お電話
03-6300-0763
10:00~21:00(完全予約制)
2010.06.24
毎日毎日患者さんを診ていますと、たまに面白いことをおっしゃる患者さんがいます。
初診の時、
「私は肝腎陰虚証(かんじんいんきょしょう)なので、お願いします!」
・・・とか、
「病院で、昔”貧血”と言われたことがあって、東洋医学的には”血虚”だと思ったので、三陰交にお灸をしてますので、据えて下さい。」
・・・とか、
「私は独学で中医学を学んでいまして、自分で漢方を服用して大体の症状は治せるのですが、先生の場合だとどういう診立てになるのか興味があってまいりました。」
・・・とかです。orz
大概そういう方に、
「ほー、それで結局、現在はどうなっていますか?」
と聞くと、なんだかんだいって結局は治ってない、ということが多いように思います。
・・・これ、何でですかねえ?
おかしいですねえ??
いっぱい「独学」したのにねえ???
あのー・・・ですねえ、コレねえ、正直ですね、そしたら、鍼を売ってあげますから、ご自分で「独学で調べて」「知人の方にでも」やっていただいたら如何でしょうか?と、
申し上げたくなります。
(苦笑・・・もちろん言いませんよ。険悪ムードはやだしね。まあやんわりとお勧めはしますがネ。)
コレは別に僕らの職業に限らず、現代は様々な分野の専門家の方々が、皆さん頭を抱えていらっしゃるところなんじゃないかと思います。
現代はかつてない情報化社会、知りたいことが瞬時に、インターネットを通じて知れる世の中です。
例えば自分の症状や、病院で告げられた病名をPCに打ち込んで検索すれば、その状態の人によく使われる漢方薬やツボの名前が即座に分かり、
それらをやってみようと思えば簡単に出来ます。
・・・で、その漢方薬を飲むなり、そのツボを刺激するなりして、もし治れば、治ってしまえば、その人はあたかも自分が専門家になったかのような錯覚に、
徐々に徐々に陥ることがあります。
(錯覚ですよね)
まあ、陥ったまま、幸せに暮らしていただければ何も問題はないのですが、僕らのように、いやしくも「専門家」を標榜して生計を立てている人間の前に来て、
冒頭のような態度を最初からとりにくるのはいかがなもんでしょうか。
普通に考えてこれは、”失礼”、”無礼”ではないでしょうか。
よく言われることですが、医療者と患者さんというのは、治療効果を最大限に高めるためにも、なるべく親しくなって、「信頼関係」を築かなくてはなりません。
その方がいいに決まってます。
というかそうしないと「病治し」というのはなかなか上手くいきません。
僕の経験からも、それは明らかです。
ですから、こちらもなるべく患者さんの悩みを詳しく聞くし、それに対してそれぞれの専門の見地から、最大限のご提案をさせていただこうと思っている訳です。
いつもブログに書いているように、僕の場合であれば”東洋医学”という、独特の人体のとらえ方をする医学の見地から、西洋医学の場合であれば、
最新の見解や研究データをもとに、”最善”を尽くそうとする訳です。
なのにいきなり初対面から、
「俺が(私が)こう思うからこうやれ。」
と来られても、信頼関係も、プロの技術も、へったくれもないですよ?
「あのー・・、なにか勘違いしていませんか?」
・・ってなるだけです。
偉そうに言う訳ではもちろんなく、我々の業界に限らず、素人と専門家は明らかに違います!
僕もこれまで、医療関係はもちろん、車やバイク、建築、スポーツなどなど、あらゆる、その道の専門家と接する機会を持ってきましたが、
その知識の深さから経験値から、素人とはまっっっったく「別モノ」です。
我々専門家というのは、国が定める教育課程を修了し、国家資格を取得し、なおかつ数年から十数年にわたる実地臨床の経験を経て、自信がついた段階で、
ようやく開業している訳です。
(借金コンクリートでガチガチになってまで・・です。(笑))
そこに至る努力や苦労なんて理解できない、というようなら、わざわざそういうところに相談に行く必要なんてないと思います。
時間とお金と労力の無駄です。
清明院は、大切な人を大切にします。
患者さんが人間であるように、僕らも人間なんですから。
「感情」というものがあるんです。
・・・なんか今日は愚痴ブログみたいになっちゃったけど、コレって大事なことだと思います。
読者の皆様、1日1回、こちらのバナーをそれぞれ1クリックお願いします!!
2010.06.03
今日は、こないだお伝えした、大森にある東京衛生学園から、「治療体験実習」の学生さんがお見えになりました!
一体どんな学生さんが来るのかな~・・と思っていましたが、大変礼儀正しく、勉強熱心な方がやってきまして、一安心。
・・・やっぱ学生さんはいいですね~♪
(笑・・・そういう、ね。)
「目」がキラッキラしとる!
治療が終わってからも、なんやかんやと、業界のこと、北辰会について、中医学について、僕自身の学生時代についてなどなど、色々と話しているうちに、
6時に来たのが、あっという間に9時になってしまいました。(笑)
まあ僕個人的には、学生のうちは、興味あることを片っ端からやってみる、興味ある治療法を片っ端から受けてみる、友達を台にして実験してみる、
それの繰り返ししかない、と思います。
それを一生懸命やってるうちに、方向性なんておのずと決まってくるもんです。
時間は容赦なく経っていき、いつかは決断を迫られる訳ですから。
迷ってるヒマがあったら、とにかく走ってみるしかない、と思います。
(僕自身もそうでした。)
・・・結局、これは鍼灸に限らずですが、何が絶対に正しいなんてないし、何が一番いい、というのも、究極的にはない、と思います。
「いや、そんなことないぜ竹下!俺がやってることこそが一番正しいのだ!」
・・・という声が聞こえてきそうですが、それに対して僕は即答で、
「それは”あなたにとって、相対的に”でしょ?」
と言いたいです。(笑)
自分が見ている「世界」というのは、あくまでも「自分ビュー」でしかないんです。
(まずそこを自覚しないことには話になりませんが・・。)
ということは、その中で得た、その人なりの”正解らしきもの”というのは、必ずしも万人の正解ではないよ、ということです。
「陰陽論」というのは森羅万象の法則性をとても美しく説明する哲学です。
(・・・と、僕は思っています。)
それを行ずる存在である鍼灸師が、ある考え方や論のみを絶対視する、ということは、そもそもおかしな話です。
強力な説得力の裏には、強力な勘違いや思い込み、よく言えば”強力な仮説”が必ずある、ということです。
しかしそれで実際にものごと、現象が変化する、要はそこに美しさを感じ、信じるに足るものだと思うか、胡散臭さを感じるか、それはその人それぞれの「感性」の問題です。
鍼灸学生さんにおかれましては、自分が前者の立場をとれるものと巡り合ったならば、あとはそれを徹底的に追求したらいいんじゃないでしょうか。
(別に無理にそうしなくてもいいけど・・・です。(笑))
次回はどんな学生さんが来るのか、あるいはもう来ないのか、なかなか楽しみな感じです。(笑)
明日もガンバろっと。
読者の皆様、1日1回、こちらのバナーをそれぞれ1クリックお願いします!!
2010.05.27
・・・さて今日から「心(しん)」という臓について、考えていきましょう。
これを読んでいく時に注意してほしいのは、やっぱり西洋医学のいう「心臓=heart」と、東洋医学のいう「心の臓」というものとは、全く別のものであると考えたほうがいい、ということです。
東洋医学と西洋医学は、まったく違う角度、まったく違う哲学をもって、「人体」という小宇宙をみています。
だからここを初めから混同してしまうと、後々、ワケが分からなくなるのがオチなんです。
(僕自身がそうでした)
しかし、みている角度、哲学が違う、とは言っても、その対象は「人間」な訳ですから、その解釈が
”部分的には”
オーバーラップしてくることも当然あります。
これから述べる、「心の臓」の働きの中にも、そういう部分はあります。
でも、そこだけを強調して採り上げて、両医学の融合が出来るか、と考えると、それは限りなく不可能に近い、というか無理、少なくとも現段階では無理にそうしない方がいい、と僕は考えています。
まあ、コレ言いだすとまた前置きが長くなりそうなんで、さっさといきます・・・。苦笑
☆心は君主
東洋医学では、体を一つの国に例え、五藏六府をそれぞれ官職に例える考え方があるのですが、心というのは君主(国王、王様)と言われます。
(『黄帝内経素問』霊蘭秘典論(8)です)
国王がしっかりしていれば、国、国民は安定しますよね。
反対に、国王が不安定だと、国民も不安定になります。
このように、心がしっかりと機能していれば、体は安定し、滅びることはなく、心に異常があると、体は不安定で、滅びる方向に向かいます。
つまり病になる、ということです。
なぜ、心が君主、国王なのかというと、大まかに言うと、以下の二つの機能を「心の臓」が持っているためであります。
1.五臓六腑、全身に気血を巡らせるポンプ作用
(書籍によっては主血作用、と記載があります。谷口書店『基礎中医学』P71)
これは西洋医学の考え方ともオーバーラップしています。
しかし、東洋医学的な「心の臓」が巡らせるのはあくまでも「血液」ではなく「気血」なのであり、巡る対象は「五臓六腑のある、東洋医学の生命観に則った」全身なのです。
生まれた時から亡くなる時まで、ドックンドックンと、心は気血を全身に送り出し続けます。
「心の臓」のこの働きがなかったら、人間は生きていられません。
2.心は神(しん)を蔵するため
ここは、東洋医学独特です。
後ほど詳しく説明しますが、ここでいう「神(しん)」というのは、精神的な働きの中核をなすもの、と考えればいいと思います。
以前、「七情」についてで述べたように、人間は常に、実に色々な精神刺激にさらされていますが、それに対して、正常に反応できるのは、
この心が蔵する「神」という、「形のないもの」が正常に働いていれば、の話なんです。
この「神」に異常が起こると、ものごとの判断が正常に出来なくなったり、精神面、肉体面において、あらゆる異常が起こってきます。
つまり、心は
・全身に気血を休まず供給するポンプ(カラダの働きのかなめ)
・精神的な働きの中枢(ココロの働きのかなめ)
という2点から、「生命」というものを主宰する、”君主”である、と、東洋医学では位置付けられています。
この認識が、東洋医学の言う、「心の臓」というものを理解する出発点になります。
(次回に続く)
読者の皆様、1日1回、こちらのバナーをそれぞれ1クリックお願いします!!
2010.04.29
これまでのお話・・・
・・・「肝」というのは、五臓六腑の中の一つです。
東洋医学の言う、五臓と六腑には、それぞれに独特の働きがあり、それらがうまく協調しあうことによって、正常な人間の機能が保たれます。
これは、西洋医学の言う「内臓=organ」とは違う!ということは、何度も何度も、繰り返し繰り返し、述べている通りです。
(笑・・・しつこい?)
では東洋医学の言う「肝」というのは、どういうもので、何をしているところなんでしょうか?
まず、中医学の教科書的には、肝には、「疏泄(そせつ)」という重要な働きがあります。
(”疏泄”という単語の歴史的経緯、変遷についてはまた色々とあるんですが、ここでは省きます。)
これは要するに、
全身を流れる「気(き)」や「血(けつ)」という、流動物を、足らないところには補い、渋滞があったら取り除く(通じさせる)、
という、肝の臓の重要な働きのことです。
これがあるから、少々の滞りや過不足であれば、「肝の疏泄機能」によって体が勝手に改善してくれる、という訳です。
次に重要なのが「蔵血(ぞうけつ)」という働きです。
これは読んで字のごとくです。
「血(けつ)を蔵する」訳ですから、体の正常な状態を維持するのに欠かせない「血」を、不足したところに補うためには、常にどこかに蓄えていないといけません。
「肝の臓」は、それ自体に”血を蓄える”という、重要な働きを担っております。
上記の2つは、東洋医学的「肝の臓」の機能の中でも最も重要な2つの働きです。
ちゃんと「疏泄」するためには、必ず十分に「蔵血」してないといけないし、たとえ「蔵血」だけしてても、「疏泄」しなかったら意味がありません。
この2つの働きは、「肝」という臓の、内向き(蔵血)と外向き(疏泄)の2つの機能として、「肝の臓」という臓の働きを考える上で、とても重要な「陰陽バランス」なのです。
ではそれ以外の働きはというと・・・それは次回。
読者の皆様、1日1回、こちらのバナーをそれぞれ1クリックお願いします!!
2010.03.29
昨日、28日の日曜日は、いつも通り(社)北辰会関東支部の定例会に行ってきました!
(会場は代々木)
今回の内容は、午前中は基礎コースにて竹下謙先生による「臓腑経絡学総まとめ」、臨床コースでは後藤りゅう先生による「中医学総まとめ」、
午後は基礎クラスと臨床クラス合同で、北辰会本部の副学術部長である堀内齊毉龍(さいりゅう)先生による「空間論の基礎から実技」と、
盛りだくさんでした。
僕も「空間論の実技」の時にひと班指導させていただきました。今回はいつになく受講生の先生方のやる気を感じて、大変イイ刺激になりました。
東風鍼灸院HP(竹下謙先生)
天晴堂鍼灸院HP(堀内齊毉龍先生)
・・・2件とも清明院HPのリンクからも入れます。
堀内先生は、いかつい名前を名乗っていらっしゃいますが(笑)、大変上品で、頭脳明晰な、男前の先生です。
また、(社)北辰会から最近出た『上下左右前後の法則』、『東洋医学の宇宙』という2冊の専門書の編集総まとめをなさった、大変「仕事の出来る」先生でもあります。
個人的には、治療院にも御自宅にもお邪魔させていただいたことのある、とても頼りがいのある、お世話になっている先輩です。
今回の定例会は、午後からは以前このブログにも登場した、たまたま往診で東京に来ていた、本部の島内薫先生も駆けつけて下さいまして、
堀内先生とお二人で絶妙のトーク、「大阪のノリ」を見せていただきました。(笑)
終わった後は、再び飲み会・・・。
話した内容はともかく、まあ、充実した休日でしたな。(笑)
2010.03.09
前回に続き、花粉症に対する、東洋医学の考え方を簡単に紹介してみたいと思います。
東洋医学には、「花粉症」という概念がありません。
もっと言うと、「アレルギー」という概念すらありません。
(最近の中医学の教科書にはあるかもしれませんが、伝統的には、という意味です。)
・・・でも、治療法はいくらでもあるのです。
どうしてでしょうか。
まず、花粉も、ホコリ(ハウスダスト)も、自然界にはあって当たり前です。
花粉やホコリ自体に毒があるなら、杉林の中に住んでる人とか、掃除業者さんとか、どうするんでしょうか。
即死しますよね。
(苦笑・・・まあ掃除業者の方は、掃除する場所によってはそういうこともあるでしょうが。)
要は、それ自体は毒を持っている訳では無い物質(異物)に対して、体の側が過剰に反応してしまい、鼻だの喉だのに異常を起こす、その体の側に、
すでに何らかの問題があるはずだ、と考えるわけです。
そしてこの場合、体の「何がどう」おかしくなっているか、ということを明確に理解しなくてはいけません。
ここまでは、東洋医学も西洋医学もある意味同じです。
しかし、人体に対するそもそもの認識の仕方、分析方法が異なるため、ここから先は大きく違ってきます。
東洋医学では、「春先」という時期には、五臓の中の「肝」という臓の機能が盛んになる、と考えます。
(ただこれは、あくまでも「生理的に」盛んになる、という話で、正常な人であれば別に体が病気を起こすことはありません。)
「肝」という臓の働きが盛んになると、正常であれば全身に「気血」が充実、充満して、ある意味、パワー全開、元気溌剌状態になります。
皆さんの周りにも、この時期、妙にハイテンションで活発な人、いませんか?
自然界においても、「春先」という時期は、冬眠していた動物たちは動き出し、草木は芽吹き、いわゆる静から動へ、全てのものが大きく変化する時期でもあります。
じゃあ、パワー全開なのに、なんであんなことになるのかというと、花粉症のくしゃみにしても鼻水にしても、涙や目の痒みにしても、
要は「花粉」という異物を洗い流そうとする体の反応ですよね?
当然、目や鼻やのどの粘膜に花粉などの異物がくっついたら、体の中のお水がそこに集まって、一生懸命洗い流そうとします。
しかしそれを「過剰にやり過ぎてしまう」から、不快な症状が出る訳です。
東洋医学では、五臓の中の「肝」という臓が、体に入ってきた異物を処理する際の要となる、と考えます。
ですので、主にこの「肝」の臓の働きが「過度に」盛んになり過ぎたり、あるいは「肝」以外の臓でも、その働きが何らかの原因(飲食の不摂生、睡眠不足など)によって弱っていたり、
亢進したりしてすると、自然界にもともとある、本来なんでもないはずの「花粉」というものに対して、過剰に反応し過ぎてしまうことがあります。
この状態を現代医学では「花粉症」と呼んでいるわけです。
・・・で、実際の鍼治療では、「肝の臓」以外にも、体の「どこがどう」おかしくなってるか(アンバランスを起こしているか)を東洋医学的に考え、
それを整える(平均化する)ように治療します。
そうすると、辛い症状が非常に軽くなる、あるいはまったく出なくなる、というケースが、実際によくあります。
要は、東洋医学では「花粉症」に対して、体の外ではなく「中」のアンバランス、とりわけ「肝」という臓に注目しつつ、それらを整えることを目的として治療をする訳です。
これの具体的なやり方については、無数にあるし、専門的過ぎるので割愛しますが、ポイントは「肝」を落ち着かせることと、体の「上下」のアンバランスを整えることが重要になります。
つまり、花粉やホコリの存在自体はどうしようもないんだから、それに対して「普通に」反応できる体の状態を作ろうぜ、ということです。
・・・僕としては、これまでの経験上、「花粉症」の治療に対する、東洋医学の力は絶大だと思います。
知らなきゃホントに損します。(笑)
毎年毎年辛い症状に悩んでいる方、是非一度ご相談下さい。
読者の皆様、1日1回、こちらのバナーをそれぞれ1クリックお願いします!!
2010.02.28
今日は、中医学の基本としてよく語られる「弁証論治」とは何か、について書きたいと思います。
僕もコレ、二十歳の頃、最初に本で読んだ時は、何やら難しそうな熟語だな~・・ワケ分かんなそうだな~・・と思いました。
そいで、辞書で「弁証」と調べてみたら・・・
「弁証法とは、哲学用語であり、世界の事物の変化や発展の過程を本質的に理解するための方法、法則であり・・・」
な~んて出てきて、ますます難しそ~・・!タスケテ~!もう無理~!!ってなっちゃいました。(苦笑)
・・・でも、あとからよくよく冷静に考えたら、実は「弁証論治」という言葉を理解すること自体は、意外と簡単なことでした。
まず、上に挙げたような、いわゆる哲学用語の「弁証」という言葉と、中医学の言う「弁証」という言葉は、意味が違います。
全く無関係でもない、という話もあるんだけど、まずは別物、と考えた方が圧倒的に理解しやすいと思います。
東洋医学では、「治療する、その時点における病理状態(病態)そのものや、病態の本質」のことを「証(しょう)」と言います。
まずこの「証」を判断してから、それに基づき、「論理的に」治療を進めることを「弁証論治」と言います。
まさに、
「証を弁(べん)じて治を論ずる」
訳ですネ。
東洋医学、中医学の言う「弁証論治」というのは、そういう意味であります。
ちょっと難しく(というか詳しく)言えば、
「様々な東洋医学独特の診察法(四診法)のような、具体的な分析方法に基づき、様々な東洋医学独特の手法(鍼灸、漢方薬など)によって、
性質の異なる病変を、論理的に解決する方法、過程」
のことです。
〇
大事なことなので、ここでさらに説明を加えます。
患者さんは、鍼灸院に訪れた時に、その時その場で突然、「今まさに」症状を発症した訳ではありません。
鍼灸院にかかるまでの間には、まず、これこれこういう体質を持って生まれ、これこれこういう条件がそこに加わったことがきっかけとなって、今回の症状を発症してから、
次にこうなって、次にこうなって、そして最後にこうなったから、今の状態に至った、だから診てもらいたいのだ~!という、言わば「病の歴史」というものがあります。
これを「病歴(既往歴・現病歴)」と言います。
この「病の歴史(病歴)」を、発症以前のそもそもの体質も含めて、まずは細かくお伺いし、それがなぜそうなったのか、「東洋医学的に」分析し、
その結果として、今、この瞬間が、「東洋医学的に」どのような状態なのか、それを表わすのが「証」です。
例えるなら、治療するその時点での「病気の断面図」のことが「証」です。
「証」を明らかにすることを「弁証(べんしょう)」と言います。
そして、「論治」ということは、それを「論理的に治療する」訳ですから、先ほど言った「病の歴史」がキッチリと東洋医学の理論でもって、ピシッと分析出来てなければなりません。
なのでよく、中医学の成書では
「弁証は論治の根拠であり、論治は弁証の目的である」
なんて言われます。
まあ、それがより正確に、的確に、シャープに出来るようになるために、わざわざ日曜日の度に勉強会に行ったり、飽きもせずに何冊も本を読んだりしてるんです。
僕らは毎日毎日、こういうことをやっている訳です。
決して超能力者なんかじゃないし、鍼が効くということは、何にも不思議現象、超常現象ではないんです。(笑)
もちろん、この医学の大前提としての「気」や「陰陽」という、東洋の偉大な自然哲学を「あるものと考えて」こそ、の話ですけどネ。(苦笑)
読者の皆様、1日1回、こちらのバナーをそれぞれ1クリックお願いします!!
2010.02.25
**********************************************************************************************
↑↑↑ ↑↑↑
この2つのバナーを、1日1回クリックに是非ご協力下さい!<m(__)m>
クリックしていただくと、ランキングポイントが上がります!!
**********************************************************************************************
前回まで、
ⅰ.「表裏」
ⅱ.「寒熱」
ⅲ.「虚実」
という、3つのテーマについて書いてきました。
そして、東洋医学ではこれらの考え方を使って、患者さんの
「どこに(病位)」
「どういう(病性)」
病があり、
「その勢い(病勢)」
はどうなのかを、まず大まかに診断するんだよ、ということを述べました。
この考え方(診断方法)を、
「八綱弁証(はっこうべんしょう)」
と言い、これは東洋医学的な鍼灸治療をする上で、絶対にはずせない診断法(弁証法)の一つです。
歴史的には、清代の程国彭(ていこくほう)が1732年に撰した『医学心悟』の中の「寒熱虚実表裏陰陽辦」に説かれ、
その考えは1742年、呉謙の『医宗金鑑』にも引き継がれ、現代中医学の弁証法の基本の一つになりました。
なぜ「八綱」と言うのかというと、組み合わせとして、
「表か裏か」の2、
「寒か熱か」の2、
「虚か実か」の2
を掛け合わせると2の3乗となり、2x2x2=8パターンが得られます。
すなわち、全部は書かないけど、「表、寒、実」とか、「表、熱、実」・・・とかって組み合わせていくと、8通りの組み合わせが得られ、
それを「八綱(はっこう)」と呼び、大まかに病気を分類することが出来る訳です。
因みに、ここでしっかりと断っておきますが、上記は私の個人的な考えです。
中医学の教科書には、どの本にも八の要素を並列に並べて、陰陽、表裏、寒熱、虚実で八綱、という風に解説されていますが、個人的には上記の説に一票、という感じなんです。
(何の本で読んだか忘れたけど。。(^^;))
これは私の「八」に対する解釈にもかかわってきます。
奇経八脈の八、八法の八、八卦の八にしても、やはり総綱としての「二(陰陽)」があり、それの組み合わせや現れ方の違いのために他の「六」がある、
と考えた方が、個人的には納得できることが多いからです。
(まあ些末な話っちゃ話だけどね)
〇
患者さんの病気のパターンが、この8パターンのうちのどこに収まるか、ということは、我々にとってとても大事です。
なぜなら、これによって「治療の大まかな方向性」が決定づけられるからです。
病気というのは、患者さんが訴える、表面的な「症状」にのみとらわれて、治療や診断そのものが右往左往していては、なかなか治っていきません。
大事なのは、その症状を出さしめている本質は何か、要は病の本体は何なのか、ということを常に意識して治療を進めることなんです。
そうしないと、治るものも治らないんです。
これを中医学では「治病求本」といい、2500年前の東洋医学のバイブルである『黄帝内経素問』陰陽応象大論(5)に「・・治病必求於本.・・」とある通りです。
治療を技術論と考えると、本当に治療のうまい先生ほど、この「八綱弁証」が正確で、かつブレないんだと思います。
・・・ですから治療経過の中で、多少の症状の増減はあろうと、方向性が正しい訳だから、結果的には徐々に徐々に、確実に治っていく訳ですね。
ここが正確であれば、術者もフラフラすることなく、一貫性のある治療を進めることが出来るわけです。
まあ、ちょっとこのシリーズは難しかったかもしれないけど、とても大事な考え方なので、あえて書きました。
・・・ところで、清明院のHPにもこのブログにも、よく「弁証(べんしょう)」とか、「弁証論治(べんしょうろんち)」という言葉が出てきます。
コレ、聞き慣れませんよね?次回はそのお話。
〇
読者の皆様、1日1回、こちらのバナーをそれぞれ1クリックお願いします!!
2010.02.15
昨日は、(社)日本東洋医学会、関東甲信越支部、東京都部会に行ってきました。
(会場は蒲田にある東邦医大)
(社)日本東洋医学会HP
http://www.jsom.or.jp/html/index.htm
午前中は「清代宮廷の漢方治療」というテーマの講義と「漢方薬の効果の経路」、午後は「中医学と盗汗(寝汗)」、「鍼灸治療の可能性」というテーマで、
医師の先生方による講義でした。
(社)日本東洋医学会は医師が中心となっている学術団体です。
その歴史は古く、60年も前からあります。
(社)北辰会とも友好的であり、代表理事である藤本蓮風先生も、これまでに大きな学会に何度か座長やシンポジストとして参加しています。
この日の講義もいい内容でした。
詳しい内容は難しくなるので書きませんが、感想としては、医師たちの中にこのように東洋医学を学び、活動する人たちが増えてきていることをとても嬉しく感じました。
若い先生もちらほらいて、今後ももっともっと東洋医学を学ぶ若い医師の先生が増えて来ることを期待したいな~、と思いましたね~。
そうなった時に共に頑張れるように、僕ももっと頑張らねば・・・。
読者の皆様、1日1回、こちらのバナーをそれぞれ1クリックお願いします!!
2010.02.05
七情シリーズ、ラストは「驚」についてです。
「驚」という感情は、前回の「恐」という感情とセットで書かれることが多いです。
「恐」について 参照
ダメージがいく臓は「心」と「腎」であります。
【参考】
燎原『基礎中医学』P118
『黄帝内経素問 経脉別論(21)』「・・有所驚恐.喘出於肺.淫氣傷心.・・」「・・驚而奪精.汗出於心.・・」
『同 挙痛論(39)』「・・驚則心無所倚.神無所歸.慮無所定.故氣亂矣.・・」
また、「心の臓」「腎の臓」以外にも、少陽、陽明、少陰、肝の熱など、あらゆる病機で、「驚」という現象が起こることを、『黄帝内経』では教えてくれております。
また、当然ながら「驚」と「恐」の両者は違います。
「驚」・・・驚く、という感情は、多くは一過性のものです。
ある事柄があって、それに対して2年も3年も継続してずーっと驚き続けている人、見たことあります?
それとか、
「今まさに驚いているところです。」
ということを、驚いている最中に人に話したり、出来ますか?
・・・というのは、例えば物陰から急に飛び出して
「ワッ!」
と脅かされた場合、一瞬、
「うわっ。」
となって「驚」という感情変化をし、その後、腰が抜けたり、ドキドキしたりしますが、すぐに落ち着きますよね?
その直後に大体みんな、
「あ~ビックリ”した”~!!」
っていうのは、すでに過去の話ですよね?
それを考えれば分かるように、「驚」という感情変化は、それ自体が「一過性のもの」という特徴を持っています。
それに対して「恐」・・恐れる、という感情は、その対象に対して徐々に蓄積されたり、逃れようのない過去のトラウマ(心の傷)に起因していたりします。
ただし、じゃあ「驚」の方が体に与える影響が軽いかと言うと、そうではありません。
「一過性」であるだけに「慣れにくい」という面があり、同じパターンの事柄に何度も「驚く」という面があります。
また、最初に書いたように、「驚」は「腎の臓」にも悪影響を与えつつ、「心の臓」にも悪影響を与えます。
「心」については「喜」のところで出てきました。
☞ 「喜」について 参照
「驚」は主に「心」の、正常な思考をつかさどる機能を障害するため、驚いた時、ドキドキし、訳のわからない行動や言動をしたりする訳ですね。
それを考えると「驚」も「恐」もイヤなもんですねえ・・。(苦笑)
そしてこれら2つが、時にセットで生じて、人体の正常な状態を犯す、と東洋医学では考える訳です。
ちなみに、『黄帝内経 素問』の挙痛論(39)という項には、
「驚けば気が乱れる」
という記載が出てきます。
逆に言うと、何らかの別の原因で「心の臓」や「腎の臓」が弱っていたり、他臓とのバランスが悪くなっていたりすれば、大したことない刺激にも「驚きやすく」なってしまい、
全身の気の流れが乱れやすくなってしまいます。
これが酷くなれば、いわゆる「精神病」と言われるような状態となっていきます。
また、デカルト科学で有名なデカルトさん(1596-1650)は、その最後の著作である『情念論』の中で、”基本6情念”なるものを定義し、
そのトップに「驚(驚き)」を挙げています。
この”基本6情念”というのは、デカルトさん曰く、あらゆる情念の基本となるものとし、色で言えば原色にあたるもの、と考えているようです。
それのトップに「驚」がきているのは大変興味深いですね。
・・・まあ、これ以上は難しくなるので解説はしませんが、興味ある人は読んでみて下さい。(笑)
次回は、「七情について」を、簡単にまとめてみようと思います。
読者の皆様、1日1回、こちらのバナーをそれぞれ1クリックお願いします!!
2012.07.08
2016.05.09
2016.04.12
2016.04.28
2015.06.04
2012.12.23
2014.02.17
2014.04.26
2024.11.07
2024年10月の活動記録2024.11.01
2024年 11月の診療日時2024.10.10
清明院15周年!!!2024.10.09
2024年9月の活動記録2024.10.01
2024年 10月の診療日時2024.09.19
2024年8月の活動記録2024.09.01
2024年 9月の診療日時2024.08.03
2024年7月の活動記録2024.08.01
2024年 8月の診療日時2024.07.10
患者さんの声(70代女性 目の痛み、不安感)2024.07.05
2024年6月の活動記録2024.07.01
2024年 7月の診療日時2024.06.05
2024年5月の活動記録2024.06.01
2024年 6月の診療日時2024.05.10
2024年4月の活動記録2024.05.01
2024年 5月の診療日時2024.04.13
(一社)北辰会、組織再編。2024.04.02
2024年3月の活動記録2024.04.01
2024年 4月の診療日時2024.03.14
2024年2月の活動記録2024.03.01
2024年 3月の診療日時2024.02.15
2.17(土)ドクターズプライムアカデミアで喋ります!2024.02.04
3.10(日)(公社)群馬県鍼灸師会で講演します!2024.02.03
3.3(日)「浅川ゼミ会」にて講演します!2024.02.02
2024年1月の活動記録2024.02.01
2.25(日)順天堂東医研、第5回特別公開シンポジウム「日本とインドの伝統医学」に登壇します!!2024.02.01
2024年 2月の診療日時2024.01.11
2023年、9月~年末の活動一覧2024.01.05
診療再開!!2024.01.01
2024年 1月の診療日時2023.12.30
2023年、鍼療納め!!2023.12.21
(一社)北辰会、冬季研修会のお知らせ2023.12.01
2023年 12月の診療日時2023.11.26
患者さんの声(60代女性 背部、頚部の痒み、首肩凝り、高血圧、夜間尿)2023.11.25
患者さんの声(70代女性 耳鳴、頭鳴、頭重感、腰下肢痛、倦怠感)2023.11.22
12.3(日)市民公開講座、申し込み締め切り迫る!!2023.11.21
今週からの講演スケジュール2023.11.16
日本東方医学会学術大会、申し込み締め切り迫る!!2023.11.01
2023年 11月の診療日時2023.10.10
清明院14周年!!2023.10.04
12.3(日)市民公開講座やります!!2023.10.01
2023年 10月の診療日時2023.09.23
第41回、日本東方医学会学術大会のお知らせ2023.09.22
第55回、順天堂東医研に参加してきました!2023.09.21
第27回、日本病院総合診療医学会で発表してきました!!2023.09.20
Dr’s Prime Academiaで喋ってきました!2023.09.01
2023年 9月の診療日時2023.08.18
第54回、順天堂東医研で喋ってきました!2023.08.17
順天堂東医研の学生さんと、「森のくすり塾」へ。2023.08.16
診療再開!!