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これまでのお話
「尺膚診(しゃくふしん)」について
「尺膚診」について 2
「尺膚診」について 3
「尺膚診」について 4
「尺膚診」について 5
「尺膚診」について 6
「尺膚診」について 7
「尺膚診」について 8
「尺膚診」について 9
「尺膚診」について 10
「尺膚診」について 11
「尺膚診」について 12 参照
では続きいきます!
◆和久田叔虎の『腹証奇覧翼』における尺膚診の記載
こないだ、墓マイラー8という記事を書きました。
この時に墓参した名医二人のうちの一人である和久田叔虎先生について、先日紹介しました。
和久田叔虎という人物 参照
その和久田先生の代表作である『腹証奇覧翼』という本の中に、何と尺膚診に関する記載が出てきます。
今回、偶然です。
まさかそういう風につながるとは・・・。
やはりあの時、僕の目の前に急に墓石が現れたのは偶然とは思えない。。。ナンテネ☆
まあともかく、『腹証奇覧翼』の冒頭部分、”総論並びに内経診尺図解”というところに、この尺膚診の話が出てきます。
(↑↑京都大学貴重資料デジタルアーカイブにリンク)
ここに、
「尺膚診には諸説あるけど、手を大きく開いて、親指の先から中指の先までの長さを”尺中”と言って、お腹をリンクさせて診てるに違いない!」
と述べ、さらに、
「尺内で臍からみぞおちまでをうかがい、尺外で臍下をうかがい、さらに体幹部を上中下三つに分けて、
臍からみぞおちまでを中とし、左の外側で肝を、内側で膈を、右の外側で胃を、内側で脾をうかがうとし、
みぞおちからノドまでを上とし、左の外側で心を、内側で膻中(胸腹ともにうかがうところ)を、右の外側で肺を、
右の内側で胸中をうかがい、前で生殖器と顔面部(目耳鼻口)をうかがい、後ろで肛門と首から背中をうかがい、
下では下腹部、腰から足をうかがう。」
とも述べ、
「素問に”三部九候”という言葉があるが、それは人体を上中下に分け、その左右と中をうかがうという意味だー!」
と、喝破しています。
・・・まあ、この論の正否はともかく、彼は上に挙げたような図まで付けて、この部分を強調しています。
細かい部分はともかく、前腕の状態をうかがう尺膚診を、腹診とリンクさせて考えたり、全身の上中下、内外をうかがうという考え方そのものは、
北辰会が臨床に取り入れている尺膚診の考え方と同じです。
冒頭に書くということは、非常に重要視している証拠でもあります。
因みに、『腹証奇覧翼』のもともとの本であり、和久田先生の師匠である、稲葉文礼先生の書である『腹証奇覧』の冒頭には、
いきなり腹診のやり方、手順が書いてあります。
そしてそこには、
「患者も”術者も”、心を静めて診察にあたれ。それはまさしく武士が敵に向かうが如く、雑念を捨てて、ただ病人を救わんと、心を専一にして行え。」
と、書いてあります。
ひたすらアツい文礼先生と、アツいけども、キチッと理論を言おうとする叔虎先生の個性がよく出ているイントロだと思いますね。(笑)
続く
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2015.09.18
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これまでのお話
「尺膚診(しゃくふしん)」について
「尺膚診」について 2
「尺膚診」について 3
「尺膚診」について 4
「尺膚診」について 5
「尺膚診」について 6
「尺膚診」について 7 参照
では続きいきます!
◆『黄帝内経』に繰り返し出てくる、皮膚観察の重要性
東洋医学には、「表をもって裏を知る」という考え方があります。
表面をよく観察することで、中の状態をうかがう。
これは『管子』の地數篇なんかにも出て来ますし、『黄帝内経素問』の5篇目、”陰陽応象大論”にも明記してありますし、
『黄帝内経 霊枢』の中の75篇目、”刺節真邪篇”なんかにも、例え話を用いて示してあります。
(管子について、まだ書いていなかったようなので、後ほど書きましょう。てっきり書いたと思っていた。。。(*’ω’*))
「表を以て裏を知る」 参照
・・・まあ、この考え方からすれば、皮膚表面の異常をうかがえば、身体の中の状態が分かる、ということになるわけです。
そして、その具体例は、黄帝内経の中の諸篇にもチョイチョイ記載してあります。
例えば素問の23篇目、”宣明五気篇(せんめいごきへん)”と、霊枢の78篇目、”九鍼論(きゅうしんろん)”なんかには、
五臓の主(つかさど)る所として、心は脈、肺は皮、肝は筋、脾は肉、腎は骨、これを五主という。
と述べてあり、ここでは肺の臓と皮膚の関与を明記しています。
「肺」って何ですか?(その12)
「衛気」って何ですか? その9 参照
因みにこの宣明五気篇というタイトルは、
”五臓の気について明らかにする篇”
という意味なんだそうです。
(そのまんまだねー)
九鍼論の意味は、
”九鍼について論じる篇”
という意味です。
(こっちもそのまんまー)
もちろん、皮膚の状態から、肺の臓「以外の」臓腑の状態をうかがうことも可能なんですが、肺の臓と皮膚とが密接にかかわる、
ということについて、どういう意味なのか理解しておくことは、非常に重要なことだと思います。
続く
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2015.08.19
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鍼灸治療の治療法に、「平補平瀉法(へいほへいしゃほう)」という考え方がある。
僕は個人的には、非常に好きな治療だ。
正気(言わば病と闘う力)を経穴に集め、結果的に気血の流れを良くし、治る力を高めるのが補法(ほほう)。
邪気(言わば病の原因となる、余分な気)が吹き溜まっている経穴の気を散らし、結果的に気血の流れを良くし、治る力を高めるのが瀉法(しゃほう)。
この、補法と瀉法を、一つの経穴に同時にやるのが平補平瀉法。
ある経穴に、正気の弱りと、邪気の停滞が、同時に表現されている場合がある。
なおかつ、その患者さんの病態も、正気の弱りに加えて、邪気の停滞も無視できないような病態である場合。
こういう時は、平補平瀉法でサクッと治すのが一番スマート、かつエレガントなんだが、その際の取穴といい、経穴に対する作法、鍼の操作といい、簡単ではない。
初心者、初学者はやらない方がいい。
立秋以降、これの応用を八脈交会八穴に施す機会が、非常に多い。
秋燥の気 参照
虚実錯雑、寒熱錯雑、燥湿錯雑、肺は嬌臓、半表半裏、左肝右肺、肝か胆か。
虚実 を含む記事
寒熱 を含む記事
燥邪 を含む記事
湿邪 を含む記事
「肺」って何ですか?(その12)
半表半裏 を含む記事
「左肝右肺」に関して 7
「肝」って何ですか?(その13)
「胆」って何ですか?(その12) 参照
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2015.07.13
2015.06.14
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これまでのお話
「四逆散」というお薬
「四逆散」というお薬 2
「四逆散」というお薬 3
「四逆散」というお薬 4
「四逆散」というお薬 5
「四逆散」というお薬 6 参照
さて本日も、また別の先生のご見解をみてみましょう。
今日は荒木性次(あらきしょうじ 1896-1973)先生です。
因みに号は荒木卜庵(あらきぼくあん)先生とも言います。
(この呼び名の方が有名かもしれません。)
この先生も、昭和を生きた、非常に有名な先生です。
実は私は、この先生の流れをくんだ先生と、ちょっとしたご縁がありまして、今ではその先生の漢方薬局に、清明院の患者さんをよく紹介させていただく間柄だったりします。(笑)
また、僕が尊敬している鍼の先輩も、この先生の薫陶を受けた先生から『傷寒論』の基本を学んだそうです。
そんなワケで、やや遠いけど、不思議な御縁を感じる荒木先生の『方術説話』に、このように書いてあります。
「四逆(四肢逆冷)する者には3通りあります。
1つ目は表面の陽気が弱っているもの、
2つ目は陽気が内(裏)に籠っちゃって外に伸びないもの、
3つ目は表裏の中間につっかえて、陽気が伸びないものです。
四逆散の場合は3つ目のパターンです。」
と述べ(1パターン加えた!)、そして、その籠った熱のことを”少陰の熱”と表現し、
「それ(少陰の熱)が肺に影響すれば、そこに水気が集まり咳となり、心に影響すれば動悸、肺腎両方に影響すれば小便不利、
腹中に影響すれば腹痛になり、腸中に影響すれば下痢となり、もともと腸の動きが悪い人であれば渋り腹になる。」
と述べています。
そして、上記のような診立てで、四逆散を使って、効果がイマイチの場合に、四逆散にさらにどんな生薬を加えたらいいかについても、丁寧に解説してくれております。
そして最後に、
「本章は少陰病血虚裏熱より四逆を生じたものの治し方を述べた章です。」
と締めくくっています。
なるほど、「表と裏の間に」籠る、ね。
裏に籠る、というのとはニュアンスが明確に違うのです。
(起こる現象も違う。)
咳や動悸など、上に出たり、下痢や腹痛、渋り腹など、下に出たりすることの、上手い説明になっていると思います。
そして”少陰の熱”とか、”少陰病血虚裏熱”という表現、これもサラッと言うけど、奥の深い説明だと思います。
他の先生のように、肝鬱+湿邪、とか、肝鬱+水邪とか脾胃の虚、とかで説明するのではなく、あくまでも
”熱(通じなくなった陽気)がどこに影響するか、そして、そこに集まる水気”
で論じる。
一つの立派なお立場だと思います。
・・・いやー、みんなスゲエなー (゜o゜)
「四逆散」というお薬 8 に続く
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2015.06.13
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これまでのお話
「四逆散」というお薬
「四逆散」というお薬 2
「四逆散」というお薬 3
「四逆散」というお薬 4
「四逆散」というお薬 5 参照
さて今日も、四逆散に関する、別の先生のご意見。
今日は矢数道明(やかずどうめい 1905-2002)先生です。
この先生も、大塚敬節先生や奥田謙蔵先生と並んで、1905-2002の、実に96年間を生きた、近代を代表する漢方家の一人です。
亡くなる前年の、95歳まで外来診療を続けておられたことは有名です。
(スゲエ!!(;゚Д゚))
この先生の診療所(温知堂)は清明院のすぐ近く、新宿にあり、現在もご遺族によって引き継がれております。
この先生の師匠である森道伯先生(1867-1931)も、後世派の一派である一貫堂医学の創設者として、たいへん有名です。
この森先生も素晴らしい先生なので、そのうち紹介したいと思います。
(みんな本当にスゴイので、紹介し始めたらキリがないですな。。。(苦笑))
〇
まあともかく、矢数先生はその著書『漢方処方解説』の中で、
「四逆散は大柴胡湯と小柴胡湯の中間のものに用いる。」
と述べ、
「大柴胡湯よりも虚証で、熱状が少なく、肋骨下の緊張がやや弱く、小柴胡湯よりは少し実証で、お腹は肋骨下の緊張、腹直筋の緊張が中心で、
腹直筋の緊張は臍の周囲まで及び、手足のキンキンに冷えてる者や、癇の昂ぶる神経過敏症の者に用いる。」
と述べ、臓腑では
「肝の臓の実と、脾胃がやや虚。」
と述べ、たいへん応用範囲が広い薬であることを教えています。
まあ、矢数先生の解説の書き方としては、四逆散が大柴胡湯の変方だと述べた、和田東郭先生や浅田宗伯先生の見解を尊重しつつ、近代の湯本求真先生や龍野一雄先生の論を引いて、
大柴胡湯と四逆散の使い分け方、とりわけ、腹診における見分け方に重きを置いた、解説の仕方をしております。
この観点も、また重要です。
大塚先生の見解に、少し補足を加えた、という感じですね。
「四逆散」というお薬 7 に続く
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2015.06.12
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これまでのお話
「四逆散」というお薬
「四逆散」というお薬 2
「四逆散」というお薬 3
「四逆散」というお薬 4 参照
では続きいきます!
今日もまた、違う先生の見解を見てみましょう。
近代の有名な漢方家の一人である奥田謙蔵先生(1884-1961)の『傷寒論講義』には、
「四逆散証のメカニズムは、もともと湿邪を持っている人が病に侵されて熱を生じ、その熱が内に籠って、気が四肢に達さないので四肢が冷える。
だから、四逆散の場合の下痢は、臭いの無い水様の下痢ではなく、脈が弱々しくて途切れそうということもない。
咳、動悸、小便出にくい、腹痛、下痢、渋り腹などの症状は、うちに水邪が停滞し、上下に動揺していることから起こる。
陽気が弱って四肢が冷える四逆湯とは真逆だよ。」
と書いてあります。
(抜粋要約 by 竹下)
奥田謙蔵先生は、もともと四国(徳島)の先生で、吉益流の古方派の考え方をベースにした先生です。
奥田先生は、傷寒論を非常に細かく読み込んだ先生として有名です。
8歳年上に湯本求真(1876-1941)先生という、超ビッグな先生がおりまして、この湯本先生と、ずいぶん親しかったようです。
(湯本求真先生については、和田啓十郎先生とともに、特別な人物なんで、いずれ書きましょう。)
まあ、この先生のように、明治政府が叩き潰した漢方医学の流れを、どうにかこうにか途絶えさせずに継続させた功労者たちが、歴史の陰にはちゃーんとおります。
東洋医学が古臭い、迷信めいたものと言われてバカにされ、国にまで保護、重用されない立場となり、一番厳しい時代だったはずです。
その時代の先生たちが、現場で、肌感覚として感じていたであろう、悔しさとか、そういう思いを想像すると、心、動かされますね。
〇
・・・まあともかく、ここでは、四逆散に関して、奥田先生は四逆散証になる人がもともと持っている「湿邪」に着眼しているようです。
面白い、そして重要な観点だと思います。
体質素因としての湿邪が無いと、同じように肝鬱と言っても、四逆散のような形をとりにくい、という指摘でしょう。
「四逆散」というお薬 6 に続く
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2015.06.10
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これまでのお話
では続きいきます!!
ここまでで、四逆散という超有名な薬に関して、和田東郭、浅田宗伯の見解を示しました。
さて今日は、また違う人の見解を見てみましょう。
今日は目黒道琢(めぐろどうたく 1739-1798)先生です。
まあこの先生は、和田東郭や荻野元凱と同時代の東京(江戸)にいた、超秀才、研究熱心バリバリ!みたいな先生です。
彼が言うには、
四逆散の状態とは、みぞおちが常に痞え、両肋骨下が、ガチガチに張って凝り、左脇腹が特に甚だしく、みぞおちの凝りがきつすぎて、
胸の中までも痞え感、膨満感を感じ、何となく胸中が不快で怒りっぽく、或いは肩とか背中が張って、或いは背中のみぞおちの裏あたりが張ったりします。
これらは、肝鬱(肝の臓の機能亢進)の症状です。
こういうものに、四逆散を使うといいです。
最近、肝鬱の人が多いので、四逆散の合う人が極めて多いです。
和田家(和田東郭の一派の事と思われる)では、慢性症状の病人を百人治療すれば、五、六十人は此の方に加減して用いると、
弟子が言っています。
水分の動きが強い証は、山薬、生地黄を入れると有効という。
私も、よく四逆散を用いて、いい成果が上がってます。
また、疝気(急性の腹痛)にも、四逆散の適応症が多いです。
『餐英館(さんえいかん)療治雑話』より抜粋意訳 by竹下
・・・だそうです。
同年代(5つ下)の和田東郭のやり方を参考にしているあたり、この時代は和田東郭がかなりリード的な存在だったようですね。
肝鬱(精神的なストレスによって、肝の蔵の機能が更新している病態)は、現代人にも非常によく見受けられる病態です。
これに対して、応用的に四逆散を使っていたのですね。
しかし、和田東郭の患者100人中5,60人は四逆散加減だったとは、興味深いところです。
江戸の平和に思える町民文化は、意外と人間関係によるストレス社会だったのでしょうかね。。。(苦笑)
肩こりと東洋医学 7 参照
「四逆散」というお薬 4 に続く
〇
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2015.06.08
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こないだ、
和田東郭という人物
という記事を書きました。
そこに出てきた、有名なお薬である「四逆散」。
今日はこの薬について、まとめておきます。
四逆散が歴史上に初めて登場したのは『傷寒論』です。
ここに、柴胡、芍薬、枳実、甘草という4種類の生薬を配合した漢方薬として登場します。
『傷寒雑病論』【弁少陰病脉証并治 328条】
少陰病.四逆.其人或欬.或悸.或小便不利.或腹中痛.或泄利下重者.四逆散主之.
効能は上記にある通りなんですが(笑)、まあ簡単にいうと、カゼをこじらせたやつで、手足がキンキンに冷えて、咳したり、動悸がしたり、小便が出にくかったり、
腹痛があったり、下痢したり、渋り腹(しきりに便意を催すのに排便が ごく少量で、すぐまた行きたくなる症状のこと。)だったりする者は、
四逆散を飲むとバッチリ治るよ、と書いてあります。
四逆散の”四逆”というのは”四肢逆冷”の略といわれ、手足が非常に冷える症状のことを言っています。
ここで重要なのは、病的な冷えには大きく分けると2種類あって、
1.温める力自体がないもの(陽虚、気虚など)
2.温める力はあっても、何らかの阻害要因があり、それが万遍なく全身に及ばないもの(陰邪を中心とした邪気実によるものや気滞など)
が考えられる、ということです。
四逆散の場合の手足の冷えは、2.の場合なんです。
これについて、和田東郭先生は、
「四逆散というのは、大柴胡湯の応用バージョンです。
腹はみぞおちとか肋骨の下の部分が張って、その凝りが胸にも及ぶ位のもので、両わき腹も強く張るもの。
でも熱実じゃないから大黄、黄芩は使わず、ただみぞおちとか、両肋骨下を緩めることを主とする薬だよ。
全体の腹形、みぞおち、肋骨下の状態をよく診て、それらに悪い反応があって、なおかつ手足がキンキンに冷えるものは、
この薬にて治すといいよー。
本当に温める力が無くなった、重篤な四肢の冷えとは、脈も腹なども、全然違うよーん。」
(『蕉窓方意解』より抜粋意訳 by竹下)
と、述べておられ、また症例として、
「ある女性が、産後、意識もうろうとする症状が出た。
色々あん摩や薬などを試したけど治らない。
診るとみぞおちから肋骨の下から脇腹まで、キツク張って、強くこれを押しても弾力が無く、動悸もなにもなく、吐きそうになる感じという。
その人に、四逆散に生地黄、紅花を加えて飲ませてみたら著効したよん。
この紅花、生地黄は、瘀血に対して使ったのではなく、甘味の四逆散に組み合わせて、肝火の上逆を潤し緩める狙いで使ったよーん。」
『蕉窓雑話』より抜粋意訳 by竹下
とも述べて、四逆散の応用的な使い方も示してくれています。
「四逆散」というお薬 2 に続く。
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