東洋医学 伝統鍼灸 清明院

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刺激量の問題 ⑦(置鍼か単刺か4)

2019.06.19

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これまでのお話し

 

 

刺激量の問題 ①  

刺激量の問題 ②  

刺激量の問題 ③ 

刺激量の問題 ④

刺激量の問題 ⑤

刺激量の問題 ⑥          参照

 

 

◆置鍼か単刺か。  つづき

 

 

前回、置鍼時間にマニュアルや決まりはなく、各人が経験の中で会得するしかない、ということを書きました。

 

 

・・・とはいえ、『黄帝内経』の中に、もちろん一定の参考はあります。

 

 

置鍼のことは、「霊枢』九鍼十二原(1)に、

 

「毫鍼者.尖如蚊虻喙.靜以徐往.微以久留之.而養.以取痛痺.」

 

とあるように、”留”あるいは”留鍼”という文字などで表現されています。

 

 

「置鍼」あるいは「鍼を置く」というような表現は、『黄帝内経』には出てきません。

 

(因みに『黄帝内経素問』調経論(62)「持鍼勿置.」は、置鍼という意味ではないと思います。)

 

 

『黄帝内経』中の”留”を文字検索(便利ー(゚∀゚))すると、『霊枢』で146件、『素問』で57件、ちなみに鍼灸医学の聖典といってもいい『難経』では16件出てきます。

 

 

このうち、「置鍼」という意味で”留”という文字が出てくるのは、ほとんどが『霊枢』です。

 

 

『霊枢』九鍼十二原(1)にあるように

 

「毫鍼は置鍼して気を養って痛痹をとる」

 

のが、本来の毫鍼(現代の一般的な鍼治療で最もよく使われる鍼)の使い方なのかもしれません。

 

 

他に、

 

『霊枢』本輸篇(2)では冬は井穴とか兪穴に置鍼しなさい

 

とか、

 

『霊枢』四時気篇(19)では冬には置鍼しなさい

 

とか、

 

『霊枢』経水篇(12)では陽明経は多気多血だから刺鍼は深く、置鍼は長くしなさい

 

とか、

 

手の経絡は浅くて気の動きが早いから、刺鍼は浅く、置鍼は短くしなさい

 

などなど、興味深い記載がたくさん出てきます。

 

 

こういったところを細かく読んでは、季節や寒熱なども考えて、自身の臨床と照らし合わせて作っていくのが、一番正解に近いものが見えてくるのではないでしょうか。

 

 

 

続く

 

 

 

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刺激量の問題 ③(なぜ一本鍼なのか)

2019.06.13

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これまでのお話し

 

刺激量の問題 ①  

刺激量の問題 ②      参照

 

 

◆置鍼か単刺か。  つづき

 

 

この問題は色々語りたいことを伴うのか、なかなか本題に入れない。(苦笑)

 

 

でもまあ、ついでなんで、色々思うままに書いときましょう。

 

 

もともとここは、そういう場だ。(゚∀゚)

 

 

清明院の治療のやり方は北辰会方式。

 

 

日本はおろか、世界中でも、かなり珍しいやり方だと思います。

 

 

初診時は3時間かけます。

 

 

詳細な予診票を記入してもらった後、問診を1時間以上。

 

 

その後、全身をこれまた詳細に体表観察したのち、治療はなんと鍼一本。

 

 

しかも、再診(二診目)以降は、患者さんに接している時間は数分です。

 

 

目にも止まらぬスピードで、1時間に10人くらいの患者さんを次々に治療していきます。

 

 

蓮風先生はじめ、北辰会のコアメンバーの先生方の多くは、そのようにして成立しております。

 

 

実に特殊な治療方式だと思います。

 

 

でも、この方式が、この業界に入って5、6年ほど経った時に一番、僕自身が納得でき、自分に合っていると感じた、治療方式でした。

 

 

僕も20代の頃は、諸説紛々のこの業界、誰の話にも、一定の説得力を感じ、迷いに迷って、まずは片っ端から試してみないことには分からないと考え、

 

巷でよく行われているような、全身にたくさんの鍼を打つやり方はもちろん、鍼に電気を流すやり方、太くて深い鍼、接触するのみで刺さないやり方、

 

お腹のみの治療、背中のみの治療、手足のみの治療、整体みたいな手技療法と組み合わせてどうか、などなど、何でもかんでも試しました。

 

 

その実体験の中で、僕なりの実感として、色々分かってきました。

 

 

患者さんの中には、痛いところ、凝っているところに、直接太い鍼を深く打って、ズンズン響かせて欲しい、患部を強く刺激してもらって初めて、

 

効いた気がするし、満足できる、という患者さんがいることは確かですが、それは実は全病人の中ではごく少数派だと思います。

 

 

関西ではそういう患者さんのことを、皮肉を込めてか「鍼食い」とか言うそうですね。

 

(苦笑・・・妖怪か!)

 

 

ある調査によれば、日本国民の鍼灸受療率は5%程度、ほとんどの人は鍼灸を受けたことがなく、受けたことがない人のほとんどは

 

「痛そう、熱そう」

 

という食わず嫌いな訳です。

 

 

・・・ということは、「痛くない鍼、熱くないお灸」でもって、鍼灸を食わず嫌いしている、残りの95%をいかに鍼灸ファンにするかが、

 

現代日本の鍼灸師の喫緊の課題なんじゃないでしょうか。

 

 

20代前半の頃から、そんなことを考えながら、色々試すうちに、鍼灸は別に無理にたくさん打たんでもよく効くこと、また、たくさん打ってしまったら、

 

治らない時、壊れた時に、それがなぜなのか、検証が出来にくいということに、嫌というほど気付かされました。

 

 

それで、一本ずつ、この経穴にこの鍼をするということの意味をよく考えるようになり、徐々に絞り込んでいった結果、最終的には一本のみになっていきました。

 

 

でも、その一本にも、また色々あります。

 

 

 

続く

 

 

 

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(一社)北辰会定例会&良導絡自律神経学会

2019.05.28

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5.26の日曜日は、高田馬場で行われた(一社)北辰会定例会東京会場に参加してきました!!

 

 

今回は朝から実技訓練「脈診・望診・取穴」。

 

 

先月と同じテーマでしたが、望診に爪甲診を入れ、取穴のテーマを前回の瘀血から湿熱、湿痰に変えて、蠡溝豊隆に変更しました。

 

「痰(たん)」「瘀血(おけつ)」について   参照

 

 

・・・まあ何と言っても、まずは

 

『胃の気の脈診』

 

『体表観察学』

 

『経穴解説』

 

の熟読から始まります。

 

(文字クリックで購入ページへ)

 

 

当たり前ですが、学術習得にはそれなりの時間、かかります。

 

 

学んですぐに出来るような浅薄なものではない。

 

 

でもそれだけ奥が深く、使いこなせるようになれば、素晴らしい世界が待っています。

 

 

ですので、たまに勘違いしているアンポンタンがいるけど、「難しいのが売り」というワケではない。

 

 

「難しくて高度で、でも素晴らしい世界を、誰でもが共有出来る、分かりやすい理論の次元に落とし込んで、それを時間をかけてじっくりと勉強している」ワケであります。

 

 

せっかく、良く晴れた爽やかな日曜日を潰して勉強に来たんですから、頑張って欲しいと思いますね。

 

 

午後は関東では久しぶりの「症例レポート」です。

 

 

今回は「伝統鍼灸 心月院」院長、坂井祐太先生による「健忘の一症例」です。

 

 

「健忘」などという症状を主訴として患者さんが来院するというのも、北辰会方式の鍼灸のいいところでありますね。

 

 

本来の伝統的な鍼灸医学というのは、全科疾患を治療してきました。

 

 

今回はフロアからたくさんの質問が出て、大変盛り上がりましたね。

 

 

たった一症例を、あらゆる角度からナンボでも深めることが出来る、これも北辰会方式の長所ですね。

 

 

終了後は、実は同じ日にお茶の水の順天堂医院で開催されていた「良導絡自律神経学会 東日本支部」の勉強会後の懇親会に参加してきました!!

 

 

以前このブログに書きましたが、実はこの日は、大阪から北辰会代表理事である藤本新風先生が見えて、特別講演を行っていました。

 

新風先生が良導絡の勉強会に!!   参照

 

 

こちらも非常に盛り上がったようで、良かったです。

 

 

良導絡と北辰会、患者さんに対して、全然違うアプローチの仕方だけど、どちらも効果が出ていることは確か。

 

 

和風先生と中谷先生のご縁もあるし、こういったコラボも面白いと思います。(゚∀゚)

 

 

懇親会では、良導絡の先生方のアツさ、元気さに触れて、面白かったです。

 

 

ご挨拶、名刺交換させていただいた良導絡の先生方、大変ありがとうございました!!<m(__)m>

 

 

 

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(一社)北辰会4月定例会大阪会場

2019.04.23

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4.21の日曜日は、大阪で行われた(一社)北辰会定例会に参加してきました!!

 

 

今年度から、「スタンダードコース」「エキスパートコース」と日を分けるのはやめて、スタンダード班とエキスパート班が、別教室や別グループでやる方式に変わります。

 

 

ですので、毎月の勉強会の呼び名が、かつての「定例会」に戻ったようです☆

 

 

こないだ告知したように、Eラーニングも始まりますし、北辰会の教育システムは、常に進化しております。

 

(一社)北辰会「eラーニング」ついにスタート!!!    参照

 

 

今回は午前中は実技訓練。

 

 

大仙堂院長、山本克仁先生のデモの後、各班に分かれて研鑽です。

 

 

今回、年度初めということもあってか、人数多かったですね~~~(゚∀゚)

 

 

午後は藤本玄殊堂院長、藤本新風代表から

 

「経穴解説を学ぶにあたって」

 

という内容での講演。

 

 

今年は大阪でも東京でも『経穴解説』の講座が4コマあります!

 

 

それを学ぶにあたって、どういった考え方で学ぶべきか、という内容です。

 

 

重要な話がいくつもありましたね。

 

 

その後、将来有望な、優秀な若手の先生方を育成する「講師養成クラス」での実技指導を見学。

 

 

皆さん非常に熱心に学んでいましたね。

 

 

最後は風胤堂院長、油谷真空先生による「中医小児科学概論 2」

 

 

去年やったのが基礎編だとしたら、今回は臨床編です。

 

 

油谷先生は、治療院にキッズルームがあるほど、小児を積極的に診ておられます。

 

(先生自身も子だくさんですしね(*‘∀‘))

 

 

小児の臨床は、思いっきりウデの差が出ますね。

 

 

いやー、年度初めから、盛りだくさんでしたねえ。。。

 

 

今年度からはEラーニングも始まりますし、カリキュラムも非常に充実しています。

 

 

今年度から北辰会に参加する先生方には、果てしない東洋医学の世界に、大いに開眼し、多くの患者さんを救ってほしいですね。

 

 

 

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お灸大活躍。

2019.04.15

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北辰会方式の治療と言えば、99%は少数鍼による軽微な治療です。

 

 

でもごくたまに、奥の手的に

 

「灸をする場合」

 

「刺絡をする場合」

 

「五十肩などの際、手技療法をする場合」

 

なんかがあります。

 

 

僕は実は、清明院を開業する前は、叔父の治療院で勤めておりまして、叔父は「刺絡」「灸」を非常に多用する治療家です。

 

 

ですので、今の僕しか知らない人にとっては意外かもしれませんが、10年以上前の話ですが、毎日毎日、ほとんどの患者さんに、刺絡とあらゆるお灸(透熱灸、棒灸、灸頭鍼、カマヤミニなどなど)をやっていた時代があります。(笑)

 

 

・・・これらは、今となっては僕の秘密兵器だと思っています。

 

 

ここぞという時に使うと、実に興味深い効果が得られますね。

 

 

鍼灸師たるもの、必ず身に付けるべき技術だと思います。

 

 

 

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「大青竜湯」という薬

2019.04.10

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最近のお話し

 

「牛車腎気丸」という薬

「治打撲一方」という薬

「小青龍湯」という薬

「麻黄湯」という薬

「葛根湯」という薬

「桂枝湯」という薬

 

参照

 

 

ここまで述べてきた、「桂枝湯」「麻黄湯」”桂麻の剤”から派生する方剤は非常に多い。

 

 

また、『傷寒論』以降に著された様々な方剤の書も、結局は『傷寒論』の処方を基本として、いわば「後出しじゃんけん」的に色々なことを言っているものは多い。

 

(・・・言い方が悪いか。(苦笑) ”伝統医学の継承と発展”だね。)

 

 

なので、『傷寒論』は数千年先まで影響を与える、怪物のような本なのだ。

 

 

かつて、とある先生から紹介されて、知る人ぞ知る漢方の大家(故人)の先生にお会いした時、その先生は

 

「もう60年も毎日『傷寒論』を読み続けているが、それでも分からないところがある。。。」

 

と仰っていた。(苦笑)

 

 

そのぐらい、深遠な世界を表現した本なのだ。

 

 

まあ大体、『易経』にせよ『内経』にせよ『論語』にせよ、古代中国の古典というのは、それだからこそ魅力があるんだろう。

 

 

・・・話が逸れたが、麻黄湯の加減方として、東洋学術出版社『中国傷寒論解説 続篇』には、「小青龍湯」「大青竜湯」「葛根湯」の3方剤が紹介されている。

 

 

このうち、「小青龍湯」「葛根湯」についてはすでに語ったので、「大青竜湯」だけ語らないのも、なんか気持ち悪い。。。(^^;)

 

 

・・ということで、今日は「大青竜湯」のお話。

 

 

よく、柴胡剤でも「小柴胡湯」「大柴胡湯」、承気湯類でも「小承気湯」「大承気湯」とあるように、方剤名の前に「大」「小」とついている場合がありますが、

 

当たり前ながら、これは効果の強弱を示すものではありません。(苦笑)

 

 

似ているところがあり、兄弟のようでありながらも、似て非なる方剤を、このように呼び分けています。

 

 

大青竜湯も、出典はもちろん『傷寒論』であり、

 

太陽中風.脉浮緊.發熱惡寒.身疼痛.不汗出而煩躁者.大青龍湯主之.若脉微弱.汗出惡風者.不可服之.服之則厥逆.筋惕肉瞤.此爲逆也.

 

傷寒脉浮緩.身不疼.但重.乍有輕時.無少陰證者.大青龍湯發之.

 

とあり、『金匱要略』では

 

病溢飮者.當發其汗.大青龍湯主之.小青龍湯亦主之.

 

とあります。

 

 

まあ簡単に言うと、大青竜湯の場合は、

 

「表面が冷えて、結果的に浅いところに熱が籠ってしまったもの」

 

に使います。

 

 

大青竜湯の中に入っている「石膏」という生薬は、浅い部分に籠った熱を取るための非常に重要な生薬です。

 

 

ですので、麻黄湯からの加減方をまとめると、

 

麻黄湯の場合は表面を温めて汗をかかす、

 

小青竜湯の場合は表面の冷え+水邪の突き上げ、

 

葛根湯の場合は表面の冷え+うなじのこわばり、

 

大青竜湯で表面の冷え+それによって籠った浅い部分の熱、

 

というバリエーションがあることが分かります。

 

 

鍼の場合も、カゼひきさんを治療する場合はこのように、

 

「どういう体質の人に」

 

「どういう邪気が襲って」

 

「結果的に表面で何が起きていて」

 

「深い部分では何が起きているのか」

 

を考えながら治療していきます。

 

 

なので、漢方薬の考え方と、一緒であり、ある意味応用的です。

 

 

ですので、鍼灸師にとっても、『傷寒論』理解は非常に大事なのです。

 

 

 

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「桂枝湯」という薬

2019.04.09

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最近のお話し

 

「牛車腎気丸」という薬

「治打撲一方」という薬

「小青龍湯」という薬

「麻黄湯」という薬

「葛根湯」という薬

 

参照

 

 

前回書いたように、葛根湯は、桂枝加葛根湯麻黄を加えたもの。

 

 

で、桂枝加葛根湯は、桂枝湯葛根を加えたもの。

 

 

今日は

 

「そんじゃ桂枝湯は?」

 

というお話。

 

 

・・・これこそ、まさに漢方薬の王様みたいな薬です。

 

 

出典はもちろん漢代、『傷寒論』でありまして、『傷寒論』のド頭に出てくるのが桂枝湯です。

 

 

また、北辰会会員の必携の書である『袖珍中医四部経典(※)』にも収録されている、清代の名医、呉鞠通の著書『温病条弁』も、ド頭に出てくる方剤はこの「桂枝湯」なのであります。

 

((※)・・・『黄帝内経素問』『黄帝内経霊枢』『傷寒論』『金匱要略』『温病条弁』がすべて簡体字で収録されている、何とポケットサイズの書。)

 

 

数千年の風雪に耐えてきた名方ですね☆

 

 

『傷寒論』中の桂枝湯掲載の条文を全てここに拾おうと思うと、あまりにも長くなるのでやめますが、これ自体にもとにかく非常に多くの使い方があり、

 

バリエーションも非常に多くある、漢方薬の王様です。

 

 

『金匱要略』にも、栝楼桂枝湯、白虎加桂枝湯、枳実薤白桂枝湯、鳥頭桂枝湯、柴胡桂枝湯と、様々なバリエーションや使い方が紹介されています。

 

 

・・・まあー、それだけ奥が深い薬なので、あまり簡単に語るのは語弊があるのですが、最もポピュラーな使い方は、カゼの初期に使う場合です。

 

 

しかし、麻黄湯とは違って、桂枝湯の場合は汗があります。

 

 

外から邪気が入ったことによって、体の表面における気血の流れのバランスが崩れて、本来出てはいけない汗が、ダラダラと出てしまっている状態です。

 

 

そこで、気血を調和させて、気の流れをよくし、結果的に邪気を散らし、汗を自然に止める薬、という理解が、最もポピュラーでしょう。

 

 

また、以前書いたように、桂枝湯は、服用した後に熱くて薄いおかゆ(熱稀粥)をすすれ、と書いてあることも有名ですね。

 

『傷寒論』の時間指示と電話 参照

 

 

映画『レッドクリフ』で、感染症にかかった兵士に桂枝を煎じて飲ませているシーンがありましたが、三国志の時代から使われる、超有名な方剤です。

 

(映画の中でも孔明が言っていたけど、ああいう重篤な感染症が桂枝湯で治るというワケではないよ。)

 

 

この桂枝湯の様々なバリエーションについても、いつか気が向いたら書きましょうかね。

 

 

 

 

 

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「麻黄湯」という薬

2019.04.07

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最近のお話し

 

「牛車腎気丸」という薬

「治打撲一方」という薬

「小青龍湯」という薬

 

参照

 

 

昨日、小青竜湯に関して書いたので、今日は小青龍湯の元となる、超有名な漢方薬である麻黄湯についても、ついでなんで書いておきます。

 

 

麻黄湯というのも、『傷寒論』に出て来る方剤であります。

 

 

構成生薬は麻黄・杏仁・桂枝・甘草の4種であり、もちろん主薬は麻黄であります。

 

 

麻黄桂枝と並んで、生薬の王様級に有名ですね。

 

 

この二つが入っている方剤を「桂麻の剤」と呼んで、実に様々なバリエーションがあります。

 

 

これの出典である『傷寒論』中には、

 

 

太陽病.頭痛發熱.身疼腰痛.骨節疼痛.惡風無汗而喘者.麻黄湯主之.

 

太陽與陽明合病.喘而胸滿者.不可下.宜麻黄湯

 

太陽病.十日以去.脉浮細而嗜臥者.外已解也.設胸滿脇痛者.與小柴胡湯.脉但浮者.與麻黄湯

 

太陽病.脉浮緊.無汗發熱.身疼痛.八九日不解.表證仍在.此當發其汗.服藥已微除.其人發煩目瞑.劇者必衄.衄乃解.所以然者.陽氣重故也.麻黄湯主之.

 

脉浮者.病在表.可發汗.宜麻黄湯

 

脉浮而數者.可發汗.宜麻黄湯

 

傷寒脉浮緊.不發汗.因致衄者.麻黄湯主之.

 

脉但浮.無餘證者.與麻黄湯.若不尿.腹滿加噦者.不治.麻黄湯

 

陽明病.脉浮.無汗而喘者.發汗則愈.宜麻黄湯

 

脉浮而緊.浮則爲風.緊則爲寒.風則傷衞.寒則傷榮.榮衞倶病.骨節煩疼.可發其汗.宜麻黄湯

 

太陽病.脉浮緊.無汗發熱.身疼痛.八九日不解.表證仍在.當復發汗.服湯已.微除.其人發煩目瞑.劇者必衄.衄乃解.所以然者.陽氣重故也.屬麻黄湯證.

 

太陽病.頭痛發熱.身疼腰痛.骨節疼痛.惡風無汗而喘者.屬麻黄湯證.

 

陽明中風.脉弦浮大而短氣.腹都滿.脇下及心痛.久按之氣不通.鼻乾不得汗.嗜臥.一身及目悉黄.小便難.有潮熱.時時噦.耳前後腫.刺之小差.外不解.過十日.脉續浮者.與小柴胡湯.脉但浮.無餘證者.與麻黄湯.不溺.腹滿加噦者.不治.

 

太陽病.十日以去.脉浮而細.嗜臥者.外已解也.設胸滿脇痛者.與小柴胡湯.脉但浮者.與麻黄湯

 

 

・・・と、至るところの条文に出てきます。(苦笑)

 

(なげえ~~ 読むのつれえ~~ (~_~;))

 

 

・・・まあ要するに、非常に汎用性の高い方剤であり、病が浅いところにあるものだけでなく、少し深いところに入っている場合でも、咳が出ていて、

 

汗が出ていないような場合などには非常に使える方剤であることなどが分かります。

 

 

体表を温め、一気に発汗させて治せるパターンのものをバシッと治す薬、と言えると思います。

 

 

ですので、すでに発汗しているようなタイプの人や、体質的、病理的に熱傾向の人、また、必要な水分(津液)や血液が不足しているような人が迂闊に使うのは危ない、となります。

 

 

因みに、ここでは詳しく述べませんが、『金匱要略』には、射干麻黄湯、厚朴麻黄湯、甘草麻黄湯という、麻黄湯のバリエーションも紹介されています。

 

 

因みにこの麻黄という生薬には、エフェドリンというアルカロイド(天然由来の有機化合物)が含まれています。

 

(単離に成功し、”エフェドリン”と命名したのは明治時代の日本人だとか。)

 

 

エフェドリンは、覚せい剤で有名なメタンフェタミンと分子構造がそっくりで、スポーツ選手などが競技前に服用したらドーピングで失格になっちゃうそうです。(^^;)

 

 

それだけでも、よく効きそうな感じがしますね。(笑)

 

 

しかし、単離できたからと言って、麻黄湯はエフェドリンが効くんだ、と考えるのではなく、麻黄・杏仁・桂枝・甘草の生薬4味からなる「麻黄湯」となっていて初めて、

 

『傷寒論』に書いてあるような効果が期待でき、様々なバリエーションが設定できるのだと思います。

 

 

そこを勘違いしない方がいいと「僕は」思っています。

 

 

 

 

 

 

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「小青龍湯」という薬

2019.04.06

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ここんとこ、

 

「牛車腎気丸」という薬

「治打撲一方」という薬

 

というお話を書きましたので、ついでなんで、最近花粉症でよく使われている「小青龍湯」についても触れておきましょう。

 

 

まあ湯液の話を、私のような実践で使っていない、ズブの素人がするのも実に僭越なんですが、あまりにもこれを処方されていて、しかも効果を感じていないと仰る患者さんを診ることが多いので、

 

僕自身の備忘録的な意味と、彷徨う患者さんのために、この薬に関する基礎的な内容を書いておこうと思います。

 

 

この薬の出典は後漢の時代、あの張仲景が書いた『傷寒論』であります。

 

「張仲景(ちょうちゅうけい)」という人物

墓マイラー 27(番外編) 張仲景先生

『傷寒論(しょうかんろん)』という本         参照

 

 

小青龍湯は、有名な麻黄湯という漢方薬の加減方と言われます。

 

(麻黄湯も傷寒論に出てくる薬です。)

 

 

麻黄湯も最近、

 

「インフルエンザに効く!」

 

とか、

 

「キムタクが常備してる!」

 

とかいわれて、非常に有名です。

 

 

これについても、後で簡単にまとめておきましょう。

 

 

この麻黄湯は、よくカゼのひき始めに使われます。

 

 

小青龍湯は、もともとはカゼのひき始めの状態が改善せずに、なおかつ「水邪」が存在する時に使う薬、と、『傷寒論』に定義されています。

 

 

『傷寒論』内の条文では

 

傷寒表不解.心下有水氣.乾嘔發熱而欬.或渇.或利.或噎.或小便不利.少腹滿.或喘者.小青龍湯主之.

 

傷寒心下有水氣.欬而微喘.發熱不渇.服湯已.渇者.此寒去欲解也.小青龍湯主之.

 

傷寒表不解.心下有水氣.乾嘔發熱而欬.或渇.或利.或噎.或小便不利.少腹滿.或喘者.宜小青龍湯.

 

とあり、また『金匱要略』には

 

病溢飮者.當發其汗.大青龍湯主之.小青龍湯亦主之.

 

欬逆倚息不得臥.小青龍湯主之.

 

婦人吐涎沫.醫反下之.心下即痞.當先治其吐涎沫.小青龍湯主之.

 

とも書いてあります。

 

 

漢方薬の専門家でもない僕が、あまり難しい解説をしてもしょうがないし、そもそも出来ないので、要はこれらを簡単に言うと、表面に寒邪があって、

 

なおかつ心下(みぞおち)に水邪がつっかえてる場合に使う方剤であって、これとは違ったメカニズムで症状の出ている花粉症には効かない、

 

あるいは害になりかねない、ということになりますね。

 

 

また、たまたま合っていたとしても、この薬を服用して、表邪の存在、心下の水気の存在が除去、改善された後になっても、この薬を継続して服用していたら、

 

今度はまた違った病変に結び付く可能性もあります。 

 

 

漢方薬はサプリメントなどではなく薬なのであり、素人考えでドラッグストアで買ってきてメチャクチャな使い方をしたりするのは、厳に気を付けたいですね。

 

 

 

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「治打撲一方」という薬

2019.04.05

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昨日、「牛車腎気丸」という薬という記事を書きました。

 

 

その時に、もう一種類、「治打撲一方」という薬の話にもなりました。

 

 

これはどうか。

 

 

これは実は、以前紹介した江戸期の医家、香川修庵先生(1683-1755)の創方だそうです。

 

香川修庵という人物

墓マイラー 9      参照

 

 

ですが、真柳誠先生の研究によれば、「治打撲一方」という”名前で”文献に登場するのは、あの幕末から明治の漢方医、浅田宗伯先生(1815-1894)の

 

『勿誤薬室方函口訣(ふつごやくしつほうかんくけつ)』だそうで、ということは、この薬の名付け親は浅田宗伯になるそうです。

 

浅田宗伯という人物

墓マイラー 18 浅田宗伯先生    参照

 

 

・・・まあ、個人的にはどっちでもいいんですが。(゚∀゚)

 

 

この薬の中に含まれる川骨(せんこつ)、樸樕(ぼくそく)という、活血化瘀の効果を持つ生薬は、呼び名からして日本独特であり、中国の処方に含まれることはないそうで、

 

そういう意味でもまさに日本製の漢方薬だそうです。

 

(もともとは戦国時代に傷や怪我を治療する秘伝の薬だったのを、香川先生がまとめたんだとか。)

 

(中国では川骨のことは萍蓬(ヘイホウ、コウホネ、カワホネ)というらしいが、『中医臨床のための中薬学』には載っていませんでした。。)

 

 

「治打撲一方」は、昭和になって、一貫堂の山本巌先生が紹介したことで、よく使われるようになった経緯があるそうです。

 

(今ではツムラのエキス剤になっています。)

 

 

これは中医学では血の流れを調える「理血剤」のグループであり、その中でも停滞した瘀血を取る「活血祛瘀剤」のグループで、その名の通り、

 

打撲や捻挫を治療する薬なんですが、応用的に骨折の後遺症などにも使われるようです。

 

 

さらに応用的には、経絡経筋が冷えて、瘀血が停滞した痛みなんかにも使われるそうです。

 

 

・・・ということは、外傷はともかくとして、気滞血瘀や瘀血性の疼痛に応用するには、

 

「経絡経筋に冷えがあり、気が停滞し、血も停滞している」

 

ということが診断できないとマズい、ということになります。

 

 

また、これを適切に運用するには、同じグループの有名な薬であり、現代でもよく使われる

 

「桃核承気湯」「血府逐瘀湯」「桂枝茯苓丸」「大黄䗪蟲丸」「温経湯」「抵当湯」

 

なんかとの使い分けができる能力が要求されるはずです。

 

 

まあ、治打撲一方に限って言えば、熱邪や湿邪の関与する痛みだったり、気虚や陽虚が関与するものに使ったらドボン、ということでしょうか。

 

 

漢方薬というのは、もちろんながら、東洋医学の生命観、疾病観に立脚して考案されたものです。

 

 

ここを無視して使用されているような現実があることは、実に残念に感じます。

 

 

 

 

 

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