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2015.06.13
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これまでのお話
「四逆散」というお薬
「四逆散」というお薬 2
「四逆散」というお薬 3
「四逆散」というお薬 4
「四逆散」というお薬 5 参照
さて今日も、四逆散に関する、別の先生のご意見。
今日は矢数道明(やかずどうめい 1905-2002)先生です。
この先生も、大塚敬節先生や奥田謙蔵先生と並んで、1905-2002の、実に96年間を生きた、近代を代表する漢方家の一人です。
亡くなる前年の、95歳まで外来診療を続けておられたことは有名です。
(スゲエ!!(;゚Д゚))
この先生の診療所(温知堂)は清明院のすぐ近く、新宿にあり、現在もご遺族によって引き継がれております。
この先生の師匠である森道伯先生(1867-1931)も、後世派の一派である一貫堂医学の創設者として、たいへん有名です。
この森先生も素晴らしい先生なので、そのうち紹介したいと思います。
(みんな本当にスゴイので、紹介し始めたらキリがないですな。。。(苦笑))
〇
まあともかく、矢数先生はその著書『漢方処方解説』の中で、
「四逆散は大柴胡湯と小柴胡湯の中間のものに用いる。」
と述べ、
「大柴胡湯よりも虚証で、熱状が少なく、肋骨下の緊張がやや弱く、小柴胡湯よりは少し実証で、お腹は肋骨下の緊張、腹直筋の緊張が中心で、
腹直筋の緊張は臍の周囲まで及び、手足のキンキンに冷えてる者や、癇の昂ぶる神経過敏症の者に用いる。」
と述べ、臓腑では
「肝の臓の実と、脾胃がやや虚。」
と述べ、たいへん応用範囲が広い薬であることを教えています。
まあ、矢数先生の解説の書き方としては、四逆散が大柴胡湯の変方だと述べた、和田東郭先生や浅田宗伯先生の見解を尊重しつつ、近代の湯本求真先生や龍野一雄先生の論を引いて、
大柴胡湯と四逆散の使い分け方、とりわけ、腹診における見分け方に重きを置いた、解説の仕方をしております。
この観点も、また重要です。
大塚先生の見解に、少し補足を加えた、という感じですね。
「四逆散」というお薬 7 に続く
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2015.06.11
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これまでのお話
「四逆散」というお薬
「四逆散」というお薬 2
「四逆散」というお薬 3 参照
今日は、四逆散に関して、昭和の代表的な漢方医の一人である大塚敬節先生(1900-1980)の見解を聞いてみましょう。
大塚先生は、著書『傷寒論解説』の中で、四逆散のことを、康平本傷寒論(※)の記載に倣って”回逆散(かいぎゃくさん)”と呼び、
ここに書かれていることは、前段の玄武湯、通脈回逆湯の流れからすると錯簡ではないか、という意見を述べております。
(※)・・・康平本傷寒論(こうへいぼんしょうかんろん)は、昭和11年の秋に、大塚敬節先生が東大正門前の井上書店で見つけた、傷寒論のテキストで、
奥書に「康平三年(1060年)二月十七日 侍医丹波雅忠」とあることによって、“康平本”や“康平傷寒論”の名で知られ、一説には空海が長安にて筆写して持ち帰ったものともいう。
大塚先生は、康平本こそは宋代以前のものであり、現存する最古の『傷寒論』であると訴えたが、偽書であるという説も根強い。
〇
・・・まあ、四逆散の呼び名が本当は回逆散なんじゃないか、とか、ここに書かれていることが錯簡なんじゃないかとか、どれが現存する最古の本だとか、
正~直、んなこたぁどーでもいいんですよ、我々臨床家にとっては。(笑)
臨床現場で、患者さんに対して、その方剤が使えるかどうか、これに尽きるし、大体からして、僕ら鍼灸師は鍼でやるわけだから、四逆散の考え方が、
果たして鍼灸臨床で応用的に使えるかどうか、ここにしか興味なしなのです。
まあともかく、大塚先生は、
「臨床では、傷寒論に書かれているような症状ではなく、腹診をよく診て処方するとよい。肋骨下の緊張、腹直筋の過緊張がはっきりと表れているものに使うといい。」
と述べて下さっております。
大塚先生はこのように、「柴胡」という生薬を使ったいくつかの方剤を、患者さんの腹証に応じて使い分けていたようです。
(これはテーマからずれるので、いつか気が向いたら書きましょう。)
「柴胡」の使い方の上手い先生が、漢方薬の使い方のうまい先生、という話は、以前にしました。
まあ、症状はともかくとして、腹の状態で見分ける、というのも、臨床家にとっては非常に重要な指摘ではあります。
患者さんは自分の主観に基づいて、症状その他を述べますので、それを全くの鵜呑みにしてしまうと、うまくいかない場合があります。
そんな時、体表観察に助けられます。
身体はウソつかない、ってやつね。
「四逆散」というお薬 5 に続く
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2014.01.23
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前回のお話
腎着(じんちゃく)? 参照
せっかく触れたんで、もうちょっと掘り下げときます。
この”腎着証”、東洋学術出版社『中医弁証学』によると、
1、疲れて汗をかいている時に外寒を感受した場合
2、衣服が雨に濡れたり、湿地に居たりして水湿邪が侵襲した場合
3、腎経が虚冷で、なおかつ風湿の邪気を感受した場合
という3パターンで発症するそうです。
(まあ要は、これらの原因で、腰が冷えて体が重くなるのです。)
「痹証」と非常に似ていますが、痹証の場合は関節部を中心とした痛みであり、「腎着証」の場合は腰部や背骨の際を中心とした痛みなんだそうです。
痹証についてはスタッフブログ 痹証(その14) 参照
もともとこの病名は『金匱要略』という、漢方の大古典に出てきます。
『金匱要略』についてはこちら参照(wiki)↓↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E5%8C%B1%E8%A6%81%E7%95%A5
『金匱要略』には、
「・・・身体重く、腰中冷え、水中に座っているが如く、浮腫みがあるが、咽喉の渇きはない。小便がよく出て、食欲は普通のものを言う。・・・これには、甘姜苓朮湯がよく効くよん!」
・・・と出てきます。
昭和の漢方医学の大家である大塚敬節先生は、この苓姜朮甘湯を使って、坐骨神経痛の頑固なやつを治したとか、田畑隆一郎先生はきつい腰痛と冷えを治したとか、
近現代の色々な先生も臨床で応用されているようです。
さて、じゃあ我々鍼灸家はこの”腎着証”を前に、どうしたらいいのか。
続く
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