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これまでのお話・・・
「脾」って何ですか?(その1)
「脾」って何ですか?(その2)
「脾」って何ですか?(その3)
「脾」って何ですか?(その4)
「脾」って何ですか?(その5)
「脾」って何ですか?(その6)
☆脾は血に関与する
以前、「肝」って何ですか?(その2)や、「心」って何ですか?(その5)にて、「肝」や「心」が血と深く関わる、というお話をしました。
しかし、血に関わるのは肝や心だけではありません。
「脾」も大いに関わります。
今日は、では「脾」が血にどのように関わるのか、というお話。
まず、血のもとは何かと言ったら、食べ物や飲み物です。
これは万国共通、疑いないですよね?
飲食物が口から入ると、一番最初に待ち受けるのは「胃の腑」と、それに密着した「脾の臓」でしたよね?
そしてこの2者がうまく協調して、飲食物から「気と血のもと」を取り出す、という話は以前にしました。
と言うことは、もし「脾」の働きが弱っていたら、もともとあるべき、体内の「血」の絶対量が少なくなってしまうんです。
「気血のもと」が取り出せない、てことは全身の気血が少なくなっちゃう、ということです。
そうなると肝も豊富に血を蔵することが出来なくなるし、心も十分に血を全身に送り出すことが出来なくなります。
そういう意味で、脾は血の生成に大きく関わり、ここでも生命の中心的役割を演じています。
「肝」「心」「脾」、この3者の血への関わりをまとめると・・・、
肝・・・血を貯蔵して、配分バランスを調節
心・・・血を律動的に全身に流動させる
脾・・・血の生成に大きく関わる
となります。
ですから血が足りない、という症状があったとしても、即座にどこが悪い、と決めつけることなんてできないんです。
ちなみに、西洋医学の言う「貧血」という考え方と、東洋医学の言う「血虚(けっきょ)」という考え方は、確かに似た部分もありますが、やっぱり違います。
どこがどう違うか、ということを説明すると長くなるし、難しくなるのでしませんが、そもそもこういう風に、西洋医学の概念を東洋医学的に翻訳しようとすること自体に無理がある、というのはいつも述べている通りです。
物差し自体が違うのです。
注意せねばなりません。
次回に続く
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2010.07.01
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これまでのお話・・・
「脾」って何ですか?(その1)
「脾」って何ですか?(その2)
「脾」って何ですか?(その3)
「脾」って何ですか?(その4)
「脾」って何ですか?(その5)
続きいきます!!
☆脾と口とくちびる
脾の働きは口の機能と関係が深いです。
(「喋り」という意味よりも、この場合は唇も含めた、口腔粘膜全般の機能、と考えて下さい。)
例えば卑近な例を挙げれば「口角炎」や「口内炎」、これらは経験したことがある人も多いんじゃないでしょうか。
僕も普段患者さんに聞かれることがあります。
「口内炎や口角炎がよく出来るんだけど、どうして??」
僕は大体、
「胃腸の働きが弱っているからだよ。」
と答えます。
・・・これは実は、
「それはねー、内外の複雑な原因があいまって、五臓六腑の中の、消化機能をつかさどる”脾”という臓が機能低下をきたした結果、流注の面、
生理機能の面から関わりの深い口唇に異常が出たんだよ。」
という難し~い言い方の回答を(笑)、省略して簡潔に述べている訳です。
こんなことを実際の患者さんに言ってたら、途中で寝られちゃいます。(笑)
ここでもし西洋医学の医師であれば、
「それはビタミンの不足です。」
な~んて言って、ビタミン剤を処方するかもしれませんよね。
ここにも、東西の視点の違いが見て取れます。
要するにビタミンを吸収する人間側の消化機能を問題視するか、摂取ビタミンの絶対量を強引に増やすことによって強制的に治そうとするか、という違いです。
どちらが人体に優しいか、また、長い目で見た場合に、どちらが問題が起こらなそうか、普通に考えりゃ誰だって分かります。
僕なんかはそもそもこんな飽食の時代に、「ビタミンの絶対的な不足」という状況なんて、果たして起こるんかしらー?と思っちゃいます。
もし仮にそれが起こってたとしたって、それ以外に過剰なものがあってそれが消化管粘膜に負担をかけてる場合、それを控えるだけで済む場合もありうると思います。
・・・ま、いいけど。(苦笑)
またこの他にも、「味覚」にも脾の働きが関与します。
風邪をひいて鼻がつまって味が分からなくなる、という経験は、誰もがしたことがあると思いますが、あれなんかは脾の弱りが関わってることが多いです。
脾は、口腔内を津液(生理的な水分)で潤し、舌や歯など、口腔内に存在する重要なものが十分に機能を発揮できるようにサポートする役目も持っているのです。
つまり、脾がしっかりしていると、口の中や口周辺は適度に潤い、その機能を十分に果たすことが出来るんです。
以前、舌には心の臓が深く関わる、というお話をしましたが、人間のあらゆる機能というのは、このように様々な臓腑がうまく協調することによって初めて成り立っている、と東洋医学では考えます。
これらの「どこがどう」アンバランスを起こしたかを見抜き、治療するのが東洋医学的な治療なんです。
次回に続く
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2010.06.22
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これまでのお話・・・
「脾」って何ですか?(その1)
「脾」って何ですか?(その2)
「脾」って何ですか?(その3)
「脾」って何ですか?(その4)
☆脾は湿気が嫌い
いや~、ここんとこ毎日毎日ムシムシしますね~!!
東洋医学では、体の内外の過剰な湿気のことを「湿邪(しつじゃ)」と呼び、あらゆる症状の発病因子と考えています。
体の中の湿邪のことを「内湿(ないしつ)」と呼び、体の外(自然界)の湿邪のことを「外湿(がいしつ)」と呼んでいます。
東洋医学では、「脾」というのはもともと湿った、乾きを嫌う臓だと考えています。
それに対して「胃」は逆で、乾いた腑である、と考えています。
(コレには深い意味があるんですが、難しいので割愛します。(笑))
体の中に余分な水分が増えたり、自然界がジメジメした時期になると、もともと湿っている「脾」の働きは弱ります。
だからいつも言うように、最近のようなジメジメした時期は、消化器に負担をかけないようにして、「飲み過ぎ、食べ過ぎ」はしないようにしないといけません。
それ+手足を使った軽い運動をしておけば、脾がしっかりしますので、あらゆる症状を未然に防ぐことが出来ます。
・・・では、脾が弱ると具体的にどんな症状が現れるんでしょうか?
☆脾が弱るとクヨクヨする
コレについては以前少しだけ書きましたが、(「思」について 参照)あまりクヨクヨと悩んでも脾に悪影響だし、飲食の不摂生などから脾を弱らせても、逆にクヨクヨしやすくなります。
要するに脾が弱ってくると、体がジメジメし、考え方までもがジメジメしてくる訳です。(笑)
身の回りに、引っ込み思案の人、理屈っぽい人、いつも物思いに沈んでいる人なんかがいたら、その人の食生活をよ~く観察してみましょう。
・・・きっとヒドいはずです。(苦笑)
☆脾が弱ると頭の回転が鈍る
コレはなぜかというと、肝が魂を蔵し、心が神を蔵するように、脾は「意」を蔵する、という考え方があります。
「肝」って何ですか?(その4)
「心」って何ですか?(その1) 参照
この「意」というのは、人間の短期的な記憶力を発揮するのに役立ち、人間の知恵、知識、思考能力に深く関わります。
参考図書『中医心理学』たにぐち書店
暴飲暴食のあとは頭の回転が鈍くなる、というのは、多くの人が経験したことがあると思いますが、それはこの「脾」に蔵される「意」の働きが鈍っている結果、と東洋医学では考えます。
自閉症、認知症などの精神疾患なども、多くの場合「脾」が関わっていることが多いように思います。
東洋医学の言う「脾」は、このように、消化吸収だけでなく、精神的な働きにも大いに関わる、と考えます。
まだ他にも、脾が弱った時の症状はありますが、一つ一つ全部書くよりも、大まかな傾向を述べていこうと思います。
・・・次回に続く
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2010.06.18
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これまでのお話・・・
「脾」って何ですか?(その1)
「脾」って何ですか?(その2)
「脾」って何ですか?(その3)
☆脾の位置
今日は、脾の位置についてお話ししようと思います。
脾は、前回までに書いたように「胃の腑」とぴったりくっついて、体のど真ん中に位置します。
東洋医学では「胸(膈)から上」を上焦、「上腹部から臍のレベル」を中焦、「下腹部以下」を下焦と、大まかに人体の部位を上中下の3つに分けて考えますが、
この中で、脾が位置するのは「中焦」の位置です。
つまり腹、体のど真ん中に、堂々と、デーンと存在しているのが「脾胃」なのであります。
日本では、あまりいい意味で使われることはないけれど、”中華思想”という言葉があります。
古代中国人にとってはこの「中」というものに特別な意識があります。
中国人が「中」という字を使う時は深い意味があることが多い、と思った方がいいです。
当然それは医学にも反映されていて、「脾胃」は生命活動の中心となる、と言い、ここの営みを指して「気血生化の源(きけつせいかのげん)」なんて呼んでいます。
つまりここに入ってきた飲食物から、「気血のもと」をきっちりと取り出し、「心」や「肺」の存在する「胸から上」に持ち上げ、不要なものは「下腹部」にある「小腸」「大腸」に送る、
という活動の活発さこそが、”生命力”そのものの根本だ、という解釈です。
・・・ではなぜ、その「気血生化の源」である脾胃の営みが、手足を使った運動にて鍛えられるんでしょうか?
これはあまり難しい話にしたくないので、簡単に述べましょう。
要は、体のど真ん中にある脾胃から、一番遠いのが手足であり、手足は脾胃がしっかり働かないと、栄養が行き届かず、十分に養われないから、
「手足を使った運動をする」
ということは、脾胃のお尻を叩くことにつながるんです。
手足を積極的に使うことで、
「お~い!脾胃さ~ん!早く気血をおくれよ~!!」
とやっている訳です。
すると脾胃さんが、
「はいよ~!ちょっと待ってな~!!」
ということで、頑張って消化吸収機能を行い、気血をたくさん、速やかに作って、手足を養おうとする、という訳です。
ということは当然、手足を使わなければ脾胃は怠けて弱るし、脾胃が弱れば手足も弱くなる(萎える)ということです。
だから脾胃と手足は「中央(真ん中)と四隅(よすみ)」という、ちょっと変則的な陰陽の関係をなしている訳です。
(笑・・・ムズい?)
一応、専門家の方も読んで下さっているようなので、上記解釈の根拠を示しておきます。
『黄帝内経素問』太陰陽明論(29)です。
ちなみに杉山流などでは五行を使った解釈がありますが、あれは一般には説明しにくいので割愛しました。あしからず・・・。
ここまで書いたところで、急用が入ってしまいましたので、今日はここまでです!
次回に続く
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2010.06.17
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これまでのお話・・・
「脾」って何ですか?(その1)
「脾」って何ですか?(その2)
続いていきます。どんどんいきます。しつこいぐらいいきます(笑)。
☆脾の形態
前回、一般的によく言われる、「胃の蠕動運動」というものに対する、東洋医学的な解釈を書きました。
図を出さずに説明しましたので、なかなかイメージがつきにくかったと思います。
なので今日は、図を用いて説明しなおそうと思います。
まず、これが東洋医学のいう、「脾」の図です。
・・・一瞬、「おいおい、ナメてんの?」と思うぐらい(笑)、単純な形態です。
これを原始的で稚拙だ、と評価するか、なぜこのような形態と考えたのかに興味を持つかが、大きな違いを生みますねえ・・。
ちなみに、上の図の出典である
『医宗金鑑(いそうきんかん)』
という書物は、清(しん)の時代に中国が国を挙げてまとめた、近世を代表する、”最後の漢方医学全書”とまで言われる、大変有名な本です。
そんな権威のある本に、適当なことが書いてあるはずない、なんか深い意味があるはず、と考える方が自然じゃないでしょうか?
このような図になる、というのは、何度も言っていますが、東洋医学的に患者さんの症状、所見をよく観察した場合、このようなものが体内にあり、機能している、
と考えた方が妥当性が高いから、であります。
・・・まあともかく、前回書いたように、この、”刀のような”形をした脾が、胃を刺激する様をイメージしやすい、いい図があります。それがこれです。
↑↑これは江戸時代、岡本一抱(1655-1716)が書いた『臓腑経絡詳解』の図です。
この図を見ますと、「胃の腑」に「脾の臓」がぴったりとくっついていることが分かります。
ちなみに、これで見ると「胃の腑」の形態は、西洋医学的な「胃=stomach」の図と大変よく似ています。面白いですねえ・・・。
いかに、”内臓を東洋医学的に考察する”場合に、その「写実性」が重視されていなかったかが、逆によく分かります。
(麻酔技術も精密な解剖技術、道具もない時代に、それを追求してもあまり意味がなかったんでしょう。)
また、この「脾の臓」の図を見て、「これは膵臓だ!」とか、「脾臓だ!」とか考えるのも、無理があるでしょう。
東洋医学の医師達が問題にしたのは実際に解剖してみての「写実性」ではなく、東洋哲学に立脚しながら、
「”機能”をいかに完璧に説明するか、そしてそれをいかに調えるか」
だった訳です。
この図のように、胃の腑にピタッと密着した「脾」が、胃の腑に飲食物が入ってきた時にU字型に変形し、”胃に巻きついて”、胃をぐりぐりと刺激する、という風に説明します。
それを理解するのにいい図はこちらです。
↑↑こちらです。
いい感じで巻き付いてますでしょ??(笑)
これは韓国ドラマ「ホジュン」で有名な、ユネスコの世界記録遺産にもなった『東医宝鑑』の図です。
ドラマでも出てくるシーンですが、ホジュンの師匠が亡くなったあと、自分の体をホジュンに解剖させるシーンが出てきますから、ホジュンは脾胃に相当する部位を実際に見ているでしょう。
それでこの図を残したというのは興味深いですね。
ともかく、この脾胃の働きがいい人ほど、消化、吸収が速やかに、スムーズに、効率よく、なされます。
では、どういう人はこの働きがよくて、どういう人はこの働きが悪いんでしょう。
それはもちろん普段食べているものの影響もあるけど、ズバリ「運動量」「運動のやり方」によります。
特に手足を使った運動をあまりしない人は、この「脾」の働きがとても緩慢だ、と東洋医学は教えてくれています。
普段から手足を使う運動をある程度やっている人は、消化吸収がとてもスムーズですが、普段運動不足の人は、消化吸収が遅いし、体にいいものをとってもろくに吸収できません。
(まあコレについても、またあとで詳しく述べようと思います。)
また、「食べてすぐ寝ると牛になる」ということわざがありますが、あれはどうも日本人が重んじる”お行儀”の観点から言われるようになったらしく、
どちらかというと医学的、生理的な面から、というよりも、親や雇い主といった、上の立場の者が下の立場の者に言ったのが元々の由来だそうです。
確かに、食べたり飲んだりした直後というのは、「脾胃」が一生懸命お仕事中であり、気血が脾胃に集まっていますので、あまり動かない(仕事を邪魔しない)方がいい、と、僕も思います。
ただ、ある程度仕事が片付いたならば、積極的に手足を動かし、脾を鼓舞してあげるといいよ、ということです。
前回言ったように、現代の日本は、食事の欧米化による脾胃への過剰な負担に加えて、多忙によって食事時間も不規則で、しかもよく噛まずに早食い、
さらには交通手段の発達による運動不足も、脾胃に悪影響です。
実際に患者さんを診てても、特に若い人ほど、脾胃をいためている人が多いことに気付きます。
コレは実は、結構怖いことなんです。それについてもこのシリーズで徐々に明らかにしていこうと思っています。
次回に続く
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2010.06.16
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前回のお話
「脾」の解説を続けます。
☆「脾」と「胃」はセット
東洋医学の「脾」という臓が一番深く関わる臓腑は、何と言っても「胃」という”腑(ふ)”です。
よく東洋医学家の間では、この2者をまとめて、「脾胃(ひい)」と呼んで、生理学、病理学を考えます。
この「胃の腑」については、また後ほど細かく解説しようと思いますが、東洋医学ではこの両者を、
「概念」の上から、
「機能」の上から、
「形態」の上からも、
キチッと分類し、説明しています。
人間の生命維持に欠かせない、毎日のことである「摂食行動」というイベント時には、脾と胃、この両者が非常にうまく協調することによって消化、吸収というスムーズな営みを作ります。
つまり「脾」を理解し、治療するためには「胃」への理解も欠かせない、まさに脾胃は2つで1つ、ニコイチ!!という訳です。
・・・と言っても、今はまず「脾」の方から解説していきます。
まず、人間がものを食べる、あるいは飲む、という行為を行うと、飲食物は「胃の腑」に入ります。
(これはなんとなく、一般的にも理解しやすいですよね?)
すると、ここでまず働くのが「脾」です。
「脾の臓」というのは「胃の腑」に隣接し、密着している臓、と考えられています。
これが、(形態については次回説明しようと思っていますが)刀のような形になったり、馬の蹄鉄のようなU字型の形に変化したりして、
飲食物の入った胃の腑をグイグイと揉む、と考えます。
(まあコレが要は、西洋医学的に言う”胃の蠕動運動”ってやつの、東洋医学的解釈です。イメージしにくいかな?)
そして、このように脾が胃を刺激することによって、飲食物を、胃よりも下に存在する「小腸の腑」「大腸の腑」に送っていきます。
ただ、ここで当然考えなくてはならないのは、単純に入ってきた飲食物を下へ下へ送っていくだけでなく、体にとって必要なものを取り出さなくてはなりません。
それこそが「脾」の最も重要な働きなんです。
要するに脾は「胃の腑」に入ってきた飲食物から体にとって重要な栄養である「気血のもと」を取り出し、なおかつ速やかに大便、小便を作って、
無駄なものが体に溜まらないようにする、「消化、吸収の要」なんです。
だからこの「脾」が弱ると、実に様々な消化器症状を呈します。
腹痛、下痢、便秘、嘔吐、胃もたれなどなど、挙げていけばキリがありません。
そして、「脾」が弱れば、無駄なもの、要らないものが体の中に留まりやすくなりますので、浮腫みやだるさ等の原因にもなり、他の4つの臓にも大変悪影響です。
現代は、戦後の食べるものがない時代とは180度違いますので、食べ過ぎ、飲み過ぎ、あるいは食事の欧米化により「脾」を痛めている人がとても多いように思います。
パンとコーヒー、チョコレート、キャラメル、ファーストフード、コーラ、スプライト、ファミレスでの肉食などなど、これらはすべて、
過剰になると、こぞって「脾胃」をいじめます。
小さい頃から、こういう加工食品まみれの食生活をしている現代の子供が、中年になる頃には、一体どんな「脾胃」になっちゃうんでしょうか・・・。
うちの身内にもいるけど、現代の、あまりにも多いアレルギーベイビー、消化器疾患の増加の大きな一因に、これがあるような気がしてなりません。
やっぱ日本人は白メシとみそ汁、魚と群馬の山で採れた野菜です!(笑)
欧米風の食卓や考え方も「一見」オシャレでスタイリッシュでいいけども、自分がどこまでいっても日本人であることを忘れてはイカンよなー、と思います。
次回に続く
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2010.06.14
今日はまともに時事ネタを書こうと思います。
今日はなかなかの往診日和でした・・・。
今日から梅雨入りだそうですねえ・・・。
普段往診をやっている清明院にとっては大変な時期となります。
(まあ、慣れましたがね。(笑))
この時期は「湿気」が問題になります。以前書いたように、この「湿気」というのは人体の健康にしばしば悪影響を及ぼします。
この時期を快適に乗り切るためには、まずは何しろ胃腸をいじめないことです。具体的に言うと、「暴飲暴食」をしないことが極めて重要です。
「暴飲暴食」をして、消化されきらない余分なものが体内に滞ると、体の中が、言わば「しけった」状態になります。
(笑・・・クサそうでしょ?実際にクサくなる場合もあります。)
こういう状態になると、この時期は体の外も「しけって」いますので、体の中も外もジメジメ、そうなると
”重だるい”
”ヤル気が出ない”
という症状がよく出ます。
そしてこの”ジメジメ”は当然、気血の流れを阻害しますので、普段慢性の痛みや痺れのある人なんかにとっては、症状の悪化しやすい時期でもあります。
気をつけましょう。
もし付き合いなんかで暴飲暴食してしまったら、次の日は飲食物を極端に減らすか、運動して汗を出して”ジメジメ”を発散すればよいのです。
要は体をサラっと、パリッと、”乾かす”訳ですね。(笑)
・・・まあでも冗談抜きで、これが梅雨時期を快適に過ごす最大の”コツ”であります!
そして今日はワールドカップ初戦です!
僕はサッカーはあんまり詳しくないんですが、友人に誘われましたので、今日はスポーツバーなるものに行って応援してこようと思います。
カメルーンはFIFAのランキングだと格上の相手だけど、これまで2勝1分と、日本は負けたことがない、比較的相性のいい相手のようです。
せっかくだからぜひとも勝ってほしいと思います。
選手が感じてるプレッシャーは半端じゃないでしょうけど、是非そんなの跳ね返して、思いっきり暴れて欲しいと思います。
・・・ただ、オウンゴールはやめて欲しいですが。(苦笑)
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清明院に皆様のお力を!<m(__)m>
2010.06.10
昨日、ご夫婦でドイツに旅行に行かれ、帰ってこられた患者さんが、面白いことをおっしゃいました。
「いや~、ドイツの空気は乾燥してて、気持ちよかったよ!ドイツビールがうまいうまい!(笑)昼間っからずーっと飲んでたから、いつもの倍以上は飲んだと思うんだけど、
不思議と二日酔いにもなんないし、神経痛も出なかったよ!何でかなあ・・・??」
・・・というお話でした。
このご夫婦はお酒が好きなお二人で、飲み過ぎから体調不良を起こすことが少なくありません。
どうして、こういうことが起こるんでしょうか?
まあ上記のケースでは、「旅行」という開放的な気分の中で、いつもよりもリラックスした状態で飲んでいるから、ということが一つは考えられますが、
”空気が乾燥している”ということも見逃せません。
東洋医学には「三因制宜(さんいんせいぎ)」という考え方があります。
この”三因”とは・・・
1.因地制宜(いんちせいぎ)・・・場所によって治療法が変わる
2.因時制宜(いんじせいぎ)・・・時(季節)によって治療法が変わる
3.因人制宜(いんじんせいぎ)・・・人によって治療法が変わる
この3つです。
これは大変有名な考え方で、”オーダーメイド治療”とよく言われる東洋医学の特長を端的に述べた言葉といえると思います。
つまり同じ病気であっても、
”場所”により、
”時”により、
”人”によって、
治療法が変わる、
つまりは自然(外界)の影響を受けて、精神的にも肉体的にも、時々刻々と変化するのが人間なんだから、それをよ~く観察し、踏まえた上で、
治療にあたりなさいよ、と教えてくれています。
冒頭の患者さんも、日本にいる時は外界の「湿気」の影響を受けて胃腸の働きが弱りやすい傾向ですが、乾燥した国に行くと、湿気の影響を受けない訳だから、
少々お酒を飲み過ぎても、体に変調が出なくなる訳です。
このように、その患者さんが、
1.もともとどういう人で(因人)、
2.しかもその症状がいつから(因時)、
3.どこにいた時から(因地)発症したのか、悪化したのか、
ということを、一人一人について考えてあげる必要がある訳です。
それも、東洋医学の独特の考え方に基づいて、です。
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2010.06.09
これまでのお話・・・
「心」って何ですか?(その1)
「心」って何ですか?(その2)
「心」って何ですか?(その3)
「心」って何ですか?(その4)
「心」って何ですか?(その5)
「心」って何ですか?(その6)
「心」の働きについては、これまでであらかたは述べてきたと思います。
・・・ということで、ここら辺で一旦完結しようと思いますが、(その1)で述べたように、
「心」は”君主”
ですから、これが病気になると、命に関わる場合もあります。
今日は最後に、東洋医学の言う「心」がもし病気になった場合、具体的にどんなことが体に起こるのか考えてみましょう。
西洋医学の言う「心臓」の病気と言えば、「心筋梗塞」とか「狭心症」、症状としては「動悸」、「息切れ」なんていうのが有名です。
それ以外でも、ちょっと詳しい人なら知ってると思いますが、
「不整脈」とか、「心タンポナーゼ」とか、小児の「心室中隔欠損症」
などなど、挙げていけばキリがないほどあります。
西洋医学においても、「心臓」の病気は命に関わることが多い、という点では、東洋医学と共通しています。
しかし、これらの病気が、同じように東洋医学の言う「心」の病気になるかというと、当然ながら、必ずしもそうではありません。
西洋医学の病名によって、鍼灸をする経穴や、漢方薬の処方内容が決まるはずはありませんよ!!
もし巷にそんなことをうたっている人がいたら用心して下さいね!
(苦笑・・・山ほどいるような気もしますが・・。)
・・・でも僕は、初診の際にはその患者さんが、西洋医学的に何という病名なのか、どんな処置を受けているのかは、必ず聞きます。
なぜなら、その病名を持っている、ということは、こんな症状があって、あんな症状があって、という「予測」が出来、それをもう一度東洋医学の理論に置き換えることが、
正しい「東洋医学的な診断」をするにあたって大変有用だからです。
・・・まあ、こういう話はこのブログ上で何度も言っていますがね。
現代でちゃんとした東洋医学をやろうと思ったら、西洋医学の基本的な知識は必須でしょう。
さて、では実際に、「心の臓」を病むとどうなるか、についてですが、これは実際には非常に多岐にわたります。
冒頭で述べたような西洋医学的な心臓疾患なども、もちろん東洋医学的な「心」の病変で起こりうるケースもあります。
また、これを言うと、一般の方にとっては、
「エ?なんで??」
ってなっちゃうと思いますが、ある種の「目の病気」や、「喘息」、「不眠」、「胃の痛み」や「胆石の痛み」などなど、東洋医学の言う「心」を病むと、
実に様々な(というか意外な)症状を呈することがあります。
これら一つ一つのメカニズムについてまでは、いちいち解説はしませんが、要するに、
”「精神」と「感覚」の調整役”
であり、
”全身への「血」の安定的な供給”
というのが「心」の主な働きですから、これがうまくいかなくなった結果、と考えれば、あらゆる可能性が、なんとなく想像できるんじゃないかと思います。
このように多種多様な症状から、その人の病を分析して、その不調和の根幹を特定し、それを是正するのが東洋医学だ、ということです。
・・・一応、「心の臓」についてはこれで一旦完結しますが、言いだせばキリがないほど、情報はありますので、また機会があったら書きます。
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2010.04.22
清明院副院長である松木宣嘉先生は、彼にとっても僕にとっても母校である、渋谷にある花田学園という鍼灸学校で、非常勤講師として教鞭をとっております。
僕自身も、花田学園を卒業後、彼と同じように大田区大森にある東京衛生学園という学校で鍼灸学校での教員免許を取得しましたので、一応ペーパー教員でございます。
ですので教員養成科時代の同級生達は全国各地で教員をしています。
(都内も割と多い)
そんな訳で、そこからの御紹介もあって、清明院の患者さんには鍼灸学校の学生さんが何人かおられます。
そこで今日は「鍼灸学生とは」というテーマで書こうかな・・・、と思ったんですが、ん~、これ、なかなか難しいんです・・。(笑)
というのも、僕はあまり、鍼灸学生とはこのようにあるべきだ!というのがねー、ないんですよ。(笑)
やれスポーツ鍼灸やりたいとか、美容鍼灸やりたいとか、東洋医学の医者になりたいとか、開業して金持ちになってやる、とか、みんな色々目標というか「志」を持って、400~500万もの大金と、3年間という膨大な時間を費やして突き進んでる訳ですから、別に僕からはなんにも水をさす気がしません。
個人個人がその目標に向かって、色々と試行錯誤しながらやってると、徐々に徐々に一人一人の道が開けてくるモンなんじゃないかなあ・・、と思いますねえ。
そりゃあ、その過程の中では、先輩や患者さんに失礼なことやっちゃったり、やる気が空回りしたりすることも当然あるでしょうが、まあ細かいことはあまり気にせず、自由闊達に、伸び伸びと生きていって下さい!って感じですかねえ・・。
(あ、ちなみにもちろんこの場合、その目標すらもよく分からない、という方に関しては論外ネ。そういう方は、まずはそこからもう一度考えましょう。)
まあたまに、僕のようなスタイルがいい!先生みたいになりたい!なんて言われれば、僕も正直嬉しいし、少しは力になれるかな、なんて思ったりもしますが、経験の中で、結局はその人の努力次第だなー、ということが最近よく分かってきました。
有名な先生のところに何年勤めたからって、その先生そのものになれる訳じゃないし、学校のテストで毎回100点だったからって、それと治療は別問題です。
僕も学生の頃は、寝ても覚めても鍼の本を読みあさっていた時期もあります。
専門書を10冊読めば、10冊分治療がうまくなるかな、という幻想を抱いてネ・・。
・・・しかし結局、それもそんなことないんです。一日一歩、三日で三歩、しかないんです。
(苦笑・・3歩進んで2歩下がることもあります。)
でもなんだかんだと努力をやめずにいると、徐々に徐々に、ホント~に徐々に徐々に、「患者さん」が認めて下さいます。
そんでトータルで、
「ああ、1年前よりゃ少しは鍼がうまくなったかな・・・。」
と思えることもあります。
そうすると嬉しくなるし、またヤル気になります。
そんでどうにか少しづつ、人並みの生活も出来るようになります。
本なんかも、肩ひじ張らずに「ただ単に好きだから」という感じで読めるようになります。
自分が口ほどにもない、頭でっかち人間か、そうでないかが知りたかったら、「モデル患者さん」を何人か見つけて、お願いして、同意の上で鍼してみたら?と思います。
それも一回やってどうこう、治療直後だけでどうこう、じゃなしに、1年、2年と、そのモデル患者さんがある時は腰が痛い、ある時は風邪ひいた、
ある時は胃が痛い、とか、時々刻々と変化する患者さんの状態に必死についていってみて下さい。
(お金取っちゃダメだよ。無資格で捕まっちゃいます。)
そうすれば多分、鍼灸学生の皆さんの色んな悩みの答えは、その「患者さん」がくれるんじゃないかなあ、と思いますね。
(自然と導いてくれる、とでもいうかね。)
「治せるようになりたい!」
と思ったら、まずは
「絶対に治す!」
という気持ちを持って、実際に困っている患者さんと、鍼ともぐさを持って対峙してみることが始まりでしょうね。
まあでも、そうはいっても、伸び伸びと生きて下さい(笑)
無理は禁物です!
・・・まあ、「すべき」をあえて言うとすれば、自由に、それぞれが一生懸命、患者さんに対してやれる最大限を全う「すべき」じゃないかな、と思いますね。
医療だし。
人様にあまり迷惑かけないように、ですよ。
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