東洋医学 伝統鍼灸 清明院

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『金匱要略(きんきようりゃく)』という書物

2014.07.04

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実はこの数年、『金匱要略』という本を、少しづつ少しづつ、読み進めていた。

・・・で、ようやっと、終わりが見えてきた。

この本は

”千古不朽の、済世活人の書”

と言われる、名作中の名作。

東洋医学のバイブルの一つと言ってもいい本です。

思えば、鍼灸学校の学生時代から、『黄帝内経素問』『黄帝内経霊枢』『難経』『傷寒論』と読み進めて、ようやっとここまで来た、という印象。

(他の本も読みながらだし、普通に十年以上かかってます。)

こういう重要古典を読むのは、これからもまだまだ、エンドレスに続いていくんでしょうけども。。。(苦笑)

この本は、後漢の時代、張仲景という人物が書いた、ということになっている。

「張仲景(ちょうちゅうけい)」という人物 参照


で、現在一般に伝わっている『金匱要略』は、北宋の仁宗黄帝の時代に、林億という人たちによって再編纂されたもの、ということになっている。

この恐ろしい書物が、今では活字で、日本語で、簡単お手軽に読める時代。

素晴らしい。

この古い古い書物が、鍼灸師にとって、数年もかけてじっくり読む必要、価値があるものか。

僕は「ある」と思っています。

そう思って、これまで読んできました。

(ただ、機械的な文字の暗記は意味ないと思うけど。)

・・・で、最近になって終わりが見えてきて、思うこと。

当たり前だけど、これに書いてあることを実際に臨床で活用するには、それなりの鍼灸の腕と、ガッチリした基礎知識が必要だということ。

要は、『金匱要略』そのものは凄い本なんだけど、素人が読んだら、

”猫に小判”、”豚に真珠”

みたいな本になってしまうと思います。

そういう、東洋医学の臨床上級者向けの、凄い本。

これからも一生、折に触れて読む本なんだと思います。

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「柴胡桂枝湯証」という状態 その4

2014.02.09

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これまでのお話・・・

 


「柴胡桂枝湯証(さいこけいしとうしょう)」という状態
 
「柴胡桂枝湯証」という状態 その2
            
「柴胡桂枝湯証」という状態 その3
                      参照

 

 


では続きです。

 

 

ここまでで、柴胡桂枝湯という薬は、小柴胡湯と桂枝湯を合体させた薬であり、東洋医学的なカゼひきのパターン分類である、

「”太陽病”と、”少陽病”が同時に存在する場合」

に治療する薬である、というお話をしてきました。

 


今日はこの、

1.東洋医学的なカゼ引きのパターン

と、

2.そのパターン分類が、同時に存在する場合

について簡単に触れておきます。

 

1.については、張仲景が書いた、東洋医学の大古典である『傷寒論』の中に、詳しく述べられております。

「張仲景(ちょうちゅうけい)」という人物
『傷寒論(しょうかんろん)』という本    参照

 


カゼを引いた経験なんてのは、ない人はいないだろうと思います。

 


軽いものでは、寒気が中心だったり、ノド痛が中心だったり、鼻水や咳、くしゃみや痰が中心だったり、熱が出たり、頭痛や節々の痛みがしたりします。

 


中等度のものでは、場合によっては下痢になったり便秘になったり、食欲不振になったり吐き気がしたり、めまいがしたります。

 


重症例では肺炎を起こしたり、内臓の機能不全が起こって、命を落とす場合もあります。

 

『傷寒論』にはこういう、いわゆるカゼ引きの各レベルの状況とその治療法が、詳細に述べられております。

 

これが約1800年前の話です。

 

1800年前も、人間はもちろんカゼをひいていたし、医者はそれに真剣に対峙していたんです。

 

『傷寒論』は、著されて以降、約1800年もの間、中国、朝鮮半島、日本で歴代の有名な医師達によって踏襲されつつ批判され、現代でもその価値を失っていないという、怪物のような書物です。

 

 

因みに、単純なカゼにとどまらず、西洋医学的には「腸チフス」や「インフルエンザ」、「マラリヤ」など、重篤な感染症の治療法も含む書物、という解釈もあります。

 

『傷寒論』では、浅いレベルのものから、深いレベルのものまで、

 


太陽病(たいようびょう)     浅い
  ↓               ↓
陽明病(ようめいびょう)    
  ↓               ↓
少陽病(しょうようびょう)
  ↓               ↓
太陰病(たいいんびょう)
  ↓               ↓
厥陰病(けついんびょう)
  ↓               ↓
少陰病(しょういんびょう)    深い

 


という名称を付けて分類し、論じています。

 

(この順番については、諸説ありますがネ。)

 


それぞれのレベルにおいて、

”どういう症状を呈し”、

”どういう所見を呈し”、

”どういう治療をすればよくなり”、

”それはどうしてか”

までが、キッチリと、理路整然と、説いてあります。

 


このパターン分けが前提となり、例えば太陽病と少陽病が同時に現れたり、太陽病と陽明病が同時に現れたりする場合についても論じられております。

 


今回のテーマである柴胡桂枝湯は、要するにこの中の太陽病と少陽病が同時に存在する場合に使う薬なんですね。

 

ちょっと話題が広がってきたので、調子に乗って「柴胡桂枝湯証」という状態 その5 に続く(笑)


(この話題、いいね少ないけど、お構いなし!(爆)・・・決して読者に阿らないアティテュード。)

 

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「柴胡桂枝湯証」という状態 その3

2014.02.05

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これまでのお話・・・

 


「柴胡桂枝湯証(さいこけいしとうしょう)」という状態
 
「柴胡桂枝湯証」という状態 その2
               参照

 


では続きです。

 

何やらちょっと難しい話が続いてしまいましたが、小柴胡湯という薬については、以前にもこのブログに何度か登場しております。

 


確認しましょう。
三禁湯(さんきんとう)?
病院での漢方薬の使われ方 その4   参照

 


まあ、よく話題になる薬なんですね。

 


それだけよく効くとも、応用の幅が広いとも考えられますが、どうであれ、薬というのは間違った使い方をすればただの毒です。

 


こないだも患者さんから、病院で漢方薬を出してもらっているが、全然効かない、どうすればいいか、という相談を受けました。

 


漢方薬を飲むならば、漢方薬専門で、何年も、何十年も、真剣に臨床を続けてこられた先生に処方してもらうのが一番いい、というか、その選択「しか」ないと思いますし、

 

僕は患者さんにはいつもそう伝え、場合によっては信頼できる漢方家を紹介するようにしています。

 

鍼灸にしても漢方にしても、生半可な知識や経験で扱える代物じゃない、と思っています。

 


生半可な知識、経験で扱う鍼灸、漢方を受けて、効かなかったり、悪化するという経験をしてしまった人は、大変不幸だと思います。

 


 

まあともかく、柴胡桂枝湯ですが、歴史的には漢の時代の『傷寒論』という古典に初登場します。

『傷寒論(しょうかんろん)』という本 参照

 


そこには、

「寒邪に侵襲されて5、6日経って、発熱し、少し悪寒がし、節々が痛く、少し吐き気がし、みぞおちがつかえるようなものは柴胡桂枝湯で治る!」

と記されております。

 

上記の文章のうち、発熱、悪寒、節々の痛みという症状が”太陽病”、つまり桂枝湯でカバーできる症状であり、

吐き気やみぞおちのつかえ”少陽病”、つまり小柴胡湯でカバーできる症状なのです。

 

では鍼灸ではそれをどうするか、という話も含め、「柴胡桂枝湯証」という状態 その4   に続く。

 

 

 

 

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「柴胡桂枝湯証」という状態 その2

2014.02.04

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前回のお話・・・

 


「柴胡桂枝湯証(さいこけいしとうしょう)」という状態
   参照

 

では続きです。

 

前回、柴胡桂枝湯は、「小柴胡湯+桂枝湯」である、というお話をしました。

 


・・・ということは、柴胡桂枝湯を理解するためには、まずは小柴胡湯と桂枝湯を理解せねばなりません。

 


まず、「小柴胡湯」という薬は、

・柴胡
・半夏
・生姜
・黄芩
・人参
・大棗
・甘草

という、七味の生薬で構成されています。

 


この薬は、東洋医学的には無数にある、カゼひきの病態パターンのうち、”少陽病”という概念でとらえられるパターンの代表格です。

 


ここで、「少陽病」というのはどういうものかというと、

 


「口が苦くて、咽が乾いて、めまいがして、暑がったり寒がったりし、脇腹から肋骨の辺が詰まった感じがし、食欲不振、

胸がモヤモヤして嘔吐したり、あるいは胸がモヤモヤするだけで嘔吐しなかったり、あるいは腹痛し、あるいは動悸し、

小便の出が悪く、あるいは咽の乾きがなく、微熱があったり、咳が出るもの」

という、長ったらしい、しかもややこしい定義の、カゼの1パターンです。

 


これは非常に幅が広い概念だといえます。

 


でまあ、これを治す代表選手が小柴胡湯、ってわけです。

 

・・・で、「桂枝湯」はどうかといえば、

・桂枝
・芍薬
・生姜
・大棗
・甘草

という五味で構成されております。

(因みにこのうちの生姜、大棗、甘草の三味は、小柴胡湯とカブっていますね。)

 


桂枝湯は、”太陽病”というパターンの中の、”太陽中風証”というカゼ引きの、代表的な薬といわれます。

 

ここで「太陽病」というものの定義は、

「脈が浮いて、頭やうなじが痛くて寒気がする状態」

であり、その中の「太陽中風証」というのは、上記の状態に加えて、

 

「汗がダラダラ、ジトジトと止まらないような状態」

 

のことです。

(かなりザックリ言うと、ですが。)

 


太陽病というのは、カゼを引いた、つまり、風邪(ふうじゃ)や寒邪(かんじゃ)を中心とした外邪に侵襲された場合、最初(初期)になりやすい状態です。

 


まあ、それを治す代表選手が桂枝湯、ってわけです。

「風」「火」について
「寒燥」について   参照

 

 

この「桂枝湯」という薬は、実は漢方薬の王様みたいな薬でして、かの後漢代に著された、漢方薬の聖典とも言われる『傷寒論』の一番初めに出てくる薬も桂枝湯ですし、

 

清代の温病学の聖典とも言われる『温病条辨』の一番最初に出てくる方剤も桂枝湯なのです。

 

 

このことは重く見る必要があると思います。

 

 



 

まあまとめると、少陽病と太陽病が同時に起こっているような場合に、それを治す薬が柴胡桂枝湯である、と言えます。

 


また、小柴胡湯と桂枝湯、この2つの薬の構成生薬を見ると、小柴胡湯に、桂枝と芍薬を加えたのが柴胡桂枝湯、とも言えます。

(それぞれの分量抜きに考えれば、ですよ。)

「柴胡桂枝湯証」という状態 その3   に続く。

 

 

◆参考文献

 

神戸中医学研究会 編著『中医臨床のための方剤学』医歯薬出版株式会社

神戸中医学研究会 編著『基礎中医学』燎原

 

 

 

 

 

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「柴胡桂枝湯証(さいこけいしとうしょう)」という状態

2014.02.03

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有名な漢方薬に、「柴胡桂枝湯」という薬があります。

 

この薬がよく効くような状態の患者さんを、鍼できれいに治せると、特にこの時期、大変に喜ばれます。

 

蓮風先生もたまに講義の中で、

「漢方薬の先生にかかるなら、この”柴胡”という薬を巧みに使える先生にかかりなさい。」

とおっしゃいます。

 

東洋医学の聖典である『傷寒論』という本には、実にたくさん”柴胡”と”桂枝”が出てきます。

 


この「柴胡桂枝湯」という薬、中身は

1.柴胡(さいこ)
2.半夏(はんげ)
3.桂枝(けいし)
4.黄芩(おうごん)
5.人参(にんじん)
6.芍薬(しゃくやく)
7.生姜(しょうきょう)
8.大棗(たいそう)
9.甘草(かんぞう)

と、実に9種類もの生薬が入っております。

 


漢方薬の先生は、こういうのを全て機械的に暗記しているのかというと、違うようです。

 


この薬は、もともと”小柴胡湯”という薬に、”桂枝湯”という薬を足したものであり、別名”小柴胡湯合桂枝湯”なんて言われたりします。

 


漢方の先生はこうやって、ある代表的な処方同士を組み合わせたり加減したりして、微妙に効き方を調整しているのです。

 

生薬一つ一つの効能も、もちろん大体把握はしていますが、方剤を自由自在に使い分けるためには、それ以上に、

「代表的な方剤名と、それが作用する範囲」

というものをよく理解しているのだと思います。

 


「柴胡桂枝湯証」という状態 その2    に続く。

 

 

 

 


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(一社)北辰会5月本部臨床コース

2013.05.21

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一昨日、19日の日曜日は、大阪で行われた、(一社)北辰会本部臨床コースに行ってきました!!

今回は午前中は実技訓練。

僕は刺鍼クラスでしたが、臨床の第一線で活躍されている先生方の体表観察を受け、実際に鍼を受け、非常に勉強になりましたねえ。

「鍼」だの、「北辰会方式」だのと一口に言っても、打つタイミング、角度、深さ、使う鍼の太さ、抜き方、また、診察時の言葉のかけ方、

診察時の着眼点、そういったことで、すべて「気の動きかた」は変わってきます。

同じ流派であっても、同じツボであっても、ウデに違いが表われ、効果に違いが表れるのは当然の話ですね。

今回も、とてもいい刺激をいただきました。

午後イチは愛媛の水本淳先生によるシリーズ講義

「傷寒雑病論」

でした。

今回は、「遅脈」という、脈診における重要な所見について、傷寒論の立場、北辰会の立場から、詳しく講義していただきました。

非常に分かりやすかったのと、脈をみる時に、川や、そこに出来る渦(うず)、動物の動き方など、自然現象をイメージすることの重要性、

つい忘れがちな、そういう観点、非常にありがたい御指摘でした。

最後は関東支部の土田丈先生による症例レポート、

「皮膚の部分的な痛み」

でした。

珍しい症状で、なかなか興味深い症例でした。

蓮風先生からの御指摘が、いつもながら鋭いナー、と思いながら聞いていました。

・・・まあ総じて、充実の週末。(笑)

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「表裏同治」とは(その6)

2012.02.05

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これまでのお話・・・。

「表裏同治(ひょうりどうち)」とは
「表裏同治」とは(その2)
「表裏同治」とは(その3)
「表裏同治」とは(その4)
「表裏同治」とは(その5)

 

前回登場した、「合病(ごうびょう)」、「併病(へいびょう)」という言葉・・・。

 

これは要は、最初からずーっと話してきているように、「表」も「裏」も同時に病んでいる場合のような、病が浅いところと深いところ、

2つ以上の場所にまたがって存在している状態のことを言います。

 


・・・で、

 

「合病」の場合は2つ以上の場所が”いっぺんに”やられた場合

 

のことで、

 

「併病」の場合は浅い場所の病が治らないまま、深い部分も同時に病んできた場合

 

のことを言います。

(燎原『漢方用語大辞典』より)

 


つまり「合病」の場合は同時で、「併病」の場合は時系列的に前後関係がある、という訳です。

(なんだか細かいね・・・。でも、我々にとってはこれが重要なんです。)

 

この話は、『傷寒雑病論(しょうかんざつびょうろん)』という東洋医学の聖典の一つの中に出て来ます。

(奥田謙蔵先生の『傷寒論梗概』に、綺麗にまとめて下さっています。)

 


コレ以上いくと、専門家しか分からない話になっていってしまい、このブログの趣旨と離れていってしまいますので、難しい話はこの辺にしますが、

 

要は言いたいこととしては、最近大騒ぎになっている一般的なカゼや、インフルエンザについても、東洋医学では太古の昔っから、実に様々な学説をもって対応し、

 

優れた臨床効果をあげている事実がある、そしてそれは、現代日本の我々が運用しても非常に利用価値の高いものであり、もっと多くの人に知ってもらっていい事実である、ということです。

 

その考え方の一端を紹介した訳です。

 


別に、タミフルやリレンザを否定しているワケではなく、他の選択肢もあるんだよ、ということです。

 

これについては、言い出したらまだまだありますので、あまり専門的でマニアックにならないように、折に触れて少しづつ紹介していこうと思っています。

 


・・・このシリーズ、ひとまず終了。

 

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「表裏同治」とは(その2)

2012.01.27

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前回のお話・・・

「表裏同治(ひょうりどうち)」とは

 

前回、東洋医学では、いわゆる「カゼ」とか、最近話題の「インフルエンザ」など、細菌やウイルスによる急性の病のことを、多くは「外感病」と呼び、体の外から邪気が入って、正気を侵害している病、という風に考えます、とか、

外から入るワケですから、浅い部分からだんだんとカラダの奥深くに入っていき、最終的には五臓六腑が障害されて、命にも関わる、という風に段階的に分けて考えています、とか、

その「深さ別」の呼び名として、

表証・・・皮膚表面のような、浅い位置に病がある状態
 ↓
半表半裏証・・・浅い位置と深い位置の中間の、中途半端な位置に病がある状態
 ↓
裏症・・・五臓六腑に関わる、深い位置に病がある状態

・・・というのがある、なんてお話をしました。

 

このように言うと、非常にシンプルに聞こえますが、実は表証にも裏症にも半表半裏証にも、それぞれに非常に様々な、複雑で細かいパターン分類がありまして、

 

しかも治療する上では、その状態になるに至った”流れ”まで考えて、それにキチッと合わせた鍼灸なり漢方薬で治療しないと、

病は治らないばかりか、悪化していくことすらある、と考えます。

 

 

漢方の聖典と言われる『傷寒論』には、この薬を出して、こうなったら悪化、こうなったら成功、こうなったら効果がちょっと弱いからこれを追加しなさい、

 

という話が延々と書かれており、それ(リアルな臨床的見解が豊富)がこの本のバイブルたる所以です。

まあ誰が言ったか、「引きはじめに葛根湯」などという言葉があって、それを鵜呑みにした患者さんから、

「カゼひいたと思って葛根湯飲んだけど、全然治らなかったです。漢方薬って、私の体に合ってないんでしょうか。」

とか、マジ顔で聞かれることがあります。(苦笑)

 

漢方薬が合ってないんじゃなくて、診断が合っていないんです。

 

・・・また、その逆もあります。

「カゼの引きはじめに葛根湯、と思って飲んだら、スゴク効いて、楽になりました。病院の薬と違って副作用もないし、やっぱり漢方薬って効きますね!」

というパターンです。

 


これは、まず効いたのは”たまたま”だし、漢方薬に副作用がないという考え方は危険です。

 

ちなみに副作用についてはこちら

 

キチッとした専門家による診断に基づいて処方されたものならともかく、自分で症状のみから診断して服薬するのは、場合によっては大変危険だと思います。

 


まして体質改善とか言いながら、同一の漢方薬の、年単位での長期服用とか・・・。

 


あまりにも東洋医学が正しく理解されていない現状に驚くこともありますが、それを嘆いてても仕方ない。

 

一生かけて正しい東洋医学を説き、やるのみです。

 

 


・・・なんか話が逸れたから、また次回。(笑)

 

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「表裏同治(ひょうりどうち)」とは

2012.01.26

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「表裏同治(ひょうりどうち)」・・・。

何やら難しそうなこの言葉。

最近多い、カゼひきさんに対してよく使う考え方です。

会社や学校によっては、インフルエンザが流行っているところもあるそうで、患者さん達としては皆さん戦々恐々としていますなあ・・・。


これ、過度にビビることないですよ!!

鍼と養生で、しっかり体調管理してたら、まずカゼなんて引きません!

もしひいてしまっても、すぐにちゃんと鍼すればほとんどは軽く、短く済みます!!



ところで東洋医学に、”インフルエンザ”という考え方、概念はありません。

「ウイルス」や「細菌」という概念は、診断に顕微鏡を使うようになってからの話です。

・・・つまり、つい「最近」です。

 

(言いたかっただけ。)

 



 

しかし、インフルエンザにかかった時に発する、高熱や節々の痛み、寒気や咳、ノドの痛みなどなどに対する、東洋医学的な考え方というのは、山のようにあります。

 


東洋医学ではこういった、「外から邪気が入った」病のことを「外感病(がいかんびょう)」といいます。

 


それの動きと治療方法を示した、バイブル的な書物が、中国漢代の『傷寒論(しょうかんろん)』であったり、中国明清代の『温病学(うんびょうがく)』という分野です。

 

外から邪気が入って、体表の浅い部分に邪気が存在し、カラダの正気(せいき)とバトルをやってる状態を「表証(ひょうしょう)」とか、

「表(ひょう)の病」とか、「太陽病(たいようびょう)」とか、「表熱証(ひょうねつしょう)」とか、「衛分証(えぶんしょう)」などという言い方をします。

まあ要は、「外感病」という病気を”浅い状態””深い状態”に分けて考え、対処している、ということです。

 

”深い状態”のことを「裏証(りしょう)」とか、「裏(り)の病」などなど、これまた色々な呼び名で定義づけています。

 

そして”浅い病”と”深い病”の中間の、中途半端な状態を

 

「半表半裏証(はんぴょうはんりしょう)」

 

とか、

 

「半表半裏(はんぴょうはんり)の病」

 

とか呼んで、定義づけております。

 

 

基本的に、外感病は浅かったら(表の病なら)程度は軽いです。

 

症状がどんなにひどくても、命に関わることはまずないです。

 

深かったら(裏の病なら)病は重いです。

 

場合によっては命に関わります。

 

・・・長くなったので、次回に続く。

 

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なぜ「おかゆ」なのか。(その2)

2012.01.10


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前回のお話・・・

なぜ「おかゆ」なのか。 参照

前回、お粥の種類も、いろいろあるよ、というお話をしました。

お粥の「濃さ」も、全粥から三分粥まであり、上澄み部分の液体を「重湯(おもゆ)」といいます。

(興味深いネーミングです・・・。)

炊くモノの種類も、黒米、赤米、粟(あわ)、稗(ひえ)などなど、色々あり、「ナニで炊くか」に関しても、ほうじ茶、緑茶、牛乳などなど、

実にたくさんの種類があります。

我々東洋医学をやるものならば知らない者はいない、聖典のひとつである『傷寒論(しょうかんろん)』という書物の中に、

「桂枝湯(けいしとう)」

 

という、これまた超有名な薬が出てきますが、その薬の説明のところに、

桂枝湯をのませた後は、”熱希粥(ねつきじゅく)”・・・つまり、「熱くて薄いお粥」をのませて、薬の効果を助けるといいよ、

という一文が出てきます。


このように、お粥はお粥でも、熱いおかゆ、薄いおかゆ、トッピングを何にするかなどなど、目的によって微妙に使い分けるのです。

ちなみに1月15日、小正月には小豆粥(あずきがゆ)を食べますね。

また、お粥は必ず体にいいかというと、必ずしもそうではないようです。

流動物であるので、体が弱って食欲がない時に食べやすいという利点、またトッピングによって、足らない栄養を補うことが出来るという利点はありますが、

栄養価としては白米よりも低いし、腹もちも悪いし、噛まずに食べてしまうと、かえって消化に負担をかける側面もありますので、注意が必要です。

いいことばかりではないのですネ。


お粥については、まだ書きたいことがあるので、気が向いたらこの話、続きます。(笑)

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