東洋医学 伝統鍼灸 清明院

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患者さんの声(20代女性 治らないカゼ)

2016.04.12

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「患者さんの声」をいただきましたので紹介します。

 

 

20代 女性 

 

【症状】1か月以上治らないカゼ症状(咳、痰、微熱、悪寒、下痢)

 

【既往歴】十二指腸潰瘍、生理痛、不正出血

 

 

 

最初、清明院に行ったきっかけは1ヶ月以上風邪をこじらせたことでした。
どこの病院に行っても、待ち時間は長いのに診察は1分程度・・・

 

全然治らず、不安な私に、鍼灸の勉強をしている弟が、ここしかない!と勧めてくれて、清明院に行きました。

病院嫌いで注射も大嫌いな私が、鍼なんて無理!と思いましたが、そのときは藁にもすがる思いでした。

 

4枚にわたる問診票
1時間以上の問診
そして1時間の治療

 

とにかくたっぷり聞かれて、たっぷり話しました。

 

正直、記憶の中で薄れている部分も多いところまで聞かれて、逆に普段の自分の生活と向き合う時間にもなったような気がします。

 

最初は緊張してばかりでしたが、先生がとても話しやすく、たくさん聞いてくださるので、だんだん打ち解けるようになり、

 

自分の体をとことん診て、治してもらえる!と信じて通うようになりました。

 

最初は週2回ずつ通いました。
治らなかったカゼが、1週間くらいで咳は治り、その後、すぐに痰も絡まなくなりました。

お腹はなかなか治らなかったのですが、先生を信じて通い続け、そこから1ヶ月弱くらいで良くなりました。

 

それからは、症状以外の体調を整えてもらい、できるだけ健康体になるように、先生に言われるがまま通っています。

 

体のちょっとした異常から、病気の芸能人のニュースなどで精神的にも不安になったりすることもあり、その度に先生には診ていただいて治療してもらっています。

ちょっとでも痛い、変な感じを伝えると先生は親身に診てくださり、心配なければ心配ない!と言ってくださるので、

 

とりあえず何かあったら相談してみようといつも思っています。

 

去年、移転リニューアルしてから完全個室になり、他の患者さんたちに自分の状況が聞こえなくなったので、話しやすくなりました。

 

今ではかなり元気になったので、通う頻度も減りましたが、ここなら安心!という病院ができただけ心強いです。

 

鍼灸院や東洋医学はマイナーで足を踏み出しにくいとは思いますが、病院嫌いの私でも、すすんで行く病院です!

 

ぜひ皆さんに一度行っていただきたいです!

 

 

 

【清明院からのコメント】


本症例は、初診がH27年の6月、
ある鍼灸学生さんからの紹介でした。

この症例は、発症当初、一般的なカゼ症状から始まり、病院で投薬治療を行い、一定の改善を見るも、それ以上の効果に関してはお手上げ状態になっていた症例です。

 

こういう症例も、意外と多く診ます。


西洋医学の病院が処方するかぜ薬(西洋薬)というのは、基本的にはカゼに伴って起こる諸々の症状を、表面的に緩和するものしかなく、

 

薬を飲んだら症状は楽になったけど、かえって経過は長引いた、という結果になってしまう患者さんが少なくありません。

 

また、医師を対象に取ったアンケートで、

 

「あなた自身がカゼを引いた時、薬を飲みますか??」

 

という問いに、飲むと答えた医師は極端に少なかった、という有名な話もあります。

 

http://biz-journal.jp/2015/09/post_11561.html

 

(因みに私の知り合いの、西洋医学バリバリのドクターも、そう言っていました。)

 

そういった理由から、近年、カゼを根本から治療しようということでなのか、「漢方薬」を処方するドクターも増えていますが、

 

私の知人の漢方薬専門の薬剤師の先生からは、皆さん口を揃えて、

 

「知ったかぶりの、全然デタラメな東洋医学の知識でもって、患者さんにまったく的外れな漢方薬を処方するドクターが多過ぎる!」

 

と聞きます。

 

これらは、現代医療の由々しき問題の一つですね。

 

大変嘆かわしい現実だと思います。

 

・・・でまあ、こういう状態になっている患者さんに、清明院の鍼は良く効きます。(笑)

 

この患者さんも、初診時、今回のカゼも関与した「肝脾同病(肝気逆、湿熱)」と証を立て、治療を開始すると、一回の治療で非常に大きな効果が得られました。

 

その後も順調に経過し、下痢症状のみ、若干ぶり返すことがありましたが、初診から1カ月弱、計7回の治療で、全症状消失しました。

 

まずまず、鍼がよく効いた症例と言っていいと思います。

 

このように、カゼなどの急性の軽症の疾患であっても、間違った治療、対応を重ねることで、治りにくくなり、ついにはもともと体質的に弱い部分を、

 

さらに弱めてしまう結果になってしまうことは、少なくありません。

 

当然それが大病、重病に繋がる可能性もあります。

 

こういう経験をした患者さんは、その後は自分の身に何かあると、すぐに鍼に診せに来るようになります。

 

(笑・・・体で覚えるワケです。)

 

 この患者さんも、現在では清明院のすぐ近くの会社に転勤されたこともあって、1、2週に1回、健康の維持増進を目的に、

 

通院を継続されております。

 

「カゼに鍼が効く」という事実は、現代日本の国民にはほとんど知られていないと思います。

 

でも実際に効くのです。

 

東洋医学では、数千年前から当たり前に、カゼを診療してきました。

 

何かあったら、早い段階で清明院に鍼に来ることをお勧めします。

 

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経穴が先か、経絡が先か

2015.11.09

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11.22に東京衛生学園にて経穴解説の話をしますが、今日あたりからそれのイントロを書いていこうと思っています。

 

まず、東洋医学が大事にしているこの”経穴”なるものが、そもそもどうやって発見され、定義づけられていったのか、という根本的な問題を考えてみたいと思います。

 

1971年、中国の湖南省というところで紀元前の偉い人のお墓が発見されました。

 


それを馬王堆漢墓(まおうたいかんぼ)と言います。

 

 


これは紀元前186年、前漢の時代の偉い人の奥さんの墓です。

 


なんとここには、”湿屍”といって、湿った状態のミイラが入っていたことで、世界中を驚かせました。

(う~ん、若干ウソ臭い情報ですけどね。。。)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A6%AC%E7%8E%8B%E5%A0%86%E6%BC%A2%E5%A2%93

↑↑wikipedia「馬王堆漢墓」へのリンク

 

 

・・・まあここに、東洋医学に関する文献も含まれており、この文献が、我々がバイブルにしている『黄帝内経』よりも前の時代のものなのではないかと言われております。

(因みに『陰陽十一脈灸経』『足臂十一脈灸経』という文献です。)

 

ここには、経絡らしきものが描かれているのですが、我々が知っている経絡のように、それぞれが繋がっていません。

 

経穴も描かれておりません。

 

それを見れば、歴史的には、先に経絡が出来て、その後に経穴が定義されていったのかな、と思えます。

 


でも、1991年に、ヨーロッパのアルプス山脈で、今から5200年前の氷の中から発見されたと言われる「アイスマン」の体には、経穴に相当する部位への治療の痕跡らしきものが残っていたりと、

 

まだまだ今後、新事実が発見されるかもしれませんね。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%83%B3

 

↑↑wikipedia「アイスマン」へのリンク

 

・・・ま、経絡が先か、経穴が先か、興味ない訳じゃないけど、臨床家にとっては、ややどーでもいい問題ですね。(爆)

 

要は病人に対して、使えりゃいい。

 

治りゃいい。

 

 

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患者さんの声(30代女性 前置胎盤、再生不良性貧血)

2015.10.03

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「患者さんの声」をいただきましたので紹介します。

(さらに…)

「尺膚診」について 7

2015.09.17

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これまでのお話

 


「尺膚診(しゃくふしん)」について 
「尺膚診」について 2                     
「尺膚診」について 3          
「尺膚診」について 4

「尺膚診」について 5   
「尺膚診」について 6  
   参照

 


では続きいきます!

 

 

◆『黄帝内経霊枢』邪客萹(71)における尺膚診の記載

 

今日は霊枢の71篇目、邪客萹(じゃかくへん)です。

 

このタイトルも読んで字の如くで、

”人体に邪気が侵襲してきた時の病態と治療法”

について論じられてる篇です。

 

ここに、

その尺をもって、肌肉が堅いか脆いかを察して、大小、滑渋、寒温、燥湿を診て、目で五色を診て、

それらを総合して、五臓の異常を知り、死生を診断するのです。

と、出てきます。

 


まあ、この一文には、実は長々とした前段がありまして、それを踏まえた上で、究極的には、上記のようなことが出来れば、

治る病か治らない病か、診断がつくよ、ということを述べております。

(もはやメンド臭いから端折りました。(笑)興味がある人は原文にあたってください。)

 

・・・まあ、ここでも、診断のかなり優位なポジションに、尺膚診が置かれていることが分かります。

 

続く

 

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「尺膚診」について 2

2015.09.10

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前回のお話

「尺膚診(しゃくふしん)」について 参照

 

では続きいきます!

 

◆『史記 扁鵲倉公列伝』における尺膚診の記載

 

中国に、司馬遷(しばせん)という人が書いた『史記』という、超有名な書物があります。

 

東洋医学、東洋哲学をやるものなら、聞いたことのない人はいないような書物です。

 

wikipediaによれば、これは、前漢(BC206~8)の武帝(7代目の皇帝)の時代に、司馬遷(BC145頃~87頃)という歴史家によって編纂された、中国の歴史書だそうで、

 

中国が正しいと認めた歴史書(正史)の第一に数えられ、計52万6千5百字もの大著で、二十四史(にじゅうしし)(中国の王朝の正史24書のこと)のひとつで、

『漢書』
と並んで最高の評価を得ているそうです。

 


司馬遷
自身が名付けた書名は『太史公書』(たいしこうしょ)なんだそうですが、後世に『史記』と呼ばれるようになると、

これが一般的な書名とされるようになったそうです。

 


「本紀」12巻、「表」10巻、「書」8巻、「世家」30巻、「列伝」70巻から成る、紀伝体(上位に位置づけられた2項目、「本」と「列」に由来する)の歴史書で、

叙述範囲は伝説上の五帝の一人である黄帝から、前漢の武帝までだそうです。

(この”黄帝”は、我々東洋医学者のバイブルである『黄帝内経』の黄帝のことです。)

 

このような記述の仕方は、その後の中国の歴史書、正史記述の雛形となっていて、この書は、単に歴史的価値だけではなく、その文学的価値も、高く評価されているそうで、

 

日本でも古くから読まれており、元号の出典として12回も採用されているそうです。

 


 

・・・とまあこのような、スゴイ本に、我々が日々やっている、”尺膚診”の記載が出てきます。

 


『史記』の中の”扁鵲倉公列伝”というところの中の、”倉公伝”というところの中の、
”診藉(言わばカルテ集)”の中に、

 

 

「臨菑氾里女子薄吾病甚.衆醫皆以爲寒熱篤.當死.不治.

 

臣意診其脉曰.蟯瘕.蟯瘕爲病.腹大.上膚黄麤.循之戚戚然.

臣意飮以芫華一撮.即出蟯可數升.病已.三十日如故.

 

病蟯得之於寒濕.寒濕氣宛篤不發.化爲蠱.臣意所以知薄吾病者.

切其脉.循其尺.其尺索刺麤.而毛美奉髮.是蟲氣也.

其色澤者.中藏無邪氣及重病.」

 

という文章が出てきます。

 

これを竹下なりに、端折って端折って、翻訳すると・・・、

 


今でいう山東省の近くで、女の子が病気になった。

周りの医者は重篤な病で、もう助からないと言っていた。

これに対して、僕(倉公)は脈を診て、回虫の病と判断して、一つまみの薬草を飲ませた。

すると、すぐにたくさんの回虫を吐き出して、治った。

回虫の病は、腹が大きく張って、元気がなくなり、皮膚が荒くなる病気。

30日で、元通り元気になった!

この病気の診断は、脈と、前腕の皮膚(尺)の状態を診ることによって分かった。


回虫の病は寒湿の邪気によってかかってしまう。

寒湿の邪気が発散できれば治るけど、発散できないと重症化する。

この患者さんは、前腕の皮膚は荒かったが、毛や髪は綺麗。

その光沢からして、五臓に邪気は入っておらず、重病ではないと判断したわけさー。

(訳が間違ってたら、誰か教えてー(*‘∀‘))

 


まあ、これが尺膚診の出典の一つ。

 

古来より、脈診と並んで、大変重視されていたことが分かります。

 

続く

 

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「平補平瀉」という考え方

2015.08.19

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鍼灸治療の治療法に、「平補平瀉法(へいほへいしゃほう)」という考え方がある。

 


僕は個人的には、非常に好きな治療だ。

 

正気(言わば病と闘う力)を経穴に集め、結果的に気血の流れを良くし、治る力を高めるのが補法(ほほう)。

 

邪気(言わば病の原因となる、余分な気)が吹き溜まっている経穴の気を散らし、結果的に気血の流れを良くし、治る力を高めるのが瀉法(しゃほう)

 


補瀉(ほしゃ) を含む記事 参照

 

この、補法と瀉法を、一つの経穴に同時にやるのが平補平瀉法

 


ある経穴に、正気の弱りと、邪気の停滞が、同時に表現されている場合がある。

 

なおかつ、その患者さんの病態も、正気の弱りに加えて、邪気の停滞も無視できないような病態である場合。

 

こういう時は、平補平瀉法でサクッと治すのが一番スマート、かつエレガントなんだが、その際の取穴といい、経穴に対する作法、鍼の操作といい、簡単ではない。

 

初心者、初学者はやらない方がいい。

 

立秋以降、これの応用を八脈交会八穴に施す機会が、非常に多い。

 


秋燥の気 参照

 

虚実錯雑、寒熱錯雑、燥湿錯雑、肺は嬌臓、半表半裏、左肝右肺、肝か胆か。

虚実 を含む記事
寒熱 を含む記事
燥邪 を含む記事
湿邪 を含む記事
「肺」って何ですか?(その12)
半表半裏 を含む記事
「左肝右肺」に関して 7
「肝」って何ですか?(その13)
「胆」って何ですか?(その12)      参照

 

 

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初心に帰る

2015.07.27

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約1年半ぶりに、とある往診患者さんご夫妻のもとを訪れた。

初回の往診依頼、往診事業部のスタッフに任せていた患者さん。

その後、色々あって、奥様の状態が悪いとの報告を受けた。

そして、その奥様を、90歳過ぎた御主人が介護しておられる。

現代の日本で非常に問題になっている、老老介護の、実に厳しい現場だ。

伺ってみると、奥様、確かにあまり良くない状況。

正直、積極的な治療は非常に難しい段階。

喋るのもしんどいご様子なので、御主人から慎重に現状に関する話を聞いていると、奥様が弱々しい声で、御主人に対して、

「先生に椅子をお出ししてあげて・・・。」

と仰った。

その気遣いに、感動した。

シビレたね。

あの状態になっても、他人にそういう気が使えるとは。

患者さんから学ぶ。

御主人の状態も、あまりいいとは言えない。

湿痰や気鬱が、”化火”寸前、という感じ。

これは危ない。

未然に防いでおく必要がある。

ご夫妻ともに、非常にギリギリの判断が要求される。

色々と、初心を思い出す、素晴らしい現場だった。

思えば、20代の前半から、こういう現場を、毎日毎日、何とかせねばと、必死で診てきた。

それが今の私の学術の、血肉になっている。

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牛蒡茶の効能

2015.06.30

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今日、腎透析中の患者さんがこんなことを言いました。

「先生、牛蒡茶(ごぼうちゃ)を飲むようにしたら便通が調子いいです!」

と。

・・・ほほー。

牛蒡茶というのは、ちょっと前に

”牛蒡茶若返りダイエット”

なんつって、例によって女性誌なんかで紹介されて、少しばかり話題になったことがあります。

これは、牛蒡をささがきにして、乾煎りして煮出したものです。

食品としてよく使う、牛蒡の根っこの部分は、生薬名では牛蒡根(ごぼうこん)と呼ばれ、その効能は

「祛风热,消肿毒治风毒面肿(風熱邪をとって、腫れや毒、特に顔の腫れをとる)」

ということになっております。

発汗させたり、利尿させることで、毒素を排出したりします。

漢方薬では牛蒡の種の方がポピュラーで、

”牛蒡子(ごぼうし)”

と呼んで、風邪や熱邪や湿痰をとったり、大小便の出が悪い時などに、よく用います。

五臓で言うと肺と胃に作用し、邪気を発散したり、冷やし、降す作用も持っています。

病気で言えば咽痛とか乳腺炎、皮膚炎なんかに応用されます。

(もちろん、本気でそういったものを治すなら自己判断ではなく、東洋医学のプロに処方してもらいましょうね。)

 

参考 『中医臨床のための中薬学』


思いがけず、治療のヒントになりました。


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「四逆散」というお薬 7

2015.06.14

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これまでのお話

 

「四逆散」というお薬
「四逆散」というお薬 2  
「四逆散」というお薬 3

「四逆散」というお薬 4
「四逆散」というお薬 5
「四逆散」というお薬 6    参照

 

 

さて本日も、また別の先生のご見解をみてみましょう。

 


今日は荒木性次(あらきしょうじ 1896-1973)先生です。

 

因みに号は荒木卜庵(あらきぼくあん)先生とも言います。

(この呼び名の方が有名かもしれません。)

この先生も、昭和を生きた、非常に有名な先生です。

 


実は私は、この先生の流れをくんだ先生と、ちょっとしたご縁がありまして、今ではその先生の漢方薬局に、清明院の患者さんをよく紹介させていただく間柄だったりします。(笑)

 

また、僕が尊敬している鍼の先輩も、この先生の薫陶を受けた先生から『傷寒論』の基本を学んだそうです。

 

そんなワケで、やや遠いけど、不思議な御縁を感じる荒木先生の『方術説話』に、このように書いてあります。

 


「四逆(四肢逆冷)する者には3通りあります。

1つ目は表面の陽気が弱っているもの、

2つ目は陽気が内(裏)に籠っちゃって外に伸びないもの、

3つ目は表裏の中間につっかえて、陽気が伸びないものです。

四逆散の場合は3つ目のパターンです。」

と述べ(1パターン加えた!)、そして、その籠った熱のことを”少陰の熱”と表現し、

「それ(少陰の熱)が肺に影響すれば、そこに水気が集まり咳となり、心に影響すれば動悸、肺腎両方に影響すれば小便不利、

腹中に影響すれば腹痛になり、腸中に影響すれば下痢となり、もともと腸の動きが悪い人であれば渋り腹になる。」

と述べています。

 


そして、上記のような診立てで、四逆散を使って、効果がイマイチの場合に、四逆散にさらにどんな生薬を加えたらいいかについても、丁寧に解説してくれております。

 

そして最後に、

「本章は少陰病血虚裏熱より四逆を生じたものの治し方を述べた章です。」

と締めくくっています。

 


なるほど、「表と裏の間に」籠る、ね。

 


裏に籠る、というのとはニュアンスが明確に違うのです。

(起こる現象も違う。)

 

咳や動悸など、上に出たり、下痢や腹痛、渋り腹など、下に出たりすることの、上手い説明になっていると思います。

 

そして”少陰の熱”とか、”少陰病血虚裏熱”という表現、これもサラッと言うけど、奥の深い説明だと思います。

 


他の先生のように、肝鬱+湿邪、とか、肝鬱+水邪とか脾胃の虚、とかで説明するのではなく、あくまでも

”熱(通じなくなった陽気)がどこに影響するか、そして、そこに集まる水気”

で論じる。

 


一つの立派なお立場だと思います。

 


・・・いやー、みんなスゲエなー (゜o゜)

 

「四逆散」というお薬 8  に続く

 

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「四逆散」というお薬 5

2015.06.12

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これまでのお話

 


「四逆散」というお薬

「四逆散」というお薬 2  
「四逆散」というお薬 3

「四逆散」というお薬 4    参照

 


では続きいきます!

 

今日もまた、違う先生の見解を見てみましょう。

 


近代の有名な漢方家の一人である奥田謙蔵先生(1884-1961)『傷寒論講義』には、

 


「四逆散証のメカニズムは、もともと湿邪を持っている人が病に侵されて熱を生じ、その熱が内に籠って、気が四肢に達さないので四肢が冷える。

だから、四逆散の場合の下痢は、臭いの無い水様の下痢ではなく、脈が弱々しくて途切れそうということもない。

咳、動悸、小便出にくい、腹痛、下痢、渋り腹などの症状は、うちに水邪が停滞し、上下に動揺していることから起こる。

陽気が弱って四肢が冷える四逆湯とは真逆だよ。」

と書いてあります。

(抜粋要約 by 竹下)

 

奥田謙蔵先生は、もともと四国(徳島)の先生で、吉益流の古方派の考え方をベースにした先生です。


奥田先生は、傷寒論を非常に細かく読み込んだ先生として有名です。

 

8歳年上に湯本求真(1876-1941)先生という、超ビッグな先生がおりまして、この湯本先生と、ずいぶん親しかったようです。

湯本求真先生については、和田啓十郎先生とともに、特別な人物なんで、いずれ書きましょう。)

 


まあ、この先生のように、明治政府が叩き潰した漢方医学の流れを、どうにかこうにか途絶えさせずに継続させた功労者たちが、歴史の陰にはちゃーんとおります。

 


東洋医学が古臭い、迷信めいたものと言われてバカにされ、国にまで保護、重用されない立場となり、一番厳しい時代だったはずです。

 

その時代の先生たちが、現場で、肌感覚として感じていたであろう、悔しさとか、そういう思いを想像すると、心、動かされますね。

 


 

・・・まあともかく、ここでは、四逆散に関して、奥田先生は四逆散証になる人がもともと持っている「湿邪」に着眼しているようです。

 

面白い、そして重要な観点だと思います。

 

体質素因としての湿邪が無いと、同じように肝鬱と言っても、四逆散のような形をとりにくい、という指摘でしょう。

 

「四逆散」というお薬 6   に続く

 

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