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2010.05.17
以前、花咲く清明院でお伝えした、この花↓の名前なんですが・・・、
多くの患者さんの御協力で、「クチナシ」と判明いたしました!!
・・・まったく、クチナシの実と言えば、かの有名な漢方薬、「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)」の構成生薬の一つ、梔子(しし)じゃないですか!!!
いくら湯液家じゃないにしたって、東洋医学をやっているもののはしくれとして、あー、情けない情けない・・・(>_<)
とんだ恥をさらしてしまいました・・・。今度からはこういうの書く時は気をつけよ・・・。(反省)
清明院の往診患者さんには、代々農家をやっておられる患者さんが何人かおられます。
今日はその患者さん達の、「クチナシ」にまつわる雑学の多さに圧倒されました・・・。(やっぱ患者さんは先生。)
上の写真の、清明院の鉢植えのクチナシは、品種改良された「八重咲き」というクチナシだそうで、このクチナシはいくら大きく育てても実はつかないそうです。
また、クチナシの果実を乾燥させると食品を黄色く着色するのによく用いられ、お正月の栗きんとん、たくあんなどの着色によく使われるそうです。
また、クチナシの果実=梔子(しし)は、つぶして火傷や炎症が起こっているところの患部に貼って、湿布として貼るとよく熱が取れるとか、女の子のいる家には「嫁のクチがナシ」ということでゲンが悪いから植えない、とかetcetc…
出るわ出るわ、「クチナシ」にまつわる雑学の数々・・・。
即席「クチナシ博士」となりました。。。
教えて下さった患者さま各位、ありがとうございました<m(__)m>
2010.05.14
皆様、今流行りの(笑)「エビデンスベイスドメディスン」という言葉、御存知でしょうか?
知らない方はこちらをどうぞ(wiki)
また以前、スタッフがまとめてくれました。
スタッフブログ『清明なる日々』 カテゴリ「EBM」 参照
この考え方については、なるほど確かにね、と思わされる部分が多く、僕自身、積極的に取り入れるべき考え方だな、と思う面もあります。
・・・今日、往診中にとあるドクターとかち合いました。
僕も長いこと往診というものをやっているので、ドクターとかち合うことなんて大して珍しくはないのですが、今日かち合ったドクターとは少ししゃべりました。
普通は、往診でドクターとかち合うと、お互いに”譲り合って”、
「あ、先生先にどうぞ。」
すると、
「いえいえ、そちらこそどうぞ。」
・・・みたいな感じで、お互い西洋と東洋で畑違いなんだから、変に口出したりしないで、見て勉強しよっと。
みたいな感じにになることが多いのですが、今日の患者さんはちょっとケースが違いまして、面白かったので書こうかな、と思います。
今日の患者さん(70代男性)はお伺いした時、発熱していました。(39.5度)
もともと脳梗塞でほぼ寝たきり状態の患者さんです。
ご家族に話を聞くと、今朝の段階では何ともなかったらしいのですが、昼にちょっと食欲がないかな、と思ったら、そのあと少し寒気を訴えたので、
熱を計ってみるとすでに高熱が出ていた、とのことでした。
そしていつも往診で来ている主治医の先生から、薬をもらって、すでに飲んだけど、下がらない、そこで今度はリハビリ訓練で往診スタッフを派遣している病院の先生が、
心配して診に来た、という状況でした。
僕としてはこの時点で、東洋医学的には様々な病が想定できます。
それぞれに治療法もあります。
さーて脈でも診てみるか、と思っていると、そのドクターが、
「高熱が出ている時に鍼をするんですか??」
と、不審な顔で聞いてきました。
僕が、
「ええ、東洋医学ではそういう時の対処法もはるか昔からあります。」
と答え、さらに患者さん自身に対して、
「お父さん、東洋医学で、熱が下がる、早く楽になる、と言われている鍼のやり方があるんだけど、やってみたいですか?」
と聞くと、
「うん。」
とのこと。(笑)
そして、いつも通り治療いたしました。
置鍼中、そのドクターが、何とも言えない表情で、
「まあ鍼もいいんでしょうけど、エビデンスがちょっとねー・・・。」
と、話しかけてきました。
僕は内心は、
「3千年以上も連綿と続いている方法論に対して、今さらエビデンスもへったくれもないんじゃないかなー・・・。」
と思いつつも、
「確かにねー。エビデンスが明らかになると、もっといいんでしょうけどねー・・・。」
な~んて言いながら、治療を終えました。
(実はまだまだ書きたいことはあるんだけど、誤解を招くのが嫌なんで、こんぐらいにしときます。)
あのねー、一つ言うと、鍼が本当に効くのかとか効かないのかとか、そういう議論、僕ら現場の臨床家から言わせれば、ちょっともう”どうでもいいよ”と感じる部分がねー、正直あります。
・・・だって効くんだもん。(笑)
効くからこそ、数千年もの間、「患者さん」の支持を得てきたし、それに人生を捧げる医者もたくさんいたワケでしょ?
効くと分かってるものを何で今さら「現代科学的に」あるいは「現代統計学的に」検証しないと信用できないんでしょ?
そうやって検証したら、鍼というものが今よりよく効くようになるんでしょうか??
・・・この辺は、言えば言うほど誤解を招く可能性があるんで、ま、いーや、明日も効く鍼を打ちます!!(笑)
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2010.04.12
これまでのお話・・
「泣く」とはどういうことか(その1)
「泣く」とはどういうことか(その2)
今日は、「感極まる」「感情が高ぶる」ということと、「肝」という臓がどう関わるか、というお話をしようかな、と思います。
以前、東洋医学においては、五臓と感情は関係が深い、というお話をチラッとしました。
(カテゴリ「七情について」の8つのお話参照)
その中で、「肝」という臓は「怒り」という感情と関係が深い、というお話をしました。
しかし、「泣く」という現象は、なにも「怒り」だけで起こってくる訳ではありませんよね?
うれしくて泣く、悲しくて泣く、恐くて泣く等々、「泣く」という行動に移るまでの感情は、実に様々です。
しかも単純に、目に対する物理的な刺激でも、涙が出ることはあります。
それなのに、なんで「泣く」ことと「肝」の関係が深いかというと、感情の過不足、というものは、つまるところ「気の正常な流れ」を障害するからです。
つまり、怒れば気が上がり、喜べば気が緩み、思い患えば気が結び、悲しめば気が消え、恐れれば気が下がる訳です。
(カテゴリ「七情について」参照)
そんで、感情の過不足によって乱れた、これ(気の極端な動き)を正常な状態に戻す、主たる臓こそが「肝」なのです。
ですので、この感情の過不足がきつければきついほど、「肝」の仕事は多くなります。
頑張らなくてはいけなくなります。
こうしたことから、「肝」は五臓の中では、
「将軍の官(しょうぐんのかん)」
とも言われ、外的な刺激(精神的、肉体的両面)に対しての対応を担い、適切な対処を考える臓、と位置付けられています。
この時、この働きがスムーズに、速やかに発揮出来れば、「泣く」という現象は起こりません。
(いわゆる感極まった状態になることはないわけですね)
しかしこれが「肝」にとって許容範囲を超えた、大きな負担になるほどの感情の過不足だと、肝の働きが阻害されます。
この病理的状態を、東洋医学では「肝欝気滞(かんうつきたい)」と言います。
これが長引いたり、あるいは短期的であっても急激に起こったりすると、「気鬱化火(きうつかか)」という状況が起こります。
(なぜ、そうなるのかという細かい話は、話が逸れるので割愛します。)
この「気鬱化火」という病理現象が起こると、気は一気に体の「上」に向かいます。
つまり、体の「上」で「気」が急激に渋滞する訳です。
これが「目」で起こると、目は充血(血も渋滞した状態)して真っ赤になり、熱(鬱熱といいます)を持ちます。
これだけで終わったら、すぐに「目」がカラカラに乾いて、干からびて失明しちゃいますので、何とかこれを冷やそうと、「肝」やそれ以外の臓腑が協調して、
体の中の正常な「水(津液と言います)」が目に「急激に」集まってきます。
そして余剰な分が溢れて、目からその水が流れる、これが東洋医学的な「涙(るい)」です。
ちなみに、目で起こらない場合でも、この病理(気鬱化火)の場合は、頭痛であったり、肩こりであったり、必ず「上」で症状が起こってきます。
(感情が極まっても、泣く人ばっかじゃないもんね)
では物理的な刺激で涙が出るのはどうしてか、次回はそのお話。
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2010.04.02
こないだ患者さんから、
「逆子って何で鍼灸で治るんですか?」
という質問を受けました。
「逆子が鍼灸で治る」っていう事実、ウワサは、けっこう一般の患者さんでも知っている方が多いように思います。
足の「至陰(しいん)」というツボにお灸を据えると治る!なんていう話が有名ですね。
(もちろんそれ以外にもやり方は無数にありますが・・・。)
最近では、「不妊症専門」や「婦人科疾患専門」、「女性・小児専門」、と看板を出している鍼灸院も少なくありません。
僕の知り合いの先生にも何人かおられます。
そういう先生方や、これまで逆子や婦人科疾患に鍼灸で対応してきた先輩たちのご努力が、近頃ようやっと実を結んできた、というところではないでしょうか。
これは、大変喜ばしいことだと思っています。
逆子のメカニズムについては、僕は患者さんに説明する時はいつも、
「赤ちゃんがお母さんのおなかの中にいる時は、お母さんの真似をしたがるんですよ~。だからお母さんの上下のバランスが逆になっていると、赤ちゃんも真似して上下逆になっちゃうんです~。(笑)」
な~んて、荒唐無稽、意味不明な説明をさせていただくことが多いです。(笑)
でも、コレは完全にふざけてる訳でもなくて、実は意外と本当のことを言っていて、お母さんが精神的にイライラしてたり、肉体的に疲れてたりすると、
いわゆる「冷えのぼせ」「上實下虚」「上熱下寒」という状態になることが多く、これを東洋医学では非常に問題視します。
・・・これは要するに、「足が冷えて、頭に血が上った」状態です。
この状態は正常、健常な状態とは上下が逆になっちゃってます。
それに対して、東洋医学では正常な(というか理想的な)人体の状態を「頭寒足熱(ずかんそくねつ)」と表現します。
これはつまり、足が温かくて頭が涼やか、という状態のことを言っています。
最近は、出産ギリギリまで仕事をなさる女性も多く、体は「身重(みおも)」と言われるぐらい重くなっているにもかかわらず、神経を使う、
色んなことを、ド根性で頑張ってらっしゃる妊婦さんも少なくありません。
結局、そういう無理、余分な緊張がお母さんの体に「上熱下寒=上下のアンバランス」という状況を作り出します。
その結果、ある意味赤ちゃんはその真似をして、「逆子」になってしまう訳です。(苦笑)
・・・ということは、色んな方法でお母さんの体の「上下のバランス」を整えてあげれば、逆子が治るのではないか!?という訳です。
僕の知り合いの整体(手技療法)の先生も、骨盤の歪みをとることで何人となく逆子を治したことがある、と言っておりました。
コレも結局、「骨盤」という「下」の状況を改善したことによって、結果、母体の上下のバランスがとれて、逆子が治った、とも理解出来ます。
(・・・まあもちろん、彼ら(手技療法家)には彼らなりの理論もありますけど。)
要は、お母さんの体の状態が正常な状態に改善し、赤ちゃんにとって居心地のいい環境になれば、自然と正常な位置に戻ってくる、という訳です。
ただ、臍帯(へその緒)が極端に短くて、赤ちゃんが動けない、とか、あるいは逆に長過ぎて赤ちゃんの首や体に巻きついてしまっている場合は、
残念ながら帝王切開せざるを得ないケースもあります。
妊娠中に産科で「逆子」の診断を受けて、上記のような特殊なケースでないことが分かれば、慌てず騒がず鍼灸院に直行、でいいと思います。(笑)
普通に東洋医学を勉強しておられる先生であれば、必ず治して下さる筈です。
ただしかし、何でもかんでも考えなしに「至陰のお灸」という先生は怪しいですぞ!!
全く東洋医学的な診たてに基づいていない可能性があります。
こんな風に、徐々に徐々に東洋医学の守備範囲が広い、という認識が広がることは、とてもイイことですね。
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2010.03.21
この間、いいコメントをいただきましたので、「鍼灸と保険」というテーマで何回かに分けて書こうかな、と思います。
(そういうことにも目を向けていかないとね。現実は大事です。目をそらさずに行きましょう!)
まず初めに、今現在、日本は言うまでもなく「国民皆保険制度」というものを採用しています。
これのお蔭で、前年の収入に応じて1~3割の負担金で国民誰でもが低額で医療を受けることが出来ます。
(皆さん持ってますよね?保険証。)
仮に収入がなくても、生活保護制度、後期高齢者医療制度等によって、その権利は守られますし、病気によっては全額公費負担になる制度もあります。
とても弱者思いの、いい制度ですよね。
しかしこれは、「保険医療機関」での治療がメイン(というかほとんど)です。
つまり、国家資格である「医師免許」や「歯科医師免許」を持った医師が営業している、病院、医院、診療所、クリニック、歯科医院での治療に関して、
保険者(国や保険組合等)から治療費の大部分(7~9割)が支払われるわけです。
あと一部、柔道整復師がやっている接骨院、整骨院でも保険が使える、という認識があります。
しかしこれは正確に言うと、接骨院の場合は原則として、一度窓口で治療費を全額(10割分全額)払って、自分の保険負担割合との差額分を、
患者さん自身が、自分で保険者(例えば国保なら区役所)に請求する、という方法をとるものです。
(あくまで「原則」としてね。)
しかしそれだと、一時的にでも患者さんの負担が大きくなりますので、多くの(というかほとんど全ての)接骨院では、「受領委任」といって、
保険者への差額の請求手続きを接骨院が代行するため、窓口では一部負担金のみをいただく、という形をとっています。
接骨院に治療に行ったことのある方は、申請書にサインを求められた経験があると思います。
これは、上記の手続きを接骨院さんの方に任せますよ、という確認なんです。
これにより、接骨院、整骨院では保険が使える、という認識が国民に浸透しています。
もう一つ言うと、接骨院で保険が使えるのは「骨折、脱臼、捻挫、打撲、挫傷の5つの外傷(ケガ)のみ」についてです。
最近、慢性の腰痛や肩こり、単なる疲労感などに対する不正な保険請求が問題になっていますね・・・。
(逮捕者も全国に出ています)
ではいよいよ、鍼灸の場合はどうかというと、一応、保険は使えます。
・・・が、なぜかほとんど全然、使っている鍼灸院ありませんよね?
これはなぜかというと、保険を使って鍼灸を受けるためには、「医師による同意書」というものが必要になることと、保険制度においては、
一回の治療費がかなり低く設定されていること(総額でなんと1500円程度!)が理由になると思います。
しかも、保険適用になる症状として、「腰痛、頸肩腕症候群、リウマチ、五十肩、神経痛、頸椎捻挫後遺症」という、たった6つの疾病に限定(!)されており、
なおかつ、ひと月の治療回数、治療開始から終了の期間に至るまで、全て同意書を書いた医師が決定します。
さらには、上記6つの疾病を、病院と鍼灸院で併療(同時に治療)することは認められていません。
これまでに、患者さんがそのことを知らずに、同じ疾病で医院と鍼灸院に同時にかかってしまって、鍼灸院に「だけ」保険者から治療費が支払われなかった、
なんていう恐ろしい事例もあったようです。
しかも、今では撤廃されましたが、つい最近までは、鍼灸の治療回数には、なぜか法的に制限(ひと月10回までだったかな?)があり、
とてもまともに商売できるような仕組みではございませんでした。
そのため、保険専門の鍼灸院というものはほとんどなく、積極的に保険を使っている鍼灸院は、単純にすぐ隣にある医院と業務提携していたり、
単純にそこの鍼灸院の院長の親や親戚が医師であったり、という特殊な場合以外は、なかなか導入しにくいのが現状です。
「・・・あのさー、これ、なんか不公平じゃない?」
と思います。
さも日本という国に、保険制度に、鍼灸なんて効かない、嫌いじゃ、滅びよ!と言われているような気ィすらします。(苦笑)
しかも前回のブログにも書いたように、患者さんからは怪しい、痛そう、熱そう、恐いなんて言われます。(苦笑)
なんで、こんなことになるんでしょう。僕ら一生懸命やってるつもりなんだけどなー・・・。
毎日毎日、睡眠時間、遊ぶ時間を削って、鍼の本を読み、休日は勉強会にいき、知識、技術を少しでも高め、患者さんの健康に少しでも寄与しようと頑張っているのは、
鍼灸の学術を最大化するためであって、こんな扱いを受けるためじゃない!
・・・とかって、卑屈になったこともあります。でも冷静に考えれば、こうなるには、それなりの理由、いきさつがあったはずです。
(次回に続く)
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清明院に皆様のお力を!<m(__)m>
2010.03.19
よく初診の患者さんに、
「病院やら整骨院やら、色々かかったけど治らないから、ワラをもつかむ思いで来ました。」
と言われることがあります。
これ、僕はいつもココロの中で、
「別に鍼はワラじゃないけどネ(苦笑)」
と突っ込んでしまいます。
昨日も書いたように、現代の日本において、東洋医学、鍼灸、漢方というのは、とかく「日かげの医療」的なイメージが強いようです。
ワケ分からんけど、なんだかしんないけど効きそうだ!、とか、怪しいけど、他で治んないんだからしょうがない、信じてみようかな・・・、とか、
とにかくマイナスイメージが強いようです。
初診患者さんに鍼を打った時、よく、
「エ?今ホントに鍼刺したんですか!?全然痛くない・・・。」
なんて言われることがあります。
(100%じゃないよ。場所によっては蚊に刺された程度、チクッとすることもあります。)
鍼は痛そう、お灸は熱そう、そんでもって東洋医学は怪しい。院長の見た目もなんだかロン毛でチョンマゲで、ますます怪しい・・・。
そんな思いを抱えながら勇気を出して治療にやってきて、まったく痛くない1本の鍼。人間というのは面白いもので、そうすると今度は、
「こんなんで本当に治るの??」
と始まります。(笑)
僕としてはそうきた時は、
「ええ治ります。だから僕は生活できています。」
と答えるほかないんですが、その言葉がなかなか信じられない患者さんは、残念ながら治療に来なくなる(あきらめてしまう)場合もあります。
もちろんそうなってしまったら、お互いに楽しくありませんから、なるべく希望を持っていただくために、治療直後に体(症状)の変化が分かるような治療を心がけています。
現在の日本では、東洋医学の効果は、「知ってる人のみが得をする」みたいな、おかしな話になっちゃってます。
東洋医学は高い臨床効果を持つ伝統的な「医学」です。
ただ、西洋医学とは人体に対する認識の仕方が根本的に違うため、西洋医学で治らないものがあっけなく治ったりする事実があります。
でもこれも別に奇跡などではなく、ある意味当然のことであり、その逆も大いにあるため、別にそのことを声高に自慢する気もしません。
ですから、「東洋医学で治った=奇跡」とか「東洋医学で治らなかった=迷信」ではないのです。
東西の医学それぞれに得意分野があり、それをどこまで表現できるかは、実践する者次第なんです。
なんか話がそれていってますが、要するに鍼は「ワラ」とか「最後の砦」じゃなく、何か体の不調を起こした時にファーストチョイスしても全然OK、
むしろするべきの、れっきとした「医学」である、ということです。
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2010.03.12
昨日、珍しく親戚からメールが入りました。
何でも、身内が「小麦アレルギー」になった(判明した)とのこと。
・・・以前から、その親戚は何となくアレルギー体質っぽい印象はあり、注意するようにと伝えてあったんですが、
「はやっ!」
と思いました。
もちろん即座に、
「鍼するべき!」
とメールしましたが、今ホントに多いですね、アレルギー。
これはねー、花粉症についての時も書いたけども、内的、外的のありとあらゆる要因が複雑に絡んでいるんでしょう。
今回のケースで考えれば、どうやら小麦が外的要因、ということはおぼろげに分かりますが、内的要因について、となると現代医学的には不明な点が多いようです。
・・・そうなると根本治療(アレルギー反応自体を全く起こさないようにする)は不可能、というか不明、となり、治療は小麦と、小麦の入った食品を摂取しないことと、
もし湿疹等の症状が出てしまった場合は軟膏等で対症療法的に抑えよう、それしかない、となる訳です。
この、患者さんにとっては大変厳しい場面で、東洋医学がパワーを発揮します。
同じ小麦アレルギーでも、よくよく観察していくと、必ずその患者さん独特の「特徴」が出てきます。
まず、最近発症したということであれば、「春先」に初発、ということが分かります。
その時点で、こないだ花粉症の時に述べたように、「肝の臓」「胆の腑」「木気(風邪)の関与」の関与を疑います。
また、食餌性(しょくじせい)のアレルギーというのは、花粉などと違って、食べるものに対する反応ですから、
「肝」以外にも「脾の臓」や「胃の腑」の関与もありうるかもしれません。
そして、湿疹が出た、ということになれば、それがじゅくじゅくしたものか、カサカサしたものか、赤みはどうか、熱は持っていたか、出た場所はどこか、
などを詳しく聞いて、調べていくことにより、徐々に「体の内面」の「どこがどう」おかしくなっているか、という問題が明らかになってきます。
コレを整えていくことによって、結果的に「小麦」という食品に「普通に」、「人並みに」対応できる状態に持っていければいい訳です。
「エエ!?小麦アレルギーって、肝臓や胃が悪いんですか!?」
と思った方が、もしいたらいけませんので、これは何度も何度も繰り返し、しつこくしつこく述べていますが、東洋医学の言う内臓学と、西洋医学の言う内臓学には違いがあり、
当然、東洋医学の言う「肝の臓」と、西洋医学の言う「肝臓=Liver」は違います。
五臓六腑ってなんですか? 参照
・・・まあ要するに、人間は物質代謝が基本な訳で、「動く」と「寝る」のバランスが重要であるのと同じように、「食べる」と「出す」のバランス、
つまり、「同化」と「異化」のバランスがキチッと取れていれば、大概の病気は治っていくんだと思います。
現代病と言われる「アレルギー疾患」、今後も注視していきたいと思います。
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2010.03.04
いや~、せっかく暖かくなってきたと思ったら、先週末ぐらいからまた寒くなっちゃいましたネ・・。
ところで昔から、この時期のことを「三寒四温」と呼んでいます。
これは、朝鮮半島や中国北東部でも同じような現象があるらしく、3日寒い日が続き、その後4日は暖かい日が続く、という、7日間周期の独特な現象なんだそうです。
これが大体お彼岸(春分の日)ぐらいまで続くので、「暑さ寒さも彼岸まで」なんて言葉もあります。
・・・ところで我々東洋医学を実践する者にとっては、この時期はやっかいです。
なぜなら、人間の体には、暖かい日には皮膚がゆるんで、汗や水蒸気を発散して体にこもった余分な熱を発散し、寒い日には皮膚を緊張させて、
熱(陽気)を漏らさないようにするという、いわば
「自ら陰陽バランスを調節する」
霊妙で重要な働きがあるのですが、これがあまりにも頻繁に、交互に行われると、この働きがついていけず、病になることがあります。
しかも、春先という時期は気が上にのぼせ易い時期でもあります。
これについてもそのうち解説しようと思いますが、この時期によく問題になる「花粉症」なんていう病気は、その典型例です。
要は、寒いなら寒いまま、暑いなら暑いまま、であれば、体の調節機能も余裕で対応できるけれども、これがあまりにも「頻繁で極端」だと、
ついていけなくなる人が出てくる、ということです。
これの治療を考える上では、発散できずにこもってしまった「熱」にとらわれたり、発散しすぎて冷えてしまった「寒」にとらわれ過ぎると、
治療した翌日の気候いかんによっては、症状を悪化させることがあります。
そこで、こういう不安定な時期は、あまり極端な治療はあえてせずに、治療した翌日が暑くても寒くても、患者さんが上手に、スムーズに対応できるような治療を考えなくてはなりません。
(もちろん患者さん一人ひとりに合わせて個別にね。)
ここら辺が、この時期のあらゆる病変に対する治療の、難しくもあり、面白いところでもあります。
・・・ところで、全然話変わるけど、もう終わっちゃったけど、「ひな祭り」ってなんでしょうかね?
次回はそのお話。
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2010.02.25
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前回まで、
ⅰ.「表裏」
ⅱ.「寒熱」
ⅲ.「虚実」
という、3つのテーマについて書いてきました。
そして、東洋医学ではこれらの考え方を使って、患者さんの
「どこに(病位)」
「どういう(病性)」
病があり、
「その勢い(病勢)」
はどうなのかを、まず大まかに診断するんだよ、ということを述べました。
この考え方(診断方法)を、
「八綱弁証(はっこうべんしょう)」
と言い、これは東洋医学的な鍼灸治療をする上で、絶対にはずせない診断法(弁証法)の一つです。
歴史的には、清代の程国彭(ていこくほう)が1732年に撰した『医学心悟』の中の「寒熱虚実表裏陰陽辦」に説かれ、
その考えは1742年、呉謙の『医宗金鑑』にも引き継がれ、現代中医学の弁証法の基本の一つになりました。
なぜ「八綱」と言うのかというと、組み合わせとして、
「表か裏か」の2、
「寒か熱か」の2、
「虚か実か」の2
を掛け合わせると2の3乗となり、2x2x2=8パターンが得られます。
すなわち、全部は書かないけど、「表、寒、実」とか、「表、熱、実」・・・とかって組み合わせていくと、8通りの組み合わせが得られ、
それを「八綱(はっこう)」と呼び、大まかに病気を分類することが出来る訳です。
因みに、ここでしっかりと断っておきますが、上記は私の個人的な考えです。
中医学の教科書には、どの本にも八の要素を並列に並べて、陰陽、表裏、寒熱、虚実で八綱、という風に解説されていますが、個人的には上記の説に一票、という感じなんです。
(何の本で読んだか忘れたけど。。(^^;))
これは私の「八」に対する解釈にもかかわってきます。
奇経八脈の八、八法の八、八卦の八にしても、やはり総綱としての「二(陰陽)」があり、それの組み合わせや現れ方の違いのために他の「六」がある、
と考えた方が、個人的には納得できることが多いからです。
(まあ些末な話っちゃ話だけどね)
〇
患者さんの病気のパターンが、この8パターンのうちのどこに収まるか、ということは、我々にとってとても大事です。
なぜなら、これによって「治療の大まかな方向性」が決定づけられるからです。
病気というのは、患者さんが訴える、表面的な「症状」にのみとらわれて、治療や診断そのものが右往左往していては、なかなか治っていきません。
大事なのは、その症状を出さしめている本質は何か、要は病の本体は何なのか、ということを常に意識して治療を進めることなんです。
そうしないと、治るものも治らないんです。
これを中医学では「治病求本」といい、2500年前の東洋医学のバイブルである『黄帝内経素問』陰陽応象大論(5)に「・・治病必求於本.・・」とある通りです。
治療を技術論と考えると、本当に治療のうまい先生ほど、この「八綱弁証」が正確で、かつブレないんだと思います。
・・・ですから治療経過の中で、多少の症状の増減はあろうと、方向性が正しい訳だから、結果的には徐々に徐々に、確実に治っていく訳ですね。
ここが正確であれば、術者もフラフラすることなく、一貫性のある治療を進めることが出来るわけです。
まあ、ちょっとこのシリーズは難しかったかもしれないけど、とても大事な考え方なので、あえて書きました。
・・・ところで、清明院のHPにもこのブログにも、よく「弁証(べんしょう)」とか、「弁証論治(べんしょうろんち)」という言葉が出てきます。
コレ、聞き慣れませんよね?次回はそのお話。
〇
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2010.02.24
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・・・続いて、「表裏(ひょうり)」についてです。
日常会話の中でも、
「表裏一体」とか、
「表裏(おもてうら)のない人」
とか、よく言いますよね。
要するに「表(ひょう)」というのは見えてる部分、「裏(り)」というのは見えない部分のことを意味します。
この意味から、「表の病」というのは、「見えてる病」「表面的な病」という意味を持ち、要は病気の位置が浅いですよ、ということを示します。
浅い、と言うと、じゃあアトピーなどの皮膚の病気は「表の病」か、ということになりますが、そうではありません。
症状の出ている部位のことではなく、あくまでも、主な病変部位(言わば主戦場、症状の原因となる、陰陽バランスの崩れた場所)が浅い部位にある病を「表の病」と言います。
ですので、慢性のアトピーなどでは、症状が出ているのは皮膚であっても、主な病変部位は内臓(臓腑)の機能異常、バランス異常だったりするので、
「裏の病」という判断になる訳です。
「表の病」の例を挙げると、体の外からガンガン冷やされたり、あるいは乾燥して喉が痛いなどの、かぜの初期段階なんかが相当します。
これに対して「裏の病」というのは、「見えない病」「深い部分の病」という意味を持ち、深い部分、すなわち、繰り返しになりますが「臓腑」に病があるものを言います。
これも、簡単に「深い」と言ってしまうと、西洋医学的な肝炎とか腎炎とか胃炎などの、内臓の炎症疾患とかを想像しますが、そういう意味ではありません。
東洋医学の言う「臓腑」の病変と、西洋医学の言う「内臓=organ」の病変とは、意味が違います。
東洋医学では、内臓の形体的な異常に注目しているのではなく、五臓六腑それぞれの機能のバランスの乱れに注目しているのです。
ここは混同しないようにしたいですね。
ですので、慢性の頑固な病気などは、ほとんどが「裏の病」の範疇に入ってきます。
たとえ、肩こりであっても、です。
このように、東洋医学では”表裏”という概念(ものさし)を使って、病変(陰陽バランスの乱れ)が起こっている部位(位置)を考えますので、この考え方を「病位」と言います。
我々は、前回、前々回とお伝えしてきた「虚実(病勢)」「寒熱(病性)」「表裏(病位)」という、東洋医学独特の分類概念を駆使して、
「病の趨勢」「病の性質」「病の部位」という観点から、まず大まかに患者さんの病気を大きく「陰陽」に分析する訳です。
この「虚実」の2つ、「寒熱」の2つ、「表裏」の2つの物差しを使って、まず病を大きく「陰陽」の2つに分けることを、
「8つの綱領を弁(わきま)える」という意味で「八綱弁証」と言います。
因みに個人的には「虚実」の2、「寒熱」の2、「表裏」の2をそれぞれ組み合わせると、「虚・寒・表」「虚・寒・裏」「虚・熱・表」・・・と、組み合わせが8通りできるので、
その8通りの組み合わせに、とりあえず全ての病を概括できるという意味で「八綱弁証」という理解の方が好きだったりします。
この分類概念(弁証法)は、実は他にもまだまだあります。
そのうち気が向いたら書こうかな、と思います(笑)
それで、「ここぞ!!」というところに鍼灸を施し、アンバランスを整え、治療させていただく訳ですね。
東洋医学は、とっても科学的で芸術的な医学なんです。
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