東洋医学 伝統鍼灸 清明院

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Search Results for: 脾胃

「梅雨」と「湿」と「土」と「脾」

2011.05.31

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いや~、毎日毎日、お天気がハッキリしませんなあ!


雨でジメジメしてみたり、寒かったり暑かったり、風が吹いたりと・・・。

毎朝、空を睨みつける人も多いのではないでしょうか。

以前、「肝の臓」と季節の関係を簡単に述べたことがあります。

「春」と「木」と「風」と「肝」 参照

 


・・・で、今日は、この時期に問題になりやすい、「脾の臓」と「湿気」の関係について述べてみたいと思います。

清明院でも、慢性的に「脾の臓」や「胃の腑」を患っておられる患者さんや、妊娠中でつわりが出ている患者さんなど、この時期は多少の悪化をみます。

カテゴリ 脾・胃 参照


しかし、鍼でキッチリと対処しますので問題ナシです。

「脾」って何ですか?シリーズで述べたように、「脾の臓」というのは、「胃の腑」と協調しながら、いわゆる人間が生きていく上で欠かせない

 

”消化・吸収機能”

 

を調節してくれています。


そして、この要となる「脾の臓」というのは、体内、それから体外(自然環境)の湿気(余分なお水)に弱いのです。

「余分なお水」というキーワードを含む記事 参照

 


まあしかし、こうして読み返してみると、あらためて書くまでもなく、ありとあらゆる書き方で、すでに書いていますネ・・・。(笑)

 

という訳で、上記のリンクを、よくお読みください。<m(__)m>

 

ホントは今回は、五行の「土」と二十四節気とか、色々絡めてお話ししたかったんですが、いかんせん時間がない・・・。

 

・・・ですのでそれはまたの機会として、まあともかく、こういう時を比較的楽に乗り切るためには、

・水分を必要以上にとり過ぎない

・脂っこい物とか、刺激物とか、極端に熱いもの、冷たいものなど、胃腸(脾胃)に負担のかかるものを食べない

・軽くていいから手足を使った運動をする

・鍼にガンガン来る

「決まり」です!(笑)

 

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「小腸」って何ですか?(その4)

2010.10.30

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これまでのお話・・・

「心」って何ですか?(その7)
「小腸」って何ですか?(その1)
「小腸」って何ですか?(その2)
「小腸」って何ですか?(その3)

 

さーさー、グイグイいきましょう!

 


☆「小腸の腑」と「心の臓」の関わり

 


以前、”腑”にはそれぞれ、関係の深い”臓”が存在する、ということを述べました。

「表裏(ひょうり)」する臓腑 参照

 


「小腸の腑」にも、お相手が存在します。

 


それは「心の臓」です。

 


ではこの二つは、具体的にどのように関わっているのでしょうか。

 


前回(その3)の中で、「小腸の腑」の働きのあらましは述べました。

 


「心の臓」についても、以前すでに述べました。

「心」って何ですか?シリーズ 参照

 


これらを読むと、

「・・・あれー?関係、あんまりなくないすか??」

と思う方も多いのではないかと思いますが、これらはちゃんと関わります。

 


まあ、あまり難しくないように解説しますと、まず「心の臓」というのは、東洋医学では、「心火(しんか)」とか「君火(くんか)」とか呼ばれ、

”火(か)”と付くぐらいですから、非常に陽気の強い臓だ、と考えられています。

 


この”陽気が強い”ということの意味は”極めて動的である”と考えてもらったら、分かりやすいかと思います。

 


ドックンドックンと、生まれてから死ぬまで、片時も休まずに伸び縮みを繰り返し、全身に血(けつ)を送り込んでいる、唯一の原動力ですから、

五臓六腑の中では随一の「超」動的、アクティブ、アグレッシブ極まりない存在です。

 


だから、極めて陽気が強い、言いかえれば、全身を血(けつ)で温める力を担っている、「あたため中心キャラ」、という風に理解できます。

 


次に、「小腸の腑」というのは、脾胃から降りてきた飲食物に対して、”お水”と”固形物”を分けるのがメインの仕事だよ、と前回述べました。

 


・・・ここで、もし皆さんなら、ぐちゃぐちゃのドロドロでべちゃべちゃの、固体とも液体ともつかぬものがあったとして、それから

 

「速やかに」かつ「キレイに」

 

水分を取り出せ、と言われたらどうしますか?

 


1.濾し取るか、

2.とろ火にかけて湯気をキャッチするか、

3.あるいは濾しながらとろ火にかけて、さらに湯気をもキャッチするか、

ですよね?

 

・・・これは、3.が一番速やかでキレイです。

 

人間の五臓六腑の働きには、まったく無駄がないです。

 

東洋医学では、ある意味人体を「完成形」「完全体」と考えていますので、正常な、調和のとれた状態であれば、極めて霊妙に、粛々と、滞りなく、速やかに、生命活動が営まれる、と考えます。

 


当然、「小腸の腑」による、”水分と固形物の仕分け作業”というのも、上記3.のやり方で行われている、と考えます。

 


そしてそれを一番メインとして助けているのが、「心の臓」”あたためパワー”なのであり、その意味で、

「小腸の腑」と「心の臓」は表裏関係にあり、非常に深く関わる

と、東洋医学では考えるのです。


(苦笑・・・今日の話、分かりにくかったでしょうか?分かりにくかったらコメント下さいネ。)

 

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「小腸」って何ですか?(その3)

2010.10.29

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これまでのお話・・・

「心」って何ですか?(その7)
「小腸」って何ですか?(その1)
「小腸」って何ですか?(その2)

 

さー、どんどんいきましょう!

 

☆小腸の働き

 

 

「小腸の腑」は、おへそのちょい上で、「胃の腑」とジョイントする、と考えます。

 


そしてそこに、「脾の臓と胃の腑」で、あらかた吸収された、飲食物の残り物が下りてきます。

 


コレに対して「小腸の腑」は、その残り物の中の”お水””カス”(大便のもと)をせっせと分ける仕事を担います。

 


そして、分けた後の”お水”については、尿のもととなるように、「膀胱の腑」に移動させます。

「膀胱の腑」についても、またそのうち解説します。)

 


この働きにより、小腸よりもさらに下にある「大腸の腑」には、より”カスらしいカス”が下っていくことになり、正常な排便を助けます。

 


もしここ(小腸)で、お水とカスがうまく分けられなかった場合、「下痢」という現象が起こりやすくなります。

 


ただ、勘違いしないでいただきたいのは、「下痢」の原因は他にもあり、「下痢イコール小腸の腑の異常」ではない、ということです。

(苦笑・・・東洋医学では、病的な現象を考える場合、そういう短絡的な考え方はほとんどしません。)

 


まあ要はこの、脾胃から降りてきた飲食物の残りカスの中の”水と固体を分ける”というのが、「小腸の腑」のメインの働きとなります。

 


古代中国の医師たちは、「大腸の腑」の重要な仕事である、”大便のもと”をトイレへと伝え導く、という働きと違って、”水と固体を分ける”という作業をしなくてはならないから、

 

その分「小腸の腑」には太さよりも長さが必要、と考えたんでしょうかねー・・・。

 

(因みに、内臓を実際に取り出して長さを細かく計測した記載は、中国漢代『難経』42難にあります。)

 

 


(その2)に出したような臓腑の図を書いた人に、色々と質問してみたいもんですが、それは時代が違うから、かないませんしねー・・・。

 


結局、現代を生き、東洋医学を実践する我々は、まずは鍼灸医学の根本思想や哲学が西洋医学のそれと違う、ということをキチッと認識すべきだし、

それをしたならば、あとは東洋医学が数千年にわたり採用している説に法り、治療技術を研鑽していくのが一番いいと、僕は思っています。

 

まあ、こう言うと、聞く人によっては僕が頑固で偏屈に、東洋医学にこだわってるように聞こえるかもしれないけども、これまで、この考え方で毎日患者さんをやっていて、

「あーなるほど、確かに東洋医学が言っていることは正しいナー。」

という風に僕自身が実感することが出来たので、自身の実体験からこのように考えている、というだけの話です。

 

 


西洋医学をやるのは西洋医師にお任せすればいいことであって、僕らは「専門家」としてこの医学を徹底的に学ぶことに、個性や誇りを見いだせるんじゃないかと思います

 

 

僕らが持っているのはメスや西洋薬ではなく、あくまでも「鍼とお灸」であり、僕らが相手にしているのは患者さんの「治る力」である訳です。

 

 

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「小腸」って何ですか?(その2)

2010.10.25

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これまでのお話・・・


「心」って何ですか?(その7)

「小腸」って何ですか?(その1)

 

ちょっと空いちゃったけど、続きいきます!

 


☆「小腸の腑」の位置

 


東洋医学では、「小腸の腑」は、「胃の腑」「大腸の腑」の間に位置するよ、と説きます。

 


これだけ聞くと、なんだ西洋医学と同じじゃん!と感じる人もいると思うけど、これも内容がやっぱり全然違います。

 


以前書いたように、東洋医学のいう「胃の腑」というのは、「脾の臓」と密着しながら、腹部(おへそとみぞおちのちょうど真ん中ぐらい)に位置する、と考えられています。

「胃」って何ですか?(その2) 参照

 

 


図を出すと、


脾胃(臓腑経絡詳解)

 

(江戸期、岡本一抱(1655-1716)『臓腑経絡詳解』より)

 

 

・・・こんな感じとか、脾が胃に巻き付いて蠕動運動を説明するときの状況としては

 

 

 

脾胃(竹山師匠)

 

こんな感じでしたね??

 

(ホジュン『東医宝鑑』より)

 


「大腸の腑」というのは、下腹部(おへそより下)にあります。

「大腸」って何ですか?(その2) 参照

 

 


コレも図を出すと、

大腸(類経図翼)

こんな感じでした。

 

(中国明代、張景岳『類経図翼』より)

 


そしてこの2つの腑の間に、「小腸の腑」は位置しています。

 


図を出すと、

小腸(類経図翼)

こんな感じです。

 

(これも『類経図翼』より)

 

これらの図をみると、いかに東洋医学が「内臓の、写実的な形態の把握」について無頓着かがよく分かると思います。

 


いつも言うように、これは当然の話です。

 


だって昔は麻酔もないし、手術したりとか、安全にいじくれないからです。

 


治療する上で問題にすべきだったのは「形態」よりも圧倒的に「機能」の方だったワケです。

 


とはいえ、大腸の腑と小腸の腑は、形(形態)がよく似ています。

 


やっている仕事(機能)もよく似ています。

 


しかし、違いはあります。

 

この辺の話は、「大腸」って何ですか?(その2)にて、少し述べました。

 

 


次回は、そのお話。

 

 

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「大腸」って何ですか?(その4)

2010.10.08

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前回までのお話・・・

「肺」って何ですか?(その12)
「大腸」って何ですか?
「大腸」って何ですか?(その2)
「大腸」って何ですか?(その3)

 

・・・前回までで、

・「大腸の腑」のカタチ、

・飲食物が入ってから出ていくまでの通り道

について、あらかた述べました。

 

今回は、その「大腸の腑」の働きについて、です。

(今日の話は、苦手な人はごはん食べながら読まないでね。お通じの話を書きますので。(笑))

 

コレはですねー、「大腸」そのものに限って言えば、めちゃめちゃシンプルです!

 


・・・ただこれも、実際は様々な臓腑が大腸と関わって、働きを成立させているんです。

 


だから細かく言うとなかなか複雑で、一筋縄ではいかない場合もあります。

 


しかし、今日はつとめて簡単に述べてみたいと思います。

 


☆便をトイレに伝え導く

 

まず、メインの働きとして、当たり前ですがコレが重要です。

「大腸の腑」がこの働きを最大限発揮する上で欠かせないのが「肺の臓」の働きだよ、という話も、以前にしました。

「肺」って何ですか?(その11) 参照

 

コレがうまく出来ない状態が、いわゆる「便秘」ってやつです。

 

「便秘」が起こってくる原因というのも、実は様々なものがありますが、最終的には「大腸の腑」で大便を”伝え導く”ことが滞ったものを「便秘」と呼びます。

 


言うまでもなく、”導く”ってどこにかと言うと、”トイレに”です。(笑)

 


また、ただ単に伝え導いてる(素通りしてる)訳ではなくて、「小腸の腑」から送られてきた”ウンチのもと”に対して、「大腸の腑」も、何かをしているはずですよね?

 


・・・一体、何をしているんでしょう。

 


☆「大腸」と「お水」

 


飲食物というのは、お腹の中(脾胃)に入って来た時はすでに、ぐちゃぐちゃのドロドロになっています。

 


これは噛んで、唾液や飲み物と混ぜるからですよね?

 


この時点ではまだ、皆さんがよく知っている「大便」の姿とは全く違います。

 


それが、「脾胃」「小腸の腑」に、ぐんぐんと水分を吸収され、ついでに体内の不要なものとも混ざり合い、徐々に”あの”姿になっていく訳です。

 


ということは当然「大腸の腑」でも、最後の「使えるお水」を体内に取り込みます。

 


また、それと同時に、”ある程度”大腸そのものが潤ってないと、正常に便を下に送っていけない、という面があります。

 


大腸でお水を吸収し過ぎて、便がパサパサになっちゃったら、動かなくなっちゃうわけです。

 

これも「便秘」になりますね。

 


逆に大腸が潤い過ぎてビシャビシャになっちゃったり、うまくお水を吸収しきれなかったら、今度は「下痢」「軟便」です。

 


ただ、先日言うように、「下痢」という現象は、一概に悪い現象とも言い切れない部分があります。

治療の後に下痢が出た! 参照

 


この、どれだけ水分を吸収するか、便の潤いの程度については、実は「腎の臓」も深く関わってきます。

 


「腎の臓」については、また後ほど説明するとして、このように、「肺の臓」やら、「腎の臓」やらが深く関わり合いながら、毎日の何気ない「排便」という、

 

生命の営みを支えてくれている訳です。

 


市販の便秘薬で治らない、便秘や下痢などの、お通じの異常、、東洋医学が大変いいと思います。

 


毎日のことですからネ。

 

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「大腸」って何ですか?(その3)

2010.10.06

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前回までのお話・・・


「肺」って何ですか?(その12)

「大腸」って何ですか?
「大腸」って何ですか?(その2)

 

☆前回の補足


前回、東洋医学の言う、「大腸の腑」「小腸の腑」の図を示して、その”形態的な”特徴の差とその理由を述べました。

 


今回は、ちょっとその補足をしたいと思います。

 


人間は、みんなみんな、毎日「口」から”飲食物”を取り入れています。

 


そしてそこから、生命を維持するのに必要な栄養分を、体の中に摂りこみ、不要なものを「大便」「小便」「汗」「その他の排出物」によって外界に排泄していく訳です。

 


これが出来なくなると、実に様々な症状が出てくる訳ですね。

 


もし、これらが出来ないまま治らず、これらの働きが完全に停止したまま戻らなければ、生物は死んでしまいます。

 


・・・具合悪くて何日か食べてない、と言う人はたまにいても、”何年も”食べてない人とかはいませんよね?

 


こないだニュースで数十年間、何も食べてないという、インドかどっかの修行僧が紹介されてたけど、あの彼ですら、水は飲む訳です。(笑)

 


ちょっと話がそれたけど、要するに東洋医学的な、飲食物の通っていく順番は、

1.口
  ↓
2.食道
  ↓
3.脾胃
  ↓
4.小腸
  ↓
5.大腸
  ↓
6.トイレ

という順番です。

(西洋医学と似ていますが、それぞれの持つ意味が違います。)

 

このうち、人間の栄養である”気血津液(きけつしんえき)のもと”が摂りこまれるのは、3.4.5.のフェイズ(段階)です。

 

この中で最も重要なのが3.のフェイズであり、これについては以前述べました。

カテゴリ「脾胃について」参照

 

次に重要なのが4.最後が5.です。

 

 

4.の重要性については、いずれ述べます。

 


・・・となると、「大腸の腑」って、あんまり重要じゃないのでは!?と思う人もいるかもしれませんが、そうではないのです。

 


ここでは、あくまでも「相対的な」重要度を言っただけであって、「大腸の腑」は、人間の

”飲食物の摂取~排泄”

までのプロセスにおいて、必要不可欠なポジションを占めています。

 


上記のような理由から、「脾胃」においては「脾の臓」「胃の腑」にぴったりと密着し、臓と腑とで協調しながら、速やかに栄養吸収を行い、「小腸の腑」においてはクネクネと細くうねっていることで、

 

飲食物を長くとどめ、「大腸の腑」ではその残りカスをスムーズに、かつ余すことなく体外に排出するため、太く、うねりも軽い構造を持っている、と、東洋医学では考えたのでしょう。

 


・・・長くなっちゃったので、機能の話は次回に持ち越しましょ。(笑)

 


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「大腸」って何ですか?(その2)

2010.10.02

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前回までのお話・・・

「肺」って何ですか?(その12)
「大腸」って何ですか?

 

☆「大腸」のカタチ

大腸(類経図翼)

↑これが、東洋医学の言う、「大腸の腑」の形であります。

 


「また・・。ちょっとテキトー過ぎない?」

と思う人もおいででしょう。

 


しかし、これでよいのです。いつも述べているように、これはこれで意味があるんです。

 


さらに参考に、ここで「小腸の腑」の画像も出してみましょう。

小腸(類経図翼)

 

↑↑「小腸の腑」はこんな感じとなります。(笑)

 


ちなみにこの2つの図は、中国、明の時代の大名医、張景岳(ちょうけいがく)の代表的な著作、

『類経図翼(るいきょうずよく)』

からの引用です。

 

この時代では既に、中国医学界は、西洋医学的な写実的な解剖図とも接触していたはずです。

 


・・・にもかかわらず、こういった表現を変えなかった、というところに大きな意味がある、と思います。

(日本との対応の違いも含めて、ネ。(苦笑))

 


2つの図を見比べた感じでは、

1.両方とも管空状になっている

2.両方ともウネウネと曲がりくねっている

3.大腸の方が曲がりくねり具合がゆるい

4.大腸の方が太い

・・・ぐらいがすぐに見て取れます。

 


1.については、飲食物の通り道だからです。

 


飲食物はここをゆっくりと通過しながら、大事な大事な「気血津液(きけつしんえき)」のもとを体に取り込まれる訳です。

 


2.については、もしここがストレートになってたら、すぐに飲食物が通過してしまいますが、ウネウネしていることで、あえて飲食物を留める構造になっています。

 


「脾胃」で吸収したにもかかわらず、さらに十二分に、「気血津液のもと」を取り出す必要がある訳です。

カテゴリ「脾胃について」参照

 


3.については、口から入った飲食物は、「脾胃」「小腸」であらかた栄養分を吸収し尽くされている訳ですから、「大腸」にはそんなに長く留める必要はない訳です。

 


なので「小腸」よりも短く、太くなっています。

 


・・・ということで、コレ、とっても簡単でしょ!?

 


東洋医学における「内臓の形態」に対する認識が、このようにシンプル極まりまないものになったのは、ある意味当たり前です。

 


だっていじくれないんだから。

 


麻酔なんてないし。

 


でも逆に言えば「形態面」に対してはこの認識でも、「機能面」さえキチッと理解しておけば、大概のものには対応できた、ということです。

 


東洋医学はそういう情報の宝庫なのであります。

 

 

人体に対する侵襲性を極力低く調整できるなら、それに越したことはないですよね。

 

 


次回からは、ちょっと今回の補足をして、その「機能面」のお話。

 

 

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「肺」って何ですか?(その10)

2010.09.12

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これまでのお話・・・

「肺」って何ですか?(その1)
「肺」って何ですか?(その2)
「肺」って何ですか?(その3)
「肺」って何ですか?(その4)
「肺」って何ですか?(その5)
「肺」って何ですか?(その6)
「肺」って何ですか?(その7)
「肺」って何ですか?(その8)
「肺」って何ですか?(その9)

 

☆「肺」と「お水」

一般によく言われることに、

「人間の体の約60%は水分!!」

という言葉がありますよね?


今年の夏も、熱中症で多くの方が亡くなりました。


だからこの言葉を、つい最近聞いた人も多いのではないかと思います。

暑くて汗をかき過ぎて、しまいには脱水症状を起こすと、場合によっては生命が危ない。

だから人間の健康は、一つには、この水分の出納(出入り)がうまくいっているかどうかにかかっている、と。

(・・・ただ、だから誰も彼もガンガン飲め、というのは、いかにも短絡的で僕は嫌いなんですがネ。)

僕もこのブログで、以前から再三、東洋医学における「水分」と「健康」の関わりの重要性を説いてきました。


患者さんの質問
たくさん飲んだ方が健康に!?
どうしてムクむの?
どうしてムクむの?(その2)
「湿熱」について
「脾」って何ですか?(その5)   などなど参照


これらを読んでいただくと、


量的に余分なお水、あるいは質的に偏ったお水、あるいはその両方
   ↓
胃腸に入る
   ↓
受け止めきれない(うまく捌ききれない)
   ↓
体内に余分なお水の停滞発生
   ↓
胃腸および全身の働きが弱り、諸症状発生

 


・・・という、簡単なメカニズムがご理解いただけるんじゃないかと思います。


このメカニズムから言えば、お水と直接関わるのは、五臓六腑で言うと「脾胃」や「小腸」「大腸」であり、他の臓腑はあまり関係ないようにも思えます。

しかし、そんなことはないのです。


「余分なお水」と「脾胃、腸以外の臓腑」は大いに関わります。


・・・「めちゃめちゃ」関わります。(笑)


ではどう関わるのか、という問題です。


人間に備わった、主な「余分な水分排出機構」というのは即ち、「発汗」、「排尿」、「排便」ですよね?


このうち、特に中心になるのが「排尿」と「発汗」ですよね?

例えば、「肺」って何ですか?(その6)で述べたように、「肺の臓」には、気を降ろす働きがあります。


気を降ろし、全身に気をくまなく巡らせる、というのは、肺の重要な働きでしたよね?


「気を降ろす」ということは、最終的には「下焦に降ろす」と考えていただいて差し支えない。


ということは、

「下焦に存在する”腎の臓”や”膀胱の腑”に降ろす」

と考えてよい。

「腎と膀胱」の重要な働きの一つは、

「尿を作って(溜めて)体外に排出すること」

です。

カテゴリ 「腎・膀胱」 参照

 

この働きに大きく関わる(助ける)のが、実は、”気を降ろす”働きを持った「肺の臓」なんですよ。


・・・そして、「発汗」ですが、発汗するところはどこかと言えば当然「皮膚」でございます。

「肺」って何ですか?(その7)で述べたように、その皮膚(皮毛)をつかさどるのは「肺」でございましたよね?


さらには、「余分な水分排出機構」の中では脇役である、「排便」に関しても、実は「肺」は大きく関わります。

 


長くなってきたので、その話は次回・・・。(笑)

 

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「肺」って何ですか?(その3)

2010.08.26

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これまでのお話・・・


「肺」って何ですか?(その1)

「肺」って何ですか?(その2)

どんどんいきましょう。

 

☆肺のカタチ

東洋医学の言う「肺の臓」の形は、実はとても興味深いものです。

 

肺の臓(医学原始)

 

↑↑中国清代、王宏翰『医学原始』(1692)より

 

 

これまた、一見、

「は?何すかコレ?」

ですよね。(笑)


でも、東洋医学がこの形で「肺」を表記したのには、当然大きな意味があります。

 


この形は、実は他の臓腑で言うと「肝」にそっくりです。

「肝」って何ですか?(その7) 参照

 

「肝」の時は、「肝」が「血(けつ)」を蓄える働きが、植物の葉っぱが養分を蓄える働きに似ていることから、葉っぱの形をしていると考えた、と説明しました。

 


では、「肺」は何を蓄えるんでしょう。

 

答えは「気」です。

 

 


「肺」は、そのすぐ下の、中焦に存在する「脾胃」が飲食物から取り出した「気血のもと」が、脾の働きによって上焦に持ち上げられたものと、

「肺」自身が天空から吸い込んできた「清らかな気」とをドッキングさせて、全身に行きわたらせる、という重要な働きを持っています。

カテゴリ「脾胃について」参照

 

このような働きを指して、

「肺は気をつかさどる」

なんて言われたりします。コレについては、重要なので後ほどもう少し詳しく述べようと思います。

 

そして、前回書いたように、「肺」は全身の清と濁の「気」を、絶えず交換しています。

 


これは植物の葉っぱの光合成やガス交換によく似ていますね?

 

古代の中国人は、実際に解剖してみた場合の、”写実的な”内臓の様子をそのまま書き残すのではなく、その臓腑が持つ「機能」に着眼、重視して、臓腑の形態を描き示しました。

 

個人的には、あるものをそのまま書くよりも、その方が賢い(というかシャレてる)気がします。

(まあそこは、好みの問題だけどネ。)

 


さて、この写真の上の部分に、「氣管」がくっついているのが分かるかと思いますが、そこに、

「肺管九節(はいかんきゅうせつ)」

と書いてあることに気付くと思います。

 

 

また、

「六葉 両耳」

コレにも目がいきますよね?これらにも当然、深い意味があります。

 

「九節」に関しては、氣管の節目の間の数であり、「六葉両耳」というのは、「肺」を構成する葉っぱの数が全部で「八枚」ある、ということを教えています。

 

以前、「東洋医学」と「数学」に書いたように、この医学に数字が出てきた時には、ほぼ間違いなく、特別な意味があります。

 

ですからこの「九」と「八」にも、当然意味が隠されている訳です。

 


さて、その説明は長くなりそうなので次回、お楽しみに♪

 

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「肺」って何ですか?(その2)

2010.08.25

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これまでのお話・・・

「肺」って何ですか?(その1)

 


・・・今日、患者さんから、

「五臓六腑の話し、分かりやすいです!楽しみにしてますので、どんどん書いて下さい!」

と言われ、すっかり上機嫌なので、続きを書きます。(笑)

 

☆肺の位置

これは、前回も書きましたが「胸部」です。

東洋医学では、人間の体の「膈(かく)」から上の部分のことを「上焦(じょうしょう)」と呼びますが、

(「膈」についてはこちら参照)

「肺の臓」はまさしくこの”上焦”「胸部」に位置します。


そして、胸部にはもう一つ、重要な臓である「心」があります。

ではこの「心」と「肺」との位置関係はどうかと言うと、

 

「肺」の方が「心」よりも上にあり、ちょうど「心」に乗っかったような位置関係

 

にあります。

 

そして、以前書いたように、「心」と「肺」は、それ以外の3つの臓と比較すると、相対的に結びつきが強い、と考えられています。

 

これは東洋医学では、「氣管(きかん)」という、空気の通り道で、心と肺が直接つながっているためだ、としています。

(形態的には、ですよ。機能の話は追々しましょう。)

 


☆「肺」と「呼吸」

 


東洋医学の言う「肺」は、ちょうど「ふいご」のような役割を果たす、と考えています。

 


要するに空気を吸ったり出したりする訳です。

(簡単ネ。)

 

ここで大事なのは、

天空の清らかな空気(清気)を取り入れ(吸)、

体内の汚れた濁気(だっき)を排出する(呼)、

という風に、単なる出し入れではなく、「気の清濁入れ替え作業」を行っている、という考え方です。

 


東京なんかにいますと、全然「天空の清らかな空気」という感じがしませんが、生活できる、ということは、これでもまだ何とか「清らか」なようです。(苦笑)

 

この「清らかな空気」というものが、体内を巡る最も重要な「気」というものの原料の一つになります。

 


「気」の原料は他に何があるか、と言うと、「飲食物」です。

カテゴリ「脾胃」について 参照

 

人間が外の世界から取り入れているものは「空気」と「飲食物」だけです。

基本的には、それ以外のものは取り入れることは出来ません。

なので、結局はこの2つから「気」を作り出し、不要なものは大小便と汗などによって体外に排出することで、生命を維持している訳です。


逆に言うと、それしか出来ないんです。

 


人間ていうのは。

 


昔っから。

 


・・・東洋医学を「古い」という人がいるが、僕はそうは思いません。

人間自体の基本が変わってないんだから、東洋医学の基本原理だって変化する必要がないんです。


少なくともここ数千年は。

対して、この数百年で劇的に変化した西洋医学。

 


「医学」としての完成度が高いのはどっちでしょうかネ・・・。

 


ちょっと話がそれたけど、「肺」の基本的な機能は何と言っても「呼吸」だ、というお話でした。

 

 

次回に続く

 

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