東洋医学 伝統鍼灸 清明院

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日本伝統鍼灸学会に参加してきました!!(1日目編①)

2018.11.27

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11.24、25と、大阪の茨木市、立命館大学で行われた日本伝統鍼灸学会に参加してきました!!

 

 

今回は色々と見逃せない企画や講義があったので、珍しく土曜の診療を休ませていただき、土日の二日間、朝から晩まで参加させていただきました!!

 

 

土曜しか来れない患者さん達、本当に申し訳なかったです!<m(__)m><m(__)m>

 

 

今回学んだことを、必ず治療に活かせるように精進しますので、何卒ご容赦ください。

 

 

今回は色々と感想があるので、何回かに分けて書こうと思います。

 

 

まず、1日目の朝は一般口演。

 

 

土曜の朝一なのに、けっこう人が入っているなあ、という印象。

 

 

(一社)北辰会から、奥村裕一先生、油谷真空先生のご発表がありました。

 

 

学術部長である奥村裕一先生は、数十年前から日本伝統鍼灸の打鍼、腹診に注目し、その臨床、研究を重ねて来られました。

 

 

奥村先生の研究はまだまだ続くと思いますが、今回も素晴らしい内容でした。

 

 

ただ、抄録と、僅か7分でダーッと聴いただけでは、よく理解するのが非常に大変な、重厚な内容なので、ぜひ論文化してほしいと、夜の飲み会で何度もお願いしてきました。

 

(苦笑・・・それでも、なるかどうか分からないけど。)

 

 

油谷先生の発表は、北辰会の実際の臨床における打鍼の活用の実態に関する発表。

 

 

北辰会の講師の先生を中心に、約80症例を集積し、分析した発表でした。

 

 

キッチリと中医学的に弁証した上で、打鍼「のみ」の治療で、一回の治療を終わらせている北辰会だからこそできた発表だったと思います。

 

 

打鍼以外にもあれこれやってたら、その効果が本当に打鍼の効果かどうか、分かりません。

 

 

しかも、実験室で被検者にやるのではなく、実際の患者さんにやって、効果が出て、良い評判が立つくらいの代物でなければ、現場での利用価値はナシ、ということになります。

 

 

まあ僕が言うと手前ミソになりますが、上記の二つを満たした、80もの症例とその内容分析がパッと出せるのは、北辰会以外に無いでしょう。

 

 

症例集積に関しては、もちろん今後は、統計学的な計算方法だったり、もっと詳細な研究方法、検討方法があると思いますので、そこは今後の課題でしょう。

 

(ここは研究者と組んだ方が早いかな、という気もしました。)

 

 

後の二つの一般口演も、無分流打鍼継承会の関信之先生と、いやしの道の大浦慈観先生によるご発表で、関先生の発表には清明院の元副院長、

 

松木宣嘉先生も関わっており、どちらも非常に興味深かったです。

 

 

画像も動画も残っていない、江戸期の打鍼や毫鍼の道具や手法を、文章と絵図からイメージを膨らませて、それを頼りに現代に蘇らせ、それを実践の中で再検討し、

 

現代に定着させようという、昭和初期から、過去の先生方も連綿とやってきた試みが、再び過熱しているように思えます。

 

 

とてもいいことだと思います。

 

 

明治~昭和初期まで、ほぼ断絶してしまったと言っていい日本伝統鍼灸、ここ試みから何か、大きな発見や、今よりもいいやり方が見つかる可能性は大いにあると思います。

 

 

僕も市井の一鍼灸臨床家として、出来ることをやっていこうと思います。

 

 

 

続く

 

 

 

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風邪多し!

2018.11.21

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毎日毎日、風邪ひきさん多しですね。

 

 

1例として同じ症例はなく、実に勉強になります。

 

 

まあ、あまり定型的なパターン認識は、僕はあまりしないようにしているけど、ここ最近はノドから来て、ガッと発熱するパターンが多いように思いますね。

 

 

温病型と言ってもいいように思います。

 

 

寒気やだるさから始まるものももちろんあります。

 

(まあ、傷寒型ですかね。)

 

 

その後、激しい邪正相争が終わると、咳痰が残ったり鼻水が残ったりね。

 

 

また、女性であればそれと生理不順が重なったりして、なかなか複雑なのがある。

 

 

実に勉強になりますね。<m(__)m>

 

 

 

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「裏白樫??」

2018.11.14

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先日、久々に見えた遠方の患者さんが仰った。

 

「先生、こないだ腰に激痛が走って、すぐに結石の痛みだと分かったんで、救急車で病院に行きました。」

 

と仰る。

 

「ほう、で、結石だったの??」

 

と問うと、

 

「そうでした。。。」

 

とのこと。

 

 

この患者さんは以前に何度も経験しているので、そこまでパニックにはなっていなかった。

 

 

けっこういらっしゃるんですよね、腎臓や膀胱に結石ができやすい患者さん

 

胆石の人もいますね。)

 

 

結石については、東洋医学的には、特定の臓腑、特定の位置に慢性的に邪熱が停滞しやすい人に起こりやすい、と考える場合が多い。

 

 

そして、この患者さんが、

 

「こういう時、裏白樫のお茶ってどうでしょうかね・・・?」

 

と仰る。

 

 

「・・・ウラジロガシ??( ;∀;)」

 

 

こないだ、「糾励根(きゅうれいこん)??」という記事を書いたばかり。(苦笑)

 

 

うーん、聞いたことがあるような、ないような。。。

 

 

こういう、民間療法はキリがないすね。

 

 

さっそく調べてみると、「裏白樫」のお茶を飲むのは、かなりポピュラーな民間療法のようだ。

 

wikipedia ウラジロガシ

 

 

ウラジロガシエキスは立派に薬にもなっているらしい。

 

薬のしおり ウロカルン錠

 

 

・・・これを見ても、うーん、知ってたような、知らなかったような。。。(苦笑)

 

 

とりあえず飲んでみて様子見るよう伝えました。

 

 

・・・いやー、患者さんは先生です。<m(__)m>

 

 

 

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「糾励根(きゅうれいこん)??」

2018.11.09

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今日、膝痛の患者さんの膝が突然青黒くなっていた。

 

 

一瞬、

 

「なんじゃこりゃ!?( ゚Д゚)」

 

と思って、

 

「どうしたのコレ?」

 

と問うと、

 

「糾励根(きゅうれいこん)貼ったら色が移っちゃいました。。。」

 

とのこと。(苦笑)

 

 

・・・キュウレイコン??

 

 

何すかソレ??

 

 

臨床20年やってて、正直初めて聞きました。

 

(恐らくです。過去に聞いたけど忘れてる可能性もあるけど。)

 

 

患者さんが言うには、自分で練って作る泥のような湿布だそうだ。

 

 

昔の接骨院なんかでは、「泥湿布」といって、柔整の先生方が作っていたのを知っている。

 

(見たこともあるし、作るの手伝ったこともある。)

 

 

なるほどねー、泥湿布ねえ。

 

 

そこに、「糾励根」が練り込んであるわけか。

 

 

「糾励根」についてはこちらのサイト様が参考になりました。

 

 

いやー、まだまだ知らんことがたくさんあるなー。。。

 

 

まあ、膝の熱は、貼る前に診た時よりも確実に引いてはいました!!

 

 

それが何よりですな。(゚∀゚)

 

 

 

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ローズマリーティー?? 4

2018.10.29

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これまでのお話し

 

 

参照

 

 

 

◆命名の由来の続き~生薬としての効能に関して

 

 

前回、もともとの名前である「ローズマリー」、また、和名である「マンネンロウ」について紹介しました。

 

 

今日は中国名の「迷迭香(めいてつこう)」について、考えてみたいと思います。

 

 

これの命名の由来は正直分かりませんでしたが、「迷」はもちろん「迷う」、「迭」「代わる、滑る、入れ替わる」、「香」はそのままの意味でしょうから、

 

「迷うようにあっちこっちに代わるがわる生える、香気の強い木」

 

ってな感じじゃないでしょうか。

 

(笑・・・まったく間違ってたりして。(゚∀゚) もし詳しい方おられましたらご教示下さいませ<m(__)m>)

 

 

一応、生薬としての効能は「健胃、鎮痛、駆風」と出てきました。

 

 

また、性味は「辛・温」、帰経は「心・肝・脾・肺」とも出てきました。

 

(温帯で採れるからといって、冷やすわけではないのね。。。本によっては清熱解毒と書いてあることもあるんだが。。。)

 

 

横浜薬科大学編『漢方薬膳学』によれば、「発汗解表、健胃、鎮静」などと出てきます。

 

 

また、ハーブに詳しい先輩の話では

 

「働きはハッキリしていて瀉法的」

 

「香りが強く心肺に作用しやすい、香水としても使われる(料理でも)」

 

「経験的にはハーブの中でも比較的強く、発散、開竅、通気、清気という印象」

 

といった情報が得られました。

 

 

総合すると、どうも気血を巡らせる働きが強く、瀉法的に働く薬効がある、ということが分かりますね。

 

 

心肺に作用しやすいということから、呪術的、宗教的側面を持ちやすいことも頷けます。

 

 

 

続く

 

 

 

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ローズマリーティー?? 2

2018.10.27

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前回のお話し

 

ローズマリーティー??     参照

 

 

◆そもそもどこに生えてたの??

 

 

植物とその効能を考えていく時、まずは

 

どこに自生していた植物なのか(原産地)

 

を知ることで、ある程度そのものが持つ性質を把握できることがあります。

 

 

ローズマリーというのは、地中海沿岸地方が原産地なんだそうです。

 

(ふむふむ、ヨーロッパの植物な訳ですな。)

 

 

地中海沿岸地域ということは、「地中海性気候」といって、比較的温暖な気候で、冬には一定の降雨があるが、夏は日ざしが強く、乾燥するそうです。

 

 

植物としてはローズマリーの他に、夏の乾燥を利用した耐干性の樹木性作物(オリーブやブドウなど)、冬の降雨を利用した冬小麦栽培が行われるほか、

 

乾燥して牧草の育たない夏に、家畜を高山へ移動する移牧も行われるそうです。

 

 

これらを組み合わせた混合農業のことを「地中海式農業」といい、オレンジ、レモン、イチジク(無花果)、コルクガシ、月桂樹(ローレル、ローリエ)などが栽培され、

 

オリーブ油、ワインなどが多く出荷されているそうです。 

 

(やはり、暖かい気候で、しかも乾湿の偏差が大きい地域であるせいか、東洋医学的には理気活血、清熱解毒モノがよく採れるようですね。)

 

 

・・・で、そんな環境にあって、ローズマリーはシソ科に属する常緑性低木で、和名では「マンネンロウ」と呼ばれ、中国では「迷迭香(めいてつこう)」と呼ばれます。

 

(この日中でのネーミングの由来が気になりますね。あとで触れましょう。)

 

 

生葉もしくは乾燥葉を香辛料、薬(ハーブ)として用い、花も可食であり、水蒸気蒸留法で抽出した精油も、薬として利用されるそうです。

 

 

ふむふむ、大活躍だね、ローズマリー。 

 

 

 

続く

 

 

 

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血絡を刺す

2018.10.05

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今日は、朝から思いがけず刺絡が活躍しました。

 

「刺絡」を含む記事 参照

 

 

刺絡については、かつては全患者にやっていたような時代もあったんですが、今では奥の手的に使うことが多いのですが、今日は妙に刺絡の日でした。

 

 

秋分過ぎて、間もなく寒露。

 

 

正気も邪気も、それ相応に動きます。

 

 

このタイミングで、邪気、特に邪熱が血絡に入っちゃってると、やっぱり刺絡しないと動かない、あるいは動きにくいのって、ありますね。

 

 

因みに「血絡」については『黄帝内経』(特に霊枢)にたくさん出てきます。

 

 

いつかまとめましょう。

 

 

・・・で、それを動かすと、エライ深いところまで響くなあー、と、感心しちゃいました。(゜o゜)

 

 

実に勉強になりました。<m(__)m>

 

 

ありがたい。

 

 

毫鍼とは別のオーダーの最たるものとして、非常に重要な手法だなあと、痛感しました。

 

 

これはホント、使いようによっては非常に強い武器なのになー。。。

 

 

ある意味、翳しに匹敵するよ。

 

「翳す」意味 ⑤   参照

 

 

 

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NHKの見た!

2018.09.27

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こないだ、NHK「東洋医学 ホントのチカラ~科学で迫る 鍼灸・漢方薬・ヨガ~」という記事を書きました。

 

 

・・・で、見ました!!

 

 

感想は、

 

「・・・うん、まあ、いんじゃねんすか?」

 

って感じです。(゚∀゚)

 

 

制作に携わった先生方、ご苦労様でした!<m(__)m>

 

 

全身にする鍼、経穴や経絡を意識した鍼、耳鍼、今流行りの美容鍼、ラットでの実験、血液像の変化、婦人科と鍼、結核とお灸、動物と鍼、大学病院で鍼、米軍で鍼、漢方と証・・・、

 

とか、まあ、一般人ウケする要素満載の内容で、NHKが採り上げてくれたというのは、何も日が当たらないよりは、一先ずはいんじゃないすかね。

 

 

NHKの制作サイドが、コアな東洋医学の話は、分かりにくくなるし難しくなるので、意図的に排除しているようにも思えましたね。

 

 

鍼と言えば痛そうだからヤダ、灸と言えば熱そうだからヤダ、鍼灸は年寄りがやるもの、効くかどうか分かんない、単純に怪しい、怖い、といったマイナスイメージが過半数を占めているのであれば、

 

ああいった全国ネットでのポジティブで肯定的な見せ方はアリだと思います。

 

 

マスに対してやる訳だからね。

 

 

もちろん、細かい部分で「??」みたいな部分も無きにしも非ずでしたが、まあ、それは今に始まったことじゃないし、大枠としてはいいんじゃないの、と思いました。

 

 

個人的には、以前研修でお世話になった北里大学の伊藤剛先生が、スタジオで顔の巨膠というツボを真顔で指圧してリフトアップしようとしている姿がウケました。(笑)

 

北里大学、東洋医学総合研究所にて研修してきました!!   参照

 

 

 

 

何といっても、鍼灸の受療率は国民の僅か5%前後。

 

 

2000年頃の小泉政権時代の規制緩和で、雨後の筍のように鍼灸師養成校が全国に増加し、それまでは年間1000人程度であった国家試験合格者が、

 

一気に毎年3000人程度にまで膨れ上がりました。

 

 

それでも今のところ、受療率は別に増加しません。

 

 

教育サイドも、これに対する対策なのか、確か来年度からだったか、授業のコマ数を増やして、実技のコマ数も増やして、臨床経験の豊富な先生が、

 

専門学校の教壇に立つように工夫していこうという動きが出てきています。

 

 

国家試験の難易度も徐々に上がり、年々合格者数が減っています。

 

 

・・・さあこれで、鍼灸師の質が上がるか。

 

 

受療率は増すか。

 

 

・・・僕としては、約20年前にこの業界に入った当初から、要するに、あれだけ社会インフラとして発達した西洋医学をもってしても上手く治せないような病気が実際にある訳なんで、

 

西洋医学とは全く違った自然哲学に立脚する東洋医学の見地、基準でもって診たてて、キチッと治せる、結果の出せる鍼灸師がどれだけ増やせるかが、

 

キモだと思っています。

 

 

まあ治せるだけでなく、それをプレゼン出来たらなお良いけど。

 

 

数だけ増えたって、実力ねえならゼロ意味、あるいは、かえってマイナスだね。(ΦωΦ)ニャー

 

 

藤本和風先生の言葉、

 

「デタラメな鍼をするなら、鍼灸師を辞めた方が人助けや。」

 

ですね。

 

 

 

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一貫堂医学について 9(矢数格(道斎)先生の治療)

2018.09.17

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これまでのお話・・・

 

 

墓マイラー 52 森道伯先生

森道伯という人物

一貫堂医学について 1(三大体質五大処方)

一貫堂医学について 2(瘀血証体質について)

一貫堂医学について 3(臓毒証体質について)     

一貫堂医学について 4(解毒証体質について)

一貫堂医学について 5(解毒証体質の続き) 

一貫堂医学について 6(温清飲について)   

一貫堂医学について 7(スペインかぜの治療) 

一貫堂医学について 8(感染症と東洋医学)   参照

 

 

 

一貫堂医学が今日まで大きな影響力を持っている原因の一つとして、昭和漢方界の中心人物であった矢数道明先生と、その兄君である矢数道斎(格)先生が、

 

創始者・森道伯先生の弟子であったことが挙げられます。

 

 

因みにこちらが矢数道斎(格)先生

 

 

矢数格:写真:☆☆☆

 

 

↑↑ インパクト満点、一度見たら忘れないお姿ですね。

 

(矢数芳英先生(道斎先生の弟君である矢数道明先生の御令孫)よりご提供いただきました。)

 

 

矢数格先生は明治26年(1893年)茨城県生まれ、はじめ海軍の軍人を志し、中学に入るも、スパルタ式の無茶苦茶な運動をやり過ぎて、3年の時に体を壊し、

 

マラリアに罹り、生死を彷徨う。

 

 

この時、有名病院から専門病院から、どの医者に行っても一向に良くならず、何を食べても、何を飲んでも吐いてしまい、全く飲まず食わずの状態が続いており、

 

終いには吐血して、余命宣告までされる始末だったようです。

 

 

そこで森道伯先生の噂を聴き、藁をもすがる思いで、骸骨のようにやせ衰えた体で上京し、診察を受けると、僅か2週間で、天丼が食えるほどに回復したそうです。

 

 

因みにこの時に、

 

「この薬が胃に入るようであれば治してやる。」

 

と仰って、森先生が使った方剤は五積散だったそうです。

 

(そして五積散の出典は『和剤局方』です。)

 

 

マラリアというのは東洋医学では「瘧(ぎゃく)」とか「瘧病」とよんで、古くは『黄帝内経素問』「瘧論(35)」「刺瘧(36)」の中で詳細に認識されていますし、

 

『金匱要略』の中にも出てきますし、その後の歴代医家も多くの研究を残しています。

 

 

現代中医学でもマラリアを様々に分類し、治療法を提示していますが、「五積散」という選択肢は僕が探した限りでは提示がありませんでしたので、

 

森先生のオリジナル運用法だろうと思います。

 

 

よく名医はこうやって、西洋医学的な病名だの、経過だの、症状の軽重だのに振り回されることなく、自分がよく理解している方剤をシンプルに使って、

 

きれいに治しますね。

 

 

五積散は、風寒外感+内傷寒湿の薬で、解表温裏剤と呼ばれるグループです。

 

 

因みに、2015年にノーベル医学・生理学賞を受賞した中国人の屠呦呦(ト・ユウユウ)先生の研究は、中国伝統医学で使われている生薬にヒントを得た、マラリアの治療薬「アルテミシニン」の研究でした。

 

(因みにこの時一緒に受賞したのは寄生虫薬イベルメクチンで有名な日本人の大野智先生です。)

 

 

 

その後、元気になった矢数格先生は田舎に帰り、学を諦めて自然の中で農作業をする暮らしを4年ほどしていましたが、森先生のような漢方医を志そうと一念発起し、

 

22歳で千葉医専(現千葉大医学部)に入学しました。

 

 

当時は、漢方医の道を志すと言うと、学友から

 

「お前、頭がおかしいんじゃないか?」

 

と言われたそうです。

 

(苦笑・・・この時、矢数君を助けようと、署名が集まった、なんていうエピソードもあるそうです。)

 

 

まあ今で言えば、突然変な宗教に洗脳されたとか、精神に異常をきたしたとか思われるくらい、東洋医学の評判は地に落ちていたのでしょう。

 

 

医学生3年の時、再び無理をして体を壊し、肺炎まで起こし、入院する羽目になってしまいました。

 

 

その時に友人が森先生に電報を打ってくれて、知らせを受けた森先生は、夜中に東京から千葉の病院まで薬を持って往診に来てくれたそうです。

 

 

 

そして、病院のストーブで漢方を煎じて、飲ませると、

 

「こんなところにいたら殺される。わしが家に連れて行って看病する。」

 

と言って強引に矢数先生を東京の家に連れて帰ってしまい、本当に治してしまいました。

 

(このエピソードで思うのは、森先生は、矢数先生の才能に気付いていたんだと思います。)

 

 

この時、森先生が使った処方は升麻葛根湯長ネギを加えて煎じたものだったそうです。

 

 

升麻葛根湯は、後にスペインかぜにも使った処方でしたね。

 

(しかしこの場合は長ネギ(葱白)を入れているところもポイントかもしれませんね。)

 

 

升麻葛根湯の出典は宋代の『小児薬証直訣』(1119)の付録である『閻氏小児方論』であり、効能は辛涼解肌、透疹解毒であり、葱白は長ネギの白い茎の部分のことで、

 

散寒解表、通陽の効能がありますので、肺炎の熱をとり、表は温め、内外に陽気を通じさせる、というイメージでしょう。

 

 

この信念、ハンパないですね。。。(゜o゜)

 

 

僕も現在、北辰会や東鍼校など、東洋医学教育に”端くれ”として携わっていますが、何といっても、この医学に本気になれるのは、こういうリアルな経験、感動が一番いいですね。

 

 

森先生の中では「治るか治らないか」に関する明確な物差しがあり、それを運用しただけのことでしょうが、これをしっかり持っているかどうかが非常に重要だと思います。

 

 

森先生は平生、

 

「わしに西洋薬を使わせたら上手に使ってみせる。」

 

と言っていたそうで、自分なりの評価の物差しがハッキリしていてブレなければ、どんな薬、どんな処置でも的確に分析できる、という意味からの言葉だと思います。

 

 

次回、森先生の臨床エピソードで「僕的に」印象的だった話を紹介して終わりましょう。

 

 

 

続く

 

 

 

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一貫堂医学について 8(感染症と東洋医学)

2018.09.16

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これまでのお話・・・

 

墓マイラー 52 森道伯先生

森道伯という人物

一貫堂医学について 1(三大体質五大処方)

一貫堂医学について 2(瘀血証体質について)

一貫堂医学について 3(臓毒証体質について)     

一貫堂医学について 4(解毒証体質について)

一貫堂医学について 5(解毒証体質の続き)  

一貫堂医学について 6(温清飲について)

一貫堂医学について 7(スペインかぜの治療)          参照

 

 

 

前回、森道伯先生が、大正時代に世界的に流行したスペインかぜ(強毒性のインフルエンザ)に対して、漢方薬で効果を挙げていたことを紹介しました。

 

 

また、ずいぶん前ですが、このブログ上で、広州中医薬大学鄧鉄濤(とうてっとう)先生が、2002年から2003年にかけて世界中に感染者を出した

 

SARS(重症急性呼吸器症候群)に立ち向かって、漢方薬で効果を挙げたという話も書きました。

 

東西医学によるSARSバトル   参照

 

 

鍼灸でも、以前に蓮風先生が非結核性好酸菌症の症例を、内科医の村井和先生とともに『鍼灸ジャーナル 7号』に発表したことがあります。

 

 

日本では残念ながら論文数は少ないですが、中国韓国台湾を探せば、鍼灸で感染症を扱って効果を得たものは、他にもあるんじゃないでしょうか。

 

 

東洋医学は感染症に無力、と切って捨てる人がたまにいますが、果たしてそうでしょうか・・・?

 

 

むしろ東洋医学の歴史は、感染症との闘いの歴史なんじゃないんでしょうか?

 

 

現代の新興感染症にも使える叡智が多分に含まれているのではないでしょうか。

 

 

・・・で、今日は、一貫堂医学の番外編でもないが、東洋医学の感染症に対する考え方を述べてみましょう。

 

 

(一社)北辰会が理論と用語のベースとしている現代中医学の「弁証論治」という基本的な考え方ですが、これの大本は『傷寒論』を著した後漢の張仲景(150?-219)と言われます。

 

”弁証論治”という言い方自体が、『傷寒論』”弁〇〇病脈証并治”という言い方から来ているとか。。。)

 

 

・・・で、その『傷寒論』の内容は、『傷寒論』よりさらに前の『黄帝内経素問』「熱論(31)」の内容や、『難経』58難が元になっていると言われます。

 

 

『黄帝内経』よりもさらに以前は、「病気」というのは、悪霊や鬼が患者に憑りついたもの、と考えられており、治療はもっぱら祝由(お祈り、呪い)であったようです。

 

 

それを『黄帝内経』では、この世界の全ては「気」から出来ているという「気一元の世界観」、そしてそこに働いている法則性である「大極陰陽論」を前提として、

 

自然現象である、人間の生老病死の「病→死」を、自然界、あるいは人体内にある「邪気」が、人体の「正気」を傷っていく過程、と考えるようになり、

 

そしてその「邪気」にはパターン分類があり、人体の側にもまた体質分類があり、それを適切に噛み分けて、何がどうなって病になっているのかを考え、

 

戦略的に治療すれば、病治しができる、という、医学医術の革新(ある意味科学化)を行いました。

 

 

それ以来、その枠組みを前提とした、様々な学説や治療法が開発され、その数千年に渡る膨大な臨床事実の集積は「中国伝統医学」と呼ばれ、

 

現代にまで脈々と受け継がれている訳ですが、この「邪気」という考え方の中でも、自然界にある外来の邪気、つまり「外邪」と呼ばれるものが、

 

現代の西洋医学の言う「細菌」「ウイルス」のことを含む概念です。

 

(ザッと書いたので、もし間違っていたらご指摘ください。<m(__)m>)

 

 

・・・で、東洋医学における感染症の捉え方、治し方は、蓮風先生が以前よく仰っていたことですが、

 

「ここにアサガオの種があったら必ず発芽するわけではないように、種子が発芽するには土、水、空気などなど、それなりの条件が整わないと発芽しない。

 

感染症もこれと同様で、細菌やウイルスがあったら必ず発病する訳ではないように、発病しないように、また、発病しても軽く済むように、

 

患者の側を調えればいいのだ。

 

細菌やウイルスを顕微鏡レベルで分類し特定して、それを死滅させる、あるいは人体の側を強制的にそれに反応しないようにせしめるのが西洋医学、

 

それらが増殖しにくいような体内の状況を調えるのが東洋医学、という違いがある。」

 

ということです。

 

 

もちろん、細菌やウイルスがキチッと特定できて、抗生剤などの治療法も確立されているような感染症であれば、西洋医学のやり方は非常に優れていると思いますが、

 

中にはうまくいかないものもあります。

 

 

そういう時に、意外と効果を発揮するのが、東洋医学の論理と手法だと思います。

 

 

森道伯先生鄧鉄濤先生も、そこんところを良く分かっていたんだと思います。

 

 

次回、ついでなんで、矢数道斎先生が若い頃、森道伯先生に、マラリアと肺炎の治療を実際に受けた話を書いておきましょう。

 

 

 

続く

 

 

 

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