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2019.01.18
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世の中、インフル狂騒曲ですな。
テレビでもインフルインフル・・・。
ラジオでもインフルインフル・・・。
ネットでもインフルインフル・・・。
そしてお決まりの「予防接種って、意味あるんですか?」っていう、毎年恒例の質問も乱れ飛ぶ。(苦笑)
僕は今年の正月、狭い個室居酒屋で、おそらくインフルに罹患済みであったろう友人二人(飲んでいる時はじゃっかんカゼ気味で、二人とも翌日高熱で寝込んだ)と、
近い距離で長時間飲んでいましたが、まったく罹患しませんでした。(゚∀゚)
患者さんでも、
「インフルエンザなので、2、3日寝て、動けるようになったら治療に行きます。」
というキャンセルの電話をくれる人もいれば、
「インフルエンザなんですけど、診てもらえますか?」
という人もいます。(笑)
東洋医学で、鍼灸でやってくれと言われれば、僕はやります。
インフルエンザでも、あまりにも毒性が強いようなものであれば東洋医学的には「疫癘の邪気」という扱いになるんでしょうけども、毎年巷で流行する、
タミフルやリレンザやイナビルやゾフルーザやラピアクタが効いて、2、3日で回復するようなものであれば、通常の感冒と同じように、『傷寒論』『温病学』の考え方で対応し、
うまくいったケースはこれまでにも数多く経験しています。
基本的な六経弁証、衛気営血弁証、三焦弁証が大事ですね。
ただ、通常の風寒や風熱と比較すると、やはり邪気の勢いが強いのは強いようで、数脈が緩まない、あるいは緩んでもすぐに戻るものは要注意だと思います。
「感染症に鍼灸は効かない!」と、頭ごなしに言われますが、本来は西洋医学とも積極的に協力できるところだと思うんですがね。。。
まあもちろん、こういうものを扱えるだけの学術がないのに触ったら、危険でしかないのは言うまでもないですが。
『傷寒論』『温病学』を読んでおり、六経弁証、衛気営血弁証、三焦弁証について理解し、これを鍼灸で臨床応用出来る鍼灸師が、日本にどれくらいいるかを考えたら、
仕方ないことかもしれませんね。
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2018.12.22
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すでにFBの方では告知しましたが、FBをやってない人のために、ブログの方でも告知しておきます!(^^)
(SNSボケしてはいけない☆)
来年、2019年の2.10~11の二日間、毎年恒例の(一社)北辰会主催、宿泊型冬季大研修会「順雪会(じゅんせつえ)」が行われます!!
このイベントについては、このブログでも毎年書いていますが、もともとは北辰会関東支部の創始者、初代支部長である中村順一先生(故人)を偲ぶ会として、
中村先生の地元である群馬の温泉旅館にて始まり、2019年で21回目を数えます。
現在では、中村先生のことを知らない会員も増え、北辰会自体の規模(参加人数)も拡大し、北辰会の公式な「冬季研修会」として、本部の会員の先生方も来やすいようにと、
場所を熱海に移し、生まれ変わっています。
天国の中村先生も、きっと喜んでいることと思います。
今回のテーマは、今年の日本伝統鍼灸学会、年末の関東支部代表講演から続く「打鍼」がメインテーマであります!!
そして、今回は藤本蓮風会長による特別講演
「なぜ北辰会を作ったのか」
もご講演いただきます!!
今や、関西でも貴重な、蓮風先生の講演を、関東で聴けるのはこの「順雪会」のみです!!
しかも講演テーマも、永久保存版ですね。
近代の日本鍼灸界に多大なる影響を与え続ける北辰会の、創始者自身が語る誕生秘話、これは歴史の1ページです。
間違いなく必聴です!!(=゚ω゚)ノ
・・・そして今回は私も、「講師登用試験解説」という、重要な内容に関して喋ります。
北辰会では、会員の先生方のステップアップとして、「講師登用試験」というのを行っています。
これには実技とペーパー、両方あります。
ぺーパーの方の試験は、基礎理論を問う試験(A試験)と、実際の症例を弁証論治する、実践的な記述試験(B試験)を行っていますが、去年は私が作成しましたので、出題者である私が解説いたします。
北辰会は鮮やかな体表観察を行いますが、こういう基礎理論があって、はじめて鮮やかな体表観察が活きてきます。
どちらも、見逃せませんよ~~(゚∀゚)
なお、本部からも藤本新風代表、油谷真空先生、山本克仁先生など、超絶技巧の先生方がたくさん見え、実技指導を受けるチャンスがあります。
申し込みは今月一杯!!
まだの人は急いでくださいね~~!!!
ポスターはこちら!!
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2018.12.19
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さて本日で、東洋鍼灸専門学校での年内の講義が終了しました!!
・・・いやー、あっという間だ。
2018年最後に相応しく、今日の話の内容は「弁証問診 総論」。
我々北辰会方式は、初診時における、1時間以上かけた詳細な問診が、その特長の一つ。
患者さんからは、
「こんなに丁寧に話を聞いてくれたことはなかった!」
とか、
「こんなに自分の生活や体の状態と向き合ったことはなかった!」
とか言われ、非常に好評です。
治療者側の、弁証問診において重要な態度は言うまでもなく「傾聴」なのですが、これ、飲み屋で愚痴を聞いているのとは違います。(笑)
東洋医学的に、正確に弁証論治を行うために、診断学上有益な情報を、限られた時間の中で患者さんから上手に聴取するのです。
(しかも筆記で纏めながら、です。)
これはなかなかの技術であり、清明院の新人研修システムの中でも、けっこう苦戦するスタッフが多いかもしれません。
(スタッフによっては患者さんデビューするのに1年くらいかかるものもいます。)
でもこれなくして、北辰会方式ナシです。
先日の講演会でも、新風先生はエキスパート中のエキスパートですから、簡単な問診と体表観察だけでも、即興であれだけの効果を出すことが出来ますが、
あれは初学者~中級者レベルでは無理です。
あれに近いことをやろうと思ったら、キチッと一つ一つ基本的なことを問診し、それに基づいて丁寧に体表観察し、よくよく考えた上で治療にあたることで、
効果を挙げることが出来ます。
体表観察に入る前の正確な弁証問診、これは非常に重要です。
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2018.12.06
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昨日は恒例の秘密会合、「妖怪大集合」の飲み会で、バタバタしててブログ更新を忘れました!!<m(__)m>
(・・・ま、たまにはそういうこともある☆)
12.2の日曜日は、大阪で行われた(一社)北辰会スタンダードコースに参加してきました!!
本部では年内最後の定例会です。
午前中は実技練習。
皆さん実に真剣に取り組んでいました。
支部も負けていられませんね。(^^)
午後は大阪の古田地天堂鍼灸院院長、古田久明先生の「正邪弁証」。
「正邪弁証」は、中医学にはない、WHOにもない、世界で唯一、(一社)北辰会が独自に提唱する弁証法です。
「八綱弁証」、つまり病の”表裏寒熱虚実”の中の”虚実”について、極めて厳密に弁証する北辰会ならではの弁証法ですし、「証」よりもむしろ「病因病理」に、
弁証論治の本質を置く北辰会ならではの、非常に重要な考え方です。
古田先生の優しいキャラと、見やすいスライドで、大変理解し易かったんじゃないかと思います。
最後は奈良の風胤堂院長、油谷真空先生による「小児科学概論」。
実は北辰会で「小児科」に特化した講義が行われるのは10年以上ぶりくらいらしいです。
油谷先生は4児の父、油谷先生の鍼灸院である風胤堂には、キッズルームまであります。(^^)
大変分かりやすい、基礎的な内容で、来年は臨床編も講義して下さるそうで、非常に楽しみです。
そして終了後は忘年会。
相変わらず本部の忘年会は出し物のキレが素晴らしかったですね。(笑)
・・・さーて、2018年も残すは12.16、東京衛生学園の大イベントです。
すでに席はパンパンらしいけど、強引に入れれば入れるんじゃないかと思うので(笑)、まだ申し込んでない人はダメもとでお問い合わせを!!
やる方としてはすし詰めの会場でやりたい☆
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2018.11.27
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11.24、25と、大阪の茨木市、立命館大学で行われた日本伝統鍼灸学会に参加してきました!!
今回は色々と見逃せない企画や講義があったので、珍しく土曜の診療を休ませていただき、土日の二日間、朝から晩まで参加させていただきました!!
土曜しか来れない患者さん達、本当に申し訳なかったです!<m(__)m><m(__)m>
今回学んだことを、必ず治療に活かせるように精進しますので、何卒ご容赦ください。
今回は色々と感想があるので、何回かに分けて書こうと思います。
まず、1日目の朝は一般口演。
土曜の朝一なのに、けっこう人が入っているなあ、という印象。
(一社)北辰会から、奥村裕一先生、油谷真空先生のご発表がありました。
学術部長である奥村裕一先生は、数十年前から日本伝統鍼灸の打鍼、腹診に注目し、その臨床、研究を重ねて来られました。
奥村先生の研究はまだまだ続くと思いますが、今回も素晴らしい内容でした。
ただ、抄録と、僅か7分でダーッと聴いただけでは、よく理解するのが非常に大変な、重厚な内容なので、ぜひ論文化してほしいと、夜の飲み会で何度もお願いしてきました。
(苦笑・・・それでも、なるかどうか分からないけど。)
油谷先生の発表は、北辰会の実際の臨床における打鍼の活用の実態に関する発表。
北辰会の講師の先生を中心に、約80症例を集積し、分析した発表でした。
キッチリと中医学的に弁証した上で、打鍼「のみ」の治療で、一回の治療を終わらせている北辰会だからこそできた発表だったと思います。
打鍼以外にもあれこれやってたら、その効果が本当に打鍼の効果かどうか、分かりません。
しかも、実験室で被検者にやるのではなく、実際の患者さんにやって、効果が出て、良い評判が立つくらいの代物でなければ、現場での利用価値はナシ、ということになります。
まあ僕が言うと手前ミソになりますが、上記の二つを満たした、80もの症例とその内容分析がパッと出せるのは、北辰会以外に無いでしょう。
症例集積に関しては、もちろん今後は、統計学的な計算方法だったり、もっと詳細な研究方法、検討方法があると思いますので、そこは今後の課題でしょう。
(ここは研究者と組んだ方が早いかな、という気もしました。)
後の二つの一般口演も、無分流打鍼継承会の関信之先生と、いやしの道の大浦慈観先生によるご発表で、関先生の発表には清明院の元副院長、
松木宣嘉先生も関わっており、どちらも非常に興味深かったです。
画像も動画も残っていない、江戸期の打鍼や毫鍼の道具や手法を、文章と絵図からイメージを膨らませて、それを頼りに現代に蘇らせ、それを実践の中で再検討し、
現代に定着させようという、昭和初期から、過去の先生方も連綿とやってきた試みが、再び過熱しているように思えます。
とてもいいことだと思います。
明治~昭和初期まで、ほぼ断絶してしまったと言っていい日本伝統鍼灸、ここ試みから何か、大きな発見や、今よりもいいやり方が見つかる可能性は大いにあると思います。
僕も市井の一鍼灸臨床家として、出来ることをやっていこうと思います。
続く
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2018.09.16
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これまでのお話・・・
前回、森道伯先生が、大正時代に世界的に流行したスペインかぜ(強毒性のインフルエンザ)に対して、漢方薬で効果を挙げていたことを紹介しました。
また、ずいぶん前ですが、このブログ上で、広州中医薬大学の鄧鉄濤(とうてっとう)先生が、2002年から2003年にかけて世界中に感染者を出した
SARS(重症急性呼吸器症候群)に立ち向かって、漢方薬で効果を挙げたという話も書きました。
鍼灸でも、以前に蓮風先生が非結核性好酸菌症の症例を、内科医の村井和先生とともに『鍼灸ジャーナル 7号』に発表したことがあります。
日本では残念ながら論文数は少ないですが、中国韓国台湾を探せば、鍼灸で感染症を扱って効果を得たものは、他にもあるんじゃないでしょうか。
東洋医学は感染症に無力、と切って捨てる人がたまにいますが、果たしてそうでしょうか・・・?
むしろ東洋医学の歴史は、感染症との闘いの歴史なんじゃないんでしょうか?
現代の新興感染症にも使える叡智が多分に含まれているのではないでしょうか。
・・・で、今日は、一貫堂医学の番外編でもないが、東洋医学の感染症に対する考え方を述べてみましょう。
(一社)北辰会が理論と用語のベースとしている現代中医学の「弁証論治」という基本的な考え方ですが、これの大本は『傷寒論』を著した後漢の張仲景(150?-219)と言われます。
(”弁証論治”という言い方自体が、『傷寒論』の”弁〇〇病脈証并治”という言い方から来ているとか。。。)
・・・で、その『傷寒論』の内容は、『傷寒論』よりさらに前の『黄帝内経素問』の「熱論(31)」の内容や、『難経』58難が元になっていると言われます。
『黄帝内経』よりもさらに以前は、「病気」というのは、悪霊や鬼が患者に憑りついたもの、と考えられており、治療はもっぱら祝由(お祈り、呪い)であったようです。
それを『黄帝内経』では、この世界の全ては「気」から出来ているという「気一元の世界観」、そしてそこに働いている法則性である「大極陰陽論」を前提として、
自然現象である、人間の生老病死の「病→死」を、自然界、あるいは人体内にある「邪気」が、人体の「正気」を傷っていく過程、と考えるようになり、
そしてその「邪気」にはパターン分類があり、人体の側にもまた体質分類があり、それを適切に噛み分けて、何がどうなって病になっているのかを考え、
戦略的に治療すれば、病治しができる、という、医学医術の革新(ある意味科学化)を行いました。
それ以来、その枠組みを前提とした、様々な学説や治療法が開発され、その数千年に渡る膨大な臨床事実の集積は「中国伝統医学」と呼ばれ、
現代にまで脈々と受け継がれている訳ですが、この「邪気」という考え方の中でも、自然界にある外来の邪気、つまり「外邪」と呼ばれるものが、
現代の西洋医学の言う「細菌」や「ウイルス」のことを含む概念です。
(ザッと書いたので、もし間違っていたらご指摘ください。<m(__)m>)
・・・で、東洋医学における感染症の捉え方、治し方は、蓮風先生が以前よく仰っていたことですが、
「ここにアサガオの種があったら必ず発芽するわけではないように、種子が発芽するには土、水、空気などなど、それなりの条件が整わないと発芽しない。
感染症もこれと同様で、細菌やウイルスがあったら必ず発病する訳ではないように、発病しないように、また、発病しても軽く済むように、
患者の側を調えればいいのだ。
細菌やウイルスを顕微鏡レベルで分類し特定して、それを死滅させる、あるいは人体の側を強制的にそれに反応しないようにせしめるのが西洋医学、
それらが増殖しにくいような体内の状況を調えるのが東洋医学、という違いがある。」
ということです。
もちろん、細菌やウイルスがキチッと特定できて、抗生剤などの治療法も確立されているような感染症であれば、西洋医学のやり方は非常に優れていると思いますが、
中にはうまくいかないものもあります。
そういう時に、意外と効果を発揮するのが、東洋医学の論理と手法だと思います。
森道伯先生も鄧鉄濤先生も、そこんところを良く分かっていたんだと思います。
次回、ついでなんで、矢数道斎先生が若い頃、森道伯先生に、マラリアと肺炎の治療を実際に受けた話を書いておきましょう。
続く
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2018.09.15
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これまでのお話・・・
さて、マニアックな話、ドンドンいきましょう。
ドンドン読者を置いていきます。
そしてみんな離れていって、終いには一人になりそうです。(爆)
・・・ともかくここまで、一貫堂医学における「三大体質・五大処方」について書いてきました。
よく勘違いされがちなこととして、
「一貫堂って、全ての患者を3つの体質に分類するんでしょ?それも全部実熱でしょ??そんなん、無理あるっしょ~~!!(;’∀’)」
というミスリード。
普通に考えて、そこだけ切り取って、名医・森道伯を語れる訳ないですね。(・ω・)ノ
矢数道斎(格)先生のまとめた『漢方一貫堂医学』には、森道伯先生のほぼ晩年の3年間のカルテに使った方剤が集積して一覧表にしてありますが、
当然ながら「それ以前の」数十年がある訳です。(笑)
まあ、色々な症例やエピソードがあると思うんですが、有名なのは「スペインかぜVS森道伯」のエピソードでしょう。
まず「スペインかぜ」を簡単に説明しますと、1918年~1919年(大正7年~8年)にかけて起こった、アメリカ発の強毒性インフルエンザのパンデミック(世界的大流行)です。
アメリカ発なのにスペインかぜと呼ぶのは、情報源がスペインだったから、だそうです。
ちょうどこの時は第一次世界大戦(1914~1918)の末期であり、このスペインかぜが大戦を早期に集結させた要因の一つである、という見方もあるぐらいの大事件であったようです。
そのくらい被害は大きく、全世界で5億人が感染、死者は5千万人~1億人、とも言われています。
日本にも被害が広がり、現在タレント論客として活躍している竹田恒泰さんの曾祖父君にあたる竹田宮恒久王をはじめ、多くの日本人が感染しました。
この時、森道伯先生はスペインかぜを3つに分類し、
胃腸型・・・香蘇散+茯苓・白朮・半夏
肺炎型・・・小青竜湯+杏仁・石膏
脳症型・・・升麻葛根湯+白朮・川芎・細辛
で治療し、たいへん効果を挙げたそうです。
これらも、現在でもよく使われる、割かしなんてことない処方なんですが、この処方からしても、決して実熱のみを重視していたなんて思えません。
スペインかぜの弁証論治を、非常にシンプルな形に落とし込んだように見えます。
因みに各方剤の出典は、
香蘇散は北宋の国定処方集である『和剤局方』、
小青竜湯は後漢の張仲景(150?-219)による『傷寒論』、
升麻葛根湯は『閻氏小児方論』という本が出典で、有名な葛根湯の変方かと思いきや、やや似て非なる配合の薬です。(笑)
僕のPCに入れてある『東洋医学辞書』では
葛根湯は葛根5.0・麻黄・大棗各4.0・桂枝・芍薬・生姜各3.0・甘草2.0
升麻葛根湯は葛根5.0・芍薬3.0・升麻・乾生姜各2.0・甘草1.5
と出てきますが、『中医臨床のための方剤学』では
葛根湯は葛根12g・麻黄、生姜9g・桂枝、炙甘草、白芍、大棗6g
升麻葛根湯は赤芍6g・升麻、葛根、炙甘草3g
と、ずいぶん違います。
こういうの(同じ方剤名でも時代や文献で構成生薬が違う)も、方剤学のややこしいところですね。(苦笑)
まあともかく、
香蘇散は風寒表証+気滞の薬で、現代ではストレスからくる肩凝りだの胃もたれだのといった、肝鬱や肝胃気滞によく使われる薬です。
小青竜湯は風寒表証+脇下の水飲の薬で、現代では「くしゃみ三回小青竜」な~んていう、実に胡散臭い謳い文句があって、花粉症によく使われる薬なんですが、
何も考えずに長期服用すれば徐々に内熱が籠っていき、別の病を形成します。(~_~;)
西洋薬と比べて、副作用がなくて眠くならないから助かるわ、な~んつって、冬から春に長期服用している患者さん、ホントに多いです。
升麻葛根湯は、小児の麻疹(はしか)の薬として有名で、肺胃の熱毒を叩く薬です。
これらを強毒性のインフルエンザに巧みに応用した訳ですね。
・・・まあいずれにせよ、よく後世派と言われる一貫堂ですが、古方派の使うような方剤も臨機応変に臨床応用していたことが分かります。
(そういえば後世派、古方派についても書いてなかったですね。いい機会なんでこれが終わったら書きましょう。)
次回、感染症に対する東洋医学の考え方を書きます。
続く
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2018.09.14
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これまでのお話・・・
さて、ここまでで、森道伯先生を創始者とする「一貫堂医学」が提唱する「三大体質・五大処方」なるものの基本を説明してきました。
一応断っておきますが、私は鍼灸家であって漢方家ではないので、漢方薬の処方解説はあくまでも理論面しか出来ませんし、鍼灸臨床に置き換えて説明することしかできません。
これまでに出てきた漢方薬それぞれ、実際の実践面、臨床面でどうか、というのは、漢方家の先生方にお任せ致します。<m(__)m>
僕のすべての言説は、あくまでも市井の一鍼灸臨床家の視点からのものであります。
・・・しかしまあ、いつものことなんですが、こうやって東洋医学の真面目な内容を書いていると、アクセス数が減りますなあ~~。(~_~;)
(苦笑・・・みんな、勉強嫌いなのね。)
・・・でもいいです、めげずに書きます!!<(`^´)>
書きたいから書く、言いたいこと言う!!(゚∀゚)
五大処方のうち、前回述べた「解毒証体質」に使われる3つの方剤(柴胡清肝散、荊芥連翹湯、竜胆瀉肝湯)は全て、「温清飲」という薬をベースにしています。
この温清飲は、現代では「アトピー性皮膚炎」の患者さんに使用されていることが多いようです。
・・・ところが、最初から単純に効いていなかったり、ある程度までは効いていても、途中で効かなくなったり、あるいは途中から悪化していったり、
と仰って、清明院にみえる患者さんがチラホラいます。
これについて、どういうことか考えてみましょう。
まず温清飲の中身は、当帰・地黄・芍薬・川芎各3.0g、黄連・黄芩・梔子・黄柏各1.5g、だそうです。
上記の当帰~川芎の部分が四物湯の内容、黄連~黄柏の部分が黄連解毒湯の内容です。
配合の分量の比率を単純に見れば、「四物湯>黄連解毒湯」と読めます。
四物湯とは、補血剤(血を補う薬)の代表格で、主に肝の臓の血(肝血)を補う薬だそうです。
黄連解毒湯は清熱剤(熱を冷ます薬)の代表格で、上焦~下焦まで、三焦に瀰漫した邪熱(実熱)を取り去る薬だそうです。
ということは、温清飲は「肝血虚>邪熱」の虚実挟雑証の場合に使える薬、と考えていいのでしょう。
(・・・まあ、そう一概に言えない面もあるかもしれないが)
だとすると、経過中に「肝血虚<邪熱」のように、主従が入れ替わった時、あるいは「血虚」や「邪熱」が解決して、どちらか一方のみの問題になった時、
あるいは「陰虚」や「気虚」「陽虚」「湿熱」「湿痰」などの、肝血虚や邪熱とは別の病理が主になった時には、サッと方剤をチェンジ(変方)しないと、
効かない、あるいは悪化する、という流れになるのは自明です。
(または、そもそも最初からこういう診立て自体が出来ておらず、病名や症状のみからテキトーに処方したのであれば、最初からいきなり悪化することもありえます。)
まあ、臨床上よく見かけるのは、四物湯の成分が中焦を余計に重たくしたり、黄連解毒湯の成分が脾気や腎気を奪ったり、裏の水滞がきつくなって、
肌膚に津液が行き渡らなくなり、そのせいで見かけ上は余計に皮膚が乾燥して悪化したり、というようなケースが多いように思います。
(熱が取れるはずが、余計に皮膚が乾燥して「なんで??」ってやつね。)
病気、それも慢性で難治性の病気となれば、こういう、その時々での変化流転は当たり前なので、鍼灸でも、このような失敗をしないために、初診時にキッチリと問診を取っておき、
治療に来た現時点での「証」のみでなく、現症に至った「病因病理」をキチンと意識しておくことが大事なのです。
とりわけ、皮膚科疾患の場合、中医学でよくいう「皮損弁証」というような、皮膚の状態(乾燥、熱感、発赤、腫脹等々の有無)を意識した診察ももちろん大事ですが、
かといって皮膚の状態「のみ」から診たてただけの、場当たり的な処方、処置は実に危険です。
要は皮膚が「何で」そんな状態になったのか、というメカニズムを考え、時々刻々と変化する患者さんの状態に合わせて、臨機応変に処方、処置を変えていかないと、
とてもついていけません。
アトピーや喘息なんかの場合、そうやって常に先手先手が打てなかったら、普通に負けます。。。(苦笑)
患者さんから、ヤブ医者!ヘタクソ!アホ!ボケ!カス!!です。。。(苦笑)
また、この辺の詳しい話は、山口の村田先生のブログが非常に参考になります。
(膨大な内容ですが、単語で検索ができるので、漢方薬名や病名で色々検索してみて下さい。あっという間に朝になりますよ。(笑))
ドラッグストアで簡単に漢方薬が手に入る昨今、ネットで得た情報から、素人考えでサプリメント感覚で服用して大失敗をしていたり、知ったかぶりの西洋医学のドクターから、
いい加減な処方を繰り返されて、かえって悪化している患者さんを診ると、実に残念な気持ちになります。
東洋医学(鍼灸漢方)は医学ですので、それ専門に何年も、何十年も学び、経験を積んだ先生にしか、本当の意味では使いこなせません。
まずは、せめてそこんところをよくよく理解しましょう。
続く
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2018.09.04
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9.2の日曜は、大阪で行われた(一社)北辰会エキスパートコースに参加してきました!!
今回は午前中は実技。
古参の講師である「太陽堂鍼灸院」院長、高木幸二先生に、ちゃっかり治療してもらっちゃいました☆
高木先生は、約30年前の、藤本漢祥院の内弟子です。
ほぼ、北辰会の生き字引です。
ガタイのデカい、声のデカい先生ですが、鍼や診察は非常に繊細で、分かりやすいです。
今回も非常に勉強になりました。
午後は大阪で「鍼灸 大仙堂」を開業されている山本克仁先生による講義「問診情報の、弁証への繋げ方」。
北辰会では初診時に1時間以上かけて、症状だけでなく、生活状況や体質についてなど、色々な情報を聴取します。
でも、そうやって苦労してとった情報を、弁証(診断)に結び付けないとゼロ意味です。(笑)
今回、それをどうやって結びつけるか、非常に丁寧に講義して下さいました。
最後は若手のホープ、「藤本玄珠堂 武庫川分院」院長である松本賢一先生による症例発表「アトピー性皮膚炎」。
藤本玄珠堂と言えば、私も昔から非常にお世話になっている、藤本新風先生の鍼灸院です。
そこの分院長である松本先生。
真横(座長)に本院長がいるという、極限の状況下での発表でした。(笑)
生まれつきのアトピー性皮膚炎という、決して簡単とは言えない病気に、鍼一本で、たいへんよく頑張っている症例だと思います。
初診は今年の春であり、まだまだ経過の短い症例ですから、これから数年かけるつもりで、キッチリ根本から治してあげて欲しいと思いますね。
そして終わった後は酒。。。
今回はドクターや薬剤師の先生方と、漢方トークが爆発しました。
北辰会の症例カルテには、あらゆる勉強のネタが詰まっています。
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2018.08.27
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これまでのお話
「肺胃不和」という証 4 参照
◆「不和」には五種類ある。
ここまで、僕が臨床上けっこう目にする「肺胃不和」について語ってきました。
ま、「肺胃不和」という熟語は、『中医弁証学』という本なんかでは「病証」としては紹介されていないのですが、清明院の臨床では「肺胃不和」と証を立てて治療し、
うまくいくことは全然普通にあります。
(以前チョロッと紹介したね。)
まあしかし、仮に「肺胃不和」という証が立ったとしても、それで安心はできません。
今日は最後にまとめとして、それを喋って終わります。
「〇〇不和」という証は、他にも有名な「肝脾不和」「肝肺不和」「脾胃不和」「肝胃不和」なんかがありますし、似た言い方では「心腎不交」「脾虚胃実」「肝火犯肺」などなど、
二つの臓腑にまたがる病(臓腑兼証)、というのはよくあります。
それどころか、3臓腑、4臓腑にまたがった病というのもあります。
この時に考えなくてはならないのは、どっちの臓腑がどれくらい悪いか、先に処置するべきはどっちか、という「ウエイト」「優先順位」の問題です。
肺の臓と胃の腑が同時に病んでいて、「肺胃不和」という状況であれば、当然ながら、肺と胃、どっちがどの程度病んでいるか、という考え方は必須です。
で、これ、大きく分けると5パターンあります。
つまり不等号を入れて比較すれば「肺>胃」「肺≧胃」「肺≒胃」「肺≦胃」「肺<胃」の5つです。
この考え方を頭の中で行うことにより、「主従」が明確になり、これにさらに「標本」を考えてタクティカルに治療を進めていくことが出来ます。
「主従」を含む記事 参照
しかもこのウエイトは固定的でなく、治療効果や患者の養生の状況によって、経過の中で変動してきます。
それに上手に合わせることが出来ると、治療がスッスッスッといきます。(^^)
・・・でもこれ、まさに「家庭内不和」と同じで、理論的には簡単でも、実際はなかなか難しかったりします。(笑)
それを冷静に冷静に、根気よく根気よく、調整するのが我々の仕事だと思います。
言わば別れそうになっているカップル、夫婦の「仲直らせ屋」みたいなもんですな。(゚∀゚)
おわり
◆参考文献
『中医弁証学』東洋学術出版社
『中医病因病機学』同上
『基礎中医学』燎原
『全訳中医基礎理論』たにぐち書店
『基礎中医学』谷口書店
『蔵象学説の理論と運用』創医会
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