東洋医学 伝統鍼灸 清明院

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「腹哀」という経穴 ④

2019.01.29

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これまでのお話し

 

「腹哀」という経穴 ①  

「腹哀」という経穴 ②  

「腹哀」という経穴 ③       参照

 

 

 

◆「腹哀」は胆の募穴「日月」、肝の募穴「期門」と近い☆

 

 

ここまで、ほとんど誰にも顧みられることの無い、超マイナーな経穴である「腹哀」穴に関して、

 

1.所属経絡としての魅力、

 

2.位置的な魅力、

 

3.横並びの重要経穴群の魅力、

 

4.字解き(字義解釈)上の魅力

 

について触れてきました。

 

 

これだけ挙げても、まだまだ他にも魅力的なんです、腹哀は。(゚∀゚)

 

 

今度は「縦並び」です。

 

 

実は腹哀穴のすぐ上には、胆の腑の募穴である日月穴、その上には肝の臓の募穴である期門穴があります。

 

「胆」って何ですか?(その12)

「肝」って何ですか?(その13)   参照

 

 

 

現行の経穴学の教科書『新版 経絡経穴概論』(日中韓合意WHO採用版)では、期門穴の位置は巨闕穴の外方4寸、第6肋間に取穴する、とあります。

 

 

 

我々が卒業した頃の教科書では、「期門穴」は第9肋軟骨の付着部の下際に取る、と教わっていました。

 

 

もともと、期門穴の位置については諸説あり、現在の教科書では「第6肋間説」が採用されているようです。

 

 

期門と日月

 

 

↑↑この写真でいうと青印は日月穴、その上の赤印が現行教科書の期門穴、下の赤印が旧教科書の期門穴です。

 

 

僕としては、鍼灸学生時代に、腹哀穴の真上に日月穴、その真上に期門穴という縦並びの位置関係に着眼していたので、どうも現行教科書の説には馴染めません。

 

(笑・・・まあ、あそこに反応出ることもあるんだけどね(;’∀’))

 

 

腹哀足太陰脾経上の経穴で奇経八脈陰維脈と交わり、位置的には帯脈上にも位置し、日月足少陽胆経上で胆の募穴、期門足厥陰肝経上で肝の募穴、

 

この3経の重要穴処が「あそこ」に配されていることに、個人的には深い意味を感じずにはいられません☆

 

 

 

「あそこ」とはもちろん、「膈」付近であります。

 

 

 

続く

 

 

 

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気温低下!

2018.09.22

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そろそろ二十四節気では「秋分」ですね。

 

 

いよいよ、本格的に秋になります。

 

 

東京も、21日の雨の日に明らかにガクッと気温が下がりました。

 

 

その3日4日前あたりから、それまでになかったような症状が出る患者さんがチラホラいます。

 

 

今多いのは咳、ノド痛、たまに便秘や下痢などの消化器症状ですね。

 

 

肺の臓、脾の臓との関りがあることがほとんどです。

 

「肺」って何ですか?(その12)

「脾」って何ですか?(その9)      参照

 

 

北辰会方式では、心の臓や肝の臓を非常に重視しますが、何でもかんでもそれでやるわけではないです。

 

「心」って何ですか?(その7)

「肝」って何ですか?(その13)      参照

 

 

三因制宜を考えて、時宜を得た治療を行います。

 

「三因制宜」って何ですか?   参照

 

 

 

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一貫堂医学について 6(温清飲について)

2018.09.14

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これまでのお話・・・

 

墓マイラー 52 森道伯先生

森道伯という人物

一貫堂医学について 1(三大体質五大処方)

一貫堂医学について 2(瘀血証体質について)

一貫堂医学について 3(臓毒証体質について)     

一貫堂医学について 4(解毒証体質について)

一貫堂医学について 5(解毒証体質の続き)   参照

 

 

 

さて、ここまでで、森道伯先生を創始者とする「一貫堂医学」が提唱する「三大体質・五大処方」なるものの基本を説明してきました。

 

 

一応断っておきますが、私は鍼灸家であって漢方家ではないので、漢方薬の処方解説はあくまでも理論面しか出来ませんし、鍼灸臨床に置き換えて説明することしかできません。

 

 

これまでに出てきた漢方薬それぞれ、実際の実践面、臨床面でどうか、というのは、漢方家の先生方にお任せ致します。<m(__)m>

 

 

僕のすべての言説は、あくまでも市井の一鍼灸臨床家の視点からのものであります。

 

 

・・・しかしまあ、いつものことなんですが、こうやって東洋医学の真面目な内容を書いていると、アクセス数が減りますなあ~~。(~_~;)

 

(苦笑・・・みんな、勉強嫌いなのね。)

 

 

・・・でもいいです、めげずに書きます!!<(`^´)>

 

 

書きたいから書く、言いたいこと言う!!(゚∀゚)

 

 

五大処方のうち、前回述べた「解毒証体質」に使われる3つの方剤(柴胡清肝散、荊芥連翹湯、竜胆瀉肝湯)は全て、「温清飲」という薬をベースにしています。

 

 

この温清飲は、現代では「アトピー性皮膚炎」の患者さんに使用されていることが多いようです。

 

 

・・・ところが、最初から単純に効いていなかったり、ある程度までは効いていても、途中で効かなくなったり、あるいは途中から悪化していったり、

 

と仰って、清明院にみえる患者さんがチラホラいます。

 

 

これについて、どういうことか考えてみましょう。

 

 

まず温清飲の中身は、当帰・地黄・芍薬・川芎各3.0g、黄連・黄芩・梔子・黄柏各1.5g、だそうです。

 

 

上記の当帰~川芎の部分が四物湯の内容、黄連~黄柏の部分が黄連解毒湯の内容です。

 

 

配合の分量の比率を単純に見れば、「四物湯>黄連解毒湯」と読めます。

 

 

四物湯とは、補血剤(血を補う薬)の代表格で、主に肝の臓の血(肝血)を補う薬だそうです。

 

 

黄連解毒湯は清熱剤(熱を冷ます薬)の代表格で、上焦~下焦まで、三焦に瀰漫した邪熱(実熱)を取り去る薬だそうです。

 

 

ということは、温清飲「肝血虚>邪熱」の虚実挟雑証の場合に使える薬、と考えていいのでしょう。

 

(・・・まあ、そう一概に言えない面もあるかもしれないが)

 

 

だとすると、経過中に「肝血虚<邪熱」のように、主従が入れ替わった時、あるいは「血虚」「邪熱」が解決して、どちらか一方のみの問題になった時、

 

あるいは「陰虚」「気虚」「陽虚」「湿熱」「湿痰」などの、肝血虚や邪熱とは別の病理が主になった時には、サッと方剤をチェンジ(変方)しないと、

 

効かない、あるいは悪化する、という流れになるのは自明です。

 

(または、そもそも最初からこういう診立て自体が出来ておらず、病名や症状のみからテキトーに処方したのであれば、最初からいきなり悪化することもありえます。)

 

 

まあ、臨床上よく見かけるのは、四物湯の成分が中焦を余計に重たくしたり、黄連解毒湯の成分が脾気や腎気を奪ったり、裏の水滞がきつくなって、

 

肌膚に津液が行き渡らなくなり、そのせいで見かけ上は余計に皮膚が乾燥して悪化したり、というようなケースが多いように思います。

 

(熱が取れるはずが、余計に皮膚が乾燥して「なんで??」ってやつね。)

 

 

病気、それも慢性で難治性の病気となれば、こういう、その時々での変化流転は当たり前なので、鍼灸でも、このような失敗をしないために、初診時にキッチリと問診を取っておき、

 

治療に来た現時点での「証」のみでなく、現症に至った「病因病理」をキチンと意識しておくことが大事なのです。

 

「弁証論治」って何ですか?  

再分析(病因病理について)   参照

 

 

とりわけ、皮膚科疾患の場合、中医学でよくいう「皮損弁証」というような、皮膚の状態(乾燥、熱感、発赤、腫脹等々の有無)を意識した診察ももちろん大事ですが、

 

かといって皮膚の状態「のみ」から診たてただけの、場当たり的な処方、処置は実に危険です。

 

 

要は皮膚が「何で」そんな状態になったのか、というメカニズムを考え、時々刻々と変化する患者さんの状態に合わせて、臨機応変に処方、処置を変えていかないと、

 

とてもついていけません。

 

 

アトピーや喘息なんかの場合、そうやって常に先手先手が打てなかったら、普通に負けます。。。(苦笑)

 

 

患者さんから、ヤブ医者!ヘタクソ!アホ!ボケ!カス!!です。。。(苦笑)

 

 

また、この辺の詳しい話は、山口の村田先生のブログが非常に参考になります。

 

(膨大な内容ですが、単語で検索ができるので、漢方薬名や病名で色々検索してみて下さい。あっという間に朝になりますよ。(笑))

 

 

ドラッグストアで簡単に漢方薬が手に入る昨今、ネットで得た情報から、素人考えでサプリメント感覚で服用して大失敗をしていたり、知ったかぶりの西洋医学のドクターから、

 

いい加減な処方を繰り返されて、かえって悪化している患者さんを診ると、実に残念な気持ちになります。

 

 

東洋医学(鍼灸漢方)は医学ですので、それ専門に何年も、何十年も学び、経験を積んだ先生にしか、本当の意味では使いこなせません。

 

 

まずは、せめてそこんところをよくよく理解しましょう。

 

 

 

続く

 

 

 

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一貫堂医学について 5(解毒証体質の続き)

2018.09.13

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これまでのお話・・・

 

一貫堂医学について 1(三大体質五大処方)

一貫堂医学について 2(瘀血証体質について)

一貫堂医学について 3(臓毒証体質について)     

一貫堂医学について 4(解毒証体質について)   参照

 

 

 

前回、三大体質の最後である「解毒証体質」について簡単に説明しました。

 

 

前回書き忘れましたが、一貫堂では、この解毒証体質というのは、遺伝的要素も多分にあると考えているようです。

 

(だから幼児期に治療に着手することを重視してる訳ね)

 

 

まあよく言われる、「胎毒※」ってやつですね。

 

※胎児の間に母体から受けるあらゆる毒(病理)の総称

 

 

・・・で、実際に解毒証体質であることの診断は、基本としては望診において

 

浅黒い(くすんだ)皮膚の色

 

であり、

 

体格はやせ型か筋肉質、

 

腹診において

 

腹筋の緊張強く、過敏であり、特に肝経上の緊張と、肝臓部(右季肋部)の腫大があること

 

が重要だそうです。

 

 

さらに、小児期の「柴胡清肝散」がフィットするパターンであれば、脈診では緊脈が中心で、頚が細く、胸が狭い、腹診ではくすぐったがる、などの所見が顕著であり、

 

青年期の「荊芥連翹湯」がフィットするパターンであれば、望診での皮膚の色はよりどす黒く、腹診では肝経上に加えて陽明経上~心窩部にも緊張がきつく、

 

「竜胆瀉肝湯」のパターンでは脈診上、緊脈の他に”中湿の脈”と言われる、”ボカリボカリ”とした脈を打つ、と言われており(まあこれは難しく考えず、普通に「滑脈」のことじゃないかな、という気がしますが)、

 

腹証では肝経上の緊張以外に臍周~下腹部の緊張を認めるそうです。

 

 

・・・で、これを鍼灸で考えるとどうか、という話ですが、そもそも「解毒証体質」では大枠として「肝の臓の解毒の力」に着眼し、これを高める訳ですから、

 

治療方針は「肝の臓を上手に調整すること」に他なりません。

 

 

ただ、東洋医学のいう「肝の臓」に、生理作用としての「解毒」は特に謳われていません。

 

 

しかも東洋医学の概念には「結核毒」なんていう考え方もありません。

 

(そもそも”細菌”という考え方がない訳ですからね。)

 

 

東洋医学では、感染性の強い病原菌に関しては「疫癘(えきれい)の邪気※」という考え方をします。

 

※感染力や毒性が極端に強い病邪のこと

 

 

このように、このブログ上で、かつて再三再四に渡って述べまくったように、東洋医学の言う「肝の臓」と、西洋医学の言う「肝臓(liver)」はまったく違うもの、

 

と考えた方がいいので、ここを混同しないように、厳に注意したいですが、東洋医学的な「肝の臓」には「疏泄、蔵血」という重要な生理作用があり、

 

これが失調すれば、要するに西洋医学の言う「免疫力が低下した」状態になりますので、結核その他の感染症には罹患しやすくなるでしょうし、

 

逆に「肝の臓」の機能を上手に賦活化することが出来れば、結果的に体内の毒素(病理産物)を排出しやすくなりますので、まあ、東洋医学のいう肝の臓には、

 

「疫癘の邪気」を無害化、無毒化するような、一定の「解毒能」があると言っても、過言ではないと思います。

 

 

ただ、何度も言うけどこの辺の、概念の混同には、ホント注意した方がいいです。

 

(双方の意味をキチンと分かった上で、方便として運用するならいいけども)

 

 

かつて『あはきワールド』にも書きましたが、「肝の臓の機能調整」は臨床上、北辰会が最も重要視するところです。

 

 

北辰会方式では、肝の臓を調整するには数多くのパターンを持っていますが、まあそれについては、

 

『北辰会方式理論編』

『北辰会方式実践編』

『経穴解説 増補改訂新装版』

 

等の書籍を精読してください。<m(__)m>

 

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一貫堂の言う「解毒証体質」へのアプローチでは、北辰会が持つ肝病治療の多くのパターンのうちから、温清飲的なアプローチ、つまり、肝血の不足に配慮しながら、

 

肝気実、肝の実熱を捌くように配穴処置をする、ということですね。

 

(まあ北辰会の先生でなくても、プロの鍼灸師であれば色々な配穴が思いつくでしょう)

 

 

・・・ところで、現代では結核の患者を東洋医学で診る機会はほとんどなく、温清飲にしても、そのもとになっている黄連解毒湯にしても、現代では

 

慢性で難治性の「アトピー性皮膚炎」の患者さんで使用している患者さんが少なくありません。

 

 

これが上手くフィットせずに、あるいは、最初は良かったけど、ある段階から全然効かない、または悪化する、という患者さんが清明院にチラホラ見えますので、

 

これに関しても、重要なことなので少し解説しておこうと思います。

 

 

 

続く

 

 

 

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「肺胃不和」という証 3

2018.08.22

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前回のお話

 

「肺胃不和」という証 

「肺胃不和」という証 2    参照

 

 

 

◆「肺胃不和」は証ではなく病理?

 

 

FBの方で、専門家の先生方から質問がチラホラ出ているこのシリーズ。。。(笑)

 

 

おもしろいから、もうチョイ引っ張りましょう。(゚∀゚)

 

 

ただ、ちょっと今日の話は専門的になっちゃうので、患者さんや一般の方はつまんないかもしれません。。。

 

 

そもそも、「肺胃不和」という熟語は、『中医病因病機学』という本の中に、「肺胃の”病理”を示す言葉」として出てきます。

 

 

そこだけ見ると、「肺胃不和」という言葉は、「証」ではなくって「病理」じゃないか!と思う人もいるかもしれません。

 

 

・・・そこで、『中医弁証学』という本に目をやると、肺と胃が同時に病む病証としては「肺胃陰虚」という証のみが紹介されています。

 

 

つまり、『中医病因病理学』『中医弁証学』では、細かく言うと「肺胃陰虚」という病証が形成される病理過程のことを「肺胃不和」と呼んでいる、

 

という理解になるのでしょうが、僕は個人的に、治療時点では必ずしも陰虚だけではない気がしています。

 

 

どういうことかと言うと、治療時点では「肺胃気滞」「肺胃気逆」あるいは「肺胃熱結」「肺胃気分熱盛」とでも呼びたくなるような病証が、

 

臨床的にはあるんじゃないか、と思っています。

 

 

このように、TCMの成書については、もちろん参考にはするけれども、「TCMの成書が100ゼロで正しい」とするような、教条主義的な取り扱い方はしない、

 

というのが北辰会のスタンスです。

 

 

「実践から理論へ」ですね。

 

(ただもちろん、今回の話は私の私見であり、北辰会の公式見解とかではないと断っておきます。)

 

 

前回書いたように、肺の臓胃の腑の力の源の中心は「陰液(津液)」です。

 

 

十二臓腑というのはこのように、それぞれの特徴に従って、活動の源泉とする精微物質に若干の違いがあります。

 

 

例えば肝の臓心の臓であれば、その活力の源は「津液」よりもどっちかと言うと「血」腎の臓であれば「精」、ということになるわけです。

 

 

このように、TCMの言う、人体を構成する「気・血・津・液・精」それぞれの精微物質が、もちろん全体としては混然一体となりつつも、

 

各臓腑に適度にバランスよく割り振られて、十二臓腑の生理活性や動的平衡が保たれているのです。

 

 

その中で、何らかの原因で「陰液が不足する」という病証があるならば、ある時点では気の停滞や邪熱がメインになる病証だってある筈でしょう。

 

 

個人的には、TCMの考え方は、現場ではそうやって融通無碍、臨機応変に運用しないと、単なる言葉遊びや暗記大会や牽強付会になってしまって、

 

結果的に成果があがらず、行き詰まってしまうように思っています。

 

 

 

続く

 

 

 

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「肺胃不和」という証

2018.08.16

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さて連休明け、さっそくガンガンやっております!!

 

 

清明院には、1年中、「咳」を訴えて来院される患者さんが見えます。

 

「咳」を含む記事 参照

 

 

春先はのぼせて咳が出る、夏はクーラーで咳が出る、秋は乾燥で咳が出る、冬は風邪ひいて咳が出る。

 

 

・・・ってな感じ。

 

 

咳と言えば当然、東洋医学的にも最終的には

 

「肺の臓」

 

の病変なのですが、

 

「なぜ、肺の臓の病変が起こっているのか」

 

という「病因」と、そのメカニズム(機序)である「病理(病機)」を明確にしないと、上手に治療できません。

 

「病因病機」を含む記事

「病因病理」を含む記事 参照

 

(まあこういうこと言うと、アタマ固い人からあいつは疾医だ!対症療法ヤローだ!!って言って突っ込まれたらヤなんですが。。。)

 

 

患者は咳を止めてくれって言ってきてんだから、普通に考えて、まずは咳を止めることを全力でやるべきでしょ。

 

(もちろん体質と病因病理を踏まえてね。)

 

 

でもそこで、肺の臓に関する経穴ばっかり触っててもダメ、ということです。

 

 

・・・まあともかく、肺の臓の病変と言っても、色々あります。

 

 

「肝の臓」からくるもの、「腎の臓」からくるもの、「心の臓」からくるものなどなど。。。

 

 

その中で、意外と多いのが「胃の腑」の異常と関係しているものです。

 

 

かつてこのブログで述べたように、東洋医学の言う「胃の腑」というのは、「五藏六府」の中の「六腑」の一つであり、人体の中央(中焦)のど真ん中にあり、

 

「脾の臓」と一体化したような形で、飲食物(水穀の精微)の消化吸収とともに、気血の上下の昇降を調節しているという重要な働きを持ちます。

 

 

久々に言うけど、「肺の臓」はLungじゃないし、「胃の腑」はStomachではないことに大大大大前提として注意を払ってもらいたいです。

 

 

肺の臓と胃の腑は、気の生成に深く関わりますが、気の昇降運動のうちの「降」に大きく関わります。

 

 

その働きのことを、肺では粛降(しゅくこう)、胃では和降(わこう)なんて言われます。

 

 

この二つの臓腑の協調性が悪くなったものを「肺胃不和」なんて言います。

 

(夫婦関係の不和の”不和”です。)

 

 

この、気の昇降出入のうちの「降」に異常をきたした、というのが、「咳」という病変に対する、一つの東洋医学的な考え方です。

 

 

 

続く。

 

 

 

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再び往診へ

2018.07.12

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先日、癌が見つかった患者さん。

 

癌が見つかった 参照

 

 

腹腔鏡での、簡単な切除手術を終え、1週間ほどの入院から帰ってきた。

 

 

何でも、手術した日から歩くように言われて、入院中も積極的に軽い歩行運動を勧められたそうだ。

 

 

その方が傷の治りが早い、とのことで。

 

(最近はそういうもんなんですな。(゜レ゜)・・・まあ、モノによるだろうし、賛否分かれそうだけど。)

 

 

で、本日再度往診に伺ってきたが、慎重に診たけど、特に変わった様子はなかった。

 

(じゃっかん陽分に邪が浮いたかな。)

 

 

まあ、術前との違いがあるとすれば、大ケガをした人の反応と似ていたね。

 

(手術後の患者さんを診るといつも感じることなんだけど)

 

 

怪我をすると、出血します。

 

 

手術しても、出血します。

 

 

東洋医学の言う、血脈(血管)から出血、漏出した血のことを「離經の血」と呼んで、一種の瘀血(おけつ)と考えます。

 

「血」って何ですか?(その10)

「痰(たん)」「瘀血(おけつ)」について

カテーテル検査後の内出血   参照

 

 

この瘀血が、手術した部位の気血の通行を阻害します。

 

 

五臓では、血とのかかわりの深い、心の臓肝の臓の働きを主に阻害します。

 

「心」って何ですか?(その7)

「肝」って何ですか?(その13)    参照

 

 

だからこの瘀血を散らすように持っていきます。

 

 

もともと、この患者さんは、癌としての症状は何もなく、健診で判明したもの。

 

 

たまたま見つけたから、拡がる前に取ろう、という考え方です。

 

 

僕はもちろん、医師と、患者さんのその判断は尊重したいと思います。

 

 

あるのが分かってて放置するのは、誰だって気持ち悪いし怖いです。

 

 

・・・で、最大限尊重しつつ、どの局面においても、冷静に東洋医学の見地から、出来ることを行います。

 

 

本当はこういうのを、西洋医学と、密に連絡、連携とりながらやりたいんだがねえ。。。orz

 

 

 

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暈厥(一過性の意識障害)と東洋医学 3

2018.02.16

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前回のお話

 

暈厥(一過性の意識障害)と東洋医学

暈厥(一過性の意識障害)と東洋医学 2   参照

 

 

では続きいきましょう。

 

 

◆暈厥の弁証

 

 

暈厥には、どんな証が考えられるかというと、以下の通り。

 

1.気虚

2.血虚

3.血気上逆

4.肝陽上亢

5.痰濁上擾

6.暑熱

 

『症状による中医診断と治療』には、以上の6つが挙げられています。

 

(成書によっては、多少多かったり、少なかったりする場合があります。)

 

 

1.2.は虚証、3.4.は肝の病変、5.6.は実証です。

 

 

臓腑では「肝の臓」の異常が中心であり、病態に虚実あり、ということですね。

 

 

だから、一口に暈厥とっても、治療法は、倒れたメカニズムによってそれぞれです。

 

 

もし失敗すれば悪化して、深刻な状態になることも考えられます。

 

 

ですので、やはり「的確な診断」が重要です。

 

 

・・・で、こないだの先輩のケースはどれに該当するかな~・・・、と考えていく訳ですが、ここ(成書)に挙げられているのはあくまでもひな形的なパターンの羅列であって、

 

これらが時には複合的に、あるいはここに書かれていないパターンでも、暈厥は起こってきます。

 

 

ですので、あまり上記の弁証分類に縛られ過ぎて、無理やり当てはめて考えるのも、失敗のもとだったりします。

 

(教条主義を排す、ってやつね。)

 

 

また北辰会方式としては、どういった機序(病因病理)で、上記の証による暈厥に至ったのか、の把握が重要でしょう。

 

(これは、予後にも関わるからです。)

 

 

まあ、あくまでも実際の体表所見、当日の患者像を参考に、何が起こったのかを考えるべきだと思います。

 

 

そういったことを十分に鑑みつつ、慎重に考えると、あの日、その先輩は倒れる直前に、ホテルの豪華な食事を、普段よりも多くとり、普段ほとんど飲まない酒(ビール)も多く飲んでいました。

 

(瓶ビール二本ほどかな?)

 

 

この時点で、脾胃に常ならぬ負担を強いていたことは十分に考えられます。

 

(飲食不節→湿困脾土、湿熱中阻、脾失健運、胃失和降などの”病因→病理”が考えられます。)

 

 

しかも朝から早起きし、熱海への移動疲れもあったことと思いますし、研修会ですから、精神的緊張もあったことと思います。

 

(睡眠不足→気虚や血虚、新幹線での長時間同一姿勢、精神的緊張→肝鬱気滞、気滞血瘀などが考えられますね。)

 

 

しかも倒れる直前に、露天風呂にて長湯をしている。

 

 

長風呂では、肉体的緊張は緩み(理気活血疏肝)つつも、あまりに長ければ、疲労(気虚や血虚)は助長される面があります。

 

 

また、冬場の露天風呂ですから、そこで風寒邪を感受した可能性もある。

 

(その場合は気が急激に上逆傾向になります。)

 

 

ただ、横で見ていましたが、湯舟には肩まで浸かっておりましたし、一緒に入っていて、そこまで風も強くなく、冷たい風を受けていた感じはしませんでしたね。

 

(そして、風呂から上がった瞬間、一瞬”左に”フラッとよろめいたのが少し気にはなりました。)

 

 

風呂場での会話にも特に参加しておらず、そこで何か七情が乱れるようなことはなかったのではないかと思います。

 

(これは推測ですが。)

 

 

その後、脱衣所で急に後ろにバターンと倒れた時、すぐさま駆けつけて脈を診ていた先生が、

 

「沈んで細くて堅いけど、力はあります。重按がやや弱いです。」

 

と仰っていました。

 

 

この脈は、その後すぐに意識がついた時、その瞬間に、緩みながら浮いてきたそうです。

 

 

ここで、気虚や血虚の暈厥では、顔面蒼白、脈無力が特徴で、肝の病変や暑熱では顔面紅潮が特徴ですが、顔色としては、土気色、という感じで、蒼白でも紅潮でもなかったですね。

 

 

 

また、血虚で倒れると、目が落ちくぼんで輝きがない、というのが特徴のようですが、倒れた瞬間、目は一点を見つめ、妙にギラっとしていました。

 

 

血気上逆では歯を食いしばるのが特徴ですが、口は開いて、歯は食いしばっていなかったです。

 

 

倒れた時に上腹部を触った先生は、極端に冷えていたと仰っています。

 

 

また、ご本人が意識がついてから、

 

「倒れる寸前に悪心がして、気付いたら倒れていた。」

 

と仰っています。

 

 

舌診は、意識がついてすぐの舌は舌背が紫暗、舌腹は淡白傾向、特に舌下静脈が淡白気味だったようです。

 

(血虚と瘀血の所見が両方出ていますが、血虚が本と診てとれますね)

 

 

これらの情報を総合すると、成書の分類からいけば、5.の痰濁上擾が中心でありつつも、背後に若干、2.の血虚があるのでは??となります。

 

 

さて、これを治療して、今後同じ状況にさらされても、暈厥を起こさない体にするにはどうしたらいいでしょうか。

 

 

 

続く

 

 

 

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(一社)北辰会エキスパートコースに行ってきました!!

2017.09.05

20170419_013111.JPG

 

 

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9.3の日曜日は、(一社)北辰会エキスパートコースに参加してきました!!

 

(てゆーか喋ってきました!!)

 

 

今回は久々の1日座学。

 

 

午前中は北辰会の漢方医である竹本喜典先生、鍼灸師で薬剤師、北辰会の特別専門講師である島内薫先生による方剤学講義。

 

(まあお二方とも、とんでもない勉強量の先生です。( ゚Д゚))

 

 

メインテーマは「芍薬」「肝の臓」です。

 

過去記事「芍薬」を含む記事

過去記事「肝の臓」を含む記事    参照

 

 

「立てば芍薬、座れば牡丹」の言葉で有名な芍薬。

 

 

実に色々な漢方に入っている生薬です。

 

 

この芍薬周辺の知識を、十分すぎる内容で解説して下さいました。

 

 

まあ鍼灸師としては、さあ鍼で「肝の臓」を動かそうとして鍼をするときに、「芍薬的な効果」を意識して鍼をするかどうか、って話です。

 

(その際に、方剤名や傷寒論の条文まで浮かんでいる先生は少ないと思いますが。。)

 

「傷寒論」を含む記事 参照

 

 

まあエキスパートコースですから、基本的なことは理解している人を対象とした内容だったので、漢方薬の勉強をしたことがない人にとっては少しキツかったかもしれませんが、

 

大変わかりやすい講義でした。

 

 

竹本先生の講義に熱が入り過ぎて、島内先生の補足時間が10分になってしまいましたが、あの短時間に

 

「サスガ!」

 

と唸ってしまうような素晴らしい補足でした。

 

 

午後一は、9月の日本中医学会、10月の日本伝統鍼灸学会で発表させていただく、不肖私の2症例を、本番と同じ発表時間で発表させていただきました。

 

 

本番では質疑応答の時間は3分程度なんですが、今回は1症例あたり30分程度お時間をいただき、少しだけではありますが、検討することが出来ました。

 

 

因みに竹本先生から再生不良性貧血、辺縁前置胎盤の西洋医学的解説もしていただき、大先輩である佐野先生、奥村先生が過去に色々な学会で発表してこられた、

 

アトピー性皮膚炎の症例集積の話もすることが出来ました。

 

 

まあ、まずまず満足かな。

 

 

次は奥村先生の発表「日本における中医鍼灸の受容と役割」

 

 

奥村先生はもはや25年以上、北辰会不動の学術部長で、相変わらずの、圧倒的知識量です。

 

 

今回の症例でも、まとめていく過程の中で、竹本先生、佐野先生とともに、かなりお世話になりました。

 

 

最後は藤本新風先生による、10月の伝統鍼灸学会で行う発表内容の講義と実技。

 

 

ちゃっかり鍼してもらっちった☆

 

(そしてよく効いた(゚∀゚))

 

 

今回、こないだのカゼがまだ完璧ではなかったんですが、まずまず、事なきを得たと言っていいんじゃないでしょうかね。

 

 

ふいー、後は本番。

 

 

いったん休んで、また集中します。

 

 

 

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『あはきワールド』肝病はこう治す!第2弾公開☆

2017.07.13

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先日、『あはきワールド』肝病はこう治す!公開☆ という記事を書きました。

 

 

そこで、(一社)北辰会が極めて重視している「肝の臓」の治療バリエーションに関して、基本的な考え方を紹介しました。

 

あはきワールド 拙著記事  参照

 

 

そして昨日、これの第2弾が公開されました!!

 

あはきワールド 拙著記事 第2弾   参照

 

 

今回は、2例ほど症例を載せました。

 

 

いずれも、肝の臓に注目しつつも、変則的な配穴を使って、良好な変化を得た症例です。

 

 

しかも、専門病院の治療処置で思うような効果があがらなかったものです。

 

 

よく、

 

「北辰会は何でもかんでも肝鬱ばっかり」

 

とか、

 

「北辰会は何でもかんでも後溪ばっかり」

 

とか、

 

「結局は穴性治療にすぎないよね」

 

とか、まったくワケ分かってない鍼灸師の方から、トンチンカンにディスられることがあるので、それに対するアンサー的内容にしたつもりです。

 

 

なぜ北辰会が肝の臓をフィーチャーするのか、それをまずご理解いただきたいし、その肝の臓に対する治療アプローチの方法は無数にある、

 

理論的、手法的バリエーションは非常に豊富である、ということをご理解いただきたいと思います。

 

 

第1弾も第2弾も、本当はもっともっとたくさん書きたかったんだけど、文字数の関係であのくらいになってしまいました。(苦笑)

 

 

まあそのうち、機会があったら追加補足しましょう。

 

 

いやー、症例症例、また症例。

 

 

やっぱこれが一番いいねえ俺は。(笑)

 

 

批判する人はまず自分の症例を出すべきだね。

 

 

 

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