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2010.04.25
清明院の患者さんは、何故か高学歴の患者さんが多いのですが、その中に、応用数理学をやっておられる方がおります。
(まあ、その方がやっておられる学問の世界なんていうのは、僕のようなズブの素人が見たら、まるで宇宙の言語のようでありますが・・。)
その患者さんと話していると、東洋医学に関する、非常に示唆に富んだ見解を得ることがあります。
(やっぱり患者さんは“先生”だね。)
この東洋医学というのは、何かと「数字」が出てきます。
「気一元の思想」の1、
「陰陽」の2、
「天地人三才思想」の3、
「東南西北」や「四神」や「四診」の4、
「五行」「五運」の5、
「六気」「六淫」の6、
「七死脈」「七竅」の7、
「奇経八脈」や「八風」や「八法」の8、
「九竅」「九宮」の9、
「十干」の10、
・・・などなど、挙げていけばキリがないほど、「数字」とその組み合わせのパターンで、自然界、および人体を考え尽くしています。
これって、単純に、なぜだろう・・・と、思いませんか?
まあ、古代中国人は農耕民族ですから、当然、
1.農作物の分配管理のための「計算」、
2.農地管理のための「測量」、
3.収穫時期を正確に知るための「天文学⇒暦法」
という3つの柱は、当然必要に迫られていたんであろうと思います。
この3つはそのまま、以下のように、数学の対象に置き換えられます。つまり・・
1.の「計算」は「量」と「構造」に、
2.の「測量」は「空間」に、
3.の「天文学⇒暦法」は「変化」に、
とね。
この様な考え方から、古代中国では自然発生的に
「現象を数字の変化に置き換えて、論理的に理解する」
という習慣がついていたんだと思います。
具体的に数学の話になると、やれ因数分解とか、展開公式とかっていう話になるけど、中国では「考え方」としては、数千年のはるか昔から、
生活に根付いていただろうし、詳しくはないが、実際に「算木(さんぼく)」という木を使った計算法もあったようです。
また、中国の数学は、西洋において数学が発展、発達する全然前から、かなり現代数学的にも正確な公式や定理が、ガンガン発表されていたようです。
現存する最も古いものとしては、『易』の洛書の魔方陣なんかが、興味深い例として有名ですね。
その他にも、円周率やらピタゴラスやら、大変高度な数学の問題を、西洋数学が証明する1000年以上も前から既に証明していたようです。
・・・ただですねー、やっぱりなんぼ美しく数学的、論理的に自然現象を切り分けてみたところで、実際の現実に起こる現象とは、若干の「ずれ」が生じることがありゃあしませんかねえ。
そうは言っても、一応は分けて考えなかったら、それはそれで難し過ぎますねえ・・・。(苦笑)
理解出来る人が限られ過ぎる、というかね・・・。
ここを克服(数理学を柔らかくする)する一番いい考え方として、先哲が考え出したのが、「気」であり、「陰陽論」であるのではないか、と思っています。
カテゴリ「陰陽」 参照
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前回まで、
ⅰ.「表裏」
ⅱ.「寒熱」
ⅲ.「虚実」
という、3つのテーマについて書いてきました。
そして、東洋医学ではこれらの考え方を使って、患者さんの
「どこに(病位)」
「どういう(病性)」
病があり、
「その勢い(病勢)」
はどうなのかを、まず大まかに診断するんだよ、ということを述べました。
この考え方(診断方法)を、
「八綱弁証(はっこうべんしょう)」
と言い、これは東洋医学的な鍼灸治療をする上で、絶対にはずせない診断法(弁証法)の一つです。
歴史的には、清代の程国彭(ていこくほう)が1732年に撰した『医学心悟』の中の「寒熱虚実表裏陰陽辦」に説かれ、
その考えは1742年、呉謙の『医宗金鑑』にも引き継がれ、現代中医学の弁証法の基本の一つになりました。
なぜ「八綱」と言うのかというと、組み合わせとして、
「表か裏か」の2、
「寒か熱か」の2、
「虚か実か」の2
を掛け合わせると2の3乗となり、2x2x2=8パターンが得られます。
すなわち、全部は書かないけど、「表、寒、実」とか、「表、熱、実」・・・とかって組み合わせていくと、8通りの組み合わせが得られ、
それを「八綱(はっこう)」と呼び、大まかに病気を分類することが出来る訳です。
因みに、ここでしっかりと断っておきますが、上記は私の個人的な考えです。
中医学の教科書には、どの本にも八の要素を並列に並べて、陰陽、表裏、寒熱、虚実で八綱、という風に解説されていますが、個人的には上記の説に一票、という感じなんです。
(何の本で読んだか忘れたけど。。(^^;))
これは私の「八」に対する解釈にもかかわってきます。
奇経八脈の八、八法の八、八卦の八にしても、やはり総綱としての「二(陰陽)」があり、それの組み合わせや現れ方の違いのために他の「六」がある、
と考えた方が、個人的には納得できることが多いからです。
(まあ些末な話っちゃ話だけどね)
〇
患者さんの病気のパターンが、この8パターンのうちのどこに収まるか、ということは、我々にとってとても大事です。
なぜなら、これによって「治療の大まかな方向性」が決定づけられるからです。
病気というのは、患者さんが訴える、表面的な「症状」にのみとらわれて、治療や診断そのものが右往左往していては、なかなか治っていきません。
大事なのは、その症状を出さしめている本質は何か、要は病の本体は何なのか、ということを常に意識して治療を進めることなんです。
そうしないと、治るものも治らないんです。
これを中医学では「治病求本」といい、2500年前の東洋医学のバイブルである『黄帝内経素問』陰陽応象大論(5)に「・・治病必求於本.・・」とある通りです。
治療を技術論と考えると、本当に治療のうまい先生ほど、この「八綱弁証」が正確で、かつブレないんだと思います。
・・・ですから治療経過の中で、多少の症状の増減はあろうと、方向性が正しい訳だから、結果的には徐々に徐々に、確実に治っていく訳ですね。
ここが正確であれば、術者もフラフラすることなく、一貫性のある治療を進めることが出来るわけです。
まあ、ちょっとこのシリーズは難しかったかもしれないけど、とても大事な考え方なので、あえて書きました。
・・・ところで、清明院のHPにもこのブログにも、よく「弁証(べんしょう)」とか、「弁証論治(べんしょうろんち)」という言葉が出てきます。
コレ、聞き慣れませんよね?次回はそのお話。
〇
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