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これまでのお話・・・
一貫堂医学について 2 参照
・・・さて今日は、森道伯の一貫堂医学の言う三大体質の二つ目、「臓毒証体質」について掘り下げます。
「臓毒証体質」とは、風毒、食毒、梅毒、水毒の四毒に侵された体質、だそうです。
この四毒を少し詳しく言いますと・・・、
「風毒」とは、ここではあらゆる病のもととなるようなキツイ邪気のことを言っているようです。
「食毒」とは、そのまんまですが食べ物の毒、それも急性の中毒ではなく、慢性の毒とも言えるもので、要するに肉食中心の偏った食生活や、
暴飲暴食の過剰な栄養だったり、また現代であれば加工食品や添加物などによる 内臓機能の低下なども広く含まれる考え方だと思います。
「梅毒」というのは性感染症で有名なあの梅毒で、現代では残念ながら増加傾向だそうです。
「水毒」というのは腎機能が低下して不要な水分の排出が滞って、水滞(浮腫みも含む)が起こったもののことを指しているようです。
この「四毒」が体内に蓄積し、単一に、あるいは複合して、健康を害しているようなものを、「臓毒証体質」と名付け、
これらすべてを「防風通聖散加減」で治療していた、というワケです。
この体質のものは、ガッチリしていて若いうちは丈夫だが、壮年期になると癌や脳卒中、痔疾や腎疾患を起こすと言われます。
診断は望診、脈診、腹診であり、
皮膚は黄白色、脈は実脈や堅い脈が中心で、腹は全体が堅いか、あるいは全体が軟満しているか、
だそうです。
防風通聖散は、以前このブログでも紹介した金元の4大医家の一人である劉完素(1120-1200)の著作である『黄帝素問宣明論方』(1172)に出て来る方剤で、
もともと熱のこもりやすい人が風寒邪に罹患し、「表裏ともに実」になったものに使う方剤と言われます。
実はこれ、近年になって”やせ薬”みたいに言われて、「ナ〇シトール」だの「コッコ〇ポA」とかいう商品名がついて製品化されています。。。
(しかし、痩せたいからといって安易に使用するのは、危険極まりないので絶対にやめましょうね。)
まあ、こういうものがよく売れるぐらい、安逸過度や暴飲暴食で実熱証、毒素をため込んでいる人が多いというのは、森道伯先生の晩年の、
第一次大戦後の、未曽有の好景気であった大正~昭和初期の日本と似ているのかもしれません。
しかし、私もたまにのぞかせていただき、勉強させていただいている、山口の村田漢方同薬局の村田恭介先生は、そのブログの中で、
「特殊な状況においてしか使う必要のない、まして現代においては全く必要のない、支離滅裂に近い配合」
と断じておられます。(笑)
・・・うーん、この辺、漢方家からしてどうなんでしょうね。
まあ、防風通聖散の方意を見ると、表は風邪邪実、裏は腸胃の湿熱の実、で、表は疏風して裏は清利湿熱で、表裏双解剤、というわけですから、鍼ではどうやるのが近いでしょうかね。
外関や合谷やりながら、上廉で下すような感じ?しかも養血や和中の穴処も加える??
あるいは上腹部の沈んだ実をややキツ目に瀉すか??
(これだと難易度は高いね。)
まあ、確かなのは、防風通聖散も、単に痩せようと思って長期に服用するなんてのは、バカ丸出しだね。(苦笑)
毎日、メシ減らして走ってりゃ、絶対痩せます。
漢方薬のそういう使い方を聞いたら、天国で森道伯が泣いているでしょうな。
続く
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2013.05.30
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近年、増え続ける脳卒中・・・。
昨日、学校で話した「頭痛」とも関わる、大変な病気です。
また、実は僕自身も、脳疾患の多い家系だったりするんで、人ごとではない。(苦笑)
これに関して、こないだ、『NHKスペシャル』でも特集をやっていましたね。
番組サイトURL
↓↓
http://www.nhk.or.jp/special/detail/2013/0526/
・・・まあ、このブログに来るような人は、観た人も多いのではないでしょうか。
『NHKスペシャル』はいつもそうなんですが、大変スッキリとまとまっていて、分かりやすい内容でしたね。
以下に内容を要約すると、
1.脳卒中が増えているのは、人間の脳が急激に進化したからであり、脳が必要とする血液の量に対して、脳内の血管の強度がついていっていないから、
詰まったり、破れたりしてしまいやすく、正常な血液の流れが破綻しやすいからである。
2.血管が破綻しやすい直接の原因は「高血圧」であり、「高血圧」の原因としては、塩分の過剰摂取が影響として最も大きい。
3.また、肉食や炭水化物に偏った食生活も、血中の余分なコレステロール、中性脂肪などを高め、血管内壁に、”ゴミ”を詰まらせやすくする。
4.現代は塩も肉もその他の食糧も簡単に手に入り、本能的に持っている、塩分や食に対する欲望に歯止めがきかなくなることが、脳卒中増加の根本的要因。
5.いまだに狩猟を中心とした生活をしているアフリカの部族では、脳卒中は起こらない。
6.一度死んでしまった脳の神経細胞は復活しないため、リハビリでの回復にも限界があるので、再生医療の可能性が注目されている。
・・・という内容でした。
まあ、この内容については、大枠として、異論はないです。
意地悪な見方をすれば、ネット上の番組の感想なんかにも散見されるように、この番組の内容が降圧剤のステマ、最先端の西洋医学のプロパガンダに、
なってるっちゃあなってるようにも見えるけど、現代人の「欲望」、「我欲」に触れた部分は良かった。
・・・みんな捨てられないんですよ、「欲望」がネ。。。
そして、塩分にせよ、肉食にせよ、一度満たされてしまうと、それが忘れられず、また求めてしまう、遮断されると大きなストレスを生じる、
誤解を恐れず言えば、覚醒剤中毒と同じぐらい深刻な、現代人の「病理」が、脳卒中増加のバックボーンになってるワケです。
僕も、これまでの臨床経験で、色々な思い出、思い入れのある、この脳卒中というものについて、これから何回かに分けて、東洋医学、鍼灸家の立場から、
患者さんでも分かるように、なるべく簡単に書いてみたいと思います。
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2011.05.22
前回のお話
では、どうやって抜くタイミング(置鍼する時間)を決めているのか、という問題です。
以下に書くことはあくまでも「僕の場合は」という話です。
念のため断わっておきますと、ここは、先生によって色々な考え方がある部分だと思いますので、必ずしも僕の考え方が全てではありませんので、あしからず。
・・・実際の臨床では、2、3分から、場合によっては1時間ぐらい置鍼することがあります。
(社)北辰会では基本として、肌のきめが細かい人は敏感で、野菜食中心の、頭脳労働者の人が多く、肌が分厚くてきめの粗いタイプの人は肉食中心で、肉体労働者の人が多く、
前者に比べると相対的に鈍感である、と教わっています。
ですので基本的には、前者の敏感な人には、最初からあまり長時間置鍼することはしません。
せいぜい5~10分が限度だと思います。
鍼の打ち方としても、ごく浅く打つことが多いです。
この置鍼時間が長すぎたり、鍼が深すぎたりすると、治療後、非常に強い疲労感が出てしまうことがあります。
たとえ症状には効いたとしても、これだと患者さんにかかる負担が大きすぎます。
このように、置鍼時間が長ければ、鍼が深くなれば、それだけ「刺激量としては大きくなる」という考えが、一つあります。
ですので、こういう場合は様子を見ながら、徐々に置鍼時間を長く、あるいは短くしていって、最適な置鍼時間を模索していきます。
では鈍感な人の場合はどうか。
それは次回。(笑)
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2010.06.16
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前回のお話
「脾」の解説を続けます。
☆「脾」と「胃」はセット
東洋医学の「脾」という臓が一番深く関わる臓腑は、何と言っても「胃」という”腑(ふ)”です。
よく東洋医学家の間では、この2者をまとめて、「脾胃(ひい)」と呼んで、生理学、病理学を考えます。
この「胃の腑」については、また後ほど細かく解説しようと思いますが、東洋医学ではこの両者を、
「概念」の上から、
「機能」の上から、
「形態」の上からも、
キチッと分類し、説明しています。
人間の生命維持に欠かせない、毎日のことである「摂食行動」というイベント時には、脾と胃、この両者が非常にうまく協調することによって消化、吸収というスムーズな営みを作ります。
つまり「脾」を理解し、治療するためには「胃」への理解も欠かせない、まさに脾胃は2つで1つ、ニコイチ!!という訳です。
・・・と言っても、今はまず「脾」の方から解説していきます。
まず、人間がものを食べる、あるいは飲む、という行為を行うと、飲食物は「胃の腑」に入ります。
(これはなんとなく、一般的にも理解しやすいですよね?)
すると、ここでまず働くのが「脾」です。
「脾の臓」というのは「胃の腑」に隣接し、密着している臓、と考えられています。
これが、(形態については次回説明しようと思っていますが)刀のような形になったり、馬の蹄鉄のようなU字型の形に変化したりして、
飲食物の入った胃の腑をグイグイと揉む、と考えます。
(まあコレが要は、西洋医学的に言う”胃の蠕動運動”ってやつの、東洋医学的解釈です。イメージしにくいかな?)
そして、このように脾が胃を刺激することによって、飲食物を、胃よりも下に存在する「小腸の腑」「大腸の腑」に送っていきます。
ただ、ここで当然考えなくてはならないのは、単純に入ってきた飲食物を下へ下へ送っていくだけでなく、体にとって必要なものを取り出さなくてはなりません。
それこそが「脾」の最も重要な働きなんです。
要するに脾は「胃の腑」に入ってきた飲食物から体にとって重要な栄養である「気血のもと」を取り出し、なおかつ速やかに大便、小便を作って、
無駄なものが体に溜まらないようにする、「消化、吸収の要」なんです。
だからこの「脾」が弱ると、実に様々な消化器症状を呈します。
腹痛、下痢、便秘、嘔吐、胃もたれなどなど、挙げていけばキリがありません。
そして、「脾」が弱れば、無駄なもの、要らないものが体の中に留まりやすくなりますので、浮腫みやだるさ等の原因にもなり、他の4つの臓にも大変悪影響です。
現代は、戦後の食べるものがない時代とは180度違いますので、食べ過ぎ、飲み過ぎ、あるいは食事の欧米化により「脾」を痛めている人がとても多いように思います。
パンとコーヒー、チョコレート、キャラメル、ファーストフード、コーラ、スプライト、ファミレスでの肉食などなど、これらはすべて、
過剰になると、こぞって「脾胃」をいじめます。
小さい頃から、こういう加工食品まみれの食生活をしている現代の子供が、中年になる頃には、一体どんな「脾胃」になっちゃうんでしょうか・・・。
うちの身内にもいるけど、現代の、あまりにも多いアレルギーベイビー、消化器疾患の増加の大きな一因に、これがあるような気がしてなりません。
やっぱ日本人は白メシとみそ汁、魚と群馬の山で採れた野菜です!(笑)
欧米風の食卓や考え方も「一見」オシャレでスタイリッシュでいいけども、自分がどこまでいっても日本人であることを忘れてはイカンよなー、と思います。
次回に続く
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