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2010.05.01
これまでのお話・・・
「肝(かん)」って何ですか?(その1)
「肝」って何ですか?(その2)
「肝」って何ですか?(その3)
肝という臓は、人間の体の中でも大変重要な臓でして、上記以外にもまだまだ働きはあります。
話があまりマニアックになっていきますと、患者さん向きでなくなるんで、このブログでは極力専門用語は使わずに、分かりやすく解説していこうかな、と思ってます。
(まあ専門家の先生方には、そういうサイトや本がいくらでもあるしね。)
・・・てな訳で今日も、肝の働き、いけるとこまで。
◆肝は「目」に関わる
・・・これも結局は、「髪」や「爪」と同様に、「目」を養っているのは「血」だから、というオチであります。
肝にためこまれている「血」が十分であり、ちゃんと目に十二分にいきわたっていれば、少々長い時間本を読んでも、PC作業をしても、
目が疲れたりかすんだりすることはありません。
清明院でも、よく患者さんの下まぶたを下げて(いわゆる”アッカンベー”ね。)、白くなってないかどうか診させていただくことがありますが、
下まぶたをめくった時の色が白くなっていれば、
「あ、肝がためてる血が少ないか、ためてる量はあっても、何らかの原因で、目にきちんと行きわたってないな。」
と考えます。
他にも、白内障や緑内障、疲労性の網膜剥離などなど、眼科のあらゆる病気は、東洋医学的には「肝」の異常を中心として起こっていることが少なくありません。
◆肝は「魂(こん)」を蔵(ぞう)す
・・・コレ、響きからして、いかにも東洋医学~!って感じでしょ?(笑)
「一体なんなのだ、この「魂(こん)」というものは!?ワケのわからんことを言うな!!」
と、僕も学生の頃は思っていました。
これについて細かく細かく解説をしていくと、どんどん肝の話から逸れていきますし、僕自身が年末に北辰会で講義する内容のネタばらしにもなっていきそうですんで、ここではごく簡単に述べてみます。
ここで言う「魂(こん)」ていうのも、人体を循環する「気」の一種だと考えて下さい。
つまり、生きている人間の体の中を絶えず流動し、心身のバランス調節をしてくれているものの一つです。
(「気」については、「気」ってなんですか? 参照)
で、「魂」は、日中活動時は「気」のように全身を行ったり来たりしていますが、睡眠時は、「肝の臓」に戻る、という運動パターンを持っています。
「肝の臓」が家だとすると、その家の主人が「魂」といった感じです。
このように肝の臓は、「血」であったり「魂」であったり、色々な重要なものを”蓄える”という性質があるということが、肝の臓を理解する上ではひとつ、重要です。
〇
・・・で、「魂(こん)」と「気」との違いはどうかというと、「気」が全身を巡って、”全ての生命活動を”調整するものであるのに対して、「魂」は、
「人間の無意識の精神活動を調節しているもの」
と言われます。
(笑・・・分かりにくいねえ~)
要はこの、「無意識の精神活動」っていうものは、僕らが普段、普通に「意識的に」やっていることの”支え”であり”裏”となっているものです。
例えば、「何かしよう」と思う時も、それを実際に行動に移す時も、その背後には、必ずこの「魂」の働きがある、ということです。
だから、目立ちませんが、大変重要なものです。
この「魂」の働きの具体例としてよく言われるのは、「夢」や意識昏迷状態での「うわごと」などです。
(「夢」についてはかつて「夢」はなぜ見る?にちょこっと書いてますのでご参考あれ。)
本来は、「寝てる」という状態であれば、人間は当然無意識状態ですから、「魂」の出番はありません。
だから寝ている時は「魂」は「肝」におとなしく帰っています。
(その時「魂は肝に蔵されている」わけね。)
しかし肝が病になると、この「魂」が不安定になって、(肝の臓に蔵することが出来なくなって)寝ている間も肝に帰らなくなります。
(非行少年のように、夜遊びし出すわけです)
そうすると、「夢」をよく見て、しかもそれをいつまでも覚えている、という病的な現象が起こります。
これを東洋医学では「多夢(たむ)」と呼び、うわごとや、酷いものでは夢遊病なども含めて、「魂(こん)」が夜の間に肝の外で遊んだ、
という意味で、「遊魂(ゆうこん)現象」なんて言います。(笑)
・・・面白いですねえ。(笑)
東洋医学にはこういう、西洋医学にはない、独特の病のとらえ方がたーくさんあります。
どれもとても面白いです。
しかしもちろん、この医学は面白いだけで終わりません。
例えば上記のような、毎晩毎晩、悪夢にうなされて睡眠不足で困っている、という患者さんがいた時に、これを”遊魂現象”と考え、「肝」に着眼して診察し、
実際に肝の病が中心だ、と確定したとします。
そして、それを上手に治療していくことによって、夢を見なくなり、ぐっすり眠れるようになる、
そして、それに伴って、肝の臓に関する病的なツボの反応やその他の症状が体から消えていく、という現象が「現実に」起こるんです。
そういう症例を実際に経験するたび、東洋医学はこのような一見不可思議な説明から、確かに一部「真実」を捕まえている、と再確認出来る訳であります。
次回につづく。
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2010.01.28
こないだ、ニュースで、押尾学容疑者が、亡くなられた女性や遺族に対し、
「腹を切ってお詫びしたい。」
と発言した、というニュースがやってましたね。
なのになぜか“無罪”を主張している、という・・・。
これを見た大半の方は、
「切腹だなんて、する気もないくせに・・・。しかも無罪主張って・・・。ワケわからんわ!」
と思ったんじゃないかと思います。
僕もそれには同感なんですが、ふと、「切腹」というキーワードに目が止まりました。
以前、新渡戸稲造の『武士道』を読んだ時、確かこんなような一節があったと思います。
「・・・切腹は日本独特の風習で、古来より、腹には霊魂と愛情が宿ると考えた、日本人の解剖的信仰によるものであり・・・」
と。
我々東洋医学を実践する者も、日々「腹診」を行い、その技術は中国よりもむしろ日本において発達、発展した、という話は以前このブログでもしました。
⇒ 「腹診(ふくしん)」で何が分かるの? 参照
ここでさらにふと、
「そいじゃあ、切腹の起源て何なんだろう・・・。」
という疑問が僕の頭をかすめました。そこでネットで色々調べていくと、出てくるわ出てくるわ・・・(苦笑)
どうやら、平安末期に、源為朝(※)が切腹したのが、歴史上(記録上)初の切腹、というのが定説らしいですが、実は縄文時代に起源があるとか、
腸の形態から、蛇信仰と関係があるとか、諸説あるようです。
※みなもとのためとも・・弓の名手で、保元の乱で大暴れし、敗戦ののちに伊豆半島に島流しにあったが、そこでもまた大暴れし、追討にあって切腹死した武将。
↑↑この人の生涯は大変面白いので、ぜひ調べてみて下さい(笑)
しかしまあ、「愛情」や「霊魂」の宿る腹をあえて晒して死ぬ、という責任の取り方が日本人ぽいですよねー(苦笑)恐ろしい民族・・・。
第二次世界大戦の終戦間際にも、多くの有名な将校が切腹自殺していますね。
(これも、明治以降の武士道教育が大きな影響を与えている、と考えられているようです。)
近年では、何と言っても三島由紀夫が有名ですね。
(まあ彼の場合はちょっとまた趣が違うような気もしますが・・。)
・・・いずれにしても、日本人は、腹部の
「内臓が入ってる大事なところ」
という意味「以外」の部分を、かなり重んじていたようです。
こういった発想から、日本人の昔の医者達が腹診術を創っていった、というのは、現在、毎日患者さんのお腹を診ている僕にとっては、大変興味深いです。
まあそれにしても、押尾学さんは切腹しない気がします(苦笑)
腹診についてはまだまだ大変興味深いところなので、またなんかあったら書こうと思います!
2010.01.17
このシリーズ、最後の話題です。
例の気胸事件以降、インターネットに書き込まれた鍼灸批判、鍼灸師批判に対して、鍼灸を擁護する書き込みに対して、
4、「もともと少ない患者を減らさないために必死だね(笑)」
・・・と、書き込んだ人ね、えーっとですねえ、・・何ていうか、
「あのー、何でそんなに性格悪いんですか?何かお辛いことでもあったんですか?」
とお伺いしたいです。(苦笑)
・・・まあしかし、鍼灸の患者さんの絶対数が、ほかの医療業種と比較して少ないということは残念ながら事実でしょう。
これはあらゆるデータが証明しているでしょう。
ある調査によれば、国民の鍼灸治療受療率は5%ほどだとか。(苦笑)
このブログ上でもHP上でも何度も書いているように、現代の日本においては東洋医学、とりわけ鍼灸医学についてはまだまだ正当に認知されていないという現実があります。
だから患者さんとしては最初から鍼にかかりにくい、鍼灸と聞いたら、聞いただけで
「痛そう、熱そう」
となってしまって、最初の一歩がなかなか出ない、という現実があります。
例えば患者さんで鍼がよく効いた人がいて、その人が知人に鍼灸を勧めた時に、
「ええ~!痛そうだし熱そうだからやだよ~!!」
と言われてしまうと、それ以上強く勧められない、という感じ(空気)になります。
僕はそういう話を聞くたびに、悔しいような思いがします。
・・・まあ、こんな調子だから、いよいよどこに行っても治らない、という重症の患者さんや、もともと一家で昔から鍼灸治療を受けている人とかぐらいしか、なかなか鍼灸院を訪ねてはきません。
こんな現状なので、
慰安でも何でもやりまっせ~!言うこと何でも聞きまっせ~!安くやりまっせ~!
という、医療人としての誇りを失ったような、商魂全開の鍼灸師が増える一方です。
以前、噂に聞いて驚いたんですが、都内のとある鍼灸院では、患者さんに、
「今日はどこに鍼を打ちましょうか?」
と聞いてから、患者さんの「指示」に従って鍼を打つところがあるそうです。
ここまで行くとどっちが先生だか分りませんね。
(笑・・・まあある意味すごいけどネ)
・・・そうはいっても、鍼灸師だってメシ食わなきゃいけない訳だから・・・と考えると、こういうのは大変切実な部分ではありますが、
これは日本の東洋医学の発展を妨げる大きな問題の一つだと思います。
だから結局、現在僕がたどり着いた結論は、少しづつでもいいから、一人でも多くの人に本当の東洋医学をアピールし、かつ結果を出し、認めてもらい、
あの先生はちゃんとした「鍼の医者だ」という信用を勝ち取っていくしかない!ということです。
またこんなん言ったら夢がないと言われるかもしれないけど、厳しい世界です。
難事業です。
でもそれだけにやりがいもあります。
出来るようになってしまえば、マジで面白すぎる世界です。
(まあ僕なんて全然まだまだだけどね。でも今の時点でもこんなに楽しいんで、もっと上手くなったらもっと楽しくなるかと思うと、テンション上がります。)
ですので、インターネット上で、決して事故そのものを弁護したのではなく、「鍼灸」自体を擁護するようなコメントをした人の気持ちが、僕には分かります。
まあ、伝わらなかったみたいだけどね・・・。(悲)
・・・まあ以上で「鍼灸(師)批判について」シリーズはひとまず完結します。
またどこかで気になる話を耳にしたら、僕なりの考えを述べてみようと思います。
言われっぱなしは気分が悪いんでね(笑)
・・・しかしまあ、このシリーズを書くにあたっては、実は結構な「勇気」が要りました。
ああいう匿名の批判に対して、意見を述べる、ということは、大変怖いことでもあります。
無視するのが一番利口だなんて、百も承知です。
「こんなこと書いたら、賛否両論になっちゃって、ブログが炎上するんじゃないかしら・・」
とか、
「言葉足らずとか、表現が下手で、うまく伝わらないんじゃないかな・・。」
とか、内心ドキドキしながら書いた面も正直あります。
・・・でもね、僕はいつも言うように、今の日本の鍼灸、東洋医学の現状って、絶対おかしいと思うんだけど、こうなった歴史的背景には、
数々の場面で「明確で筋の通った自己主張」をハッキリとしてこなかった鍼灸師にも、責任の一端があると思うんです。
(僕個人的には、ですよ。)
なので今回は、稚拙な文章ではありますが、いわれのない批判に対する「僕なりの」意見を少し述べさせていただきました。
少しでも多くの患者さんに、僕の真意が伝わりますように・・・。
清明院 院長 竹下 有
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