東洋医学 伝統鍼灸 清明院

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「肺胃不和」という証 4

2018.08.24

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これまでのお話

 

「肺胃不和」という証 

「肺胃不和」という証 2 

「肺胃不和」という証 3  参照

 

 

 

◆「宣発・粛降」の根拠は??

 

 

今から約8年前、このブログ上で、東洋医学の言う、固有の意味としての「肺の臓」とかいかなるものか、という内容を、一般人や学生さんに向けて、

 

極力専門用語を使わないようにと配慮しながら、12回に渡って書きました。

 

 

今読むと、内容の稚拙さに赤面しますが、それも歴史の真実、あえて残します。(笑)

 

「肺」って何ですか?(その12)   参照

 

 

ここで重要なのものの一つとして、東洋医学の言う「肺の臓」というのは

 

1.気を全身に巡らせる働き

 

2.気を下げ、降ろす働き

 

を持っている、というお話をしました。

 

 

中医学の成書を読むと、1.の働きを「宣発(せんぱつ)」2.の働きを「粛降(しゅくこう)」と書いてあります。

 

 

今日は、ここから少し突っ込んで、

 

「肺の臓には宣発・粛降作用がある・・・ほうほう、で、その根拠は??」

 

という話をします。

 

 

別に『黄帝内経』などの古典の中に「宣発・粛降」という言葉がある訳ではないようです。

 

(まあ『素問』五運行大論(67)に”宣発”という熟語は出てきますが、これは肺の作用のことを言っている訳ではないです。)

 

 

中医学の成書では、歴代の諸種の古典を総合して、肺の臓の生理作用を示す言葉として「宣発・粛降」という見出しをつけている、ということでしょう。

 

 

で、まず宣発については、

 

1.気化によって体内の脱気を排出する

 

2.水穀の精微を全身に巡らせる

 

3.衛気を巡らせることで汗を排出する

 

という3つの作用のことを言っています。

 

 

これは、『黄帝内経霊枢』決気篇(30)にみえる、

 

「上焦開五穀味.熏膚充身澤毛.若霧露之漑.是謂氣.」

 

という文章から持ってきているのかな、と連想させます。

 

 

決気篇での内容は、「気」という概念をさらに細分化して「精・気・津・液・血・脈」の6つに分けた場合、それぞれの定義ってどうなの??

 

っていう文脈の中での、「気」の話をしている部分に出てくる話なんですが、「肺の臓」「気」への関わり(肺主気)を考えると、ここに書かれている「気」の働きを、

 

もっとも直接的にバックアップしているのが「肺の臓」である、というふうに理解した、ということでいいと思います。

 

 

続いて「粛降」ですが、単に「降」ではなく「粛清(しゅくせい)」「粛」を入れて「粛降」と名付けているのはポイントかな、と思っています。

 

(粛清、怖いですねー)

 

 

 

続く

 

 

 

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「左肝右肺」に関して 6

2014.12.15

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これまでのお話・・・


「左肝右肺」に関して
「左肝右肺」に関して 2 
「左肝右肺」に関して 3 
「左肝右肺」に関して 4  
「左肝右肺」に関して 5  
 参照

 

では続きいきます。

 

◆「左右」に関して補足


我々東洋医学がバイブル中のバイブルとする『黄帝内経素問』の中の「陰陽応象大論(5)」というところには、

「左右者.陰陽之道路也.」

と、出てきます。

 

(ちなみにこの「左右者陰陽之道路」という表現は、同じ素問の中の天元紀大論(66)、五運行大論(67)にも出てきます。)

 

この意味について、中国清代の超有名な学者である張志聡(1610-1674)先生は、弟子たちとともに書き上げた大著、『素問集注(そもんしっちゅう)』(素問の解説書)の中で、

 

「在天地六合.東南為左.西北為右.陰陽二氣.於上下四旁.晝夜環轉.而人之陰陽.亦同天地之氣.晝夜循環.故左右為陰陽之道路.」

 

と述べておりまして、これを竹下風に簡単に訳しますと、


「天地六合(宇宙)には、東南は左とし、西北は右とする。人の陰陽の二気も上下と左右を昼夜に循環している。故に左右は陰陽の道路だ~!」

となります。


(張志聡については、そのうち紹介しますね。)

 

参考サイト「中國哲學書電子化計劃」

 

 


また、以前このブログでも紹介した、中国明代の名医、張介賓(張景岳1563-1640)先生は、その著書、『類経』の中で、

「陽は左で昇る、陰は右で降りる」

と、述べました。

「張景岳(ちょうけいがく)」という人物 参照

小曽戸丈夫『意釈類経』第一冊P64 参照

 

 


いつも言いますが、張景岳先生の考え方は、あらゆる部分で蓮風先生、北辰会の考え方にも大きな影響を与えていると思います。

 

・・・とまあこのように、大自然、大宇宙と、人間(小宇宙)を対比させ、その合同性、相似性を考えていった場合、人体における「左右」というのは、壮大な意味を持ちます。

 


そして具体的、臨床的には肝か、肺か、機能か、形態か、とね。

 

そして、『黄帝内経素問』陰陽応象大論(5)には、さらにこのような記載が出てきます。

「以右治左.以左治右.」

と。

 

 


これは、

「右の病は左で治しましょうね、左の病は右で治しましょうね。」

という意味です。

 

右に悪い反応が出ていたら、左を治療し、左に悪い反応が出ていたら、右で治療しましょうね、ということです。

 


 

・・・んん?

 

これだけ、左右左右とうんちくを語ってきて、結局、最後は反対側で治療するのかよ!!

 

 

・・・そう思いませんか?(笑)

 

続く 

 

 

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「精神的ストレスで悪化、発症する病」について

2011.07.21

初診時、問診をしていくと、何か強烈な精神的ストレスがあってから、今回の症状を発症したとか、もともと慢性的にあった症状が急激に悪化したとか、

患者さんがおっしゃる事がよくある。

こういう時、東洋医学では、「肝の臓」の異常を中心として起こっている病である、という風に推論することが圧倒的に多い。

「肝」って何ですか?(その10) 参照

・・・でもこれ、なんか、短絡的な感じがする。

(と、以前は思っていた。今にして思えば、自分の考えが浅かっただけだったが。)

ここで、「強烈な精神的ストレス」と一口に言っても、色々ある。

怒った、喜んで気が緩んだ、思い悩んだ、憂い悲しんだ、驚いた、恐れおののいた、など。

まず、東洋医学の古典(『黄帝内経』『素問 陰陽応象大論(5)、五運行大論(67)』『霊枢 百病始生萹(66)』など)では、これらの感情それぞれの過剰によって、

 

影響を受ける臓腑が違う、ということが明確に述べられている。

怒りは肝、喜びは心、思いは脾、悲憂は肺、驚恐は腎、

という風に。

「七情」まとめ 参照

 


・・・ではなぜ、「精神的ストレスで発症、悪化した病」を、どれもこれも即「肝の臓の異常が中心」と考えることがあるのか、という問題。

感情別に、悪影響を受ける五臓が分かれているというのに。


これは結局、各感情の過不足によって、結果的、最終的に起こる現象が「気の動き方」の異常だからだ。

「気の動き方(方向性やスピード)」を指して東洋医学では「気機(きき)」という。


つまり、感情の過不足が起こると、五臓それぞれに悪影響を与えて、最終的には「気機」に異常が起こってくる、ということだ。


具体的に言うと、

怒れば気は上がり、喜べば気は緩み、思えば気は結ぼれ、悲しみ憂えば気は消え、驚き恐れれば気は下がる、


といった具合。

 

『黄帝内経』「素問 挙痛論(39)、刺禁論(52)、繆刺論(63)」「霊枢 邪気蔵府病形(4)、百病始生(66)」など参照


つまり、本来全身を滞りなくスムーズに周流するべき「気」が、上がったり下がったり、部分的に消えたり停滞したり、緩慢になったりと、

 

異常を起こし、結果的に気の流れがスムーズでなくなる、ということを述べている。

その時、気の流れをスムーズに是正するべく頑張る中心が、「肝の臓」なのであり、その肝の臓の働きが追い付かなくなってるから、

症状がとれない、という風に考えるのである。

だから、その細かい説明を端折って、

「精神的ストレスで悪化、発症する病=肝の臓の病変」

という風に考えることがあるワケだ。

 

・・・しかし、まだ問題は残る。

 

次回に続く。

 

 

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「東洋医学」と「数学」

2010.04.25

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清明院の患者さんは、何故か高学歴の患者さんが多いのですが、その中に、応用数理学をやっておられる方がおります。

(まあ、その方がやっておられる学問の世界なんていうのは、僕のようなズブの素人が見たら、まるで宇宙の言語のようでありますが・・。)

その患者さんと話していると、東洋医学に関する、非常に示唆に富んだ見解を得ることがあります。

(やっぱり患者さんは“先生”だね。)

この東洋医学というのは、何かと「数字」が出てきます。

「気一元の思想」の1、

「陰陽」の2、

「天地人三才思想」の3、

「東南西北」や「四神」や「四診」の4、

「五行」「五運」の5、

「六気」「六淫」の6、

「七死脈」「七竅」の7、

「奇経八脈」や「八風」や「八法」の8、

「九竅」「九宮」の9、

「十干」の10、

 


・・・などなど、挙げていけばキリがないほど、「数字」とその組み合わせのパターンで、自然界、および人体を考え尽くしています。

 


これって、単純に、なぜだろう・・・と、思いませんか?

 


まあ、古代中国人は農耕民族ですから、当然、

1.農作物の分配管理のための「計算」、

2.農地管理のための「測量」、

3.収穫時期を正確に知るための「天文学⇒暦法」

という3つの柱は、当然必要に迫られていたんであろうと思います。

 


この3つはそのまま、以下のように、数学の対象に置き換えられます。つまり・・

1.の「計算」は「量」と「構造」に、

2.の「測量」は「空間」に、

3.の「天文学⇒暦法」は「変化」に、

とね。

 


この様な考え方から、古代中国では自然発生的に

「現象を数字の変化に置き換えて、論理的に理解する」

という習慣がついていたんだと思います。

 

具体的に数学の話になると、やれ因数分解とか、展開公式とかっていう話になるけど、中国では「考え方」としては、数千年のはるか昔から、

 

生活に根付いていただろうし、詳しくはないが、実際に「算木(さんぼく)」という木を使った計算法もあったようです。

 


また、中国の数学は、西洋において数学が発展、発達する全然前から、かなり現代数学的にも正確な公式や定理が、ガンガン発表されていたようです。


現存する最も古いものとしては、『易』の洛書の魔方陣なんかが、興味深い例として有名ですね。

 


その他にも、円周率やらピタゴラスやら、大変高度な数学の問題を、西洋数学が証明する1000年以上も前から既に証明していたようです。

 

・・・ただですねー、やっぱりなんぼ美しく数学的、論理的に自然現象を切り分けてみたところで、実際の現実に起こる現象とは、若干の「ずれ」が生じることがありゃあしませんかねえ。

 


そうは言っても、一応は分けて考えなかったら、それはそれで難し過ぎますねえ・・・。(苦笑)

 

理解出来る人が限られ過ぎる、というかね・・・。

 

ここを克服(数理学を柔らかくする)する一番いい考え方として、先哲が考え出したのが、「気」であり、「陰陽論」であるのではないか、と思っています。

カテゴリ「気」

カテゴリ「陰陽」 参照

 

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「思」について

2010.02.02

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七情シリーズ、続いて「思」についてです。

人間は普通、何か行動する時、常にその前にそれを、

「しようと思って」、

行動する訳ですよね?

これが思慮「深い」行動だと、人様から高く評価されたり、思慮が「浅い」行動をして、争いごとの種になったりすること、ありますよね??

しかし、東洋医学では、思慮深かったら無条件にイイ!という訳ではなく、「思慮過度」と言って、思慮しすぎてもいけないし、思慮が不足し、

 

遂げられなくても、体に悪影響だ、と考えます。

(ここでもやっぱり、問題は”過不足”、”バランスの不調和”です。)


「思」という感情は、東洋医学では五臓の中の「脾」という臓に悪影響を与え、食欲不振やお腹が張る、といった、様々な症状を出します。

(これは西洋医学の脾臓=spleenとは違いますよ!僕はこれを何度でも言います!)

 

【参考】

『素問 陰陽応象大論(5)』「・・在志爲思.・・」

『同 五運行大論萹(67)』「・・其志爲思.・・」


・・・まあ、クヨクヨ思い悩んで、食欲不振や消化不良、こういう経験、思い当たる人も多いのでは?

ちなみに東洋医学の言う「脾」というのは、いわゆる現代医学の言う、「胃腸の働き」そのものを指して言うことが多いです。

さらに、東洋医学では、短期記憶や、血流そのものや、血の生成などにも大いに関与する、と考えます。


(ざっくり言うとね。)


また、「思えば気が結す」と言って、思い悩んだ状態が長く続くと、全身の血行が悪くなり、ひどければ出血傾向(不正出血、鼻血etc..)の原因にもなります。

 

(『黄帝内経素問 挙痛論(39)』「・・思則氣結.・・」)


また、飲食の不摂生などによって、先に「脾の臓」(胃腸の働き)が弱って、結果として精神的に思い患いやすくなる、という

「逆のパターン」

もあります。

(これけっこう大事!)

現代人は、食生活のメチャクチャな人があまりにも多い気がします。

(時間といい、食べてるモノといい、です。)

現代は、昔と違って、欲望のままに簡単に何でも食べるものが手に入る、まさに飽食の時代ですので、これが、あらゆる病の原因となっているケースは非常に多いと思います。

(しかも欧米型の、添加物、着色料満載の加工食品ばっかり!)

・・・気を付けたいものですね。(苦笑)

江戸時代中期、観相学(南北相法)で有名な水野南北(1760-1834)は、

「食は運命を左右する。」

と言って、節食こそが運気を好転させる秘訣だ、という意見を述べています。

彼がもし現代にいたら、現代人の食生活を見て、どういう感想を持つでしょうか・・・。(苦笑)

・・・次回は「悲」と「憂」についてです。

 

 

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