東洋医学 伝統鍼灸 清明院

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御神木(ごしんぼく)

2010.12.05

もう、先週土曜日以降に清明院にみえた患者さんは御存じでしょうが、この間、清明院をまたまたプチリフォームしました!

清明院の内装に関しては、今後もちょこちょこ手を入れていこうと思っています。

今回、手を入れたのは玄関です!!

以前は、背の高い靴箱がそびえ立っていて、圧迫感全開・・・。

しかもこれが地味に幅もとるもんだから、玄関がせまいせまい!

入りにくそうにしている患者さん、出にくそうにしている患者さんを見ていて、内心、

「ごめんね~!そこ何とかしなきゃだよね~!」

と、思っていました。

・・・そこで!

今回その靴箱を思い切って撤去しまして、知り合いの日本画の先生が書いた、

「富山県、氷見市の御神木、銀杏」

の掛け軸を飾ってみました!!

image022

・・・ん~まあ、実はこの掛け軸を最初見た時、正直そんなにピンとは来なかったんです。

て言うのは、御神木だけど、なんかちょっと枯れ木っぽいし、パッと見で銀杏だって分かんないしなあ・・・、ということでネ。

でも、その知り合いが、これは絶対いいからって薦めてくるので、まあじゃあ、飾ってみようか~、って感じで飾ってみました。

そしたら以外とハマった感じで、

「あー、落ち着いてて、なんかイイ感じ。これでいこう。」

と、なりました。(笑)

銀杏は別名、公孫樹(こうそんじゅ)とも言うそうです。

そして花言葉は「鎮魂」「長寿」「しとやか」・・・。

花言葉はいいけど、別名の方は、恐れ多い気がします。

(苦笑・・・分かる人には分かる)

まあでも、こうして僕の手元に来て、清明院の玄関に飾られた、というのも、何かの縁でしょうから、

清明院の顔としてドーンと患者さんをお出迎えしてほしいと思います。

今後も頼むぜ御神木~

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東洋医学と「痛み」(その2)

2010.11.11

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これまでのお話・・・

スピリチュアルペイン(その4)
東洋医学と「痛み」(その1)

前回は、”魂(たましい)”というもののお話を少ししました。

 


コレについては、僕も以前から大変重要視(というか意識)しています。

・・・まあさておき、今日はいよいよ、東洋医学では「痛み」というものをどのように考えるのか、というお話です。

 


東洋医学では、人間の体には「気」というものがくまなく、絶えず巡っている、と考えています。

「気」ってなんですか? 参照

 

そしてその「気」というものが、体の中で、過不足による滞りなく、スムーズにバランスよく巡っていれば、「痛み」は出ない、というより”無病”である、と考えます。

 


つまり、「痛み」がある、ということは、東洋医学ではそこに「気」の過不足による、「気の流れの滞り(循環障害)」がある、ということを示している、と考えます。

 


そして、その「原因」を究明するために、問診から始まる各種の診察法(脈診や舌診や腹診などなど)が考えだされている訳です。

 


東洋医学では「痛み」を大きく分けて、2種類の分類をして、解説します。

1.痛みのある部分に「気」が通じていないパターン

2.痛みのある部分に「気」が不足しているパターン

この2つです。

 


1.のパターンなら、「気」を通じさせればよく、2.のパターンなら、そこに「気」が充実するように治療すればよい訳です。

「なんだ、エライ簡単じゃん。」

と思う方も多いかと思いますが、東洋医学が注目するのは、この2つを起こさしめている「原因」です。

 


この「原因」によって、痛みの程度も、出方の特徴も決まってきます。

 


そして「原因」にアプローチ出来ないと、なかなかよくなってくれません。

 


たとえ治療直後に効果があったとしても一時的ですぐ戻ってしまったりします。

 


我々はその痛みの東洋医学的な「原因」「問診」によって調べ、実際に体表観察をしてみることで、明らかにしていく訳です。

 


ここで、

「じゃあ、仮に肩こりの”原因”が長時間のPC作業だったとしたら、鍼ではどうしようもないですよね?」

という意地悪な質問があったとします。

 

(実際に言われたことあります。それも同業者に。)

 

 

僕はこれに対しては、

「長時間のPC作業をしても、肩が凝らない人もいます。そりゃあPC作業なんて不自然なこと、やめてくれるに越したことはないけど、生活の為にはそれがどうしても出来ない、

 

という条件であれば、東洋医学の立場から、PC作業が最も負担をかけた臓腑、経絡を明らかにして、そこの不具合を是正することで、

 

”PC作業をしても肩の凝らない人”に限りなく近づけていくしかない訳です。」

となります。


(真面目に答えるとネ(笑))

 


いずれにせよ、東洋医学の疾病観というのはどこまでいっても「陰陽の不調和」の一語であり、言いかえれば「気の過不足」な訳ですから、

どのような病態、状況においても、まったくのお手上げ、という状況はない訳です。

 


ただ、誤解を招きそうなので付け加えておくと、場合によっては、西洋医学的な手法(外科手術など)を用いた方が早いケースももちろんある、ということです。

 


次回に続く

 

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東洋医学と「痛み」(その1)

2010.11.10

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昨日まで、4話連続で、「スピリチュアルペイン」について書いてきました。


スピリチュアルペイン(その1)

スピリチュアルペイン(その2)
スピリチュアルペイン(その3)
スピリチュアルペイン(その4)

 

西洋医学においても、「緩和ケア」の分野においては、このように「痛み」というものを幅広く解釈し、治療にあたっている、ということが少しお分かりになったかと思います。


・・・が、しかし!です。

 


我々がやっている東洋医学においては、こういったことも、数千年も前から、当然のように意識しながら、医学理論を構築してきております。

 


まだすべて解説した訳ではありませんが、このブログの
などの五臓六腑シリーズ、あるいは七情などなどを、よ~くお読みいただければ、

 

いかにこの医学が、

「心身一如(しんしんいちにょ)」

を旗印に、患者さんの精神面、果ては魂(たましい)、というものの存在までを意識し、それらを包括しうる形で、医学理論を構築してきたかが、

 

少しはお分かりになるかと思います。

 


これまで何度か書いていますが、東洋医学はそういうことを意識しつつも、数千年の経験と実績に裏打ちされた、明確な”理論(ロジック)”を持っています。

 


よく、東洋医学の学会や勉強会などで、西洋医学的に”原因不明”と言われた、あるいは診断名は付いたものの、服薬は無効か効果薄の、激しい痛み疾患などに、

 

鍼灸治療が劇的に効いた、という症例なんかが出てくることがよくあるんだと思います。

 


これは、鍼灸師を長いことやっていたら、必ずと言っていいほど経験することでもあろうかと思います。

 


ちなみに、私の所属している(一社)北辰会では、その理念において、患者さんの「心」と「体」と「魂」を救うのは、東洋医学思想でないと出来ない、

 

と考えている、とあります。

(一社)北辰会HP 「理念」 参照

 

なお、”魂(たましい)”と、ここで言うのは、”肝”のところで僕が説明した”肝魂(かんこん)”というものとは、重なる部分はあれども、

 

また別の概念であり、これは非常に難しいところだと思います。

 


いつか(何年、何十年後?)僕もこういうことを明瞭に書けたらイイナー、とは思っておりますが、この問題は下手に語れば、勘違いや誤解を与えやすいし、

今の僕ごときが語っていい問題だとも思いませんし、とてもうまくなんて語れませんので、今後の蓮風先生の発言に注目していきたいと思っています。

 


蓮風先生は最近、そのブログ
「鍼狂人の独り言」の中で、ちょくちょくこの”魂(たましい)”というものに触れて、発言されています。

 


・・・これは注目ですよ。

 


なんか色々書いてたら、前置きが長くなっちゃったので、続きは次回。(苦笑)

 

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「夢」の不思議

2010.09.17

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最近、また「夢」というものについて、考えています。

これは以前にも、ちょこっとだけ、書いたことがあります。

「夢」はなぜ見る?
「肝」って何ですか?(その4) 参照

「夢」に対する解釈で、一般にもよく知られ、有名なのは、フロイトユングですわな。

・・・まあ、フロイトさんの方は、

「夢は願望の充足である」

と強調し、一時はそのフロイトさんの弟子でもあったユングさんは、

「夢は過去の願望ばかりではなく、現在の期待の実現でもある」

と強調しました。

それ以外にも色んな学者さんが色んな立派な研究成果や見解を持っているようですが、そのように、なかなか見解の統一がうまくはかれないということは、

 

逆に言うと結局は夢というものが「不可知」なるもの、ということの証左じゃないかな、とも思います。

日本にも、「初夢」とか「正夢」なんて言葉があります。

「夢」に対しては、昔からみんな興味津々な訳です。

(そりゃあそうです。だって超身近な不思議現象だもんね。)

これは、脳波の観察とか、そういう近代的な観点から研究した人たちによると、みんなが毎晩見ている、なくてはならないもの、ということになるらしいです。

(ただ、起きると同時に忘れてしまうのが正常ね。)

危険な実験で、「断夢(だんむ)実験」なるものがあるそうです。

これは、脳波上、「夢を見ている」とされる脳波の時に、強制的に被験者を覚醒させる、という実験で、これを5~7日繰り返すと、軽度~重度の精神異常などの症状が出るそうです。

(でもコレ、倫理的にやっちゃダメな実験ですぞ。)

東洋医学ではこの辺の仕組みを

 

「肝の臓」が蔵する「魂(こん)」

「肺の臓」が蔵する「魄(はく)」

 

そして、それらを統括する、


「心の臓」が蔵する「神(しん)」

 

というものの働きで説明します。

・・・まあ、ここいらの話はムズいので、年末の講義でちょこっとしゃべることにして、要は、

「夢をいつまでも覚えている=その時点でいくらか病的」

ということが言えるようです。

でもこれぐらいでは、誰にだってたまにならあることで、即治療対象、とは考えないことが多いでしょう。

面白いのは(というかみんなが興味あるのは)見た夢の内容に対する解釈ですね。

よく、やれ吉夢だとか凶夢だとか、色々言いますが、僕から見たら、「吉凶」もまた「陰陽」ですから、すべて「吉」の方向に解釈して、

プラスに転じてしまえばよいのです。(笑)

・・・例えばこないだ、とある大先生がおっしゃっていた、

「髪が全部抜けおちる夢を見た!」

なんていうのも、

凶夢としての解釈なら、”老いへの恐れ”とか、”ある能力の低下”という解釈もありますが、吉夢としての解釈として、

”さらなる高次の学びへの欲求”

とか、

”飾り気を捨て、ありのままに精神の成長に専心する前兆”

という解釈も出来るんです。

このように、マイナスは、いつだってプラスなんです。

・・・「陰陽論」て、マジで凄いんです!!

「夢」については、まだまだありますが、ちょこっとずつちょこっとずつ、小出しにして、書いていきます。(笑)


お楽しみに♪

 


【参考引用文献】

 

王克勤『中医心理学』たにぐち書店 

 

 

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「肺」って何ですか?(その9)

2010.09.11

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これまでのお話・・・


「肺」って何ですか?(その1)

「肺」って何ですか?(その2)
「肺」って何ですか?(その3)
「肺」って何ですか?(その4)
「肺」って何ですか?(その5)
「肺」って何ですか?(その6)
「肺」って何ですか?(その7)
「肺」って何ですか?(その8)

 

☆「肺」と「本能・感覚」と「魄(はく)」

・・・以前、「肝(かん)」は「魂(こん)」を蔵する、というお話をしました。

「肝」って何ですか?(その4) 参照

 

・・・また以前、「心」は「神(しん)」を蔵する、という話もしました。

「心」って何ですか?(その1) 参照

 


・・・そして以前、「脾」は「意(い)」を蔵する、という話もしました。

「脾」って何ですか?(その5) 参照

 


・・・「肺」というのも、これらと同じように、五臓の一つですから、精神作用や感覚に関係のある「魄(はく)」というものを蔵しています。

この辺の話って、とっても難しいけど、実はとっても面白い、そしてとっても重要な部分なんです。

 

・・・でもまあ、なるたけ簡単に述べます。

 

この「魄」というものも、まあ言わば、全身を流れる「気」のようなものであります。

 


そしてその役割は、

1.人間の本能的な欲求に関わる

2.感覚機能(味覚、嗅覚、視覚、聴覚、触覚、etc..)

主にこの2つです。

 


1.については、そもそも人間に「本能」なんてあるんだろうか、という議論もあるようです。

(事実、「人間には本能などない!」とする学問もあるようです。)

 


しかし間違いなく、「欲求」は存在しますよね?

 

・・・なのでこのような書き方にしました。

 

つまり、「〇〇したい!」という欲求の惹起には、この肺魄の活動が大きく関わる、ということです。

 

2.について、東洋医学では、( )内のあらゆる感覚にて得られた情報を、「肺魄(はいはく)」が「心神(しんしん)」に伝えることによって”認知”する、と、考えています。

(笑・・・難しい?)


まあ要するに、生命を主宰し、精神活動の中枢である、「君主の心」を、すぐそばでサポートする側近(宰相)が「肺」であり、その「君主の心」に蔵され、

 

人間の精神活動を統合する「神」というものに、あらゆる情報を正確に伝達するのが「肺魄」だ、という関係です。


・・・まあ、僕としては、最低限皆様に分かっていただきたいのは、東洋医学ではこのように、

”人間の感情も感覚も、消化吸収排泄など、あらゆる生理機能も、ぜ~んぶ「気」の働きによるものです!!”

と言ってしまえば、そりゃあ簡単なんだけど、それじゃザックリし過ぎててよく分からんので、東洋医学では、こういう細かいメカニズムについても当然いちいち考えているし、

 

そしてそれが、実際に起こるあらゆる現象を説明しうるものかどうか。治療を行う際に使えるものかどうかについても、ひっじょ~に細かく細かく考え尽くされているよ、

 

ということが言いたいのです。

 


・・・ですから、東洋医学はきちんと体系だった「医学」なんです。

 

荒唐無稽ではございません。

 

お間違いなきよう。(笑)

 

 


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「脾」って何ですか?(その5)

2010.06.22

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これまでのお話・・・

「脾」って何ですか?(その1)
「脾」って何ですか?(その2)
「脾」って何ですか?(その3)
「脾」って何ですか?(その4)

 

☆脾は湿気が嫌い

 


いや~、ここんとこ毎日毎日ムシムシしますね~!!

 


東洋医学では、体の内外の過剰な湿気のことを「湿邪(しつじゃ)」と呼び、あらゆる症状の発病因子と考えています。

 


体の中の湿邪のことを「内湿(ないしつ)」と呼び、体の外(自然界)の湿邪のことを「外湿(がいしつ)」と呼んでいます。

 


東洋医学では、「脾」というのはもともと湿った、乾きを嫌う臓だと考えています。

 


それに対して「胃」は逆で、乾いた腑である、と考えています。

(コレには深い意味があるんですが、難しいので割愛します。(笑))

 


体の中に余分な水分が増えたり、自然界がジメジメした時期になると、もともと湿っている「脾」の働きは弱ります。

 

 

だからいつも言うように、最近のようなジメジメした時期は、消化器に負担をかけないようにして、「飲み過ぎ、食べ過ぎ」はしないようにしないといけません。

 


それ+手足を使った軽い運動をしておけば、脾がしっかりしますので、あらゆる症状を未然に防ぐことが出来ます。

 


・・・では、脾が弱ると具体的にどんな症状が現れるんでしょうか?

 

☆脾が弱るとクヨクヨする

 


コレについては以前少しだけ書きましたが、(
「思」について 参照)あまりクヨクヨと悩んでも脾に悪影響だし、飲食の不摂生などから脾を弱らせても、逆にクヨクヨしやすくなります。

 


要するに脾が弱ってくると、体がジメジメし、考え方までもがジメジメしてくる訳です。(笑)

 


身の回りに、引っ込み思案の人、理屈っぽい人、いつも物思いに沈んでいる人なんかがいたら、その人の食生活をよ~く観察してみましょう。

 


・・・きっとヒドいはずです。(苦笑)

 

☆脾が弱ると頭の回転が鈍る

 


コレはなぜかというと、肝が魂を蔵し、心が神を蔵するように、脾は「意」を蔵する、という考え方があります。

「肝」って何ですか?(その4)
「心」って何ですか?(その1)   参照

 


この「意」というのは、人間の短期的な記憶力を発揮するのに役立ち、人間の知恵、知識、思考能力に深く関わります。

 

参考図書『中医心理学』たにぐち書店

 

暴飲暴食のあとは頭の回転が鈍くなる、というのは、多くの人が経験したことがあると思いますが、それはこの「脾」に蔵される「意」の働きが鈍っている結果、と東洋医学では考えます。

 


自閉症、認知症などの精神疾患なども、多くの場合「脾」が関わっていることが多いように思います。

 


東洋医学の言う「脾」は、このように、消化吸収だけでなく、精神的な働きにも大いに関わる、と考えます。

 


まだ他にも、脾が弱った時の症状はありますが、一つ一つ全部書くよりも、大まかな傾向を述べていこうと思います。

 

 

・・・次回に続く

 

 

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「心」って何ですか?(その6)

2010.06.04

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これまでのお話・・・

「心」って何ですか?(その1)
「心」って何ですか?(その2)
「心」って何ですか?(その3)
「心」って何ですか?(その4)
「心」って何ですか?(その5)

 

だんだんと、ネタが増えてまいりましたね・・・。

 


イイ感じです。(笑)

 


ただまあ、このブログは専門家に向けたものではないので、最初から全部読まなくても、1話1話、

「誰でもが」

分かるように配慮したものにしよう、と思っています。

 

今日は東洋医学のいう「心」を理解する上で欠かせない、「神(しん)」というものの関わりについて述べます。

 

 

東洋医学には「五神(ごしん)」という考え方があります。

 

人間の精神活動(考えたり、覚えたり、判断したり・・・)は、この「五神」というものの働きによってなされている、と考えられています。

 


そしてこの「五神」というものは、読んで字のごとく”5つ”あり、それぞれが「五臓」と深く関わる、とされています。

 


「五神」と「五臓」の関わりを書きますと・・・

・肝・・・魂(こん)

・心・・・神(しん)

・脾・・・意(い)

・肺・・・魄(はく)

・腎・・・志(し)

となります。

 

この中の、「肝」と「魂」の関わりについては、以前「肝」って何ですか?(その4)にて述べました。

 


脾と意、肺と魄、腎と志についても、いずれ述べようと思っていますが、今日はとりあえず「心と神」について述べましょう。

 


この「五神」というものには、それぞれに役割があります。

 


例えば、肝の魂には無意識をつかさどる働きがあったり、それ以外の意や魄や志にも、それぞれ異なった働きがあります。

 


その中で、この「心神」というものは特別、別格です。

 

なぜならば、他の四神の働きを統合し、まとめる、という、”部分的”ではなく、”全体包括的な”働きを持っているからであります。

 

つまり、人間が持つあらゆる感覚、記憶、本能、理性、思考、といった、精神活動の全てを、「心」が蔵する「神」が、最終的には統括している、という風に、東洋医学では考えます。

 

この辺の詳しい話はたにぐち書店『中医心理学』に非常によくまとまっております。

(しかしこれは専門書ですので、一般の方は読んでもチンプンカンプンかもしれません。)

 

 

実は僕は昔からこの辺の理論が好きでして、というか興味を持ってまして、色々な先輩たちに質問したり、本を読んだりして、徐々に自分なりに勉強を進めていました。

 

日々患者さんに接するたび、

「一体、人間のココロの仕組みってどうなっているんだろう?」

「この人は何を求めているんだろう?」

「どうすればこの人は癒されるんだろうか?」

とかっていう問題は、僕が鍼を持って以来、ずーっと頭にありました。

 


これを「医学理論的に考える」、一つのヒントがこの『中医心理学』でありました。

 

・・・まあそれはともかく、「心」という臓が蔵するこの「神」というものは、「魂」の説明の時と同じ感じになりますが、「気」のある側面に名前を付けたもの、と考えたらいいと思います。

 


つまり、平た~く、はしょりまくって、強引に、言うと(笑)、「気」のように全身を周流しつつ、”主に”「精神活動」のバランス調節をしているもの、と言えます。

 


じゃあ肝の臓が蔵する「魂」との違いは何か、というと、「魂」が無意識の精神活動に関与するのに対し、「神」は意識下の精神活動に”主に”関与します。

 

要は、仕事でも家庭でも、それ以外の人間関係も、我々の振る舞いは全て、各人の顕在意識下でなされていて、潜在意識が表面化することは通常ない訳ですが、

 

両者は表裏一体の関係性を持っていて、相互に影響しあう訳です。

 

これを調整、統括し、顕在意識を清明、正常たらしめているものが「心神」なのであります。

 

なので様々な要因でコレが不安定になると、実に多様な症状を呈します。

 


いわゆる西洋医学的な、”精神病”と言われるようなものも、東洋医学では「心神の病」の範疇に入ってくることが多いです。

 

あるいは原因不明の激痛を伴う病なども、この範疇で考えると説明がつくことが多いです。

 

なので臨床的には、この考え方を応用すると、非常に強力な鎮痛作用を鍼で表現することが出来たりします。

(・・・と言ってもまあ、そんな簡単な技術ではないけどネ。)

 

かなり簡単に述べましたが、東洋医学の言う「心の臓」が蔵する「神」とは、以上のような役割を持ち、人間の健康には欠かすことのできない役目を担っている、ということです。

 


次回に続く

 

 

 

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「肝」って何ですか?(その10)

2010.05.21

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これまでのお話・・・


「肝(かん)」って何ですか?(その1)

「肝」って何ですか?(その2)
「肝」って何ですか?(その3)
「肝」って何ですか?(その4)
「肝」って何ですか?(その5)
「肝」って何ですか?(その6)
「肝」って何ですか?(その7)
「肝」って何ですか?(その8)
「肝」って何ですか?(その9)


 

肝について、ダラダラとしゃべっていたら、もう10回目になってしまいました・・・。

(早いネー。)

 

・・・ということで、ここらで肝に関しては一旦完結します。

 


これまで、東洋医学の言う「肝」という臓は、「形態」に意味深い特徴があり、機能的には目や爪や髪や筋(経筋)の栄養に関わり、なおかつ内に「魂」「血」を蔵し、

 

しかも全身の気の流れを調節している、とっても大事な臓ですよ、ということを書いてきました。

 


ではそんなに重要な「将軍」である肝が病んでしまうのはどういう時か、と言うと、誤解を恐れず超簡単に言うと、非常に多いのが”精神的ストレス”です。

 


このネ、”精神的ストレス”という言い方、僕はあまり好きではありません。

 


・・・というのは、(その1)でも言うように、これを仮に患者さんに伝えても、だってそんなんどうしようもないじゃん!て言われるからです。

 


そりゃあ確かに、鍼をいくらしたって、その患者さんの、浮気性の旦那の性格を改善させたり、口うるさい上司を優しい上司に変化させることは不可能です。(笑)

 

でも、じゃあそういうことにストレスを感じて、まいっている人の治療は不可能かと言うと、「可能」です。

 

それも、”その場限り”ではなく、です。

 

(その9)で述べたように、肝は将軍であり、外的な物理的、精神的刺激に対して、色々と作戦を立てながら、人間の正常な状態を保つように、一生懸命働いています。

 

要はこの刺激があまりにも過度であったり、長期的であったりすると、”肝将軍”は一生懸命になり過ぎたり、時には疲れてしまいます。

 

そうなると主に、

「気の巡りを配分調節する機能」

が、うまく働かなくなり、実に様々な精神、身体症状を出します。

 


清明院の患者さん達を診ていても、”肝将軍”が病んでおられる患者さんを、非常に多く見かけます。

 


こういう患者さんを治療していくと、よく面白いことが起こります。

「先生、最近彼氏になんか言われても、”イラッ”と来なくなった!」

「職場の上司に小言や嫌みを言われても、別にどうでもいいや、と思えるようになりました。」

・・・コレです。

 


”肝将軍”が本来の働きを取り戻すと、これまでストレスに感じていたものがストレスじゃなくなる、という変化が起こります。

 


体を通じて、心が変わる、大げさに言うと、その人の「運命」が変わる、という訳です。

 


これが徹頭徹尾、「心身一如(しんしんいちにょ)」という、東洋医学の生命観をもって治療した時の、”正しい患者さんの変化”なんです。

 

ココロとカラダを切り分けたら、そんなの生命じゃないんです。

 

こういう考え方を体系化し、生命、自然を説明し、キチッと結果を出す東洋医学、ほんっとに、美しいよナー・・・と、思います。

 

肝の臓について、ひとまず終わり。

 

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「肝」って何ですか?(その8)

2010.05.15

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これまでのお話・・・

 


「肝(かん)」って何ですか?(その1)

「肝」って何ですか?(その2)
「肝」って何ですか?(その3)
「肝」って何ですか?(その4)
「肝」って何ですか?(その5)
「肝」って何ですか?(その6)
「肝」って何ですか?(その7)

 


引き続き、「肝」を構成する”7枚の葉っぱ”の意味について考えてみましょう。

 

前回述べたように、他の奇数に比較すると、影が薄いとはいえ、古代の中国では、様々な古典の中に”7”が出てきます。

 


『論語』『孟子』『荘子』などなど・・・。

 

僕ら東洋医学を学ぶものにとってなじみが深いモノの中では

『黄帝内経(こうていだいけい)』

という、東洋医学のバイブルと言ってもいい、大古典の中に、女性は7の倍数に応じて成長する、という記載が出てきます。

(つまり、7歳、14歳、21歳、28歳・・・と、女性の生涯の中で、身体的に大きな節目が訪れるよ、という記載です。)

 


また、東洋医学の根本思想である「陰陽論」の来源
ともいわれる、『易経(えききょう)』の中にも、”7”という数字が「繰り返し、つまり循環」を示す数字として登場します。

本田濟『易』P224~参照)

 

 

また、ここで詳しくは述べないが、今井宇三郎先生『宋代易学の研究』の第二章(P146~)に、『易』において有名な「河図洛書」「河図」には、

 

後漢の『漢書』五行志や、後漢の儒学者、鄭玄(じょうげん)『周易鄭玄注』によって、1~5までの数字を「生数(せいすう)」、6~10までを「成数(じょうすう)」と呼んでおり、

 

7は生数5+2と考えられ、五行では火の成数ということになるが、龍雷相火といわれる肝の臓に、五行において火の意味を持つ成数7が乗せられていることは興味深いが、

 

この意味で肺の八葉を解釈しようとすると、こちらは「木」の成数ということになるので、肝の七葉、肺の八葉の意味に一貫性が見出しにくい。

 

 

ここは、詳しい読者諸賢の方は是非ご教示下さい。

 

 

個人的には、蕭吉(しょうきつ)撰『五行大義』の生成数解釈でここに関しては強引に理解しています。

 

中村璋八ほか注『五行大義 上下巻』神野英明『鍼灸漢方の名医になるための秘訣』P106~参照)

 

 


さらには仏教においても「初七日」「四十九日」と、7および7の倍数(乗数)に、極まり、そしてまた繰り返す、あるいは次なる段階へ進む、
という意味がのせられています。

 

さらにさらに、中国古代の文学作品や詩集には、タイトルに「七」のつく作品が異常に多い、という特徴があるそうです。

 

この理由については、最終的には”不明”らしいですが(苦笑)、僕個人としては、「七」という数字に込められた、

「永続性」と「形式美」

に、当時の文学者たちは何かを感じていたんじゃなかろうか、と思っています。

(終わりと始まりを、同時に、かつストーリー性を持たせて表現できる数、という意味でね。)

 


・・・また、卑近な例として、7月7日の七夕祭りがありますね。

 


これも実は、織姫と彦星が、いつも会いたいのに年に一度しか会えない、ということから、「やっと会える日」の強調というよりも、好きな人がすぐそこにいるのに会えない、

 

”無限にも感じられる辛い時間”

 

というものの永続性とその極みを”7”に込めた、という解釈もあるようです。

 

(ロマンチック!!)

 

 


・・・さらに天体モノでいくと、何と言っても「北斗七星」の7です。

 


古代の中国人は夜空を見て、北極星の周りを回る北斗七星の柄の部分がどの方角を指すかで季節を定めました。

(ちなみに北辰会の”北辰”というのは北極星という意味がありマス・・。すごいネーミングだネ・・。)

 


そして道教においては、七夕に七星を祭る、という儀礼が存在し、内丹術(・・・ここでは詳しくは述べないけど、まあ要は気功みたいなもんです。)においても、”七”を極めて重要視します。

(これには”不老長寿”という考え方と”7”の神秘性、永続性が関係しているのではないか、と思っています。)

 


・・・また、空間を認識する上でも”7”は実は重要です。

 

つまり、「東西南北」の4と、「上下」の2を足すと”6”という数字が得られ、これを「六合(りくごう・・・宇宙のこと)」と言いますが、

これに「中央」、つまり「観測者の立ち位置」を加えると”7”という数字が得られます。

 


これにより広大無辺な六合空間の中に「基準」が出来るので、基準点から見て「空間」というモノを”どこからどこまで”と規定することが出来ますし、

 

当然、その空間の中で、2点間の移動を考えることが出来ますから、その移動速度と合わせて”いつからいつまで”という「時間」も規定することが出来ます。

 

小学生の頃やった、「道のり、早さ、時間」てやつが規定できるようになるわけです。

 

こう考えると、時間と空間を「規定する」「決定づける」数字が”7”なのであります。

 

それが、狭義の「魂」(意識の支え)と「血」を蔵し、「全身」という空間区分における「気」の配分調節をつかさどるという役割を持つ「肝」「形態」に、


さりげなくのせられている、という東洋医学・・・、シャレてないすか?

 

・・・今日のブログは、細かい部分をかなりはしょりまくって書いたものなので、ちょっと意味が分かりにくかったかもしんないけど、何となく壮大で面白そう、

 

ということが伝われば、とりあえず満足です(苦笑)

 

今日はあえて書きません(てか書けません)が、ここからさらに、まだまだ2次的、3次的に生じる疑問や、それに対する考察についても、

 

これまた面白い考え方が山ほど!!

 

そのほかにもまだまだ僕の中で何年かあたためてる事案が山ほど!!

 

 

・・・ですので、東洋医学の中にさりげなく出てくる数字の意味には、深い意味が込められているとしか思えないことが多く、無視しない方が良いのですが、

 

これに最初からあまり拘ってばかりいると、基礎固めが全然進まないので(苦笑)、初学の方にはまったくおススメしません。

 

 

こういう細かい部分で、なおかつ初めに提唱した人の見解が残っていないので、原義や解が出しにくい部分に対して、色々な古典を幅広く調べて渉猟し、

 

肝の臓の七葉の意味の仮説に関して猛烈に詳しくなったとして、・・・「で?」ってなります。(笑)

 

 


しかし、そうはいっても東洋医学面白い~・・・、やめられない止まらない~・・・。

 

 

続く

 

 

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「肝」って何ですか?(その7)

2010.05.12

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これまでのお話・・・


「肝(かん)」って何ですか?(その1)

「肝」って何ですか?(その2)
「肝」って何ですか?(その3)
「肝」って何ですか?(その4)
「肝」って何ですか?(その5)
「肝」って何ですか?(その6)

 

今日は(その6)でお話しした、「7」という数字について考えてみたいと思います。

 

以前、「東洋医学」と「数学」にもチラッと書いたように、この医学には何かと“数字”というものが付きまといます。

 


これの意味については、とりあえず置いといて、「そういうもんだ」ということにして話を進めた方が、当然のことながら簡単なんです。

 


しかし、古代中国人の生命観をより深く分かろう(理解しよう)と思ったら、こういう何気ないことの意味にもやっぱり目を向けた方がいいと思います。

 


東洋医学の言う「肝」”右に4葉、左に3葉、合わせて7葉”の葉っぱが垂れ下がった形をしております。

(↓こんな形ね。)

肝(臓腑経絡詳解)

 

(岡本一抱(1655-1716)『臓腑経絡詳解』より)

 

 

文脈的に、江戸期の日本の文献である『臓腑経絡詳解』から持ってくるのはどうかとも思いましたが、分かりやすかったのでこの図にしました。

 

(専門家の先生方、大目に見て下さい(笑))

 

中国においては、西洋医学との接触後も、東洋医学を実践する者の間では、この図が支持され続けてきた、という事実があります。


(まあ現代日本の僕らもある意味ではそうな訳ですが、少数派です・・・。)

 


この図には、何らかの深い意味があるに違いない、と思います。

 

私が数字の意味を掘り下げる時にいつもお世話になっている良書、青土社『中国神秘数字』によれば、しかしこの「7」という数字は、世界的、

 

とりわけ旧約聖書なんかでは特別な数字とされているけども、中国においては、

 

「1」「3」「5」「9」

 

という、他の1桁の奇数と比較すると、実はわりかし影の薄い存在なんだそうであります。

 

ちなみに旧約聖書の世界では、7は「聖なる数=聖数」として、無限の数や循環を意味する時に多く用いられ、有名な一節で、 『マタイによる福音書』第18章の中で、

 

ペトロがイエスに、


「兄弟が自分に対して罪を犯したならば、何回赦すべきですか?七回ですか?」


と聞いているのに対して、イエスは、

七回どころか、七の七十倍まで赦しなさい」

と説いております。

 

ここからしても、旧約聖書においては「7」という数字が「無限」を示す数字だ、ということが分かります。

 


しかも、7の内訳は「3(神性)+4(人性)」と言われ、すなわち宇宙(言いかえれば神と人との結合)を示します。

 

こう考えると、イイ感じで東洋医学のいう肝の臓の「右4葉、左3葉」と、肝が「魂を蔵する」ということの神秘性と符合するんだけどナー、


な~んて、学生の頃、よく妄想してました。


(笑・・・しかし、どう考えても東洋医学のいう”肝の7葉”は聖書からの発想ではないでしょうね。。。)

 

では東洋ではどうか、と考えて色々と調べてみると、「中華三大宗教」と言われる儒教、道教、仏教の中で、最も「7」がよく出てくるのは道教だそうです。

 

また、古代中国人における「7」の特殊性の中でよく考えられるのは「北斗七星」”七”です。

 

またさらに、意外と、”7”は中国における文学者の間で、非常に好まれた数字でもあるそうです。

 

さあ、この辺の解説は長くなりそうなんで、この続きは次回、お楽しみに・・・。(笑)

 

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