かの後漢代に著された、漢方薬の聖典とも言われる『傷寒論』の一番初めに出てくる薬も桂枝湯ですし、

 

清代の温病学の聖典とも言われる『温病条辨』の一番最初に出てくる方剤も桂枝湯なのです。

 

 

このことは重く見る必要があると思います。

 

 



 

まあまとめると、少陽病と太陽病が同時に起こっているような場合に、それを治す薬が柴胡桂枝湯である、と言えます。

 


また、小柴胡湯と桂枝湯、この2つの薬の構成生薬を見ると、小柴胡湯に、桂枝と芍薬を加えたのが柴胡桂枝湯、とも言えます。

(それぞれの分量抜きに考えれば、ですよ。)

「柴胡桂枝湯証」という状態 その3   に続く。

 

 

◆参考文献

 

神戸中医学研究会 編著『中医臨床のための方剤学』医歯薬出版株式会社

神戸中医学研究会 編著『基礎中医学』燎原

 

 

 

 

 

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「柴胡桂枝湯証(さいこけいしとうしょう)」という状態

2014.02.03

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有名な漢方薬に、「柴胡桂枝湯」という薬があります。

 

この薬がよく効くような状態の患者さんを、鍼できれいに治せると、特にこの時期、大変に喜ばれます。

 

蓮風先生もたまに講義の中で、

「漢方薬の先生にかかるなら、この”柴胡”という薬を巧みに使える先生にかかりなさい。」

とおっしゃいます。

 

東洋医学の聖典である『傷寒論』という本には、実にたくさん”柴胡”と”桂枝”が出てきます。

 


この「柴胡桂枝湯」という薬、中身は

1.柴胡(さいこ)
2.半夏(はんげ)
3.桂枝(けいし)
4.黄芩(おうごん)
5.人参(にんじん)
6.芍薬(しゃくやく)
7.生姜(しょうきょう)
8.大棗(たいそう)
9.甘草(かんぞう)

と、実に9種類もの生薬が入っております。

 


漢方薬の先生は、こういうのを全て機械的に暗記しているのかというと、違うようです。

 


この薬は、もともと”小柴胡湯”という薬に、”桂枝湯”という薬を足したものであり、別名”小柴胡湯合桂枝湯”なんて言われたりします。

 


漢方の先生はこうやって、ある代表的な処方同士を組み合わせたり加減したりして、微妙に効き方を調整しているのです。

 

生薬一つ一つの効能も、もちろん大体把握はしていますが、方剤を自由自在に使い分けるためには、それ以上に、

「代表的な方剤名と、それが作用する範囲」

というものをよく理解しているのだと思います。

 


「柴胡桂枝湯証」という状態 その2    に続く。

 

 

 

 


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腎着(じんちゃく)? その3

2014.01.25

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前回のお話


腎着(じんちゃく)? 
腎着(じんちゃく)? その2
  参照

 

ここまで、”腎着証”について説明してきました。

 


もし、患者さんの病態がこの”腎着証”そのものであるならば、「苓姜朮甘湯」という薬がよく効くよ、ということが『金匱要略』に書いてあります。

 


・・・では、鍼ならどうするか。

 


それを考えるには、この苓姜朮甘湯がいかなるものか、を考えなくてはいけません。

 

この薬の中身は

・茯苓(ぶくりょう)・・・水腫・痰飲の治療および健脾に使用

・白朮(びゃくじゅつ)・・・主として補脾

・甘草(かんぞう)・・・緩和、緩解、鎮咳、鎮痛、去痰薬として

・乾姜(かんきょう)・・・陽虚あるいは寒凝による冷え、寒がり、疼痛

でございます。

 


ザーッとみて気付くのは、腎の臓に対する生薬が入っていないことです。

 

ま、ここがポイントかな、と思います。

 

あくまでも水邪を動かし、散らし、結果的に脾の臓、腎の臓を活性化し、腰に憑りついた水をどかすことで、各症状を治すのです。

 

ということは、刺鍼するポイントは、寒邪、水邪、痰飲を動かす経穴、となります。

 

(全身にたくさんあります。)

 

ちなみに腎、脾、水邪については

「腎」って何ですか?(その11)
「脾」って何ですか?(その9)
カテゴリ 邪気(発病因子)   参照

 

 

・・・とまあ、こんな感じで、漢方薬の話というのは、鍼灸に翻訳して考えることができるのです。

 

東洋医学の文献には、治療の部分が、漢方薬中心に論述されている古典が多いですが、すべて鍼灸に置き換えて考えることができます。

 

そしてそこには、鍼灸治療の様々なヒントや、新たな考え方が隠されています。

 

終わり

 

 

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三禁湯(さんきんとう)?

2014.01.12

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「三禁湯」という名前の漢方薬があります。

 

この薬、実は漢方薬の世界では超有名な「小柴胡湯(しょうさいことう)」という薬の別名です。

 


また、小柴胡湯には「黄竜湯(おうりゅうとう)」という別名もあるようです。

 


・・・三禁?黄竜?? 

 


これ、どういう意味があるんでしょうか。

 


小柴胡湯という薬は、”和解剤(わげざい、わかいざい)”という言われ方もします。

(漢方薬は、その作用でもって、このように色々なグループにグループ分けされます。)

 

”和解(わげ)”というのは、汗をかかす治療も不適、わざと吐かせる治療も不適、便を下す治療も不適な病の場合に用いる手段です。

 

まあ要は病を”ほど良くマイルドにぼかして散らせる”感じでしょうか。

 

小柴胡湯による和解がどういうものかについては、漢方家の間で諸説あるところでしょう。

 

ここは詳しくは漢方の専門家に聞くべきだと思います。

 

鍼灸で和解に相当するような変化を表現するときには、僕はそんなイメージでやっています。

 

ともかく、汗や嘔吐や便を下すやり方を”汗・吐・下(かん・と・げ)”と言います。

 

これを”三法”といったりします。

 

この3つ以外の方法、という意味で、”三禁湯”と呼ぶようです。

 

また”黄竜”というのは、中国の四方(東西南北)を守る神様(玄武、白虎、朱雀、青龍)の中心にいる神様だそうで、

これも、”四方のどこにも偏らない治療”という意味で”黄竜湯”なんだそうです。

 

このように、困ったときに非常に役立つ処方が「小柴胡湯」です。

 

 

 

 

 

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西洋医学との併用

2013.11.29

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今日見えた患者さんが仰った。

「家族から、鍼よりも、専門病院にかかった方がいいと言われているんですが、私としてはこれまで、病院の治療での経過がよくないので、東洋医学がよくて。。。」

と。

こういう場合、清明院はどうするか。

答えは、ケースバイケースです。(爆)

・・・まあ、そう言ってはつまらないので、今日に関しては、

「あ、どうぞ専門病院の先生にもおかかり下さい。それで、その先生の御見解もこちらに教えてください。」

とお伝えしました。

難しい病気になればなるほど、御本人の意向も大事だけど、ご家族の意向も大事。

患者さんがやっている、あるいはやろうと思っている、あるいは家族から勧められている、鍼灸以外のすべての医療をやめさせて、鍼灸治療のみで経過を追えば、

 

その疾患に対して、自分の鍼灸でどれだけのことが出来るのか、ハッキリと結果が出る。

しかし、現代の医療は、難しい病気になればなるほど、病院から出た薬を飲んでいたり、鍼灸以外の何らかの治療を受けている、というのが普通。

もしそれを全て強引に止めさせるならば、鍼灸のみで確実に治すしかない。

そういう、乾坤一擲の大勝負というのは、普段の臨床ではほとんどやらない。

その患者さんに関して、よっぽど自信があって、しかもその患者さんが強硬にそれを求めて、しかもご家族の意向とも一致している場合ぐらいだ。

西洋医学とは、あくまでも「患者さんのための」協力関係。

・・・まあ、こっちが肯定、是認してんのに、頭ごなしに鍼のことを否定してくる、あるいは、肯定してても、露骨にバカにしてくる、

腹立つドクターとかも、まあ居ないことはないけどネ。(笑)

いきおい、喧嘩したくなるけど、そこは、患者さん第一であります。(゜レ゜)


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