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2018.08.26
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これまでのお話
「肺胃不和」という証 4 参照
◆「胃の和降」って何じゃい??
前回までで、東洋医学固有の「肺の臓」というものの重要な生理作用の一つである「宣発・粛降」について、ごく簡単に説明を加えました。
今日は「胃の腑」の重要な生理作用である「和降」について、少し掘り下げてみたいと思います。
「胃の腑」についても、かつて書きました。
以前書いた際に強調したのは、「胃の腑」は隣接する「脾の臓」とワンユニットになって、生理作用を発揮しているということで、脾の臓の重要な生理作用である「昇清」に対して、
「胃の腑」は「和降」ということで、全身の気機の、上下のバランサーが脾胃なのだ、というお話をしました。
脾は挙げて、胃は下げる。
こうやって全身の気機の上下のバランスを、ほど良く調えている訳です。
・・・で、下げるは下げるでも、肺の臓のように「粛降」と言わずに「和降」あるいは「通降」あるいは脾の昇清に対して「降濁」という言い方をします。
「和」にしても「通」にしても、胃の腑のこの働きで重要なのは、”滞りなく降ろす”ということです。
口から入ってきた飲食物を、まずは受納し、腐熟(消化)し、重要な「水穀の精微(気血水の元)」を取り出し(吸収)、脾の臓はそれを上焦に持ち上げ、
胃の腑は残渣物を腸(小腸の腑、大腸の腑)に降ろしていくのです。
この、胃の腑の重要な働きがうまくいかなくなった病機を「胃失和降」と呼んでいます。
そしてこの、”滞りなく降ろす”働きを上(上焦)から支えてくれているのが、肺の臓の「粛降作用」である訳です。
(逆もまたしかりですが)
そして、あらゆる原因で、
1.肺の臓からの粛降の援助が得られなくなって、胃の腑の和降の働きが果たせなくなっているもの、
2.胃の腑からの和降の援助が得られなくなって、肺の臓の粛降の働きが果たせなくなっているもの
を、「肺胃不和」と呼んでいるのです。
続く
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2018.08.18
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こないだ、更年期障害様ののぼせとめまいで、数年前から定期的に通院されている患者さんが仰った。
この2,3年は、長いこと安定していたが、今年の夏前くらいから、軽いものの、少しメマイが出ているのが気になっていた。
やや怪訝に感じながら治療をしていたんですが、ある日、
「ヨモギ茶をやめて、麦茶に変えたら、ずいぶん調子いいみたい。」
と仰った。
この瞬間、
「あーなるほど!!チェックしとけば良かったーー!!!」
と、僕は思ったんですが、さあこれ、鍼灸師の皆さん、意味、分かりますか?
この患者さんに何が起こったか、即座に予測できますか??
ヨモギの生薬名は「艾葉(がいよう)」です。
性味は「苦・辛・温」、帰経は「肝・脾・腎」、効能は「散寒除湿・止痛・温経止血・袪湿止痒」、禁忌は「陰虚血熱」です。
まあ要するに、深い部分を温め、冷えによる痛みを止める効果がある訳です。
ポイントは「陰虚血熱」のものには禁忌で、冷茶として飲んだとしても、性質的には温める作用が強いことを意味しています。
「ヨモギ茶」というのは、ヨモギの煎じ液のようなものですね。
ヨモギの葉っぱを完全に乾燥させたものを、香りがたつまで炒ってから煎じるようです。
そして「艾葉」は何といっても我々にとって重要な、「お灸」の原料であります。
お灸は、ヨモギの葉の裏にある線維から製造します。
我らが東洋医学が、陰の治療が鍼(金属)だとすれば、陽の治療には灸を、そしてその素材として、数ある植物の中から、ヨモギを選んだんですから、
温める作用は相当強く、確かである、と考えていいでしょう。
それに対して、麦茶はどうかと言うと、「大麦」の種子を煎じたものであります。
大麦については以前書きましたが、生薬名としては「麦芽(ばくが)」と言われ、種子を発芽させた状態で使うようです。
これは性味は「甘・平」、帰経は「脾・胃」、効能は「健脾開胃・行気消食・舒肝・回乳(母乳の出をよくする)」、注意点は「回乳に働くので、授乳期」とあります。
(母乳が出過ぎちゃう可能性がある、ってことかな。)
・・・まあ要は、脾胃を調え、気の巡りをよくするものと思っていいと思います。
麦茶が冷やすのか、温めるのかについては、色々な考えがあるようですが、麦茶の製法については発芽した種子ではなく、種子そのものを水洗いして、
乾燥させたものを軽く焦げ目がつくまで炒って、それを煮出すようです。
ですので、寒熱についてはなかなか複雑です。
以前書いたように、「種子」を食べる、と考えれば陰分が強いかな、と思うが、それを乾燥させてしかも炒ってある、しかもそれを煎じた液体を飲む、
という話なので、陽に思いっきり傾けた種子を煎じた液体、と、思えます。
そいでまた、それをキンキンに冷やして飲むと美味いという。。。
(苦笑・・・まあ、”陰的な作用(気味)”のみを抽出した液体、と考えてもいいのかもしれませんね。)
寒熱に関してはそのように、微妙に調整してあるので、温めるとか冷やすという効能よりも、脾胃を調整する、気の巡りをよくする、ここが麦茶のいいとこでしょう。
・・・と、このように考えていくと、熱証の人が夏場にヨモギ茶を飲むよりは、麦茶の方がはるかに良さそうだ、となるわけです。
冒頭の患者さんは、私の診立てでは思いっきり陰虚で熱証(+大いに湿痰)です。
こういうことがあるので、患者さんが日々良かれと思って飲んだり食べたりしているモノには、注意を払わなくてはなりませんし、こちらから先手先手を打って誘導しないといけません。
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2018.02.16
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前回のお話
では続きいきましょう。
◆暈厥の弁証
暈厥には、どんな証が考えられるかというと、以下の通り。
1.気虚
2.血虚
3.血気上逆
4.肝陽上亢
5.痰濁上擾
6.暑熱
『症状による中医診断と治療』には、以上の6つが挙げられています。
(成書によっては、多少多かったり、少なかったりする場合があります。)
1.2.は虚証、3.4.は肝の病変、5.6.は実証です。
臓腑では「肝の臓」の異常が中心であり、病態に虚実あり、ということですね。
だから、一口に暈厥とっても、治療法は、倒れたメカニズムによってそれぞれです。
もし失敗すれば悪化して、深刻な状態になることも考えられます。
ですので、やはり「的確な診断」が重要です。
・・・で、こないだの先輩のケースはどれに該当するかな~・・・、と考えていく訳ですが、ここ(成書)に挙げられているのはあくまでもひな形的なパターンの羅列であって、
これらが時には複合的に、あるいはここに書かれていないパターンでも、暈厥は起こってきます。
ですので、あまり上記の弁証分類に縛られ過ぎて、無理やり当てはめて考えるのも、失敗のもとだったりします。
(教条主義を排す、ってやつね。)
また北辰会方式としては、どういった機序(病因病理)で、上記の証による暈厥に至ったのか、の把握が重要でしょう。
(これは、予後にも関わるからです。)
まあ、あくまでも実際の体表所見、当日の患者像を参考に、何が起こったのかを考えるべきだと思います。
そういったことを十分に鑑みつつ、慎重に考えると、あの日、その先輩は倒れる直前に、ホテルの豪華な食事を、普段よりも多くとり、普段ほとんど飲まない酒(ビール)も多く飲んでいました。
(瓶ビール二本ほどかな?)
この時点で、脾胃に常ならぬ負担を強いていたことは十分に考えられます。
(飲食不節→湿困脾土、湿熱中阻、脾失健運、胃失和降などの”病因→病理”が考えられます。)
しかも朝から早起きし、熱海への移動疲れもあったことと思いますし、研修会ですから、精神的緊張もあったことと思います。
(睡眠不足→気虚や血虚、新幹線での長時間同一姿勢、精神的緊張→肝鬱気滞、気滞血瘀などが考えられますね。)
しかも倒れる直前に、露天風呂にて長湯をしている。
長風呂では、肉体的緊張は緩み(理気活血疏肝)つつも、あまりに長ければ、疲労(気虚や血虚)は助長される面があります。
また、冬場の露天風呂ですから、そこで風寒邪を感受した可能性もある。
(その場合は気が急激に上逆傾向になります。)
ただ、横で見ていましたが、湯舟には肩まで浸かっておりましたし、一緒に入っていて、そこまで風も強くなく、冷たい風を受けていた感じはしませんでしたね。
(そして、風呂から上がった瞬間、一瞬”左に”フラッとよろめいたのが少し気にはなりました。)
風呂場での会話にも特に参加しておらず、そこで何か七情が乱れるようなことはなかったのではないかと思います。
(これは推測ですが。)
その後、脱衣所で急に後ろにバターンと倒れた時、すぐさま駆けつけて脈を診ていた先生が、
「沈んで細くて堅いけど、力はあります。重按がやや弱いです。」
と仰っていました。
この脈は、その後すぐに意識がついた時、その瞬間に、緩みながら浮いてきたそうです。
ここで、気虚や血虚の暈厥では、顔面蒼白、脈無力が特徴で、肝の病変や暑熱では顔面紅潮が特徴ですが、顔色としては、土気色、という感じで、蒼白でも紅潮でもなかったですね。
また、血虚で倒れると、目が落ちくぼんで輝きがない、というのが特徴のようですが、倒れた瞬間、目は一点を見つめ、妙にギラっとしていました。
血気上逆では歯を食いしばるのが特徴ですが、口は開いて、歯は食いしばっていなかったです。
倒れた時に上腹部を触った先生は、極端に冷えていたと仰っています。
また、ご本人が意識がついてから、
「倒れる寸前に悪心がして、気付いたら倒れていた。」
と仰っています。
舌診は、意識がついてすぐの舌は舌背が紫暗、舌腹は淡白傾向、特に舌下静脈が淡白気味だったようです。
(血虚と瘀血の所見が両方出ていますが、血虚が本と診てとれますね)
これらの情報を総合すると、成書の分類からいけば、5.の痰濁上擾が中心でありつつも、背後に若干、2.の血虚があるのでは??となります。
さて、これを治療して、今後同じ状況にさらされても、暈厥を起こさない体にするにはどうしたらいいでしょうか。
続く
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2018.02.02
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これまでのお話
七死の脈⑤ 魚翔脈 参照
◆蝦游脈(かゆうみゃく)
今回は蝦游脈です。
「蝦游」というのは、蛙が一瞬水面に出てきて、また水中にもぐるように、何もない水面にフッと蛙が現れて、またいなくなるように、
たまに打ったかと思うとまた打たなくなる、そういう脈のこと言います。
カエルが遊ぶ、蝦游脈ね。
これは、「脾胃の絶脉」と言われます。
具体的には、浮位(軽く触れた位置)でたまに触れるがすぐになくなる、他の七死脈の中では「魚翔脈」に近い脈です。
「魚翔脈」との違いとしては、より不安定、ということでしょう。
魚が静止した状態でひらひらと尾ひれを動かしているような脈が「魚翔脈」、蛙が時たま水面に出てきて、探そうとすると全然どこにもいない、神出鬼没な脈、
これが「蝦游脈」だということです。
蝦游脈について、蓮風先生は『胃の気の脈診』の中で、発作性頻脈(※1)で最終段階のもの、チェーンストークス呼吸(※2)が起こったり、
場合によってはそれも起こらずに他界する場合がある、と注釈を入れています。
※1発作性頻脈・・・急に脈が速くなるタイプの不整脈。
※2チェーンストークス呼吸(交代制無呼吸)・・・徐々に深くなり、徐々に浅くなる、重篤な状態で現れる特徴的な呼吸。
これは脾胃の絶脉ですから、もともと脾胃を中心とした病理の患者さんが弱ってきて、この脈を呈したら、いよいよかな、となります。
あるいは、五臓全てが弱っているような患者さんが、ある時急激に脾胃に負担をかけて、この脈が出たら、「マズい!」となります。
ここからは私見ですが、魚翔脈もそうですが、この脈が興味深いのは、触れてしばらくすると少し安定する場合があることです。
触れた瞬間、すぐに拍動がなくなり、そのまましばらく見つからなくても、触れていると、それなりに安定してくるように思います。
脈とは患者の病態を映し出すもの、というのは間違いないのですが、そう一方向性の単純なものではなく、術者との双方向の気の動きが反映される面があることが分かります。
続く
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2018.01.26
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北辰会では、以前少し語ったように、脈診については「胃の気の脈診」と名付けて、胃の気の盛衰を診ています。
ここでいう「胃の気」というのは「生命力」そのもののことです。
生命力が盛んであるか、衰えているかは、脈に如実に映し出される、それを明確に感知できるようになれば良い、という立場です。
どんな治療であれ、治療後に胃の気が回復したことを確認できれば、それはうまくいっている、と判断することが出来ます。
(ただ、いくら良性の変化でも、もちろん一過性ではダメですが。)
・・・ところで、脈の中には、「ヤバい脈」というものが存在します。
診た瞬間、「ん、これは良くない!」と判断できる脈です。
こういう脈を見つけたときは、手を出さない方が無難ですが、手を出しても変化が見られないときは、すぐさま自分よりもウデのいい先輩なり、
信頼できる専門病院なりに送るべきです。
そういう脈のことを「怪脈」とか、「七死の脈」と言います。
これについては、江戸中期、山延年(やまのべみのる:名前の読み方について諸説あり)の著書『脈法手引草』の中に書かれています。
『脈法手引草』は、昭和38年に、医道の日本社より、岡部素道先生によって校閲版が出版されています。
(岡部先生、サスガいい仕事してくれてますね~~)
そしてこの中にある「七死の脈」については、蓮風先生も『胃の気の脈診』の中で解説しておられます。
一つ目は「雀涿脈(じゃくたくみゃく)」。
これは簡単に言うと、やや沈んだ不整脈の、速くて堅い脈です。
橈骨動脈の拍動部を少し押さえないと触れず、しかも堅い、速い、不整である、この条件が揃うと、「ヤバい!」となります。
「雀啄(じゃくたく)」というのは、刺鍼の際の補瀉の技術でも使われるいい方なんですが、読んで字のごとく、「雀が啄(ついば)むように」といいうことで、
自然界の雀の嘴の動きを見てると分かるように、速く鋭く、チョンチョンと指に触れる脈、という意味です。
この脈を診たら、あと4、5日は持つけど、脾胃が動いていない脈なので、終いには亡くなってしまう、と書かれてます。
これに相当する脈は、末期がんの患者さんなどで、亡くなられる寸前に何度か診たことがありますが、現代では、病院に入院している患者さんで診ることが多く、
その場合は点滴が入っていることが多く、まるで”ふやけた”ように、強制的に血脈が緩まされていて輪郭がぼやけている面があるため、
「堅さ」についてはさほど感じない、という印象が、個人的にはあります。
続く
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2018.01.21
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このシリーズ、ちょっと空きましたが、せっかくなんで、『金匱要略』、現代中医学の内容くらいはカバーしましょうかね。(笑)
◆小建中湯と衄
『金匱要略』「血痺虚勞病脉證并治第六」にこうあります。
「虚勞裏急.悸.衄.腹中痛.夢失精.四肢痠疼.手足煩熱.咽乾口燥.小建中湯主之.」
簡単に訳しますと、
「正気の弱りが中心の病で、動悸、鼻血、腹痛、夢精、四肢のだるさや痛み、手足のほてり、口やのどの渇きがあるものは、小建中湯がいいよ。」
となります。
ここで、「小建中湯」という薬は、「麦飯」ってどうでしょう?? 7でチラッと紹介しましたが、有名な「桂枝湯」の中の芍薬という生薬の量を倍にし(桂枝芍薬湯)、
そこにさらに膠飴(こうい:水あめのこと)を加えたものです。
僕も飲んだことがありますが、非常にスッキリと甘くておいしい漢方薬です。(笑)
ここで説かれているのはそもそも虚労の病ですから、体力を回復させる必要があります。
しかし、ここで面白いのは、正気の弱りが本質だとしても、腹痛のような冷えっぽい症状と、鼻血や火照りなどの熱っぽい症状が混在していて、
それを同時に調整するのに小建中湯を使うところです。
だいぶ昔に書きましたが、脾胃は上下や陰陽のバランサーとしての機能があります。
脾・胃 参照
「建中」というくらいで中焦の気を建てることで、バランサー機能を発揮する。
鍼でも非常に色々なやり方で治すことが出来ます。
生理と病理が分かると、大変楽しい世界です。
続く
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2017.07.09
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これまでのお話
では続きいきます!!
◆もち米、東洋医学的にはどうか。
これまで書いてきたように、もち米のことを東洋医学では「糯米(だべい)」と呼びます。
糯米は、古くは単に「稲(イネ)」と呼ばれ、春秋戦国時代には、かの孔子が食養生に薦めたことで有名なようです。
そして、糯米の根やとぎ汁、ぬか、発芽した糯米にもそれぞれ薬効があると考えられており、重視されてきました。
ただ、前回述べたように、糯米は粘りが強く、消化に負荷がかかるため、小児や老人等、消化機能の低下した人には常食はあまりお勧めできません。
常食すると動悸、皮膚炎、眠気、酒とともに摂ると酔いが抜けにくくなるなどと、僕の好きな李時珍先生の『本草綱目』に書いてあります。
(上記の症状への解釈はまあ、熱化する、脾胃をいためる、というほどでいいんじゃないでしょうか。)
性味は温で甘、苦、臓腑では脾肺を養うといわれ、効能としては補中益気、温中止痢、止消渇、止汗とあります。
(肺を養うのが意外な気がしますが、経絡や東洋医学的な肺の生理を知っていると、なるほど、と分かります。)
脾虚による慢性の下利や脱肛、軽い貧血なんかには、お粥にして摂るといいようです。
(ただし、陰虚内熱型にはダメですよ☆)
温性であるため、内熱や陰虚のきつい人が食べてしまうと、状態を悪化させる恐れがありますね。
現代の研究では白濁尿の原因であるフィラリアや象皮病の原因であるマレー糸状虫(いずれも寄生虫の一種)に効くとか。
ちなみに、有名な漢方薬である「小建中湯」に含まれる重要な生薬である「膠飴(こうい)」、つまり水あめの原料は糯米粉(あるいは粳米粉や小麦粉)であり、
糯米から作った膠飴が一番いい、といわれているようです。
(温性、粘り気の観点で、他をリードしているのでしょう。)
桂枝湯の中の芍薬を倍にしたら桂枝加芍薬湯、それに膠飴(水あめ)を加えたら小建中湯、という、『傷寒論』を勉強していると良く出てくる言い回しがありますが、
膠飴は中焦と肺を温め潤しつつ、症状を緩和し、一部の毒を解毒してくれるわけですね。
続く
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2017.07.07
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これまでのお話
では続きいきます!!
◆白米、東洋医学的にはどうか。
今日は白米の東洋医学のお話。
かなり前にチョロッと書きましたが、東洋医学では白米(うるち米)のことは粳米(こうべい)といい、もち米のことは糯米(だべい)といいます。
もうあの記事から6年半も経っていることにひきましたが(苦笑)、今回はもう少し詳しく述べてみましょう。
粳米は性は平、五味は甘、苦であり、脾胃を養う、と言われます。
効能としては補中益氣、健脾和胃、徐煩渇、止痢、と言われます。
(要は胃腸、消化吸収機能をシャンとさせて、上下のアンバランスを調えるわけですな。)
しかし、当然ながら、粳米ばかりでは偏りますから、色々な食材を足しましょう、と、よく言われます。
家庭療法として面白いのが、鼻血が出た際に、米のとぎ汁を少し飲む(同時にゴマ油か大根の汁を点鼻する)とか、
乾煎りした米を煎じて飲み、夏バテや食欲不振や乳幼児の嘔吐に使ったり、お粥に蓮子を入れて不眠に使ったりと、
幅広い応用法があるようです。(゜o゜)
ただいずれにしても、お米のみ、という偏った摂り方は止めましょう、と言われます。
(まあ、別にそんなんしねーよ、って感じですがネ。(*‘∀‘))
次回はもち米(糯米)について考えてみましょう。
続く
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2017.07.03
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前回のお話
参照
では続きいきます!!
◆麦飯と東洋医学
東洋医学的に考えていく場合、麦飯は大麦を炊いたものですので、大麦について知らなければなりません。
大麦とは、人類最古の作物の一つと言われ、原産地は西アジアですが、9000年前のイラクの遺跡からも発見されたとか。
日本では飼料やビール、麦茶、麦芽糖、みそ、しょうゆ、焼酎の原料として利用されています。
まさに我々の生活になくてはならない作物ですね。(゜o゜)
東洋医学的には、五味は甘、鹹、性は微温(涼性という説もある)であり、気を下げ、潤す性質をもち、脾の臓、胃の腑、膀胱の腑を養うと言われます。
発芽した大麦(外皮が付いたモミ)は「麦芽」という生薬として、漢方薬に使われます。
効能としては清熱消渇、益気調中、凉血利水、強心養血、寛腸消積とあり、主に中焦(脾胃)を調整する効果があります。
現代の研究では、前回述べた血糖値降下に作用する以外にも、消化促進、有機リン解毒作用、潰瘍抑制作用も期待出来ると言われ、
こういうものを日常的に摂っていた日本人、サスガ、って感じです。(笑)
ただ、注意点としては消化にやや負荷がかかるため、胃腸の虚弱な人や下痢しやすい老人や小児は、控えめに摂った方が良いでしょう、という感じです。
因みに、「大麦の苗」は一部の青汁の原料にもなっており、熱証、湿熱証の人は積極的にとるべきものですが、これも、
冷えのキツイ「陽虚」型の人は気を付けるべきでしょう。
このように、体にいいからと言って摂りすぎるのは問題ですが、西洋医学的に血糖値の問題といい、東洋医学的に内熱の問題といい、
胃腸虚弱やキツイ冷え体質でもない限り、現代人は白米に麦を混ぜた方が良い気がしてなりません。
続く
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2017.02.12
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これまでのお話
◆衛気はどこから生じるか。
これもまあ、『霊枢 営衛生会篇(18)』によれば、「衛気は下焦より生ず」と書いてあるんですが、それをそのまま読めばその通りなんですが、
これに反発した人は、実は結構いるようです。
日本人でこの考え方にエラク反発した人が、江戸時代の稲葉通達という人です。
因みにこの人が書いた『素問研』という著書は、その後に出てきた多紀元簡の『素問識』に勝るとも劣らない内容であったとも、言われているようです。
(しかし慎重に研究する必要があるようですが)
その稲葉通達が書いた『三焦営衛論』の中で、衛気は「下焦」から出るというのを「上焦」の間違いだとして、他の『黄帝内経』の諸篇を引いて、
それを根拠に批判しております。
因みにこの『三焦営衛論』の、宮川浩也先生による全訳は、内経医学会のHP内にリンクがあります。
いつもながら、内経医学会の先生方の仕事は素晴らしく、感謝感謝です。(*^^*)
・・・ということで、要は衛気がどこから生じるかについては諸説あると。
まあ、平たく言えば、「衛気」も結局は水穀の精微が原料なわけですから、脾胃の力(中焦)、腎陽の蒸騰気化の力(下焦)、肺の宗気を集める力と宣発力(上焦)、
当然こういったものに依存して生成されるわけですんで、上焦も中焦も下焦も全部関わるんですね。(笑)
ただまあ、『黄帝内経霊枢 衛気行篇(76)』にあるように、衛気の生理的循環を考えたとき、夜に体内に循環していくとき、腎経から腎に入ることを考えても、
肺脾腎の中では、腎との関わりが特に大きいと見ていいと思っています。
もし腎に何か異常があれば、衛気が夜間に臓を伏行できないと考えられるからです。
体表面をまもることが衛気の主要な働きなわけですが、それは夜間に体内を十分に伏行することで、よりしっかりと果たされるでしょう。
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2012.07.08
2016.05.09
2016.04.12
2016.04.28
2015.06.04
2012.12.23
2014.02.17
2014.04.26
2024.11.07
2024年10月の活動記録2024.11.01
2024年 11月の診療日時2024.10.10
清明院15周年!!!2024.10.09
2024年9月の活動記録2024.10.01
2024年 10月の診療日時2024.09.19
2024年8月の活動記録2024.09.01
2024年 9月の診療日時2024.08.03
2024年7月の活動記録2024.08.01
2024年 8月の診療日時2024.07.10
患者さんの声(70代女性 目の痛み、不安感)2024.07.05
2024年6月の活動記録2024.07.01
2024年 7月の診療日時2024.06.05
2024年5月の活動記録2024.06.01
2024年 6月の診療日時2024.05.10
2024年4月の活動記録2024.05.01
2024年 5月の診療日時2024.04.13
(一社)北辰会、組織再編。2024.04.02
2024年3月の活動記録2024.04.01
2024年 4月の診療日時2024.03.14
2024年2月の活動記録2024.03.01
2024年 3月の診療日時2024.02.15
2.17(土)ドクターズプライムアカデミアで喋ります!2024.02.04
3.10(日)(公社)群馬県鍼灸師会で講演します!2024.02.03
3.3(日)「浅川ゼミ会」にて講演します!2024.02.02
2024年1月の活動記録2024.02.01
2.25(日)順天堂東医研、第5回特別公開シンポジウム「日本とインドの伝統医学」に登壇します!!2024.02.01
2024年 2月の診療日時2024.01.11
2023年、9月~年末の活動一覧2024.01.05
診療再開!!2024.01.01
2024年 1月の診療日時2023.12.30
2023年、鍼療納め!!2023.12.21
(一社)北辰会、冬季研修会のお知らせ2023.12.01
2023年 12月の診療日時2023.11.26
患者さんの声(60代女性 背部、頚部の痒み、首肩凝り、高血圧、夜間尿)2023.11.25
患者さんの声(70代女性 耳鳴、頭鳴、頭重感、腰下肢痛、倦怠感)2023.11.22
12.3(日)市民公開講座、申し込み締め切り迫る!!2023.11.21
今週からの講演スケジュール2023.11.16
日本東方医学会学術大会、申し込み締め切り迫る!!2023.11.01
2023年 11月の診療日時2023.10.10
清明院14周年!!2023.10.04
12.3(日)市民公開講座やります!!2023.10.01
2023年 10月の診療日時2023.09.23
第41回、日本東方医学会学術大会のお知らせ2023.09.22
第55回、順天堂東医研に参加してきました!2023.09.21
第27回、日本病院総合診療医学会で発表してきました!!2023.09.20
Dr’s Prime Academiaで喋ってきました!2023.09.01
2023年 9月の診療日時2023.08.18
第54回、順天堂東医研で喋ってきました!2023.08.17
順天堂東医研の学生さんと、「森のくすり塾」へ。2023.08.16
診療再開!!