東洋医学 伝統鍼灸 清明院

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牛蒡茶の効能

2015.06.30

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今日、腎透析中の患者さんがこんなことを言いました。

「先生、牛蒡茶(ごぼうちゃ)を飲むようにしたら便通が調子いいです!」

と。

・・・ほほー。

牛蒡茶というのは、ちょっと前に

”牛蒡茶若返りダイエット”

なんつって、例によって女性誌なんかで紹介されて、少しばかり話題になったことがあります。

これは、牛蒡をささがきにして、乾煎りして煮出したものです。

食品としてよく使う、牛蒡の根っこの部分は、生薬名では牛蒡根(ごぼうこん)と呼ばれ、その効能は

「祛风热,消肿毒治风毒面肿(風熱邪をとって、腫れや毒、特に顔の腫れをとる)」

ということになっております。

発汗させたり、利尿させることで、毒素を排出したりします。

漢方薬では牛蒡の種の方がポピュラーで、

”牛蒡子(ごぼうし)”

と呼んで、風邪や熱邪や湿痰をとったり、大小便の出が悪い時などに、よく用います。

五臓で言うと肺と胃に作用し、邪気を発散したり、冷やし、降す作用も持っています。

病気で言えば咽痛とか乳腺炎、皮膚炎なんかに応用されます。

(もちろん、本気でそういったものを治すなら自己判断ではなく、東洋医学のプロに処方してもらいましょうね。)

 

参考 『中医臨床のための中薬学』


思いがけず、治療のヒントになりました。


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「四逆散」というお薬 9

2015.06.16

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これまでのお話

 


「四逆散」というお薬

「四逆散」というお薬 2  
「四逆散」というお薬 3

「四逆散」というお薬 4
「四逆散」というお薬 5
「四逆散」というお薬 6
「四逆散」というお薬 7
「四逆散」というお薬 8        参照

 

では続きいきます!

 

さて、本日はまた違う先生の見解を考えてみましょう。

 

本日はちょっと古い時代に戻って、宇津木昆台(1779-1848)先生です。

 


江戸後期を生きた、カミソリのようにキレる、素晴らしい頭脳を持った先生、という印象なんですが、長くなりそうなんで、この先生については、あとでちゃんと紹介します。

 


 

ともかく、宇津木先生の著書『古訓医伝』には、

「四逆散は、大柴胡湯の証の虚しているものである。」

と述べられており、その意味として、

「大柴胡湯は少陽病の実証で胃の気も実のもの、四逆散は少陽病の実証で、胃中に力が無くて、水邪が”胃の外”にあるもの。」

と述べ、

「そう考えれば当たらずとも遠からずだよん。」

と述べ、それをもとにさらに深く考えると、

「”左の”横腹、胸や脇に緊張が現れ、胃中は力が無い。気血水が滞って結胸のような感じで、場合によっては陰嚢や、腰の方にまで緊張が及び、縮こまってしまうものだ。」

と述べ、「左の腹」を強調し、四逆散が気血水の滞りであることを強調し、乾姜や附子などで陽気を補うことは不要である場合の処方だと強調しています。そして、

「これは血の滞りがメインであって、その周りに水がくっついたものである。」

と、これまた意味深いことを仰っております。

(・・・まあ、この言い方で、この処方における枳実の効果を説明しています。)

 


また、この先生の「左右」に対する考え方も、興味深いところです。

 


「四逆散」というお薬 8 で紹介した藤平先生は、四逆散の場合のお腹には

”左右差はない”

と強調していましたので、全く違う見解ですね。

 


竹下個人的には、陽気が伸びないんだから左に出てるはずだ、とか、四逆散だから左右差はないはず、とか、あまりそういう決めつけた診方、考え方に拘って人体を診るのは、

 

以前からですが、良くないんじゃないかな、と思っています。

 


こういうのは、鍼灸の場合特にあるんです。

 

右の経穴に出てるはず、左の経穴に出てるはず、ってやつね。

 

臨床上は、こういう「先入観」が非常に邪魔になる場合があるんです。

 

 

こういうのは、あくまでも結果から、帰納法的に推論するべきであって、演繹的に考えすぎるのはよくないと思いますね。

「演繹(えんえき)」と「帰納(きのう)」 参照

 


まあちょっとこれは、もちろんしっかりと基本を押さえた上での話にはなるけど。

 


この場合には左に出てる筈、とか、そういう考え方の根拠は陰陽論なんだけど、陰陽論だからこそ、やはり機械的に運用するべきではない。


「四逆散」というお薬 10  に続く

 

 

 

 

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「四逆散」というお薬 7

2015.06.14

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これまでのお話

 

「四逆散」というお薬
「四逆散」というお薬 2  
「四逆散」というお薬 3

「四逆散」というお薬 4
「四逆散」というお薬 5
「四逆散」というお薬 6    参照

 

 

さて本日も、また別の先生のご見解をみてみましょう。

 


今日は荒木性次(あらきしょうじ 1896-1973)先生です。

 

因みに号は荒木卜庵(あらきぼくあん)先生とも言います。

(この呼び名の方が有名かもしれません。)

この先生も、昭和を生きた、非常に有名な先生です。

 


実は私は、この先生の流れをくんだ先生と、ちょっとしたご縁がありまして、今ではその先生の漢方薬局に、清明院の患者さんをよく紹介させていただく間柄だったりします。(笑)

 

また、僕が尊敬している鍼の先輩も、この先生の薫陶を受けた先生から『傷寒論』の基本を学んだそうです。

 

そんなワケで、やや遠いけど、不思議な御縁を感じる荒木先生の『方術説話』に、このように書いてあります。

 


「四逆(四肢逆冷)する者には3通りあります。

1つ目は表面の陽気が弱っているもの、

2つ目は陽気が内(裏)に籠っちゃって外に伸びないもの、

3つ目は表裏の中間につっかえて、陽気が伸びないものです。

四逆散の場合は3つ目のパターンです。」

と述べ(1パターン加えた!)、そして、その籠った熱のことを”少陰の熱”と表現し、

「それ(少陰の熱)が肺に影響すれば、そこに水気が集まり咳となり、心に影響すれば動悸、肺腎両方に影響すれば小便不利、

腹中に影響すれば腹痛になり、腸中に影響すれば下痢となり、もともと腸の動きが悪い人であれば渋り腹になる。」

と述べています。

 


そして、上記のような診立てで、四逆散を使って、効果がイマイチの場合に、四逆散にさらにどんな生薬を加えたらいいかについても、丁寧に解説してくれております。

 

そして最後に、

「本章は少陰病血虚裏熱より四逆を生じたものの治し方を述べた章です。」

と締めくくっています。

 


なるほど、「表と裏の間に」籠る、ね。

 


裏に籠る、というのとはニュアンスが明確に違うのです。

(起こる現象も違う。)

 

咳や動悸など、上に出たり、下痢や腹痛、渋り腹など、下に出たりすることの、上手い説明になっていると思います。

 

そして”少陰の熱”とか、”少陰病血虚裏熱”という表現、これもサラッと言うけど、奥の深い説明だと思います。

 


他の先生のように、肝鬱+湿邪、とか、肝鬱+水邪とか脾胃の虚、とかで説明するのではなく、あくまでも

”熱(通じなくなった陽気)がどこに影響するか、そして、そこに集まる水気”

で論じる。

 


一つの立派なお立場だと思います。

 


・・・いやー、みんなスゲエなー (゜o゜)

 

「四逆散」というお薬 8  に続く

 

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「四逆散」というお薬 6

2015.06.13

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これまでのお話

 


「四逆散」というお薬

「四逆散」というお薬 2  
「四逆散」というお薬 3

「四逆散」というお薬 4
「四逆散」というお薬 5    参照

 

 

さて今日も、四逆散に関する、別の先生のご意見。

 


今日は矢数道明(やかずどうめい 1905-2002)先生です。

この先生も、大塚敬節先生奥田謙蔵先生と並んで、1905-2002の、実に96年間を生きた、近代を代表する漢方家の一人です。

 

亡くなる前年の、95歳まで外来診療を続けておられたことは有名です。

(スゲエ!!(;゚Д゚))

 

この先生の診療所(温知堂)は清明院のすぐ近く、新宿にあり、現在もご遺族によって引き継がれております。

 

この先生の師匠である森道伯先生(1867-1931)も、後世派の一派である一貫堂医学の創設者として、たいへん有名です。

 

この森先生も素晴らしい先生なので、そのうち紹介したいと思います。

(みんな本当にスゴイので、紹介し始めたらキリがないですな。。。(苦笑))

 


 

まあともかく、矢数先生はその著書『漢方処方解説』の中で、

「四逆散は大柴胡湯と小柴胡湯の中間のものに用いる。」

と述べ、

「大柴胡湯よりも虚証で、熱状が少なく、肋骨下の緊張がやや弱く、小柴胡湯よりは少し実証で、お腹は肋骨下の緊張、腹直筋の緊張が中心で、

 

腹直筋の緊張は臍の周囲まで及び、手足のキンキンに冷えてる者や、癇の昂ぶる神経過敏症の者に用いる。」

と述べ、臓腑では

「肝の臓の実と、脾胃がやや虚。」

と述べ、たいへん応用範囲が広い薬であることを教えています。

 


まあ、矢数先生の解説の書き方としては、四逆散大柴胡湯の変方だと述べた、和田東郭先生浅田宗伯先生の見解を尊重しつつ、近代の湯本求真先生や龍野一雄先生の論を引いて、

 

大柴胡湯四逆散の使い分け方、とりわけ、腹診における見分け方に重きを置いた、解説の仕方をしております。

 


この観点も、また重要です。

 


大塚先生の見解に、少し補足を加えた、という感じですね。

「四逆散」というお薬 7  に続く

 

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患者さんの声(70代女性 原因不明のまぶたの脹れ)

2015.05.07

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「患者さんの声」をいただきましたので紹介します。

(さらに…)

「カゼひいちゃったんですけど、今日診てくれませんか?」

2015.04.30

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患者さんシリーズ第3弾です。

「体調が悪いので治療を休みます。」という電話

とか、

「検査受けた方がいいですかねえ?」という質問

だけ書いて終わらせると、なんかダサい感じがするので(苦笑)、上記のような事を聞かれる事の方が少ないのであって、

普通はこうだよ、こうなるよ、というのを書いて、終わろうと思います。

最近、立て続けに何人か診ました。

「カゼひいちゃったんですけど、今日なるべく早く診てくれませんか?」

と仰る患者さん。

高熱が出ている患者さんもいました。

喉が痛い患者さん、咳の止まらない患者さん、鼻水や寒気のきつい患者さん、吐き気や胃痛を伴う患者さん。

みんな治りましたよ、鍼一本で。

西洋薬で症状を強引に抑え込む感覚を体感したことある人なら分かると思いますが、確かに症状は楽になった、

しかし、妙な残り方をしたり、一番辛い症状が楽になった代わりに違う症状が出てきたとか、そういうのが嫌なんですね。

・・・で、鍼で風邪症状を治したことのある人は、実にいい感じの治り方を体感されたことと思います。

それを分かってる患者さん、あるいは、清明院の言っていることをよく理解されてる患者さんからは、上記のような電話がかかってくるなんてのは全然珍しくないです。

むしろ普通です。

西洋薬も、即効で症状を抑えるにはいいけどね。

あまりそういう無理をやると、身体には大きな負担かかります。

んー、やっぱ「治る力」の最大化でしょ。

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「順証」と「逆証」について

2015.04.05

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我々がやっている治療を、東洋医学の専門用語でいうと、「弁証論治」と言います。


「弁証論治」って何ですか? 参照

 

 

「”証(しょう)”を”弁(わきま)”えて”論”理的に”治”療する」

 

でしたよね。

 

 


ここで、北辰会方式では、まず治療時点の「証」を弁えるときに、それが「順証」 なのか、「逆証」なのか、という判断をしています。

 


これは、その患者さんの病が、その術者にとって治せるものであるか、治せないものであるかの、極めて重要な判断です。

 

簡単に言うと、

順証・・・治せる、治っていく病

逆証・・・治せない、治っていかない病

のことです。

 

因みに中医学の成書では「順証」「逆証」という言い方は、外科の分野以外ではあまりしないようですが、

 

「一般に、表から裏へ伝入するのは、悪化する”逆”であり、裏から表へ出るのは軽快する”順”である」

 

とあります。

 

燎原『基礎中医学』P144 参照)

 

 

因みに因みに、「順逆」や「逆順」、「順」や「逆」という熟語、単語は、古典では『黄帝内経』『難経』『傷寒論』『金匱要略』にも多数散見されます。

 

 

また、日本では江戸期や幕末の川越衡山(1758-1828)浅田宗伯(1815-1894)が、『傷寒論』を解釈する中で、「順逆」という考え方を使って解説しています。

 

 

まあ、もともとの意味としては

 

順・・・ノーマルな、セオリー通りの病の進み方や組み合わせや、病が快方に向かう時の表現

 

逆・・・アブノーマルな、イレギュラーな病の進み方や組み合わせや、病が悪化する時の表現

 

というほどの意味であり、病の予後(転帰)に関していう際は、『黄帝内経素問』平人気象論(18)

 

「人無胃氣曰逆.逆者死.(患者さんに胃の気がないものを”逆”といって、逆の人は死んでしまうよ)」

 

を、基本として理解していいと思います。

 

 


そして、順逆は当然、医者のウデによって変わってきます。

 

 

ある先生にとっては逆証であっても、ある先生にとっては順証、ということは十分にあり得ます。

 

これが初診時に正確に判断できれば一番いいのですが、場合によっては少し経過を追ってみないと分からない場合もあります。

 

仮に、治せない病を、いつまでも診ていた場合、患者さんと術者に、精神的、肉体的、経済的にかかる負担はハンパじゃないです。

 

また、ここの判断のユルさは、患者さんからの評価を大きく二分します。

 

ヤブ医者と言われるか、名医と言われるか、です。

 

前者であれば、辛い鍼灸師人生です。

 

後者であれば、幸せな鍼灸師人生です。

 

 

非常にシビアな判断が要求されます。

 

そして、全病気、全患者さんの中の、自分が診た場合の「順逆」の割合のうち、順証の割合を極限まで高めるのが、我々鍼灸を天職とする者の使命でしょう。

 

 

 

◆参考文献

 

『鍼灸臨床能力 北辰会方式 理論編』緑書房

『鍼灸臨床能力 北辰会方式 実践編』緑書房

『中医基本用語辞典』東洋学術出版社

『基礎中医学』燎原

論説『『傷寒論』で少陽病篇が陽明病篇のあとに位置する理由』藤平健

 

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患者さんの声(30代女性 不妊症 冷え性 ノドのつまり感など)

2015.03.26

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「患者さんの声」をいただきましたので、紹介します。

(さらに…)

小半夏加茯苓湯と船酔い 4

2015.03.01

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これまでのお話

 

小半夏加茯苓湯と船酔い
小半夏加茯苓湯と船酔い 2  
小半夏加茯苓湯と船酔い 3
     参照

 


では続きいきます!!

 

ここまでで、和歌山の加太の船の上で、油谷真空先生から何気なく渡された「小半夏加茯苓湯」にインスピレーションを得て、ツラツラと書いてきました。(笑)

 

今日は「小半夏加茯苓湯」を構成する3つの生薬(半夏・生姜・茯苓)に関して、解説しておこうと思います。

 

◆半夏(はんげ)

サトイモ科、カラスビシャクの根茎であり、医歯薬出版株式会社の『中医臨床のための中薬学』によれば性は温、味は辛、帰経は脾胃、とのことですが、

 

まあ簡単に言うと、脾の臓、胃の腑、肺の臓あたりに作用し、温め、余分な水分を飛ばしてくれる生薬です。

 

これは生で食べると軽い毒性がありまして、かつて蓮風先生が若い頃に生で試しに食べてみたら、ノドがカラカラになった感じがして、

呼吸するのもきつく、エライ目にあったという話をされておりました。(笑)

(因みに生で使う場合は外用薬として使い、皮膚の化膿に効果があるようです。)

 

そして、その半夏の毒性を消してくれるのが生姜なのです。

 

◆生姜(しょうきょう)

家庭に良くある、ショウガ科ショウガの根茎。


皆さんよくご存じの、しょうが焼きの生姜であります。

 


性は微温、味は辛、帰経は肺、脾、胃、とのことで、半夏とほぼ同じなんですが、半夏は水分を飛ばす作用が強く、生姜は胃を温める作用が相対的に強い、と見ていいと思います。

 

つまり半夏と生姜のコンビネーションで余分な水を飛ばしながら胃を温める、ということでしょう。

 

 

田畑隆一郎先生『傷寒論の謎 二味の薬徴』では、半夏と生姜のコンビネーションについて

 

「嘔、嘔吐を治す主薬にして、停水、宿飲を除き嘔、嘔吐、喘欬、噦(えつ:しゃっくり)、噫(い:げっぷ)を治す」

 

とまとめて下さっています。

 

 


◆茯苓(ぶくりょう)

これはサルノコシカケ科マツホドの菌核を輪切りにしたもの。

 

主に松の根に寄生する茯苓は、利水作用に優れた生薬として知られています。

 

性は平、味は甘淡、帰経は心・脾・胃・肺・腎とあり、簡単に言うと、心の臓、脾の臓、胃の腑、肺の臓、腎の臓に作用して、停滞した水を動かし、

 

結果的に利尿作用だったり、鎮静作用を発揮する生薬です。

 


これは、分かりやすく言えば松の木の根っこに生えるキノコです。

 


キノコなんですが、地表に顔を出しているわけではなく、地下に生えているジメッとしたやつで、見つけにくいことから、

”幻のキノコ”

とも言われるそうです。(笑)

 

この幻のキノコが、みぞおちのところの深い部分に入り込んで停滞してしまった、余分な水分を動かすのです。

 

 

地面に埋まっているキノコ(菌類)が、人体の深い部分の水を動かす。

 

面白いですね~。(*‘∀‘)

 

そしてこの3つの生薬はどれも植物の”根っこ”、あるいは”根っこに寄生するもの”です。

 

陰陽で言うと、明らかに”陰の場”である地面の下にある”根っこ”と、そこにくっつくキノコを使って、深い部分に支えた水を動かし、結果的に全体としての気を下げる・・・。


古代中国人、面白い発想しますねー☆

 

小半夏加茯苓湯と船酔い 5  に続く

 

 

◆参考文献

 

神戸中医学研究会編著『中医臨床のための中薬学』医歯薬出版株式会社

田畑隆一郎『傷寒論の謎 二味の薬徴』源草社

 

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小半夏加茯苓湯と船酔い 2

2015.02.27

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前回のお話

 


小半夏加茯苓湯と船酔い                参照

 

では、続きいきます!

 

前回、「小半夏加茯苓湯」は、漢の時代の、東洋医学を代表する古典の一つである『金匱要略』に記載されている方剤で、現代では妊娠悪阻(つわり)に応用されているお薬である、というお話をしました。

 

 


では今日は、この方剤の元になった「小半夏湯」という薬について、ちょっと専門的に考えてみたいと思います。

 

「小半夏湯」『金匱要略』に登場するのは「痰飲欬嗽病脉証治」という章の”支飲”という病証の項に出てくるのが一点目で、ここでは、

 

嘔吐しても、まだノドの渇き感が出ず、嘔吐が止まらないものを治療する薬として紹介されております。

(嘔吐してもまだ余分な水分が出し切れておらず、みぞおちに支(つか)えている、という判断です。)

 

次は、「黄疸病脉証治」という章の”黄疸の治法”が紹介されているところに出て来るのが二点目なんですが、ここでは、黄疸そのものの治療というよりも、

 

黄疸の治療をミスして、結果的に脾胃が冷えてしまって、しゃっくりが止まらなくなった時に使うように、という形で紹介されております。

 

最後は、「嘔吐穢下痢病脉証治」という章の”嘔吐の治療法”が紹介されているところに出てきます。

 

ここでは、単に中焦(脾胃)に水分が停滞している場合の嘔吐の治療に用いるように、との指示で出てきます。

 

このように、「小半夏湯」は総じて

嘔吐や、脾の臓、胃の腑の異常、中焦の水分の停滞

に、用いられております。

 


これは、この方剤の中の構成生薬である”半夏”に、水分の停滞を取り除く効果があること、また”生姜”には、胃を温め、結果的に気を下げて吐き気を止める効果があることから、

 

上記のような症状に使われるのですね。

 


ではこれ(小半夏湯)に”茯苓”を加えた「小半夏加茯苓湯」はというと・・・?

 

小半夏加茯苓湯と船酔い 3       に続く。

 

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