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2015.06.17
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これまでのお話
「四逆散」というお薬
「四逆散」というお薬 2
「四逆散」というお薬 3
「四逆散」というお薬 4
「四逆散」というお薬 5
「四逆散」というお薬 6
「四逆散」というお薬 7
「四逆散」というお薬 8
「四逆散」というお薬 9 参照
では続きいきましょう!!
今日もまた、四逆散に関して、違う先生の意見を考えてみましょう。
まあこの辺で、キリがないので、そろそろラストにしましょうかね。(笑)
今日は、知る人ぞ知る名医、内藤希哲(1701-1735)先生です。
なんとこの先生は、惜しいことに今の僕と同じ年齢、34歳で、急病でこの世を去っています。
(・・・うーん、悔しかったんじゃないかなー。どうかなー。)
そしてこの先生はあの吉益東洞と1歳違いなんです。
まあただ、残念なことに、二人は会いはしなかったようです。
もし会って、意見を交換していれば、その後の日本の東洋医学の流れは大きく変わったかもしれません。
そのぐらいのレベルの先生です。
〇
この先生が書いた『医経解惑論(いけいかいわくろん)』という有名な書物の話は、蓮風先生の話の中にも、たまに出てきます。
まあ、この先生も特別な先生なんで、あとでまた詳しく紹介しようと思いますが、歴史に「もし」はないけど、この先生が長生きして、
数百人、数千人という数の弟子を育てていたら、もしかしたら現代の病名漢方、症状漢方、病名配穴、症状配穴などの間違った流れは、
キチッと是正されていたかもしれません。
〇
まあともかく、そんな内藤先生が生前に書きかけていた原稿を、弟子たちが仕上げ、内藤先生が亡くなってから、実に100年後に発刊された『傷寒論類編』という本に、四逆散について書いてあります。
「四逆散は、”気滞”が少陰病みたいな症状を生じた場合の薬である。外邪によるものではないけど、四肢逆冷、無熱だから、少陰病のところに書いてある。
脈は結滞して沈実、決して微弱ではない。諸々の本を読むと、四逆散証の時に出る咳や動悸や下痢や腹痛などは、邪熱で説明しているが、違う。陽気の気滞である。」
と、四逆散証で起こる諸現象を、熱で説明している、ほかの先生方をバッサリとやっています。(笑)
そして、脈に関する知見を加え、熱は関係ない、外邪も関係ない、あくまでも内傷であり、気の停滞なんだ、と説明しています。
内藤先生の本は、他者をコテンパンに批判しているところがあって、読んでいて非常にスリリング、ある意味痛快なんですが、まあ、あまり人のことを悪く言いすぎるのも、ちょっとどうかとも思います。
やや、自意識過剰、自信過剰だったのかもしれません。
(苦笑・・・まあ若くしてあれだけの内容を書く先生ですから、自惚れるのも分からないでもないです。)
でもまあ、他者否定の裏側にある、非常に過剰な自意識(この場合、自分が実際に治すことが出来た経験からくる自信)が、この先生の素晴らしい臨床を生み出し、
それが、この先生の存在を唯一無二のものにし、その名前を、現代にまで響かせている面もあるんだろう、とも思いますね。
・・・彼は「天才」と評されることも多いのですが、著書に書いてあることとか読むと、天才というよりは、感動的なほどの誠実さを持った、田舎の努力家です。
(特に序文)
興味のある人には、ぜひ読んでほしいですね。
「四逆散」というお薬 11 に続く
〇
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2015.06.15
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これまでのお話
「四逆散」というお薬
「四逆散」というお薬 2
「四逆散」というお薬 3
「四逆散」というお薬 4
「四逆散」というお薬 5
「四逆散」というお薬 6
「四逆散」というお薬 7 参照
さて、今日ももう一人いきましょう。
・・・まあ、こんなことやってるとキリがないんだけど(笑)、いい機会なんで、僕が注目してる漢方家の紹介がてら、どんどんいきましょう。
今日は藤平健(ふじひらけん 1914-1997)先生です。
この先生も、昭和の漢方を支えた一人です。
藤平先生は、四国(香川県丸亀市)出身の先生であり、実は「四逆散」というお薬 5で紹介した奥田謙蔵先生のお弟子さんです。
大学生の頃に脊椎カリエスに罹り、それを奥田先生の漢方で治してもらったことから、弟子入りしたようですが、その後の活躍をみると、師匠に負けない、スゴイお弟子さんだと思います。
なんかこう、本を読んでいても、奥田先生と藤平先生からは、優しいというか、心が広いというか、大らかというか、そういう雰囲気を感じます。
(湯本求真先生の反動なんでしょうかね。。。分かりませんが。(笑))
まあともかく、藤平先生の『傷寒論演習』には、
「四逆散は少陰病のところに書いてあるけど、実際は少陽病の薬で、使い方は大柴胡湯と小柴胡湯の中間あたりと考えていたが、使っていくうちにもっと虚証よりだと思うようになったよー。」
と述べ、
「傷寒論の条文には書いていないが、先輩方の言う通り、ノイローゼなどの精神科疾患に良いと考え、使い方としては、細かい症状よりも、腹診が重要だよー。」
と述べ、
「全体の腹力(腹部の緊張)が中等度、胸脇苦満(肋骨下の緊張)が”左右差なく”中等度、心下痞鞕(みぞおちの緊張)が中等度、腹直筋の緊張が強い、
これらが揃えば、四逆散の腹と考えていいよー。」
と述べ、お弟子さんとの対話の中で、
「四逆散には水を捌く生薬は入っておらず、この場合の水邪は二次的なものと考えていいよー。」
とし、真武湯との鑑別や、芍薬甘草湯との違いに注目しているようです。
(抜粋意訳 by竹下)
因みに個人的には最後の部分、重要かな、と思います。
真武湯、四逆湯とだけでなく、芍薬甘草湯と四逆散を比較するのは、四逆散が、芍薬甘草湯に柴胡・枳実を入れた方剤、とみることも出来るからですね。
〇
・・・とまあ、全体としてはそんなに個性的なことは言っていないが、大塚敬節先生、矢数道明先生と同じく、腹診に着眼したことと、四逆散の胸脇苦満には左右差が無いとか、
自身の経験から、独特の見解も少し述べておられます。
大塚先生、矢数先生の見解については、
個人的には、少陽病の薬であるにもかかわらず、左右差が出ない、ということを強調しておられるのは、面白いなあ、と思ったりします。
あくまでも少陽「経」ではなく、内外の不和だ、というメッセージなんでしょうかね。
(単に経験則かもしれませんが、クリニカルパールではないかと思います。)
「四逆散」というお薬 9 に続く
〇
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2015.06.14
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これまでのお話
「四逆散」というお薬
「四逆散」というお薬 2
「四逆散」というお薬 3
「四逆散」というお薬 4
「四逆散」というお薬 5
「四逆散」というお薬 6 参照
さて本日も、また別の先生のご見解をみてみましょう。
今日は荒木性次(あらきしょうじ 1896-1973)先生です。
因みに号は荒木卜庵(あらきぼくあん)先生とも言います。
(この呼び名の方が有名かもしれません。)
この先生も、昭和を生きた、非常に有名な先生です。
実は私は、この先生の流れをくんだ先生と、ちょっとしたご縁がありまして、今ではその先生の漢方薬局に、清明院の患者さんをよく紹介させていただく間柄だったりします。(笑)
また、僕が尊敬している鍼の先輩も、この先生の薫陶を受けた先生から『傷寒論』の基本を学んだそうです。
そんなワケで、やや遠いけど、不思議な御縁を感じる荒木先生の『方術説話』に、このように書いてあります。
「四逆(四肢逆冷)する者には3通りあります。
1つ目は表面の陽気が弱っているもの、
2つ目は陽気が内(裏)に籠っちゃって外に伸びないもの、
3つ目は表裏の中間につっかえて、陽気が伸びないものです。
四逆散の場合は3つ目のパターンです。」
と述べ(1パターン加えた!)、そして、その籠った熱のことを”少陰の熱”と表現し、
「それ(少陰の熱)が肺に影響すれば、そこに水気が集まり咳となり、心に影響すれば動悸、肺腎両方に影響すれば小便不利、
腹中に影響すれば腹痛になり、腸中に影響すれば下痢となり、もともと腸の動きが悪い人であれば渋り腹になる。」
と述べています。
そして、上記のような診立てで、四逆散を使って、効果がイマイチの場合に、四逆散にさらにどんな生薬を加えたらいいかについても、丁寧に解説してくれております。
そして最後に、
「本章は少陰病血虚裏熱より四逆を生じたものの治し方を述べた章です。」
と締めくくっています。
なるほど、「表と裏の間に」籠る、ね。
裏に籠る、というのとはニュアンスが明確に違うのです。
(起こる現象も違う。)
咳や動悸など、上に出たり、下痢や腹痛、渋り腹など、下に出たりすることの、上手い説明になっていると思います。
そして”少陰の熱”とか、”少陰病血虚裏熱”という表現、これもサラッと言うけど、奥の深い説明だと思います。
他の先生のように、肝鬱+湿邪、とか、肝鬱+水邪とか脾胃の虚、とかで説明するのではなく、あくまでも
”熱(通じなくなった陽気)がどこに影響するか、そして、そこに集まる水気”
で論じる。
一つの立派なお立場だと思います。
・・・いやー、みんなスゲエなー (゜o゜)
「四逆散」というお薬 8 に続く
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2015.06.12
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これまでのお話
「四逆散」というお薬
「四逆散」というお薬 2
「四逆散」というお薬 3
「四逆散」というお薬 4 参照
では続きいきます!
今日もまた、違う先生の見解を見てみましょう。
近代の有名な漢方家の一人である奥田謙蔵先生(1884-1961)の『傷寒論講義』には、
「四逆散証のメカニズムは、もともと湿邪を持っている人が病に侵されて熱を生じ、その熱が内に籠って、気が四肢に達さないので四肢が冷える。
だから、四逆散の場合の下痢は、臭いの無い水様の下痢ではなく、脈が弱々しくて途切れそうということもない。
咳、動悸、小便出にくい、腹痛、下痢、渋り腹などの症状は、うちに水邪が停滞し、上下に動揺していることから起こる。
陽気が弱って四肢が冷える四逆湯とは真逆だよ。」
と書いてあります。
(抜粋要約 by 竹下)
奥田謙蔵先生は、もともと四国(徳島)の先生で、吉益流の古方派の考え方をベースにした先生です。
奥田先生は、傷寒論を非常に細かく読み込んだ先生として有名です。
8歳年上に湯本求真(1876-1941)先生という、超ビッグな先生がおりまして、この湯本先生と、ずいぶん親しかったようです。
(湯本求真先生については、和田啓十郎先生とともに、特別な人物なんで、いずれ書きましょう。)
まあ、この先生のように、明治政府が叩き潰した漢方医学の流れを、どうにかこうにか途絶えさせずに継続させた功労者たちが、歴史の陰にはちゃーんとおります。
東洋医学が古臭い、迷信めいたものと言われてバカにされ、国にまで保護、重用されない立場となり、一番厳しい時代だったはずです。
その時代の先生たちが、現場で、肌感覚として感じていたであろう、悔しさとか、そういう思いを想像すると、心、動かされますね。
〇
・・・まあともかく、ここでは、四逆散に関して、奥田先生は四逆散証になる人がもともと持っている「湿邪」に着眼しているようです。
面白い、そして重要な観点だと思います。
体質素因としての湿邪が無いと、同じように肝鬱と言っても、四逆散のような形をとりにくい、という指摘でしょう。
「四逆散」というお薬 6 に続く
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2015.06.11
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これまでのお話
「四逆散」というお薬
「四逆散」というお薬 2
「四逆散」というお薬 3 参照
今日は、四逆散に関して、昭和の代表的な漢方医の一人である大塚敬節先生(1900-1980)の見解を聞いてみましょう。
大塚先生は、著書『傷寒論解説』の中で、四逆散のことを、康平本傷寒論(※)の記載に倣って”回逆散(かいぎゃくさん)”と呼び、
ここに書かれていることは、前段の玄武湯、通脈回逆湯の流れからすると錯簡ではないか、という意見を述べております。
(※)・・・康平本傷寒論(こうへいぼんしょうかんろん)は、昭和11年の秋に、大塚敬節先生が東大正門前の井上書店で見つけた、傷寒論のテキストで、
奥書に「康平三年(1060年)二月十七日 侍医丹波雅忠」とあることによって、“康平本”や“康平傷寒論”の名で知られ、一説には空海が長安にて筆写して持ち帰ったものともいう。
大塚先生は、康平本こそは宋代以前のものであり、現存する最古の『傷寒論』であると訴えたが、偽書であるという説も根強い。
〇
・・・まあ、四逆散の呼び名が本当は回逆散なんじゃないか、とか、ここに書かれていることが錯簡なんじゃないかとか、どれが現存する最古の本だとか、
正~直、んなこたぁどーでもいいんですよ、我々臨床家にとっては。(笑)
臨床現場で、患者さんに対して、その方剤が使えるかどうか、これに尽きるし、大体からして、僕ら鍼灸師は鍼でやるわけだから、四逆散の考え方が、
果たして鍼灸臨床で応用的に使えるかどうか、ここにしか興味なしなのです。
まあともかく、大塚先生は、
「臨床では、傷寒論に書かれているような症状ではなく、腹診をよく診て処方するとよい。肋骨下の緊張、腹直筋の過緊張がはっきりと表れているものに使うといい。」
と述べて下さっております。
大塚先生はこのように、「柴胡」という生薬を使ったいくつかの方剤を、患者さんの腹証に応じて使い分けていたようです。
(これはテーマからずれるので、いつか気が向いたら書きましょう。)
「柴胡」の使い方の上手い先生が、漢方薬の使い方のうまい先生、という話は、以前にしました。
まあ、症状はともかくとして、腹の状態で見分ける、というのも、臨床家にとっては非常に重要な指摘ではあります。
患者さんは自分の主観に基づいて、症状その他を述べますので、それを全くの鵜呑みにしてしまうと、うまくいかない場合があります。
そんな時、体表観察に助けられます。
身体はウソつかない、ってやつね。
「四逆散」というお薬 5 に続く
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2015.06.09
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前回のお話
「四逆散」というお薬 参照
この「四逆散」という薬を何でこんなにフィーチャーするかというと、蓮風先生の話の中によく出てくるんですね。
蓮風先生の実技デモなんかで、刺鍼しながら、
「この鍼は四逆散の効果を狙っています。」
とか、よく出てくるんです。
そして、私自身の臨床上でも、そういう考えで鍼をすることが少なくない。
ですので、この薬について深い理解をしておくことは重要です。
・・・という訳で、前回は和田東郭先生の解釈と症例を紹介しましたので、今日は他の先生の見解を見てみましょう。
現代でもコンビニで売ってる”浅田飴”で有名な浅田宗伯先生(1815-1894)は、このように述べています。
『傷寒論』の四逆散の条文は、熱厥(熱がこもったことによって気が巡らない状態)の軽いやつのことを言っています。
四逆散の状態は、真武湯の状態に似ています。
『傷寒論』の中の、四逆散が出てくる章である、「弁少陰病脉証并治」というところは、少陰病の色々なパターンを示しています。
熱邪が内に籠って、うまく発散出来ずに、結果的に四肢が冷えるときは、水気までもが籠ってしまって、気血の滞りを助長するので、
下痢になったり、咳が出たり、動悸が出たり、小便が出にくくなったり、腹痛になったり、渋り腹になったりするわけです。
ここで、咳とか動悸とか小便の症状は真武湯に似ています。
腹痛とか下痢は四逆湯に似ています。
ただ、渋り腹の症状のみは、真武湯とか四逆湯の状態では出ない症状なんで、渋り腹があれば、熱厥と考え、
四逆散だと判断していいのです!
考えてみると、四逆散とは四逆湯と同じく、手足逆冷を治す薬です。
ただし、四逆湯は寒厥を治し、四逆散は熱厥を治す。
同じ四肢逆冷でも、その原因が違う時に使い分けるのです。
そして、四逆散は大柴胡湯の応用バージョンなんで、邪を散らし、気を通じさせる効果がメインなのです。
『傷寒論識』より抜粋意訳 by竹下
と、長々と述べております。(笑)
まあ、四逆散は真武湯とか四逆湯とかと似てるけど、原因が違うんだから、誤診するなよ!ってことです。
四逆散は熱、四逆湯は冷えね。
四逆散は気の停滞の実、四逆湯は陽気の虚と。
「四逆散」というお薬 3 に続く。
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2015.06.08
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こないだ、
和田東郭という人物
という記事を書きました。
そこに出てきた、有名なお薬である「四逆散」。
今日はこの薬について、まとめておきます。
四逆散が歴史上に初めて登場したのは『傷寒論』です。
ここに、柴胡、芍薬、枳実、甘草という4種類の生薬を配合した漢方薬として登場します。
『傷寒雑病論』【弁少陰病脉証并治 328条】
少陰病.四逆.其人或欬.或悸.或小便不利.或腹中痛.或泄利下重者.四逆散主之.
効能は上記にある通りなんですが(笑)、まあ簡単にいうと、カゼをこじらせたやつで、手足がキンキンに冷えて、咳したり、動悸がしたり、小便が出にくかったり、
腹痛があったり、下痢したり、渋り腹(しきりに便意を催すのに排便が ごく少量で、すぐまた行きたくなる症状のこと。)だったりする者は、
四逆散を飲むとバッチリ治るよ、と書いてあります。
四逆散の”四逆”というのは”四肢逆冷”の略といわれ、手足が非常に冷える症状のことを言っています。
ここで重要なのは、病的な冷えには大きく分けると2種類あって、
1.温める力自体がないもの(陽虚、気虚など)
2.温める力はあっても、何らかの阻害要因があり、それが万遍なく全身に及ばないもの(陰邪を中心とした邪気実によるものや気滞など)
が考えられる、ということです。
四逆散の場合の手足の冷えは、2.の場合なんです。
これについて、和田東郭先生は、
「四逆散というのは、大柴胡湯の応用バージョンです。
腹はみぞおちとか肋骨の下の部分が張って、その凝りが胸にも及ぶ位のもので、両わき腹も強く張るもの。
でも熱実じゃないから大黄、黄芩は使わず、ただみぞおちとか、両肋骨下を緩めることを主とする薬だよ。
全体の腹形、みぞおち、肋骨下の状態をよく診て、それらに悪い反応があって、なおかつ手足がキンキンに冷えるものは、
この薬にて治すといいよー。
本当に温める力が無くなった、重篤な四肢の冷えとは、脈も腹なども、全然違うよーん。」
(『蕉窓方意解』より抜粋意訳 by竹下)
と、述べておられ、また症例として、
「ある女性が、産後、意識もうろうとする症状が出た。
色々あん摩や薬などを試したけど治らない。
診るとみぞおちから肋骨の下から脇腹まで、キツク張って、強くこれを押しても弾力が無く、動悸もなにもなく、吐きそうになる感じという。
その人に、四逆散に生地黄、紅花を加えて飲ませてみたら著効したよん。
この紅花、生地黄は、瘀血に対して使ったのではなく、甘味の四逆散に組み合わせて、肝火の上逆を潤し緩める狙いで使ったよーん。」
『蕉窓雑話』より抜粋意訳 by竹下
とも述べて、四逆散の応用的な使い方も示してくれています。
「四逆散」というお薬 2 に続く。
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2015.04.05
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我々がやっている治療を、東洋医学の専門用語でいうと、「弁証論治」と言います。
「”証(しょう)”を”弁(わきま)”えて”論”理的に”治”療する」
でしたよね。
ここで、北辰会方式では、まず治療時点の「証」を弁えるときに、それが「順証」 なのか、「逆証」なのか、という判断をしています。
これは、その患者さんの病が、その術者にとって治せるものであるか、治せないものであるかの、極めて重要な判断です。
簡単に言うと、
順証・・・治せる、治っていく病
逆証・・・治せない、治っていかない病
のことです。
因みに中医学の成書では「順証」「逆証」という言い方は、外科の分野以外ではあまりしないようですが、
「一般に、表から裏へ伝入するのは、悪化する”逆”であり、裏から表へ出るのは軽快する”順”である」
とあります。
(燎原『基礎中医学』P144 参照)
因みに因みに、「順逆」や「逆順」、「順」や「逆」という熟語、単語は、古典では『黄帝内経』『難経』『傷寒論』『金匱要略』にも多数散見されます。
また、日本では江戸期や幕末の川越衡山(1758-1828)や浅田宗伯(1815-1894)が、『傷寒論』を解釈する中で、「順逆」という考え方を使って解説しています。
まあ、もともとの意味としては
順・・・ノーマルな、セオリー通りの病の進み方や組み合わせや、病が快方に向かう時の表現
逆・・・アブノーマルな、イレギュラーな病の進み方や組み合わせや、病が悪化する時の表現
というほどの意味であり、病の予後(転帰)に関していう際は、『黄帝内経素問』平人気象論(18)の
「人無胃氣曰逆.逆者死.(患者さんに胃の気がないものを”逆”といって、逆の人は死んでしまうよ)」
を、基本として理解していいと思います。
そして、順逆は当然、医者のウデによって変わってきます。
ある先生にとっては逆証であっても、ある先生にとっては順証、ということは十分にあり得ます。
これが初診時に正確に判断できれば一番いいのですが、場合によっては少し経過を追ってみないと分からない場合もあります。
仮に、治せない病を、いつまでも診ていた場合、患者さんと術者に、精神的、肉体的、経済的にかかる負担はハンパじゃないです。
また、ここの判断のユルさは、患者さんからの評価を大きく二分します。
ヤブ医者と言われるか、名医と言われるか、です。
前者であれば、辛い鍼灸師人生です。
後者であれば、幸せな鍼灸師人生です。
非常にシビアな判断が要求されます。
そして、全病気、全患者さんの中の、自分が診た場合の「順逆」の割合のうち、順証の割合を極限まで高めるのが、我々鍼灸を天職とする者の使命でしょう。
◆参考文献
『鍼灸臨床能力 北辰会方式 理論編』緑書房
『鍼灸臨床能力 北辰会方式 実践編』緑書房
『中医基本用語辞典』東洋学術出版社
『基礎中医学』燎原
論説『『傷寒論』で少陽病篇が陽明病篇のあとに位置する理由』藤平健
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2015.03.29
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前回のお話
では続きいきます!
今日は、「易」が提示する、3つの真理について。
一つ目は「変易(へんえき)」。
これは、全てのものは変化していく、という考え方です。
ギリシャ哲学のヘラクレイトス(万物は流転する)も、仏教の釈迦(諸行無常)も、似たようなことを言っておりますが、
易の場合は少し違います。
どう違うかというと、まず2つ目の「不易(ふえき)」。
変化流転していくのだが、その中に不変のものがある、と説いたわけです。
(まあこれは、ヘラクレイトスも不変のものとして”ロゴス”を挙げていますが。)
そして「易」の言う、その不変のものこそが、3つ目の「簡易(かんえき)」、つまり単純なもの(法則性)であるということです。
この単純にして深遠な法則性が、「陰陽」である、という訳です。
ここで言う単純というのは浅薄という意味ではなくて、あらゆる複雑怪奇な事象を、単純明快な論理に純化したという意味での「単純」です。
これによって、あらゆる事象が、今後どうなるか、という未来予測が出来るようになります。
因果律(原因と結果)ですね。
だから、医学に応用が出来る、という訳です。
ここが「医易同源」と言われる所以ではないでしょうか。
それも、東洋医学的な「気」への働きかけということの背景が、いかに壮大なものであるか、ということに気づきます。
また当然ながら、「占い(占術)」にも応用可能になるわけですな。
陰陽については『黄帝内経』の中にあらゆる形で説かれていますが、その変化のメカニズム、原理については『易経』なんです。
であるからして、真の東洋医学の医者であろうと思うならば、「易学」をやらないわけにはいかない、となるのです。
中国漢代、張仲景『傷寒論』原序
「陰陽に会通すれば、玄冥幽微にして変化極り難し」
「張仲景(ちょうちゅうけい)」という人物 参照
中国明代、張景岳『類経附翼 医易義』
「陰陽は『内経』に備わるといえとも、変化は『周易』に大なるはなし」
「張景岳(ちょうけいがく)」という人物 参照
【参考文献】
『周易と中医学』楊力 医道の日本社
『易と人生哲学』安岡正篤 致知出版社
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2015.03.01
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これまでのお話
小半夏加茯苓湯と船酔い
小半夏加茯苓湯と船酔い 2
小半夏加茯苓湯と船酔い 3 参照
では続きいきます!!
ここまでで、和歌山の加太の船の上で、油谷真空先生から何気なく渡された「小半夏加茯苓湯」にインスピレーションを得て、ツラツラと書いてきました。(笑)
今日は「小半夏加茯苓湯」を構成する3つの生薬(半夏・生姜・茯苓)に関して、解説しておこうと思います。
サトイモ科、カラスビシャクの根茎であり、医歯薬出版株式会社の『中医臨床のための中薬学』によれば性は温、味は辛、帰経は脾胃、とのことですが、
まあ簡単に言うと、脾の臓、胃の腑、肺の臓あたりに作用し、温め、余分な水分を飛ばしてくれる生薬です。
これは生で食べると軽い毒性がありまして、かつて蓮風先生が若い頃に生で試しに食べてみたら、ノドがカラカラになった感じがして、
呼吸するのもきつく、エライ目にあったという話をされておりました。(笑)
(因みに生で使う場合は外用薬として使い、皮膚の化膿に効果があるようです。)
そして、その半夏の毒性を消してくれるのが生姜なのです。
◆生姜(しょうきょう)
家庭に良くある、ショウガ科ショウガの根茎。
皆さんよくご存じの、しょうが焼きの生姜であります。
性は微温、味は辛、帰経は肺、脾、胃、とのことで、半夏とほぼ同じなんですが、半夏は水分を飛ばす作用が強く、生姜は胃を温める作用が相対的に強い、と見ていいと思います。
つまり半夏と生姜のコンビネーションで余分な水を飛ばしながら胃を温める、ということでしょう。
田畑隆一郎先生の『傷寒論の謎 二味の薬徴』では、半夏と生姜のコンビネーションについて
「嘔、嘔吐を治す主薬にして、停水、宿飲を除き嘔、嘔吐、喘欬、噦(えつ:しゃっくり)、噫(い:げっぷ)を治す」
とまとめて下さっています。
◆茯苓(ぶくりょう)
これはサルノコシカケ科マツホドの菌核を輪切りにしたもの。
主に松の根に寄生する茯苓は、利水作用に優れた生薬として知られています。
性は平、味は甘淡、帰経は心・脾・胃・肺・腎とあり、簡単に言うと、心の臓、脾の臓、胃の腑、肺の臓、腎の臓に作用して、停滞した水を動かし、
結果的に利尿作用だったり、鎮静作用を発揮する生薬です。
これは、分かりやすく言えば松の木の根っこに生えるキノコです。
キノコなんですが、地表に顔を出しているわけではなく、地下に生えているジメッとしたやつで、見つけにくいことから、
”幻のキノコ”
とも言われるそうです。(笑)
この幻のキノコが、みぞおちのところの深い部分に入り込んで停滞してしまった、余分な水分を動かすのです。
地面に埋まっているキノコ(菌類)が、人体の深い部分の水を動かす。
面白いですね~。(*‘∀‘)
そしてこの3つの生薬はどれも植物の”根っこ”、あるいは”根っこに寄生するもの”です。
陰陽で言うと、明らかに”陰の場”である地面の下にある”根っこ”と、そこにくっつくキノコを使って、深い部分に支えた水を動かし、結果的に全体としての気を下げる・・・。
古代中国人、面白い発想しますねー☆
小半夏加茯苓湯と船酔い 5 に続く
◆参考文献
神戸中医学研究会編著『中医臨床のための中薬学』医歯薬出版株式会社
田畑隆一郎『傷寒論の謎 二味の薬徴』源草社
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