東洋医学 伝統鍼灸 清明院

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「不安」と「症状」

2010.04.03

こないだ、高齢の女性患者さんを治療していて、治療中に妙に不安そうな表情を浮かべておられることに気付きました。

 


そこで、

「何かあったんですか?」

と尋ねると、

「ええ、実は病院で、骨密度が急激に下がってきているって言われて、もしかしたら大変な病気になってしまっているかもしれないから、徹底的に精密検査しよう、って言われちゃったんです・・・。」

とのこと。

 

「あホントにー・・。で、検査はいつなの?」

と聞くと、

「それが病院の都合で、2週間も先なんです・・。」

とおっしゃいました。

・・・上記の話、皆さんはどうお感じになりますか?

 


この2週間の間、患者さんにしてみたら、不安で不安でたまりませんよね?

 


近年では「終活」なんていう言葉もあるように、「高齢者」というのは、大体の方が友人や肉親の死などを通じて、自分自身の「死」というものに対しては、


少なからず意識しながら日々生活されています。

 

(若い人に比べれば、です。)

 


表現の仕方こそ、人によって違いますが、「死」そのもの、は避けられないとして覚悟しているとしても、自分自身の

 

「死にざま」「死に方」

 

については、各人がそれぞれに、

「寝たきりになって周りの家族に迷惑をかけたくない。」

だったり、

「痛みや痒みで苦しんで死んでいくのはいやだ。」

とか、色んな考えを持っています。

 


ある意味で、「生きること」に対して、弱気になってしまっている部分がある、と言っていいと思います。

 


そういう高齢者の患者さん達にとっては、僕たち医療従事者の言葉、というのは大変「重い」意味を持ちます。

 


要するに言葉一つで、安心させることも、不安にさせることも出来てしまう訳です。

 


そしてこの「安心感」や、「不安感」という感情が、体に影響を及ぼし、これだけで実に様々な症状が出たり消えたりします。

 


上記の病院の先生にしてみれば、何気ないつもりで、事実を述べただけ、というつもりかもしれませんが、
患者さんにしてみたら、こんなことを言われたら、

 

ろくなことを考えるはずがありません。

 


事実、この患者さんも、今までそんなことなかったのに、最近眠れない、下痢が続く、とおっしゃっていました。

 


・・・当たり前の話だと思います。

 

僕もこの時は、何とか安心させようと、色々とお話しさせていただきましたが、ほとんど耳には入っていないでしょうね。

 


不安感があまりにも強くて、聞ける心境にないからです。

 


「事実をありのままに伝える」ということが確かに大事な時もあります。

 


しかし、それ以上に、「安心感を与える」ということの方がよっぽど大事じゃないでしょうか。

 

 

医療は常にそっちに重きを置くべきだと思います。

 


人間(患者さん)は機械じゃないんだから、ねえ?

 


まして、医療をやる人って、精密検査で分析するのが仕事なんじゃなくて、治すことが仕事なんじゃないんですか・・?

 


正直、ちょっと配慮に欠けてるなあ、と思いましたねー。

 


医療やるなら、むしろ弱った患者さんを一言で立ち直らせるような言葉をかけないと、と思います。

 

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「虚実」って何ですか?

2010.02.22

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今日から、東洋医学独特のいくつかの考え方について、簡単に述べてみようと思います。

 


まずは「虚実(きょじつ)」についてです。

 


古代中国の自然哲学では、何もかも全てのもの(森羅万象)を「気」から出来ていると考え、それを「陰陽」の二つに分けて考え、その運動で持ってすべての事象を説明する、という話は、以前にしました。


「気」って何ですか?

「陰陽」って何ですか?  参照

 

 

・・・東洋医学では、この考え方を当然、人体においても用いている訳ですが、「病気」というものを考えた場合、問題になるのは、

その陰陽のバランスがどう崩れているか、

どうすれば元通りに出来るか、

というところですよね?

 

そこで使う考え方が

「虚実(きょじつ)」や、

「寒熱(かんねつ)」や、

「表裏(ひょうり)」

という概念です。

 


このうち、まず「虚実」ですが、

 

「虚(きょ)」というのは、字のまんまですが、「うつろ」とか「足りない」ということを意味します。

 

「実(じつ)」はその反対で、「充実している」「過剰である」という意味があります。

 


この考え方から、何かが足らなくなった病気を

「虚証(きょしょう)の病」

と言い、何かが過剰になった病気を

「実証(じっしょう)の病」

と言います。

 

 

「虚証の病」であれば、病気を試合や戦に例えれば、防戦一方、という感じになりますし、「実証の病」であれば、バチバチの殴り合い、激しい交戦状態を示します。

 

 

そこからして、この”虚実”のことを「病勢」と呼んだりします。

 


そして、さらに細かく具体的に、「どこの」「何が」足らないのか、「どこの」「何が」過剰なのかを考えて、それがいち早くもとに戻るように考えて、戦略的に治療します。

 


因みに、邪気と戦う「正気(せいき)」が過剰(実)で、「邪気(じゃき)」が足らない状態(虚)なんであれば、それは健康体ということですから、治療対象にはなりません。(笑)

 

「病体」というのは、必ず正気が虚、あるいは邪気が実、またはその両方が混在している、という状態になっている、と考えます。

 


我々が普段行っている診察(四診:望聞問切)というのは、ここからさらに


「虚」の中心(根本原因)

 

や、


「実」の中心(根本原因)


を突きとめ、明らかにするために行います。

 


そしてそれを突きとめたならば、うつろなところが充実するよう、あるいは過剰な部分が散って落ち着く(平均化する)よう、鍼灸を施したり、漢方薬を飲んでいただいたりする訳ですね。

 


故に、「虚実」は、鍼をする上で、絶対に外せない考え方の一つなのであります。

 

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「痛み」と「鍼灸」

2010.02.20

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今日は、「痛み」について考えてみたいと思います。

 


清明院にも、「痛み」を訴えてやってくる患者さんが多くいます。

 


頭痛、腰痛、生理痛、ひざ痛などなど、例を挙げ出したらキリがありません。

 


この「痛み」というものに対して、東洋医学ではどのように考えているのかというと、


1.「痛み」がある部分を流れる気が滞っている

2.「痛み」がある部分の気がうつろで、その部分に栄養がいかない

3.「痛み」を認識する仕組みそのものの異常


大まかに言うと、以上の3つと考えます。

 


大体は1.と2.でカタがつきますが、どうにもならない場合、あるいは1.2.の必要条件に当てはまらない「痛み」の場合に、3.を疑います。

 


1.の場合は「滞った気」をうまく流してやればいいし、

2.の場合は「気のうつろな部分」「気」がうまく集まり巡るように仕向けてあげればいい訳です。

3.の場合はやっかいで、これには色々なやり方があります。

 


「エ?なにそんなに簡単な分類なの!?東洋医学における痛みって・・。」


と思う人もいらっしゃるかもしれませんが、上に挙げたのは細かく診ていった先にある、最終結論部分ですので、1.~3.のどれに属するかを確定するまでには、

 

ホントは長い道のり(各種診察)があります。(苦笑)

 


要は、1.~3.がなぜ起こっているのか、どういうメカニズムか、が分かれば、その病気を理解することが出来て、治療したり、今後の変化を予測したり、

 

仮に治療途中で悪化したとしても、それがどういう意味を持っているのかが分かります。

 


こういう、「痛み」というものの、「東洋医学的な病態」をキチッと把握することが、我々にとって、非常に重要です。

 


また、上記の例の中の3.は、実は大変面白い内容を含んでおります。

 


(笑・・・そのうち書こうかな。。)

 

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「七情」まとめ

2010.02.06

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これまでのお話・・・

「七情」って何ですか?
「怒」について
「喜」について
「思」について
「悲」「憂」について
「恐」について
「驚」について


まあ長々と「七情」について書いてきましたが、今日が一応の完結編です。

日々生きる中で、人は精神的にも肉体的にも、あらゆる刺激にさらされています。

東洋医学では特に、精神的な刺激に対する様々な反応のことを「七情」と名付けて、まとめている訳ですが、現代人はコレの「過不足」が病気の根本原因となっていることが、

 

あまりにも多いように思います。

これは日々患者さんから話を聞いていて、ホントによく思いますね。

これについて、

「何でかな~・・?」

と考えると、1つには、例えば寒さや暑さといった、肉体的な刺激に対しては、文明の利器を使ってかなり回避することが出来るようになったけど、

精神的な刺激に対してはどうしても回避できないためなんじゃないかな~、なんて、思います。

なんぼ、クーラーや暖房を使って快適な空調環境で生活していても、そこに嫌いな人が一人いたらもう台無しですよね。(苦笑)

とたんにそこは不快な環境になりますよね?

また1つには、あらゆることがお手軽に、大した労力もなく出来てしまう世の中なので、いろんな場面で

「我慢する」

という考え方が出来にくくなっているんじゃないでしょうか?

 

だから、ちょっとした人間関係のもつれも我慢できない。

あるいは、職業選択にしろ何にしろ、生きる上での自由が保障され、生きる上での選択肢があまりにも多すぎて、結果的に余分なことまで考えるようになってしまい、

 

だんだん、何が何だかワケ分からなくなっちゃって、迷いに迷って、日々が楽しくなくなり、徐々に病気になる人もいます。

これらは要は、幸せすぎて不幸せになった、という、ある意味

「陰陽が転化した」

皮肉なパターンだと思います。

現代人というのは、高度な文明が生み出した様々な道具によって、外的刺激を上手に回避できるようになった分、もともと持っている、

 

外的刺激(精神的なものも含む)に柔軟に対応する力が弱くなっているんじゃないでしょうか?

(例えて言うなら、時には我慢して続け、時にはスパッとあきらめる、みたいなバランス感覚のことね。)

今後もますます文明は発達し、生活の利便性、快適性はもっともっと上がるでしょう。

それはそれで喜ばしいことなのは言うまでもありませんが、その分、内面、つまり「ココロ」を病んだ人間は増えるかもしれません。

現在、うつ病患者の激増が問題になっているのも、その前兆に思えます。

その時こそ、「心身一如」の考え方で「カラダ」を通じて「ココロ」にも同時にアプローチ出来る、東洋医学の出番でしょう。

長年、鍼灸治療をしていると、患者さんの顔つきが段々穏やかになっていくのが分かります。

蓮風先生がよく仰るように、体がほぐれると心もほぐれる、ということなんでしょう。

これを西洋医学のように「強引に」やらずに、常に全体のバランスを意識して「無理なく」やろうとするところが、東洋医学の良さじゃないかな、と思います。

(もちろん場合によっては「強引さ」も大事でしょうが・・・。)

以前、どこかで

「21世紀は東洋医学の時代」

なんていう言葉を目にしましたが、ホントにそうだと思います。色んな意味で。

・・・ただこのキャッチコピー、一見いいんだけど、本当は「東洋医学」の前に”確かな”を入れるべきです。

治療に鍼灸を使ったから、漢方を使ったから即東洋医学、ではなく、それらをキチッと、東洋医学が本来持つ意味、意義を分かった上で使いこなせる人間が使って、

初めて「東洋医学の時代」と言えるんだと思います。

エラソーに言ってますが、もちろん僕もまだまだ精進しなくては、ですがネ・・・。

・・・ちょっと話がそれたけど、「七情」のまとめとしては、要するにバランスが大事で、「過不足」がなければ問題ないんだから、しっかりとした自分を持って、

 

日々伸び伸びと生きていこう、感情を変に抑えずに「普通に」表現していこう、そうすりゃ病気にならないで済むよ、ということです。

・・・そんなの難しいから出来ない?(苦笑)

ちょっとは努力しましょうよ。

人生は一回コッキリです。(笑)

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患者さんの声(50代男性:慢性腰痛、坐骨神経痛、疲労性網膜剥離手術後の眼精疲労など)

2009.12.06

引き続き、新しく届いた患者さんの声をアップします。

50代 男性 

 

 
症状:腰痛、坐骨神経痛、眼精疲労(疲労性網膜剥離手術後)

 

学生時代にやっていた柔道で腰を痛めてから、坐骨神経痛持ちになりました。


スポーツで痛めたものは鍼治療が効くと聞き、過去にも受けていましたが、仕事の忙しさも相まって治療が途切れていました。

 
 
そんな時、家族がお世話になっていた竹下先生に十数年ぶりに鍼治療していただき、今日に至っています。

長時間のデスクワークや車の運転などで痛みが出ることが多く、先生から体の歪みによる不良姿勢も影響していると言われ、

姿勢や歩き方なども気を付けるようになりました。

 
 
仕事の都合もあって、
2週に1
度程度の診察しか受けられませんが、治療の都度、日常生活で出来る運動などアドバイスしていただき、

それを実行することで随分楽になったと実感します。

治療間隔が空いても継続して受けることは大きいですね。

 
 
治療後は体が少し重だるい感じで、とても眠くてひと眠りしますが、夜には再びぐっすりと熟睡できます。

翌朝の爽快感と身体の軽さは鍼治療ならではの感覚だと思います。

 

 
毎日の晩酌を週末だけにしたり、それまでの自転車通勤をやめて歩くようにしたりと、それなりに努力しているつもりですが、

筋肉量に対して骨が細めだから膝にも注意して、と言われ、自分では全く想像もしない盲点がまだまだあるのだと思いました。

 
 
43
歳の時に過労から網膜剥離になり手術を受けて以来、目の疲れには特に気をつけているつもりでしたが、治療の時に

「少し熱を持ってるから気をつけて下さい。」

と指摘されてハッとすることもよくあります。

 
これからも竹下先生の治療とアドバイスに従い、身体をこき使わないように注意して、仕事にプライベートに充実した日々を送りたいと思います。

 

<清明院からのコメント>

 


この方は仕事がら肉体労働とPC作業の両方をなさる方で、目も体も酷使するため、
10年前に疲労から網膜剥離を起こしてしまいました。

それに学生時代から持病として抱えている坐骨神経痛もあり、治療の相談を受けました。

「肝鬱気滞、湿熱(かんうつきたい、しつねつ)」と証を立て、2週間に1回、継続的に治療しています。


 
患者さん自身がおっしゃっているように、ご自分で会社を経営されている方などに多いのですが、仕事が忙しいとつい仕事に気が集中してしまい、

自分の体に蓄積している疲労には無頓着になってしまっていることがよくあります。

 
そういう方がある日突然パタッと倒れてしまったり、知らず知らずに大病が進行していて、気づいた時にはもう手遅れ、なんてことは実際にあります。


 
不況と言われる現代で、社会で生き残っていくのは大変なことだと思いますが、自分が倒れてしまったらそれこそ大変です。

鍼灸治療は完全ではないにせよ、それを未然に防ぐことに資するでしょう。

 
忙しくて自分の体と向き合うことがなかなかない方は、是非ご相談していただきたいと思います。

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患者さんの声(40代女性:偏頭痛、四十肩、首肩こり、腰痛など)

2009.12.02

今日は、新たに届いた「患者さんの声」をアップしたいと思います。

新しい「患者さんの声」については届き次第随時更新していきますので、HPの方と合わせて、是非ご覧になって下さい。

(↓↓清明院HP内「患者さんの声」)

http://seimei-in.com/voice/index.html


◆40代 女性 

症状: 偏頭痛、四十肩、首肩こり、腰痛

 

 

肺気腫で寝たきりだった母が、左膝に拘縮を起こした時に週3日往診に来ていただいたのがきっかけで、竹下先生には家族ぐるみでお世話になっています。

 

母はほんの少しの刺激で、呼吸苦の発作を引き起こす時もあり、出来るだけ負担のかからないように全身状態に気を配って治療して下さる姿勢に、

 

母も私も安心と信頼を覚えました。

 

 
母はもともと薬剤師で、漢方薬を中心に扱っていたことから、東洋医学には少なからず馴染みがありましたし、鍼灸治療には効果があることも知ってはいました。

 

・・・とは言え、健康診断の血液検査さえも逃げ出したくなるほど、針嫌いな私です。

 
 
介護者定番病の一つと言われる腱鞘炎を患った際、整形外科で処方された湿布を貼って凌いでいたところ、セーターで隠した包帯をすかさず見つけた先生は苦笑しながら、

「早く言って下さい。」

と気軽に診て下さり、この期に及んでなおも腰が引けていた私も、観念して治療を受けました。

ところが、痛みは全く感じず、蚊に刺されたような刺激があるだけで、まさに拍子抜けです。

 


決して西洋医学を否定せず、専門医やかかりつけ医の意見を尊重しながら、鍼灸治療を行う姿勢もまた、先生への信頼を深めてくれました。

3回の母の治療後に必ず診ていただき、整形外科では長引くと言われていた痛みが1週間ほどで和らぎ始め、気づけば楽になっていたのを今も忘れられません。

 

 
以降、ぎっくり腰の再発、四十肩、ストレスによる不眠や倦怠感、肩こり、頭痛、アレルギー性鼻炎など

あらゆる症状に早め早めに対応していただき、お灸もそれまで抱いていたイメージとは全く異なるものであると、身をもって体験しました。

 
 
介護する側もされる側も青息吐息になりがちの在宅介護生活を、無事に乗り切れたのは鍼灸治療があったからこそと、心から感謝しています。

 


特にこれといった症状のない現在、けれど五十路を間近に控えた身体は若いころとは違った症状を訴え始め、そんな身体のメンテナンスとして
2週に1度のペースで治療を受けています。

問診後のお腹の触診で、

「○○な事がありませんか?」

と、ずばり言い当てられ、体は隠し事が出来ませんね、と苦笑することも度々ですが、これからも鍼灸治療は続けるということは、隠さずに申し上げます。

 

 

<清明院からのコメント>

 

 


この方のお母様は、重度の肺気腫を患っておられ、安らかに亡くなられる、ほんの数日前まで往診にて治療させていただいておりました。

その頃から、主介護者であった娘さんを治療させていただくようになり、現在に至ります。


 
寝たきりの人ひとりを、在宅で介護する、ということは、並大抵のことではありません。

主介護者(この場合娘さん)やその周りにいるご家族にかかる精神的、肉体的負担は想像を絶するものがあります。


 
特にこの患者さんのお母様の場合は、一度呼吸苦の発作が起こってしまうと、見る見るうちにパニック状態になってしまい、

御家族は夜中も目を離すことが出来ず、相当大変だったろうと思います。

 
こうした場合に、当院では被介護者はもちろん、介護者であるご家族にも鍼灸治療を受けることをお勧めしています。

 
この方の場合は「心肝気鬱(しんかんきうつ)」と証を立て、鍼灸治療を続け、肉体的な負担が減ると、精神的にも前向きになり、

つい暗く弱気で落ち込み気味になってしまいがちな介護生活を、なんとか乗り切ることが出来ました。

本当に最後まで、在宅介護でよく頑張ったと思います。

 
 
また、本患者さんのように、お母様が亡くなられた後も、当院を信頼して治療の相談をしてきて下さることは、我々にとっても大変嬉しいことであります。

 
娘さんから頂いたこの文章を読んでいてふと思い出しましたが、お母様が亡くなられた後、娘さんご夫婦が、主治医の先生、ヘルパーさんと私を、

 

 

「お別れ会」といってお食事会にご招待いただき、決してしんみりせずに、楽しいひと時を過ごさせていただいたことがありました。

 


 
当時まだまだ経験が浅く、知識も少なく、呼吸苦発作が起こらないようにと祈るように、慎重に、緊張しながら治療する私を、もともと薬剤師であり、

 

医療人としては大先輩であるのに、

「先生、先生」

と呼んで下さり、丁寧な態度で、最大限立ててくれたお母様の、優しいお人柄がよく表れているように感じた食事会だったことを、懐かしく思い出します。 

 

 
今後も、このご一家の健康な日々を見守っていきたいと考えております。

 

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