東洋医学 伝統鍼灸 清明院

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東洋医学と「痛み」(その5)

2010.12.09

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これまでのお話・・・

スピリチュアルペイン(その4)
東洋医学と「痛み」(その1)
東洋医学と「痛み」(その2)
東洋医学と「痛み」(その3)
東洋医学と「痛み」(その4)

・・・まあ、つらつらと書いてきましたが、この辺でいったん区切りましょう。

 


僕が年末にしゃべるネタが尽きてしまっても困りますんで・・・。(笑)

 


西洋医学では、人間の感情や感覚、思考については「脳=brain」を中心に考えます。

 


それに対し、東洋医学ではこれらのものについても「五臓六腑」、とりわけ「心の臓」を中心に考えます。

 


・・・と言っても、当然「脳」というものを無視した訳ではなく、もちろん「脳」や「頭部」は重要視はするけれども、人間の正常な生命活動維持には、

 

あくまでも五臓六腑だぜ!頭部や脳の機能がいくら重要でも、その根本には五臓六腑の正常な働きがあってこそだぜ!!という立場で、生理学、

 

医学が説明されています。

 


徹頭徹尾その立場で、このシリーズの最初の方に述べた、緩和ケアにおける「スピリチュアルペイン」のようなものについても考えていきます。

 


ですから当然、東洋医学では、そういったものに対する対応も、

「気」を正しく動かし、五臓六腑の陰陽、虚実のバランスを整える、

という方法に、結局は帰結します。

(もちろん、傾聴、ともにいる、といった、緩和ケア医療に出てくる方法論も、上記に含まれます。)

・・・話を戻すと、「痛み」をはじめ、あらゆる不快な感覚(症状)というものを取れにくくさせる大きな要因に「不安感」というものがあります。

 


この「不安感」というものと、「心の臓」は、大変関わりが深いです。

 


「不安」と症状の関係については、以前も書きました。

「不安」と「症状」
「不安」と「症状」(その2) 参照

この「不安感」というものが現れる東洋医学的な原因として、「心の臓」の異常を考える場合が多いです。

 


理屈では分かっていても不安である、何をしていても何となく不安である、考え過ぎてしまう、

 


それにより、症状がなかなかとれない、そして余計に不安になる、という悪循環を何とか断ち切る方法として、「心の臓」へのアプローチを考える場合が、東洋医学にはあります。

 


これがうまくいくと、

非常に強力な鎮痛効果+何とも言えない安心感、安堵感

を、鍼で表現することが出来ます。

(言葉で言うほど簡単ではありませんがネ。)


しかしこれまで、この考え方、方法論に、何度僕自身が救われたことか・・・。

 


末期癌の患者さん、重度の精神病の患者さん、あらゆる「心に残る」「忘れられない」症例が、頭を駆け巡ります・・・。

 

以上で一旦、このシリーズを完結したいと思います。


詳しい話は、年末にしようと思っております。

 

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(社)北辰会11月本部基礎コース

2010.11.22

昨日、11月21日の日曜日は、大阪にて行われた、(社)北辰会本部基礎コースに参加してきました!

今回は、午前中は油谷真空先生による「舌診講義とその実技デモンストレーション」

午後は藤本彰宣先生による講義「八綱(はっこう)弁証・正邪(せいじゃ)弁証」

その後、森洋平先生による講義「気血津液(きけつしんえき)弁証」と、

充実のラインナップでございました!

「八綱」については、以前このブログでも紹介しました。

カテゴリ 「八綱について」 参照

この「八綱」のうち、

”どこに病が存在するのか(表裏)”

”どんな性質の病か(寒熱)”

”病の勢いはどうか(虚実)”

を明確にするのが「八綱弁証」であります。

また、「正邪」というのは、人体の「正気」と、それを阻害する「邪気」のことを示し、その趨勢を明らかにするのが「正邪弁証」であります。

カテゴリ 「邪気」について 参照

これにより、さらに現時点での病の状態がクリアになっていく訳です。

「舌診」、「気血津液」については、まだ詳細はこのブログでも書いていませんが、これらも非常に大事な考え方であり、東洋医学的な治療(鍼灸、漢方薬など)をやる上では欠かせない概念です。

そして、終わった後は例によってお酒・・・。

今僕がつづっている「五行」について、何人かの先輩たちの考え方をうかがい、とてもためになりました。

あまり難解にならないように、ブログの内容に反映させたいと思います。

そして、終電にて東京に・・・。

久々の遠征で疲れていたのか、新幹線に乗った瞬間寝てしまいまして、新大阪―品川間の体感時間は5分程度でした。(笑)

・・・しかしやっぱ、

「基礎ほど重要なものはない」

と、あらためて実感しましたネ。

よく、ベテランの先生や、”名人”と言われる先生なんかがやる、

「応用的でカッコイイ技術」

というのは、

「徹底的な基礎の理解」

なくしては、あり得ないのであります。

このことは、片時も忘れてはいけません。

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患者さまの声(20代男性:アトピー性皮膚炎、皮膚の色素沈着、冷え症、慢性疲労)

2010.11.04

再び、「患者さまの声」をいただきましたので、掲載させていただきます。

20代 男性  

症状:アトピー性皮膚炎による皮膚の痒み、皮膚の色素沈着、冷え症、慢性疲労

 

 

2年ほど前、仕事の疲労や生活環境の変化などの影響からか、生まれて初めて、アトピー性皮膚炎を発症してしまいました。

その後、皮膚科に通院し、ステロイド剤の服用により症状は落ち着いたものの、このままステロイドを服用し続けて大丈夫なのかという不安と、

元々の酷い冷え性や肩凝りなどを改善しなければという思いから、妻の勧めもあって、清明院で鍼の治療を受けてみることにしました。

 


鍼そのものが初めてだったこともあり、最初は正直、あまり効果は期待できないと考えていました。

というのも、アトピーが出た時期に、

漢方薬で有名な皮膚科に通院し、治療を試みたものの、全く効果が感じられなかったという経験があり、東洋医学そのものに半信半疑だったからです

しかし、竹下先生の治療を受けてみると、ほんの何本か鍼を打っただけなのに、身体全体が温かく楽になって、

溜まっていた疲れがスッと抜けていくような感じがしました。

そして、何より驚いたのは、諦めていた背中などの色素沈着が、少しずつですが、明らかに薄くなっていったことです

その後、治療を重ねるたびに、アトピーや冷え性が徐々に改善していき、自分の身体が着実に良い方向に向かっていくのを感じました。

そして2、3ヶ月もすると、ステロイド剤もほとんど使わなくて済むようにまでなりました。

 


今では、定期的に清明院に通いながら、特に仕事が忙しい時には、アトピーが悪化しないよう、身体の疲れを取るようにしています。

治療を受けた後は、眼や腰の疲れが取れるほか、精神的にも気分が楽になったような気がして、毎回効果を実感しています。

私自身、もともと食生活には気を遣い、週数回ランニングをするなど、普段から健康面にはそれなりに注意している自信があったのですが、

それでも鍼が持つ万能薬のような効果には大変驚かされました。

同じような悩みを持つ多くの方にお勧めしたいです。

【清明院からのコメント】

上記の文章には、「鍼灸治療」というものの特性を示す、いくつもの示唆的な内容が含まれております。

彼自身がとても的確に、この医学の素晴らしさを「体から」理解して下さった、とてもありがたい文章だと思います。

この方は、発症してから約2年経ってから来院されたアトピー性皮膚炎の患者さんです。

清明院にはアトピーの患者さんが多くいらしていますが、中にはこういった、比較的病歴の浅い症例もあります。

清明院の鍼灸治療はアトピー性皮膚炎に対して、総じて高い確率で有効だと思いますが、

こういった、病歴が浅く、なおかつ患者さんの年齢が若い症例の場合は、特に効果がいいように思います。

初診時、不安そうな表情でみえた彼は、この1年半ぐらいで仕事、プライベートともに生活状況が大きく変化したこと、

これまでに有名な漢方薬局で漢方薬を処方してもらったにも関わらず無効であったこと、

ステロイド剤を今後も長期に使用していくことへの不安などを正直に訴えてくれました。

体表観察してみると、体中いたるところにに赤紫色の色素沈着があり、皮膚はガサガサで、潤いがほとんど感じられない、という状況でした。

職場の移動、結婚など、生活状況の急激な変化によって、精神、肉体ともに疲労が重なったために起こった病と考え、

証は「肝欝気滞(かんうつきたい)≒腎虚(じんきょ)」とし、虚実夾雑証として治療を開始しました。

経過はわずか数回の治療により、こちらも驚くほど良好であり、今では、

「初診の時の皮膚の状態を写真にとっときゃよかったネー!(苦笑)」

なんて言いながら治療しているぐらい、皮膚の状態は見違えるように、ほぼ正常に変化しています。

(写真がないのが本当に残念!)

上記に患者さん自身が述べて下さったように、どこかで漢方薬を服用して治らなかったら、

「もう東洋医学ではダメなんじゃないか・・・。」

と考えてしまったり、このままステロイド剤を対症的に使い続けることに、強い不安を感じている方は少なくないと思います。

もちろん、アトピーという病気は、この症例のように、比較的短期間で劇的な改善が得られる症例ばかりではないことは事実ですが、

「あきらめることはない!」

と強く思います。

 


投げ出してしまう前に是非1度、ご相談いただければ、と思います。

 

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はるばる・・・(その12)神野英明先生

2010.09.26

昨日、9月25日の土曜日は、いつものように、診療終了後は(社)北辰会関東支部定例会前日勉強会がありました!

今回の特別ゲストは、北辰会の「医易学(いえきがく)」の研究の第一人者であり、つい先日、

国内では大変希少な「医易学」の本を出版された、神野英明(じんのひであき)先生です!


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(・・・やたらいい笑顔しております。これも医易学のお蔭なんでしょう。(笑))

神野先生は土曜日の夜に清明院にみえて前日勉強会に参加し、その後の飲み会にも行き、

翌日(日曜日の定例会)は午前中に浅草で雷門とスカイツリーを観光し、

さらに午後の実技指導と「医易学」講義をこなし、その後の飲み会にも参加し、新幹線で大阪まで帰り、

明日はまた普通に診療をこなす、という、無尽蔵の体力を持っております。

(笑・・・北辰会はそういう先生ばかりなんです。なんでだろね?)

神野先生が先日出版された本は『鍼灸・漢方の名医になるための秘訣』という本です。

この本はスゴイ本です。

(・・・しかしすごいタイトルね。ちなみに専門書ですので、患者さんには難しいと思いますが、興味のある方はぜひ読んでみて下さい。)

(画像をクリックで購入ページにいけます。)

・・・「易」というと、細木和子さんとか、占い??という考えが浮かぶ方も多いかと思いますが、

それはあくまでも「易」の一面に過ぎず、本来の「易」というのは、古代中国の思想、哲学に基づいた、

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「自然の法則」

を説いたもの(というかそのもの)なんです。

つまり我々東洋医学の臨床家が、普段当たり前に用いる、「陰陽」とか「虚実」とかっていう考え方の根本が、「易」の中に説かれている、ということです。

今日の講義で神野先生が強調していたように、

「根本原理を理解して治療している医者と、根本原理が分からずに治療している医者、あなたならどちらにかかりたいですか?」

といった場合に、患者さんから見たら、当然、明らかに前者であるはずです。

・・・まあ、何をやるんでも、

「根本を理解する、おさえる。」

これは極めて大事なことです。

・・・大変厳しい表現ですが、枝葉が貧弱なのは、根本がしっかりしてないからだ、ということなんですね。

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「寒痢」と「熱痢」

2010.06.13

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今日は久々のオフでございます。

 


先輩から頼まれていた古文献の閲覧、コピーをしに国立公文書館に行こうかな、と思っていましたが、電話したら、あそこって土日休みなんですってね!

 


知らんかった・・・。

 


じゃあ僕が行けるなんて至難の業じゃないですか!

 


ホントもう、役所とか、そういうとこって、何でいつもそうなの?

 


コンビニを見習いなさい!と言いたくなります。(笑)

 


・・・まあそれはともかく、今朝起きて、何気なく冷蔵庫のミネラルウォーターを飲んだら、直後に珍しく強烈な腹痛に襲われました。

「まさか、賞味期限切れか!?」

と思い確認しましたが、そんなことはない、

「・・・てことは、なるほど、冷えですか!」

ということで早朝から下痢という、貴重な休日の幕開けです。(笑)

 


この下痢というもの、ほとんどの方は経験したことがあると思います。

 


ただ、下痢はなにも悪いことばかりではありません。

 


体(消化器)が極端に冷やされた時、極端に消化に負担のかかるものをたくさん食べたり飲んだりしたときなんかに、それをお掃除する意味で下痢します。

 


これは、体を正常な状態に戻さんがための反応であり、これを無理に止めたり、我慢しすぎたら大変なことになる場合があります。

(てか多いです。僕は自分の体で実験済みです。丈夫な人はやってみな。ホントきついよ。(笑))

 


東洋医学では下痢を大きく2パターンに分類します。

 


体の内外の冷えからなるものを「寒痢(かんり)」、主に暴飲暴食などからなるものを「熱痢(ねつり)」と言います。

 


寒痢は臭いがさほどなく、水様になっていることが多く、熱痢は臭いがきつく、泥状で、排便時に肛門に灼熱感や痛みを伴うことがあります。

 


そしてさらにこの両者には、「虚実」があります。

 


「虚」の場合は、体側の消化吸収する力が弱っていて、必要なもの(まだ吸収しきれてない)が下ってしまうパターンです。

 


この場合は、下痢の中に消化されきっていないもの(未消化物)が混じっていたりします。

 


「実」の場合は、無駄なものを摂り過ぎたために起こるものです。

 


この場合は、便の内容物にもその”無駄なもの”が反映されます。

 

今朝の僕のケースは明らかに「寒痢」でした。

 


そして「実」です。

 


・・・まあ、「生理的な寒痢」とでも言うべきか、出たら腹痛はスッキリで、ハイ終わり、です。

 


このようになれば、体の調整作用が働いた結果であるだけなので問題ないけど、下痢した後にスッキリしたのではなく、下痢したら余計しんどいとか、

 

あるいは全然症状に変化がない、となると「看過できない病的な下痢」である可能性が高くなります。

 

 

大便、小便は、読んで字のごとく「大きな便り」、「小さな便り」ですから、その患者さんが日頃どういう傾向を持っていて、今現在どうなのかを知ることは、

 

正しい診断する上では欠かせないのです。

 

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わが日々

2010.03.03

こないだ患者さんから、

「なんか先生のブログ読んでたら、先生って治療か、勉強か、飲んでるか、寝てるかしか、してなくないですか?」

と聞かれました。僕は当然、

「その通りでございます!」

とキッパリお答えしました。まあ充実っていうかなんていうかね、今はそれがイイ感じなんです。なのでもしこれに飽きたら、また他のことでもすると思います。

・・・当分、飽きないでしょうけどね。(笑)

僕はもともと極端に飽きっぽくて、昔から身の回りのものごとの全体像が僕なりにつかめてしまうと、とたんにそこにいるのが退屈になります。そのくせ「ヒマ」は嫌いだったりします。

まあ気分屋というか、要は根気がないんですね。(笑)

よく同業の後輩から、

「竹下先生って、どうして鍼をやろうと思ったんですか??」

と聞かれることがありますが、僕は大概、

「んーまあ、ヒマ潰しかな・・・。」

と答えます。(笑)僕は10代の頃、僕は毎日毎日、何か面白いことないかな~、と「真剣に」考えながら日々暮らしていました。

そいで試しに勉強を一生懸命やってみたり、仕事を一生懸命やってみたり、色々やった訳ですが、そこから得た結論は、

「自分が楽しくて、一生懸命になれて、終わりが果てしなくて、しかもそれが世のため人のためになることが、どうも一番飽きなさそうだぞ!」

ということです。

そいで「試しに」東洋医学、鍼灸やってみたら、これがなかなかね、「面白い」んですね~。

(ちなみに僕は人が何かをやった時に、「面白い、楽しい」と思えた時点ですでに才能あり、ということだと思っています。)

そいでこれがまた、ある程度出来るようになると、えらく「人の役に立つ」んですね~。そんでまた、それを極めようと思ったら「果てしない」んですよ。

時間は万人に平等です。1日が10時間しかない人なんて、この世にいません。平等な24時間をどう使おうがその人次第です。

その中で、「つまんなくって」、「人の役に立たなくって」、「簡単に」出来てしまうことをやってたって、僕にとっては「ヒマ」なんです。飽きるんです。もたないんです。

だから、僕にとって鍼灸は最高の「ヒマ潰し」なんです。

(誤解する人がいそうなので付け加えておきますが、遊び半分でやってるという意味ではなく、僕は極めて「真剣に」ヒマ潰しをしている、ということです。)

そんでもって今や「ヒマな日々」とか「充実した日々」とかを考えることは、僕にとって「虚実」を考えることなんであります!

・・・書いてみたはいいものの、今日のブログ、意味伝わったか、若干不安です。(苦笑)

「八綱」って何ですか?

2010.02.25

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前回まで、

ⅰ.「表裏」

ⅱ.「寒熱」

ⅲ.「虚実」

という、3つのテーマについて書いてきました。

 

 

そして、東洋医学ではこれらの考え方を使って、患者さんの

「どこに(病位)」

「どういう(病性)」

病があり、

 

「その勢い(病勢)」

 

はどうなのかを、まず大まかに診断するんだよ、ということを述べました。

 


この考え方(診断方法)を、

「八綱弁証(はっこうべんしょう)」

と言い、これは東洋医学的な鍼灸治療をする上で、絶対にはずせない診断法(弁証法)の一つです。

 

 

歴史的には、清代の程国彭(ていこくほう)が1732年に撰した『医学心悟』の中の「寒熱虚実表裏陰陽辦」に説かれ、

 

その考えは1742年、呉謙『医宗金鑑』にも引き継がれ、現代中医学の弁証法の基本の一つになりました。

 


なぜ「八綱」と言うのかというと、組み合わせとして、

「表か裏か」の2、

「寒か熱か」の2、

「虚か実か」の2

を掛け合わせると2の3乗となり、2x2x2=8パターンが得られます。

 


すなわち、全部は書かないけど、「表、寒、実」とか、「表、熱、実」・・・とかって組み合わせていくと、8通りの組み合わせが得られ、

 

それを「八綱(はっこう)」と呼び、大まかに病気を分類することが出来る訳です。

 

因みに、ここでしっかりと断っておきますが、上記は私の個人的な考えです。

 

 

中医学の教科書には、どの本にも八の要素を並列に並べて、陰陽、表裏、寒熱、虚実で八綱、という風に解説されていますが、個人的には上記の説に一票、という感じなんです。

 

(何の本で読んだか忘れたけど。。(^^;))

 

 

これは私の「八」に対する解釈にもかかわってきます。

 

 

奇経八脈の八、八法の八、八卦の八にしても、やはり総綱としての「二(陰陽)」があり、それの組み合わせや現れ方の違いのために他の「六」がある、

 

と考えた方が、個人的には納得できることが多いからです。

 

(まあ些末な話っちゃ話だけどね)

 

 


患者さんの病気のパターンが、この8パターンのうちのどこに収まるか、ということは、我々にとってとても大事です。

 


なぜなら、これによって「治療の大まかな方向性」が決定づけられるからです。

 


病気というのは、患者さんが訴える、表面的な「症状」にのみとらわれて、治療や診断そのものが右往左往していては、なかなか治っていきません。

 


大事なのは、その症状を出さしめている本質は何か、要は病の本体は何なのか、ということを常に意識して治療を進めることなんです。

 


そうしないと、治るものも治らないんです。

 

 

これを中医学では「治病求本」といい、2500年前の東洋医学のバイブルである『黄帝内経素問』陰陽応象大論(5)「・・治病必求於本.・・」とある通りです。

 

 


治療を技術論と考えると、本当に治療のうまい先生ほど、この「八綱弁証」が正確で、かつブレないんだと思います。

 


・・・ですから治療経過の中で、多少の症状の増減はあろうと、方向性が正しい訳だから、結果的には徐々に徐々に、確実に治っていく訳ですね。

 

 

ここが正確であれば、術者もフラフラすることなく、一貫性のある治療を進めることが出来るわけです。

 

まあ、ちょっとこのシリーズは難しかったかもしれないけど、とても大事な考え方なので、あえて書きました。

 

・・・ところで、清明院のHPにもこのブログにも、よく「弁証(べんしょう)」とか、「弁証論治(べんしょうろんち)」という言葉が出てきます。

 

コレ、聞き慣れませんよね?次回はそのお話。

 

 

 

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「表裏」って何ですか?

2010.02.24

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・・・続いて、「表裏(ひょうり)」についてです。

 


日常会話の中でも、

「表裏一体」
とか、

「表裏(おもてうら)のない人」

とか、よく言いますよね。

 


要するに「表(ひょう)」というのは見えてる部分、「裏(り)」というのは見えない部分のことを意味します。

 


この意味から、「表の病」というのは、「見えてる病」「表面的な病」という意味を持ち、要は病気の位置が浅いですよ、ということを示します。

 


浅い、と言うと、じゃあアトピーなどの皮膚の病気は「表の病」か、ということになりますが、そうではありません。

 


症状の出ている部位のことではなく、あくまでも、主な病変部位(言わば主戦場、症状の原因となる、陰陽バランスの崩れた場所)が浅い部位にある病を「表の病」と言います。

 

 

ですので、慢性のアトピーなどでは、症状が出ているのは皮膚であっても、主な病変部位は内臓(臓腑)の機能異常、バランス異常だったりするので、

 

「裏の病」という判断になる訳です。

 


「表の病」の例を挙げると、体の外からガンガン冷やされたり、あるいは乾燥して喉が痛いなどの、かぜの初期段階なんかが相当します。

 


これに対して「裏の病」というのは、「見えない病」「深い部分の病」という意味を持ち、深い部分、すなわち、繰り返しになりますが「臓腑」に病があるものを言います。

 


これも、簡単に「深い」と言ってしまうと、西洋医学的な肝炎とか腎炎とか胃炎などの、内臓の炎症疾患とかを想像しますが、そういう意味ではありません。

 


東洋医学の言う「臓腑」の病変と、西洋医学の言う「内臓=organ」の病変とは、意味が違います。

 

 

東洋医学では、内臓の形体的な異常に注目しているのではなく、五臓六腑それぞれの機能のバランスの乱れに注目しているのです。

 

ここは混同しないようにしたいですね。

 

 


ですので、慢性の頑固な病気などは、ほとんどが「裏の病」の範疇に入ってきます。

 


たとえ、肩こりであっても、です。

 

 

このように、東洋医学では”表裏”という概念(ものさし)を使って、病変(陰陽バランスの乱れ)が起こっている部位(位置)を考えますので、この考え方を「病位」と言います。

 


我々は、前回、前々回とお伝えしてきた「虚実(病勢)」「寒熱(病性)」「表裏(病位)」という、東洋医学独特の分類概念を駆使して、

 

「病の趨勢」「病の性質」「病の部位」という観点から、まず大まかに患者さんの病気を大きく「陰陽」に分析する訳です。

 

 

この「虚実」の2つ、「寒熱」の2つ、「表裏」の2つの物差しを使って、まず病を大きく「陰陽」の2つに分けることを、

 

「8つの綱領を弁(わきま)える」という意味で「八綱弁証」と言います。

 

 

因みに個人的には「虚実」の2、「寒熱」の2、「表裏」の2をそれぞれ組み合わせると、「虚・寒・表」「虚・寒・裏」「虚・熱・表」・・・と、組み合わせが8通りできるので、

 

その8通りの組み合わせに、とりあえず全ての病を概括できるという意味で「八綱弁証」という理解の方が好きだったりします。

 

 

この分類概念(弁証法)は、実は他にもまだまだあります。

 


そのうち気が向いたら書こうかな、と思います(笑)

 


それで、「ここぞ!!」というところに鍼灸を施し、アンバランスを整え、治療させていただく訳ですね。

 

 


東洋医学は、とっても科学的で芸術的な医学なんです。

 

 

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「寒熱」って何ですか?

2010.02.23

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前回に続いて、今日は「寒熱(かんねつ)」についてです。

 

人間はみんな、体に

「冷やす力」



「温める力」

が同時に備わっています。

 


だから、少々の気候変動では、健康状態が左右されることはない訳です。

 


暑ければ薄着をして、それでもダメなら汗をかいて、体内の余分な熱を漏らし、寒ければ厚着をして、それでもダメなら鳥肌を立ててガタガタ震えて、小便を出して、体を温めようとします。

 


しかし、これら二つの力のうちの、どちらかが弱ったり、元々持っているその力を超えた、激しい気候変動にさらされたりすると、病変が出現します。

 

 

要は体が「熱側に」「冷え側に」傾いてしまうのです。

 


治療にあたっては、これらがどうなっているかを考えて、崩れた寒熱のバランスがうまく調うように治療します。

 


上記の二つのうち、人体が元々持つ「温める力」が弱ったり(陽虚)、自然界の「寒さ」があまりにも強い(寒邪の邪気実)ことによって病気になったものを

「寒証(かんしょう)の病」

なんて言います。

 


この場合、温める治療が主になります。

 


「温める治療」と言うと、お灸が思い浮かぶと思います。

 


基本的にはそうですが、これは鍼でも出来ます。

 


逆に、人体の「冷やす力」が弱ったり(陰虚)、自然界の「暑さ」があまりにも強くて起こる病気(熱邪の邪気実)を

「熱証(ねっしょう)の病」

と言います。

 


この場合は冷やす治療が主になります。

 


では「冷やす治療」はどうかというと、これは東洋医学では主に鍼で行います。

 


お灸でも出来ないことはないけれど、ちょっとやりにくいのであえて初手では使いにくい、と個人的には思います。

 


もちろん上記の両方とも、漢方薬でも治療は可能です。

 


この考え方も、治療する上では外せない考え方です。

 

 

”寒熱”という相反する概念を使って、病の”性質”を考えるわけですから「病性」と言ったりします。

 


この「寒熱」(病性)に、前回書いた「虚実」(病勢)を重ねて、さらには「表裏」(病位)も重ねます。

 


こうすることで、その患者さんの

「どこが」

「どのように」

「どの程度」

悪くなっているかが、徐々に明らかになってくる訳です。

 


・・・次回は「表裏(ひょうり)」について書きます!

 

 


ドンドン行きますよ~!!

 

 

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