東洋医学 伝統鍼灸 清明院

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「左肝右肺」に関して

2014.12.10

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本日、東洋鍼灸専門学校にて、「顔面診」のお話をしてきました。

 

『黄帝内経素問』刺熱篇(32)というところには、顔面の左側で肝の臓を、右側で肺の臓の異常を見る、という考え方が載っています。

 


「肝熱病者、左頬先赤。心熱病者、顏先赤。脾熱病者、鼻先赤。肺熱病者、右頬先赤。腎熱病者、頤先赤。」


(『黄帝内経素問』刺熱篇(32)より)

 


よくこれのことを、

「左肝右肺(さかんうはい)の論」

なんて言いまして、これが何でなのか、という疑問は、けっこう東洋医学によく出てくる議題の一つだったりします。

 

ネットで見ると、色々な中医学の先生が、色々なことを言っているようですね。

 

参考サイト① 

 

参考サイト②

 

(中国語サイトです。)

 

顔面の他に、腹診でも同じように、左肝右肺の考え方で診たりもします。

 

れは鍼灸の聖典として有名な『難経』16難に書いてあります。

 

学生さんから、

「何で左で肝を、右で肺を見るんですか?」

という質問が来ました。

 


ド直球の、いい質問だと思います。


(学生さんからしてみれば、解剖学的に肝臓は右上腹部にあるのに何で?というぐらいのつもりだったのかもしれませんが。。。)

 


そういう素朴な疑問を常に持ち続け、曖昧にしないことが、東洋医学を深く理解していく上で、たいへん重要なことだと思います。

 


素朴な疑問、略して「素問(そもん)」です。


(・・・冗談です。(微笑))

 


まあともかく、こういう風に、東洋医学の古典の中に当たり前のように書いていることというのは、本当の本当のところは、一番初めに言い出した、

書いた人に聞いてみるしかありません。

 

しかし、書いた人は数千年前の外国人ですから、聞けるはずもありません。(笑)

 

だから、自分達で考えるしかありません。

 

優秀な先輩方の見解を参考にしながら。

 

 


長くなったんで、続く。

 

 

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印象的な一節(澤田健先生と肝)

2014.08.19

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こないだ、東京での用事のついでに、清明院に現れた、初代副院長。


診療終了後、彼と飲んだときに話題に出た論文やら資料やら、本の一部やらを、後日メールで送ってきた。

読んでみると、どれもなかなか面白い。

その中に、印象的な一節が。

「・・・澤田健が「病は肝に生じて肝に収まる」と言っておられるが、肝すなわち肝経、厥陰は十二支で言うと”亥”であって、

いよいよ種子の甲割れが始まる時である。

これは受精する一時前にあたる。

病気にしても、種子が受精されるから発する訳で、それが発展して、結果的に色々の症状を呈する。

そこで結局、肝経を調整すると病は収まってしまう訳である。

根本的にみれば、誰もが「肝」を弱らせることが発病のもととなっていると言える。・・・」

二代目目黒玄龍子 著『二十一世紀の医学・蒙色望診(全)』巻末附録「易経と内経」より一部改編して抜粋


だそうです。


なるほど、こういう考え方もアリね。


澤田先生も目黒先生も、深い深い意味を込めて仰っているんだと思います。。。


・・・まあでも、これ(字面)だけだと極論し過ぎだけどね。


でも、個人的には澤田健先生の極論的物言いが、前から好きだったりする。(笑)


本人はホントにそう思ってる感じがするからね。

 


もし、この時代にいたら面白かったのに。

 

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「脾虚肝乗(ひきょかんじょう)」に注意せねばならない。

2014.03.23

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さて、いよいよ24節気では「春分」を迎えました。

 

花粉症の症状がきつい人も多いことでしょう。

花粉症考(目の痒み篇)   参照

 


春は五行で言うとも木気が盛んになります。

「五行」って何ですか?(その8)
「春」と「木」と「風」と「肝」      参照

 


従って人体では「肝の臓」や「胆の腑」の機能が亢進し気味になる場合があります。

「肝」って何ですか?(その13)
「胆」って何ですか?(その12)     参照

 


肝や胆が亢進するからって、肝や胆を抑制するように治療すれば、万事うまくいくかというと、全然そんなことないです。

 

肝や胆の亢進の症状は示しているけど、所見をよく診ると、どうも「脾の臓」の方に問題が。。。というケース、非常によくあります。

「脾」って何ですか?(その9) 参照

 

この場合、肝や胆を下手に叩くと、まあ悪化するか、すぐ戻ります。(苦笑)

 

正解は脾の臓のフォローです。

 

やっぱり、咄嗟の弁証論治の的確性ですね。


「弁証論治」を含む記事 参照

 


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病院での漢方薬の使われ方(抑肝散) その4

2014.01.19

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これまでのお話

 


病院での漢方薬の使われ方
 
病院での漢方薬の使われ方 その2
 
病院での漢方薬の使われ方 その3
    参照


 

ここまで、僕が病院で見た、とあるワンシーンから、現代の精神科において非常によく使われる「抑肝散」という漢方薬に触れつつ、

病院での漢方薬、東洋医学の使われ方をお話してきました。

 

それによって発生するであろう過ちについても指摘しました。

 

漢方薬を使うなら、その患者さん一人一人に合わせて弁証し、表裏寒熱虚実、五藏六府の不調などを明確にした上で、徹頭徹尾、東洋医学の考え方に基づいて処方しなくては、

 

せっかくの漢方薬も、真価を発揮できないと「僕は」思います。

 

この辺の話は、以前、蓮風先生のブログにも出てきています。

蓮風先生のブログ「小柴胡湯が犯人か?」 参照

 

・・・ただ、僕が非常に信頼していた、とある漢方の先生(故人)が、亡くなる寸前に、僕がそういう話をした時、

「イヤー竹下君、そうは言っても、病院で当たり前に漢方薬が処方されるとかさー、一部保険がきくようになったとかさー、テレビで漢方薬のCMがやっているとかさー、

それだけでも本当にスゴイことなんだよ。。。」

と仰っておりました。

 

この一言は、非常に印象的でした。

 

その先生は数年前に80数歳で亡くなっていますから、その先生の若い頃、今から約50年ほど前は、東洋医学、漢方医学に対する世間の目は、

もっともっと全然厳しかったのでしょう。

 

医療として認められてすらおらず、単なる迷信だったり、時代遅れの歴史の遺物のような扱いを受けていたんだろうと思います。

 

 

その先生も若い時分に漢方で生きていくと言ったら、周りから大反対されたそうです。

 

 

それから比べると、現状はまだいい方なのかなあ、とも思ったりもします。

 

まあ、いずれにせよ、そうは言っても現状は不満だらけなんですが(苦笑)、歴史的に考えると、どうやら上り調子であるようなので、

もっともっと現場から盛り上げていこうかな、と思っています。

 

てか、それしかないね。

 

 

・・・ん~、ま、いったん完結。

 

 

 

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病院での漢方薬の使われ方(抑肝散) その3

2014.01.18

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これまでのお話


病院での漢方薬の使われ方
 
病院での漢方薬の使われ方 その2
     参照

 

今回の病院見学で、僕を引率してくださったドクターは、お身内に漢方医がおられるそうで、そのお身内の診療のやり方は、まず正確に問診し、その上で注意深く脈や舌を観察してから、

 

一人一人に合わせて、一味一味、生薬の分量を加減して処方する、という、本来の漢方医学のやり方だったそうで、それを幼い頃から見ていて、

 

ドクター御本人も実際に治療を受けていたそうで、昨今巷の病院で行われている、いわゆる病名漢方、症状漢方には、大いに疑問を抱いているようです。

 

しかし、巨大な病院組織の中で、一勤務医が、その病院のやり方自体をどうこう変えることは出来ないし、病名だけを見て、東洋医学的な診察内容は何も考えずに漢方薬を処方している、

ほかの先生に対して口を出すわけにもいかず、黙って見ている、という状況なんだそうです。

 

このように、当然ながら、分かっているドクターは分かっている。

 


西洋医学と比較した場合の、東洋医学の特長である、徹底したオーダーメイド性、その治療技術レベルの高さ、学問としての高度さを。

 

しかし、それ以上に、その病院の方針、各ドクターの考え方、というものがあり、現場でそれを大きく変えることは、現場のドクターであっても難しい、という現実があるようです。

 


それを聞いていて、なんだ、そういうフラストレーションて、我々と同じじゃん、と思いましたね。(^^;

 

まあこのように、一般的な病院の現場における漢方薬、東洋医学の取り入れられ方は、処方している側、されている側の根本的な認識を改めないといけない、

という問題があるのですが、こういう制度そのもの自体を変えることは不可能に近いでしょう。

 


・・・といって悲観してても始まらないので、何か方策を考えなくてはなりません。。。

 


雀の涙のような影響力であっても、現場で頑張って治し、その事実を発信し続けなくては。

 

あと、まあこれはそもそも論だけど、一番いいのは、言い方が悪いようだけど、消費者(患者さん)自体がもっと賢くなることでしょうね。

 


もっと自分の体に、自分の健康に高い意識を持つこと。

 


そうすると必然的に、東洋医学が本来どういうもので、西洋医学が本来どういうもので、ということに興味が出て、より質の高い東洋医学、西洋医学を受けようとする人が増えるでしょう。

医者に言われるがまま、されるがままではなくなる。

 


そうすると徐々に医療を提供する側も、そのニーズに応えざるを得なくなる、というワケです。

 


そうするにはどうするべきか。

 


・・・わからんネ。(爆)

 

理想論か。

 

もうチョイ続く

 

 

 

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病院での漢方薬の使われ方(抑肝散) その2

2014.01.17

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前回のお話

 


病院での漢方薬の使われ方
 参照

 

今日は抑肝散の話の続きいきます。

『保嬰撮要』の条文によると、抑肝散はもともと、

「抑肝散は小児が肝の経絡の虚熱のため痙攣を起こし、あるいは発熱して歯を食いしばり、あるいはひきつけを起こして発熱悪寒し、

るいは脾の臓に悪影響を及ぼして粘液(痰涎)を嘔吐し、腹部膨満して食欲不振となり、よく眠れないという症状を治す。

処方は軟柴胡(なんさいこ)と甘草(かんぞう)が各五分、川芎(せんきゅう)が八分、当帰(とうき)と妙った白朮(びゃくじゅつ)と茯苓(ぶくりょう)と釣藤鈎(ちょうとうこう)が各一銭で、

上を水で煎じて、小児と母親の双方に服用させる。

また、これを蜂蜜で煉り、丸薬にしたものを抑青丸という。」

となっております。

(赤字部分が非常にポイントだと思います。)

 

母親にも服用させる、というのが面白いですね。

 

 

因みに『保嬰撮要』の中に抑肝散の記載は4カ所出てきます。

 

江戸時代、日本では盛んに抑肝散の加味方が創製され、和田東郭(わだとうかく 1742-1803)『蕉窓方意解』の中で抑肝散加芍薬(よくかんさんかしゃくやく)として、

喘息や打撲に応用し、本間棗軒(ほんまそうけん 1804-1872)『内科秘録』の中で抑肝散加羚羊角(よくかんさんかれいようかく)として癲癎に応用し、

 

浅田宗伯(あさだそうはく 1815-1894)は、『勿誤薬室方函口訣』の中で和田東郭の抑肝散加芍薬に黄連や羚羊角を加え、脳卒中後遺症などに応用しており、

 

現代でもよく使われる超有名な加味方である抑肝散加半夏陳皮(よくかんさんかはんげちんぴ)は、抑肝散に、湿痰を取る二陳湯を加え、

 

そこからさらに生姜を除いた処方で、抑肝散の効果+湿痰を取り除く作用を加えており、非常に重用されるのですが、

 

文献的には浅井南溟の『腹診録』に記載があるものの、なんと誰の作かはハッキリとは不明なんだそうです。。。

 

(ちなみに上記リンクから分かるように、浅井南溟の『腹診録』ではなく『浅井腹診法』ではないかと思うのですが。。。)

 


しかし、日本で作られた処方であることは間違いなく、そういうものを”本朝経験方”と言います。

 

 

ちなみに昭和漢方の巨人の一人である矢数道明先生は抑肝散加陳皮半夏を北山友松子(?-1701)の創方ではないかと推測しておられるそうです。

 

 

↑↑上記内容は

 

中田敬吾ほか「抑肝散加味方の研究」

真柳誠 抑肝散・抑肝散加陳皮半夏① 古典的解説  を参考に纏めさせていただきました。

 

・・・まあこんな感じで、抑肝散てのは、中国明代に発表されて以来、特に日本で、臨床家の間でずいぶんゴチャゴチャとこねくり回された処方なんですが(笑)、

 

要は肝陰、肝血をフォローすることで肝陽、肝気が暴れないようにするのが基本的な目的であり、現代医学的に、”認知症なら抑肝散”、という短絡的な使い方はおかしい、

 

というのが私の意見です。

 

当たり前ながら、東洋医学的には、認知症にも虚実寒熱、臓腑、病邪の別あり、だからです。

 

 

ここで、変に誤解されて突っかかられたら嫌なので付言しておきますが、僕は、

 

「ある西洋医学的な病名に対して、ある漢方処方や、ある経穴への刺鍼施灸が、やらない場合よりも優位な効果を示す、というデータを得た、であるからして、現代医学の現場において漢方鍼灸は有用性が高いのだ。」

 

という研究、論理、主張をすること自体については、おおむね賛成なんです。

 

 

しかし、そういう研究結果があるからといって、何も考えずに、現場において、西洋医学的な病名のみから漢方処方、鍼灸配穴を考えるという、

 

患者さん、東洋医学を扱う上でまったく短絡的で浅薄な態度には大反対だ、という立場なのです。

 

 

つまり臨床家としては、抑肝散とその加味方を通じて、肝陰、肝血をフォローしながら肝陽、肝気を抑制する、というやり方は、認知症その他をやるうえで、

 

臨床上非常に価値の高い方法論である、ということを学べばいいのです。

 

 

もうチョイ続く

 

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病院での漢方薬の使われ方(抑肝散)

2014.01.16

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こないだの病院見学の際、こんなシーンがありました。

 

病院見学については


明日は早起きして・・・
精神病院の患者さん       参照

 

ナースステーションのカウンターの上に、ズラーッと並べられた〇ムラの漢方薬の袋。

 


僕が、

「これは何ですか?」

と看護師さんに問うと、

「”抑肝散(よくかんさん)”です。」

とのこと。

 

・・・抑肝散とは、もともとは1556年、明の時代に中国で出版された『保嬰撮要(ほえいさつよう)』という書物に出てくる漢方薬で、

現代では主に認知症などの精神疾患によく応用されております。

 

因みに『保嬰撮要』という本は実は小児科の本であり、薛鎧(せつがい)薛己(せつき)という、明の時代の名医の親子によって書かれました。

 

20巻にも渡る超大作で、全て小児科について書かれています。

 

日本では、約100年後の1655年に中江藤樹が著した『捷径医筌(しょうけいいせん)』や、1745年に甲賀通元が著したベストセラー処方集である『古今方彙(ここんほうい)』に、

『保嬰撮要』の中の抑肝散のくだりが、ほぼそのまま転載されているそうです。

 

(ちゃんと読んでないけど(爆))

 


また、

「抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)」

だったり、

「抑肝散加芍薬黄連(よくかんさんかしゃくやくおうれん)」

として、抑肝散に他の生薬を加味したもの(どちらも日本人の医者が創方したものと言われています)が、現代では神経症や不眠症などの精神症状によく使われますが、

 

抑肝散は成分の中に甘草が含まれているので、よく効くからといってみだりに多用、濫用すると「偽アルドステロン症」という、重大な副作用が起こる場合があり、

 

注意が必要、ということになっております。

 

因みにこの問題(甘草含有製剤)については、このブログでも以前チラッと触れたことがあります。

勉強会&謝恩会 参照

 

 

ただ、こういった漢方の誤用から起こる諸問題に関しては、漢方薬が犯人なのではなく、訳も分からず処方した人、あるいは訳も分からず買って飲んだ人が犯人なのであり、

 

さらに言えば、そういうことが起こらないように、医学部や薬学部における東洋医学教育が徹底されていないこと、また、そういうことが起こらないように、

 

入手方法に関する厳格な法整備がなされていないことに、問題の本質があると思っています。

 

 

ん~、長くなったから次回。(笑)

 

 

 

 

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「肝」って何ですか?(その13)

2012.07.10

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これまでのお話・・・

 

「胆」って何ですか?(その12)

 

「肝(かん)」って何ですか?(その1)

「肝」って何ですか?(その2)

「肝」って何ですか?(その3)

「肝」って何ですか?(その4)

「肝」って何ですか?(その5)

「肝」って何ですか?(その6)

「肝」って何ですか?(その7)

「肝」って何ですか?(その8)

「肝」って何ですか?(その9)

「肝」って何ですか?(その10)

「肝」って何ですか?(その11)

「肝」って何ですか?(その12)

 

 

続きいきます!!

 

 

◆「肝の臓」と「疲労」と「疲労感」の続きの続き


前回、労働の程度がそれほど重くなく、体を診てもそれほど疲労がたまっている風でもないのに、強い疲労感を自覚するケースがあることと、

そのメカニズムとして、肝の臓が大きく関わることが多い、というお話をしました。

で、今日は、その逆パターンのお話。

労働の程度からしても、実際に診た、体の状態からしても、体は明らかに疲労しているにも関わらず、患者さんに聞いても、まったく自覚がない、という場合があります。


そういう患者さんにもし、

「これ、相当疲れてるよ。」

と声をかけたとしても、

「え?そうですか??全然そんな風に感じないんだけど・・・。」

となるだけです。(苦笑)

・・・なぜ、こういうことが起こるのか。

これは、体に実際に起こっていることを「正確に認知する」システムの異常であることが少なくないです。

 


ですから、こういう患者さんを正しく治療していくと、「疲労感」を正しく認識するようになり、大病を未然に防ぐことが出来ます。

よく、患者さんから、

「鍼を受けるようになって、以前の自分はすごく無理をしていたと分かりました。」

なんて言われることがあります。

 


こうなると、我々としては

「しめしめ・・・。良く効いとるワイ。」

なワケです。

 


東洋医学的な、「感覚認知のシステム」を理解する上で重要な臓腑といえば、「肺の臓」「心の臓」でした。

 

「心」って何ですか?(その6)

「肺」って何ですか?(その9) 参照

 


この二臓のうち、「認知機能」において特に重要なのが「心の臓」であり、この「心の臓」の働きがしっかりとなされるために重要なのが、「肝の臓」なのであります。

 


そのことについても以前、「心肝同源(しんかんどうげん)」という言葉を使って、ご説明いたしました。

 

「心」って何ですか?(その5)  参照

 

 


また「肝の臓」は、「肺の臓」とも深く関わり、人間のあらゆる感覚というのは心、肝、肺の三臓が主に強調しあって、正常な状態が保たれている、と考えられています。

肝と肺の関わりについては 「肺」って何ですか?(その3) 参照

 


この三臓の働きが何らかの原因によって不和を起こしていたりすると、感覚の異常が起こり、痛いはずのものが痛くない、とか、大して痛くないはずのものが猛烈に痛い、

 

とか、疲れているはずなのに、それを自覚できない、とか、疲れてないはずなのに強い疲労感を感じる、とかいう、ややこしいことが起こってきます。

 

そしてこれが、臨床上は非常に多いと思うし、あらゆる大きな病の原因になっていくと思います。

 

で、それには「肝の臓」の調整が、非常に重要である、と。

 

次回、そんな超重要な「肝の臓」の、養生法のお話をちょっとして、終わろうかな、と思います。

 

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「肝」って何ですか?(その12)

2012.07.07

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これまでのお話・・・


「肝(かん)」って何ですか?(その1)
「肝」って何ですか?(その2)
「肝」って何ですか?(その3)
「肝」って何ですか?(その4)
「肝」って何ですか?(その5)
「肝」って何ですか?(その6)
「肝」って何ですか?(その7)
「肝」って何ですか?(その8)
「肝」って何ですか?(その9)
「肝」って何ですか?(その10)
「肝」って何ですか?(その11)

 

続きいきます!

 

◆「肝の臓」と「疲労」と「疲労感」の続き

 

前回、実際の症例から、「実際の肉体疲労の程度」「患者さんの自覚的な疲労感」に、大きくギャップがある場合がある、というお話をしました。


また、肝の臓が古典の中で「罷極の本(ひきょくのほん)」な~んて呼ばれ、疲労回復に重要な働きを持つことについても触れました。


そもそもこの「疲労」というものについては、西洋医学的にも、なかなか定義があいまいなシロモノのようなんですが、疲労を東洋医学的に、

 

「気血の消耗と、気血の停滞」

 

と定義した場合、その感じ方に個人差が出るのはどういうことでしょう。

 

まず、疲労の「程度」を決定づけるのは、気血の消耗と停滞の「程度」なワケですから、基本的には作業が長時間で、重労働であればあるほど、疲労の程度は増すハズです。

でも、同じ労働をしたって、人によって感じる疲労感は同じではありません。


まあ、スポーツマンと一般人では体力が違う、というのは当たり前ですが、年齢も性別も同じ、基礎体力もほぼ同じ人が、同じような労働をしても、

自覚する疲労感には必ず違いが出ます。

 


コレは、ひとつにはその人の「肝の臓」が、どれだけ疲労回復力(疏泄力)を持っているかによって変わって来るんだと思っています。

人間、一人一人顔も声も違うように、五臓六腑の堅脆も違うのです。

つまり、

大したことない疲労でも、もともと肝の臓が弱い人にとっては、回復が遅いため、疲労感を強く感じやすい

という訳です。


肝の臓が病んでいると、疲労がなかなか回復できないのです。

そして、そこにさらに疲労がたまると、弱っている肝の臓にさらに負担をかけることになり、さらに弱る、という悪循環に入っていきます。


コレが、様々な大病のもとになる、重要な東洋医学的メカニズムの一つだと思います。



では逆に、カラダは明らかにかなり疲労しているのに、それを「大したことない」と認識する、あるいはまったく感じないという場合は、

どう考えたらいいんでしょう。

 


次回に続く。

 

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「肝」って何ですか?(その11)

2012.07.05

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これまでのお話・・・

「肝(かん)」って何ですか?(その1)
「肝」って何ですか?(その2)
「肝」って何ですか?(その3)
「肝」って何ですか?(その4)
「肝」って何ですか?(その5)
「肝」って何ですか?(その6)
「肝」って何ですか?(その7)
「肝」って何ですか?(その8)
「肝」って何ですか?(その9)
「肝」って何ですか?(その10)

 

 

久々に「肝の臓」について、ちょっと書き足しておきます。

 

というのも、最近診た患者さんで、「肝」について改めて考えさせられ、そのことについて、

「この”「肝」って何ですか”シリーズに書いといたっけな・・・??」

と思ったので、久々にザーッと読み返してみると、書いていませんでした!(゜o゜)

 


・・・という訳で、久々に書き足します。

(笑・・・こういうことがすぐにパッと出来るのも、ブログの良さだね。)

 

◆「肝の臓」と「疲労」と「疲労感」

こないだ、こんな患者さんがみえました。

「カラダが重だるい、しんどい、もう年だから、もう年だから・・・。」

とおっしゃる男性。


・・・といっても、その方はまだ40代前半。


どう考えても年齢的には”言うほど”年ではないです。


見た目だってそんなに老けこんでいる様子もない。

 


でも、彼曰く、

「ストレスなんて関係ない。まったく関係ない。だって常にあるから。精神的には全く問題ない。ただ、年だから・・・。」

とおっしゃる。

この時点で分かるのは、

1.精神的なストレスに常にさらされている自覚はあるが、それと体の症状との因果関係を認めたくない。

2.疲労感、倦怠感を強く自覚しており、それを自身の年齢のせいだと思いこんでいる。

という2点です。

そりゃあ確かに、20代の頃と比べたら、体力的には落ちてて当たり前です。

でもそれを、どうとらえるかで、カラダに感じる感覚、自覚症状は全然違ってきます。

『黄帝内経(こうていだいけい)』の中の有名な言葉で、「肝は罷極(ひきょく)の本」という言葉があります。

(『黄帝内経素問』六節蔵象論(9))

 


この聞き慣れない”罷極”という言葉の意味については、最近、蓮風先生のブログにも出てきました。

『鍼狂人の独り言』 疲労について その5 参照

 


要は、「罷極」とは「筋肉の疲労」のことであり、それと最も関係が深いのが「肝の臓」だよ、ということです。

 


ここでいう「疲労する」ということの定義は、何らかの作業により気血を消耗し、気血の停滞を生むことです。

 

その消耗や停滞を取り去り、疲労を回復させてくれるのが「肝の臓」”疏泄(そせつ)作用”という働きであることは、すでに説明しました。

「肝」って何ですか?(その2) 参照

 

ここでさらに、実際の疲労の程度そのものと、自覚的な疲労”感”との関わりを考えた場合、ここにアンバランスが生じるのも、重要な病理であり、

 

これもやはり「肝の臓」と深く関わります。

 


つまり、肉体的には大して無理をしてないから、気血の消耗の程度や停滞の程度も軽いにも拘わらず、強い疲労感を覚えるのは、カラダに実際に起こっていることを「認知する」システムの異常か、

 

あるいは患者さん自身の表現力の無さや、あるいは単なる大げさか、ということを考えねばなりません。

 

長くなってきたので、次回に続く・・・。

 

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