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「怒」について

2010.01.30

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日常で、「怒」という感情を感じること、ありますよね??

ちなみに僕はほぼ毎日あります(苦笑)

・・・ただ、大事なのは、不愉快なことがあった時にこの「怒」という感情を感じること自体はまったく普通(当たり前)のことであり、

いたって健康的なことです。

これが過度になったり、変に我慢したりすると体に悪影響が出る、と東洋医学では指摘しています。

よく「怒」という感情を感じた時、「頭に来る」とか、「てっぺんに来る」とか、あるいは「怒髪天を衝く」なんて言い方、ありますよね。

これは要するに、体の上部に「気」が集まる、つまり上半身、頭部にのぼせる、ということを言っております。

 

こういった記載は、『黄帝内経』の中にも出てきます。

 

【参考】

『素問 挙痛論(39)』「・・怒則氣上・・」「・・怒則氣逆・・」

『霊枢 邪気蔵府病形(4)』「・・若有所大怒.氣上而不下.・・」

『霊枢 五変(46)』「・・怒則氣上逆.・・」、)

だから怒ってばかりいる人は「気」が頭部で渋滞を起こした結果、頭部の血行が悪くなって、鬱滞して鬱熱を生じ、結果的にハゲやすいんです。

(苦笑・・これは半分冗談、半分本気です。)


また、東洋医学には、

「怒は肝(かん)をやぶる」

という言葉があります。

 

『黄帝内経素問 陰陽応象大論(5)』です。)

面白いですね。感情の種類によって、ダメージを受ける部分が違う、という考え方は、現代の最先端の脳科学にも通じるものがあるそうです。


とはいえ、まあいつも言いますが、ここで注意しなくてはいけないのは、東洋医学の「肝の臓」と、西洋医学の「肝臓=liver」は別物だ、ということです。

 ☞ 「五臓六腑(ごぞうろっぷ)」って何ですか?   参照

 

ですので、怒ってばっかりいる人が西洋医学的に肝炎や肝硬変になりやすい、という訳では無いです。

 

 

東洋医学の言う「肝の臓」の病変を発症しやすい、ということです。

 


この場合、東洋医学の言う「肝」の色々な機能のうち、特に

「全身にバランスよく気血を巡らせる働き(中医学のいう”疏泄(そせつ)”の働き)」

が低下し、頭痛やめまいなどなど、上半身を中心に、全身の様々な症状が出てくることが多いように思います。

毎日患者さんを診ていますと、この「肝の臓」の異常によって症状を出している患者さんが、非常に多いです。

 

(ほとんどと言ってもいいと思います。)

現代人は、怒り過ぎ、あるいは我慢しすぎなんでしょうかね・・。(苦笑)

愉快なことがあれば、その分不愉快なこともある、これは当り前の話です。

それに対して「普通に」怒れる日々を送りたいですね。

(・・・コレがなかなか難しいんだけどネ(笑))

次回は「喜」についてです。

 

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「七情」って何ですか?

2010.01.29

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東洋医学では、常に人間の「心」の問題と、「体」の問題との関係性に注目して、この両者を分けずに、医学理論を構築しています。

 

 

講義などで、このことを「身心一如(しんじんいちにょ)」と言って説明することがしばしばあります。

 

 

因みにこの「身心一如」という言葉は、元々は東洋医学の言葉ではなく、仏教の言葉であるようで、日本人では道元(1200-1253)の主著である『正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)』の中でよく語られる言葉で、

 

そのもとは、中国唐代の禅僧である南陽慧忠(なんようえちゅう 675-775)の語である「身心一如、身外無余」という言葉が先なんだとか。

 

岩波『仏教辞典 第二版』P573 参照)


・・・人間の感情って、色々ありますよね?

時には怒ったり、泣いたり、笑ったり、憎んだり、恨んだりと、日々様々に変化します。

そういう人間の感情を、東洋医学ではサクッと7つにまとめています。

 


それを「七情(しちじょう)」と言います。

 

 

その内訳は・・


怒(ど)・・・怒る

喜(き)・・・喜ぶ

思(し)・・・思い悩む

悲(ひ)・・・悲しむ

憂(ゆう)・・・憂う

恐(きょう)・・・恐れる

驚(きょう)・・・驚く


の7つです。


当然、これ以外にも人間の感情というのは数え切れないほどある訳で、東洋医学の聖典と言われる、

『黄帝内経(こうていだいけい・・・約2500年前の世界最古の医学書)』

では、この7つ以外にも少し挙げているんですが、現代の中医学の教科書では、人間の体に、特にマイナスの影響を与えやすい感情として、この7つを挙げております。

 

(燎原『基礎中医学』P114 参照)



「七情」
という言葉には、実はまた別の感情を取り上げた分類もあったりするのですが、ここでは、現代中医学がオーソドックスに採用している、

上記の7つについて紹介します。

・・・「マイナスの影響を与えやすい」といっても、上記の7つの感情を過不足なく、バランス良く感じている分には、まったくの正常な状態であり、

 

健康を害することはありません。


しかし、何かのきっかけで、怒りすぎたり、恐れすぎたり、常にどれか一つの感情に偏ったり、あるいはどれかが足らなかったりすると、

「病気」になる、と考えます。

ここでもやはり東洋医学はバランスを重要視する訳ですね。

また、面白いことに、これらの感情の一つ一つの過不足が、それぞれ具体的に、体のどういう機能に悪影響か、ということについてまで言及しています。


次回から、そのことについて紹介していこうと思います。

 

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「熱があるんですけど…」

2010.01.08

たまーに、治療の予約が入っている患者さんから、その日になって電話がかかってきて、

「ちょっと風邪ひいちゃったみたいで熱があるんですけど、鍼しても大丈夫なんでしょうか?」

と聞かれることがあります。

 

 

僕の答えは当然、

「もちろん大丈夫です。高熱で、歩くのもお辛いような状態じゃないのであればお越しください。鍼にはむしろ熱を早く下げる効果もあります。」

と、答えています。

 

 

ここでもし、

「いやあ、歩くのもつらい状態なんですけど…。」

と言われてしまったら、そのときの状態(症状)を電話で聞ける限り聞き、出来る限りの養生のやり方をお伝えするか、

 

場合によっては救急で病院に行ってもらうのを勧めることもあります。

・・・一般的には、発熱時は鍼灸はやっちゃダメ!という認識が根強くあるようです。

 

 

鍼灸学校で使われる『はりきゅう理論』という教科書では、鍼灸施術の禁忌として「⑤高熱症状を呈している場合」という表現で記載されています。(旧版P28)

 

 

(ある意味、微熱ならいいってことですね。)

 


なぜこうなのかについてはまた今度語ることにして、東洋医学では、数千年も前から、風邪のみならず、熱の出る病気に対しては、あらゆる考え方や方法論が試されています。

 

 

もちろん、古代中国には水銀式の体温計はなかった訳ですから、医者が患者の体を触っての熱感をもって、治療、診断の対象にしています。

そういうものに対して、ちゃんと鍼灸や漢方で対応し、結果を出してきたと、あらゆる文献に残っていますし、現代でも、中国や韓国などでは、

 

風邪をひいて発熱したときに鍼するなんてことは、別に当り前のことだそうです。

 

(韓国では、風邪をひいて発熱した時は、家庭にある鍼で自分で治療を行う、とか、中国でも、高熱を出してぐったりしている状態で中医学の病院に普通に運ばれてくる、なんて話も聞いたことがあります。)

 

 

また、(公社)全日本鍼灸学会の鍼灸論文検索サイト「JACRiD」「発熱」と検索すると、この通り、いくつかの論文が出てきます。

 

 

ここで、

「風邪をひいて熱が上がっている状態」

というのを、東洋医学でどう考えるかというと、外から入ってきた冷えや異物(邪気と呼びます)に対し、患者さんの体の恒常性を保とうとする力(正気)が、

 

邪気を排出しようと一生懸命戦っている状態、と考えます。

 

ということは、体の「陰陽」のアンバランスを整えて、「治る力」を増強する鍼灸治療は、体にしてみたら、この戦いの強い味方なんです。

よって、熱があっても鍼して全然問題ない、むしろやるべき!という風に、僕は考えています。

 


ちなみに、今日来た患者さんでも、風邪をひいて38℃弱発熱している方がおられましたが、治療後体温を計ってみると、多量の発汗とともに36.6℃まで下がっていました。

 


・・・信じられないかもしれませんが、まあ、事実だからしょうがないですね。(笑)

 

 

効くものは効きます。


(ただ、断わっておきますがどんな発熱でも鍼すれば間違いなくその場で下がる訳ではないですよ。誤解なきように!)

 


ですから、最近話題になった新型インフルエンザなんかも、鍼では全くお手上げかというと、学術的には全然そんなことないです。

 


しかし、ああいった感染力の強い、未知の感染症の場合は、保健所への届け出等、法律的な問題も関与してきますので、

 

現状の日本の一般の鍼灸院で診るケース自体が少ない、ない、ということなんです。

 


・・・ちなみに、今日書いたのは、あくまでも僕が思う、「東洋医学的に正しい鍼灸」をやった場合においての話です。

 

 


皆様に、この医学に対する「正しい」認識をどうか持っていただきたい、と思っています。

 

 

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「陰陽(いんよう)」って何ですか?

2009.11.23

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この前、

“「気」って何ですか?”

という疑問に対する、僕なりの簡単な考えを述べました。


(読んでない方は
こちら 参照

 


その中で、古代中国の自然哲学では、

 

「この世の全てのものは「気」から出来ており」

 

そして全ての自然現象は、

「気の動きによる現象である」

 


・・・と考えています、という話をしました。

 

しかしそれだけでは、すべての細かい現象を説明するのにあたっては、あまりにもザックリし過ぎてないか?という印象を持った方もいると思います。

 


例えば、人間と、動物、植物、鉱物、その他のあらゆる自然界における

「もののありよう」

とか、

「変化の仕方の違い」

について説明するには、

「みんな気で出来ています。全ては気の動きです。」

と言われたところで、

「は?何それ?よく分かんないし、そんなん信じられないよ!おたく新興宗教ですか?」

・・・ですよね?

 

(笑・・・僕も最初はそう思いました。)

 

もちろん、そのリアクションというのは、程度こそ現代とは違うだろうけど、古代も同じだったんじゃないでしょうか。

 


なので、それをより細かく、分かり易く説明(というより理解)するために生まれていった考え方が

「陰陽(いんよう)」

「五行(ごぎょう:木、火、土、金、水)」

という考え方なのだと思います。

 

「気」「陰気」「陽気」さらに「五行の気」という風に分けて、諸現象を説明していったわけです。

「五行」って何ですか?(その8) 参照

 

ただ、一応分けるけれども、前提として、あくまでも、全ては“気”で出来ている、という考え方を失わないように、です。

(ここが重要!)

 

これについて、説明する内容の幅を広げ過ぎると、あまりにも壮大な話になってしまうし、かといって細かすぎると、専門用語ばっかりの難解な話になってしまいます。

 

なので、ここでは、あくまでも患者さん向けに、東洋医学の言う、

人体内における気の動き」

を理解するための「陰陽」というものについて、ごくごく簡単に紹介してみたいと思います。

 

まず、一番分かり易い例として、この世界に存在する人間には、男と女の2種類がいます。

 


今も昔も変わりません。

 

これを、男は陽、女は陰と分けました。

 

「陽」とは動的な気の実在、「陰」とは静的な気の実在を意味します。

 

じゃあニューハーフはどうするんですか?と思った方、彼らはもともとは男です。(笑)

 


じゃあ映画の『リング』に出てくる貞子みたいな、両性具有は?と思った方、あれは例外ですので、性別とは違った物差しを使って陰陽分類すればよいのです。

 

・・・ともかく(苦笑)、現在でも、オリンピックなどで100mを何秒で走れるか、幅跳びでどれだけ飛べるか、比べれば必ず男性の方がいい記録が出ますよね?

 

・・・まあ、「動く」ということに関しては男性の方が得意というか、女性と比較して相対的に、そういう「動的な性質」を持った「人間」である、といえます。

 


一方女性は、男性と比較して相対的に静的(別に動けない訳ではない)であると同時に、「妊娠し、出産する」という生物学的な特徴があります。

 

これは、男性にはどうやっても真似出来ない、女性特有の機能ですね。

 

静的である、ということはマイナスだとか、あるいは動的であることに比べて劣っている、ということでは全然なく、そういう、動と静がうまくバランスをとることによって、

 

自然界の一部である「人間」という動物、つまり”気の凝集体の集団”が平和に、永続的に維持される、と考えます。

 

陰と陽との「バランスの調和から起こる正常な変化の連続」こそが大事なんだ、という考え方です。

(ですので女性差別とかではないですよ。誤解なきようお願いしますね(笑))

 


ここで、では男には陽の気、女には陰の気しか流れてないかというと、それは違います。

 


相対的に陽である男性にも、相対的に陰である女性にも、「陰陽」の2つの気が流れている、と考えます。

 

そうすると陽の中にも陰陽が、陰の中にも陰陽がある、そしてその中にも・・・となるわけで、そのパターンはいくらでも無限に分けられる訳です。

 

人間一人一人の個性、微妙な違い、というものについては、DNAではなく、東洋医学ではこれで説明していきます。

 


男っぽい女は陽寄りの陰、女っぽい男は陰寄りの陽、という具合に。

先ほどのニューハーフは後者ですが、生殖能力を持つわけではありませんよね?そういう意味では結局は彼らも「陽」です。

 


ちなみに余談ですが、そういうのを生年月日や星回りその他から細かく細かくパターン分類し、整理して、「ある人間」に起こる過去、現在、未来の予測をするのが「占い」ですよね。


(細木和子さんは今どこへ・・・。)

 

東洋医学では、このように人間(男女)に流れる陰陽の気のバランスが大きく乱れたものを「病気」(ここにも“気”が!)と考えます。

 

(因みにもちろんこの考え方は動物にも応用され、”獣中医学”と言われる分野もあります)

 

そして人体の中のその「気」の通り道のことを「経絡」(けいらく)と呼び、その経絡の上にある、鍼したり灸したりすることによって、

陰陽の気のバランス調整に使える点を「経穴」(けいけつ=ツボ)と呼ぶわけですね。

 

「気」と「陰陽」という哲学が大前提として基盤にないと、「東洋医学」は成り立たないのです。

 


「東洋医学」が、もしまったくの空理空論であって、現実に成り立たないものなら、当院の患者さん達はもちろん、
中国、日本で数千年に渡って患者さんの病気が治ってきた、

 

という事実はすべてウソで、何かの間違いだった、ということになりますし、もしそうならば、西洋医学が世界中に爆発的に広まっていく中で、東洋医学は確実に滅び去ったでしょう。

 


しかし現代において、いまだに滅んでいない、それどころか実際に患者さん達が治っている、ということは、「東洋医学」がれっきとした医学である証拠であり、


「気」と「陰陽」という哲学は、自然を理解する上での重要な一つの考え方である、何らかの真実をつかまえている、ということの証左だと思います。

 

 

「陰陽」とは、この世界を認識する時に、一つの仮説として「気」から全てのものが成り立っている、と考えた場合に、個々の違いと共通点、

 

諸々の自然現象を説明、理解する上で「必要な」考え方である、ということです。

 

 


・・・どうでしょうか。分かりにくいでしょうか?

 

 


僕なりにかなり配慮して書いたつもりですが、ご批判、ご感想いただけると幸甚です!

 

 

 

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患者さんへ推薦本『鍼一本で病気がよくなる』ほか

2009.11.21

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今日は、東洋医学のことがもっと詳しく知りたい!という人のために、いくつか一般人向けのいい本を紹介しようと思います。

◆その1


まずは新刊図書です!

 

私の鍼の師匠である、(一社)北辰会代表理事、藤本蓮風先生の最新著作です。

『鍼一本で病気がよくなる』PHP出版

これは、鍼灸臨床経験45年、のべ65万人の患者を治療した、藤本蓮風先生による著書で、

「鍼でなぜ難病をも治療することが出来るのか」

というテーマで、一般人のために分かりやすく解説した本です。

 

◆その2



続いて・・・

 

『鍼の力』―知って得する東洋医学の知恵

こちらも蓮風先生による、「朝日カルチャー」での一般の方々に対する講演記録をまとめたもので、東洋医学全般について基礎から分かりやすく解説されています。

 


◆その3

『アレルギーは鍼で治す!』


こちらも、藤本先生による著作です。

一般の方に向けて、アトピー、花粉症等、現代に多いアレルギー疾患に対して、鍼でどう対応出来るかについて分かりやすく書かれた本です。


◆その4



『徹底図解 東洋医学のしくみ』


こちらは、僕が教員養成科時代にお世話になった、東京衛生学園付属、中医学研究部部長の兵頭明先生が著された本で、大変見やすい図が多く、

 

一般の方にも分かりやすく東洋医学を解説されてます。

 

上記の4つの本は、もちろん全国の書店でお求めいただけますが、ネットからも購入することが出来ます。

本のタイトルをクリックして、Amazonから注文すればすぐに購入することが出来ます。

この4冊を読めば、東洋医学とはいかなるものか、簡単に、楽しく正しく、理解することが出来ると思います。


興味のある方は是非どうぞ!!

自信を持っておススメします!

 

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「気」ってなんですか?

2009.11.20

何といっても、「東洋医学」というものを考える上で、はずせないのがこの素朴な疑問ですね。

実際に思ったことのある方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。

僕も、たまーに患者さんから、

「気って何ですか?」

と、聞かれることがあります。

 


僕は大体、

「人間の体に流れる、目には見えないエネルギーみたいなものだよ。」

と、”よくある”、”平凡な”答え方をすることが多いです。(笑)


これは、あれこれ難しいことを言うよりも、このように答えれば、患者さんの何となくの納得が得やすいために、そうしています。

 

(この質問が来る度に、古代中国哲学の講義やってたら、とても回りません。(笑))

 

・・・しかしこの答え、まあ間違ってはいないと思いますが、細かく言えば突っ込める所がたくさんあります。


例えば

”エネルギー「みたいな」もの”

という表現です。

「じゃ、エネルギー「です」、でいいじゃん。エネルギーと「気」ってどう違うの??」

・・・という突っ込みです。

(患者さんにこう突っ込まれたことはないけどね。ちなみに僕は鍼灸学生時代、あらゆる先生に、これ、突っ込みまくってました(笑))

これはですねー・・・、僕はあえて、「みたいなもの」と、ぼやかして答えているんです。


というのは、

「気は人間の体に流れる目に見えないエネルギーです。」

と言い切ってしまうと、気=エネルギー、となり、気にもエネルギーにもそれぞれの語義がちゃんとあるだけに、不正確な答え方になるんです。

だから”気≒エネルギー”、と答えた方が正確さが増すわけです。

(・・・一見ね。)

ただ、では「気」とはなんだろうか、と完璧に伝えるために深く考えていくと、一冊の本が出来てしまうような壮大な話になってしまいます。


これでは患者さんに、

「その説明、もういいです。(+_+)」

 

て言われちゃいますし、

 

「こいつ、ヤベエやつだ。( ゚Д゚)」

って言われちゃいますんで(苦笑)、上記のような答え方にしているわけです。


・・・でまあ、今日ははなはだ簡単ではありますけど、この摩訶不思議な「気」というものについて、どういうものか極力簡単に紹介してみたいと思います。

 


Wikipediaを見ますと、

「気」とは中国思想や道教や中医学(漢方医学)などの用語の一つ。。

と、出てきます。

古代中国人は、最初、人間の呼吸、風や湯気(ゆげ)等、目に見えないけど確かに存在するものを、

「氣(気の本字(もともとの字)」

と名付けました。


それが発展して、この世のすべてのものはみーんな「氣」から出来ている、「氣」が集まれば形になり、「氣」が散れば形がなくなる、と、

 

自然現象のすべては、この「氣」の動きによるものなんだ~!、と解釈しました。

 

(『荘子』知北遊萹など)

 


・・・てことは当然、人間自体も「氣」が凝集して形をなした姿であり、そしてその体の中にもまた、この「氣」が満ちていて、人体内の「氣」が動くことによって、

 

あらゆる人間の正常な活動(食べたり飲んだり出したりetc..)がなされるんだ~!と、考えたわけですね。

 

・・・で、もしそうだと仮定すると、「氣」が順調に、滞りや過不足なく人体を動いてれば「無病」でいられる、即ち健康でいられる、と、考えられる訳ですね。

 

・・・で、さらに、もしそうならば、「病気になる」ということは、「氣」が順調に動いていないからである、となり、さらにそれを仮定していくと、

 

じゃあそれを改善させることが出来れば「病気の治療」ができるよね!という仮説が、当然成り立ちます。

 

ではその「氣」の動きを効率よく改善させるためにはどんな方法があんのかな、と、当時の医者たちが真剣になって、色々試しまくった経験の、

 

気の遠くなるほど長い追試の挙句に考え出された、最高の道具こそが、鍼灸であり、漢方薬なのであります。

 

そしてさらに、その経験(気を動かして病気を治す時の法則)を数千年も集積し、

「こりゃあ確かに言えてるぞ!間違いないぞ!」

と、絶対の自信を持って体系化されたのが、「東洋医学」なんです。


(ここでは「氣の動きが悪い時のパターン分類とその治し方の見本集」と言ってもいいかもしれません。)

・・・ですから、一番正確かつ短時間で答える答え方は、

「気は気です。」

となるんだけど、これこそ患者さんからしたら

「?」

とか

「禅問答ですか?」

って話になっちゃうんで(笑)、僕の場合は、冒頭に述べたような答え方にしてる訳です。


どうでしょうか?

「気ってなんですか?」という疑問は、いくらか解けましたでしょうか?

コメントありましたら是非お願いいたします<m(__)m>

 

 

 

◆参考文献

 

『気の思想』東京大学出版会

『鍼灸医学と古典の研究』創元社

 

 

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