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「肝」って何ですか?(その2)

2010.04.29

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これまでのお話・・・

「肝(かん)」って何ですか?(その1)

・・・「肝」というのは、五臓六腑の中の一つです。

「五臓六腑(ごぞうろっぷ)」って何ですか? 参照

 

東洋医学の言う、五臓と六腑には、それぞれに独特の働きがあり、それらがうまく協調しあうことによって、正常な人間の機能が保たれます。

 

これは、西洋医学の言う「内臓=organ」とは違う!ということは、何度も何度も、繰り返し繰り返し、述べている通りです。

(笑・・・しつこい?)

 

では東洋医学の言う「肝」というのは、どういうもので、何をしているところなんでしょうか?

 


まず、中医学の教科書的には、肝には、「疏泄(そせつ)」という重要な働きがあります。

 

”疏泄”という単語の歴史的経緯、変遷についてはまた色々とあるんですが、ここでは省きます。)

 


これは要するに、

全身を流れる「気(き)」や「血(けつ)」という、流動物を、足らないところには補い、渋滞があったら取り除く(通じさせる)、

という、肝の臓の重要な働きのことです。

 

これがあるから、少々の滞りや過不足であれば、「肝の疏泄機能」によって体が勝手に改善してくれる、という訳です。

 


次に重要なのが「蔵血(ぞうけつ)」という働きです。

 

これは読んで字のごとくです。

 

 


「血(けつ)を蔵する」訳ですから、体の正常な状態を維持するのに欠かせない「血」を、不足したところに補うためには、常にどこかに蓄えていないといけません。

 

「肝の臓」は、それ自体に”血を蓄える”という、重要な働きを担っております。

 


上記の2つは、東洋医学的「肝の臓」の機能の中でも最も重要な2つの働きです。

 


ちゃんと「疏泄」するためには、必ず十分に「蔵血」してないといけないし、たとえ「蔵血」だけしてても、「疏泄」しなかったら意味がありません。

 


この2つの働きは、「肝」という臓の、内向き(蔵血)と外向き(疏泄)の2つの機能として、「肝の臓」という臓の働きを考える上で、とても重要な「陰陽バランス」なのです。

 


ではそれ以外の働きはというと・・・それは次回。

 

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3月(社)北辰会関東支部定例会

2010.03.29

昨日、28日の日曜日は、いつも通り(社)北辰会関東支部の定例会に行ってきました!

 

(会場は代々木)

今回の内容は、午前中は基礎コースにて竹下謙先生による「臓腑経絡学総まとめ」、臨床コースでは後藤りゅう先生による「中医学総まとめ」

 

午後は基礎クラスと臨床クラス合同で、北辰会本部の副学術部長である堀内齊毉龍(さいりゅう)先生による「空間論の基礎から実技」と、

 

盛りだくさんでした。

僕も「空間論の実技」の時にひと班指導させていただきました。今回はいつになく受講生の先生方のやる気を感じて、大変イイ刺激になりました。

東風鍼灸院HP(竹下謙先生)
天晴堂鍼灸院HP(堀内齊毉龍先生)

・・・2件とも清明院HPのリンクからも入れます。

堀内先生は、いかつい名前を名乗っていらっしゃいますが(笑)、大変上品で、頭脳明晰な、男前の先生です。

また、(社)北辰会から最近出た『上下左右前後の法則』、『東洋医学の宇宙』という2冊の専門書の編集総まとめをなさった、大変「仕事の出来る」先生でもあります。

鍼灸治療 上下・左右・前後の法則―空間的気の偏在理論その基礎と臨床

    こちらから購入可能

東洋医学の宇宙―太極陰陽論で知る人体と世界

    こちらから購入可能

個人的には、治療院にも御自宅にもお邪魔させていただいたことのある、とても頼りがいのある、お世話になっている先輩です。

今回の定例会は、午後からは以前このブログにも登場した、たまたま往診で東京に来ていた、本部の島内薫先生も駆けつけて下さいまして、

 

堀内先生とお二人で絶妙のトーク、「大阪のノリ」を見せていただきました。(笑)

終わった後は、再び飲み会・・・。

 

話した内容はともかく、まあ、充実した休日でしたな。(笑)

「花粉症」について(その2)

2010.03.09

前回に続き、花粉症に対する、東洋医学の考え方を簡単に紹介してみたいと思います。

 


東洋医学には、「花粉症」という概念がありません。

 


もっと言うと、「アレルギー」という概念すらありません。

 

(最近の中医学の教科書にはあるかもしれませんが、伝統的には、という意味です。)

 

・・・でも、治療法はいくらでもあるのです。

 


どうしてでしょうか。

 


まず、花粉も、ホコリ(ハウスダスト)も、自然界にはあって当たり前です。

 


花粉やホコリ自体に毒があるなら、杉林の中に住んでる人とか、掃除業者さんとか、どうするんでしょうか。

 

 

即死しますよね。

 

(苦笑・・・まあ掃除業者の方は、掃除する場所によってはそういうこともあるでしょうが。)

 


要は、それ自体は毒を持っている訳では無い物質(異物)に対して、体の側が過剰に反応してしまい、鼻だの喉だのに異常を起こす、
その体の側に、

 

すでに何らかの問題があるはずだ、と考えるわけです。

 


そしてこの場合、体の「何がどう」おかしくなっているか、ということを明確に理解しなくてはいけません。

 


ここまでは、東洋医学も西洋医学もある意味同じです。

 


しかし、人体に対するそもそもの認識の仕方、分析方法が異なるため、ここから先は大きく違ってきます。

 


東洋医学では、「春先」という時期には、五臓の中の「肝」という臓の機能が盛んになる、と考えます。

(ただこれは、あくまでも「生理的に」盛んになる、という話で、正常な人であれば別に体が病気を起こすことはありません。)

 


「肝」という臓の働きが盛んになると、正常であれば全身に「気血」が充実、充満して、ある意味、パワー全開、元気溌剌状態になります。

 


皆さんの周りにも、この時期、妙にハイテンションで活発な人、いませんか?

 


自然界においても、「春先」という時期は、冬眠していた動物たちは動き出し、草木は芽吹き、いわゆる静から動へ、全てのものが大きく変化する時期でもあります。

 


じゃあ、パワー全開なのに、なんであんなことになるのかというと、花粉症のくしゃみにしても鼻水にしても、涙や目の痒みにしても、

要は「花粉」という異物を洗い流そうとする体の反応ですよね?

 


当然、目や鼻やのどの粘膜に花粉などの異物がくっついたら、体の中のお水がそこに集まって、一生懸命洗い流そうとします。

 


しかしそれを「過剰にやり過ぎてしまう」から、不快な症状が出る訳です。

 


東洋医学では、五臓の中の「肝」という臓が、体に入ってきた異物を処理する際の要となる、と考えます。

 


ですので、主にこの「肝」の臓の働きが「過度に」盛んになり過ぎたり、あるいは「肝」以外の臓でも、
その働きが何らかの原因(飲食の不摂生、睡眠不足など)によって弱っていたり、

 

亢進したりしてすると、自然界にもともとある、本来なんでもないはずの「花粉」というものに対して、過剰に反応し過ぎてしまうことがあります。

 


この状態を現代医学では「花粉症」と呼んでいるわけです。

 

・・・で、実際の鍼治療では、「肝の臓」以外にも、体の「どこがどう」おかしくなってるか(アンバランスを起こしているか)を東洋医学的に考え、

それを整える(平均化する)ように治療します。

 


そうすると、辛い症状が非常に軽くなる、あるいはまったく出なくなる、というケースが、実際によくあります。

 


要は、東洋医学では「花粉症」に対して、体の外ではなく「中」のアンバランス、とりわけ
「肝」という臓に注目しつつ、それらを整えることを目的として治療をする訳です。

 


これの具体的なやり方については、無数にあるし、専門的過ぎるので割愛しますが、ポイントは「肝」を落ち着かせることと、体の「上下」のアンバランスを整えることが重要になります。

 


つまり、花粉やホコリの存在自体はどうしようもないんだから、それに対して「普通に」反応できる体の状態を作ろうぜ、ということです。

 


・・・僕としては、これまでの経験上、「花粉症」の治療に対する、東洋医学の力は絶大だと思います。

 


知らなきゃホントに損します。(笑)

 


毎年毎年辛い症状に悩んでいる方、是非一度ご相談下さい。

 

 

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「弁証論治」って何ですか?

2010.02.28

今日は、中医学の基本としてよく語られる「弁証論治」とは何か、について書きたいと思います。

僕もコレ、二十歳の頃、最初に本で読んだ時は、何やら難しそうな熟語だな~・・ワケ分かんなそうだな~・・と思いました。

 

そいで、辞書で「弁証」と調べてみたら・・・

「弁証法とは、哲学用語であり、世界の事物の変化や発展の過程を本質的に理解するための方法、法則であり・・・」

な~んて出てきて、ますます難しそ~・・!タスケテ~!もう無理~!!ってなっちゃいました。(苦笑)

 

・・・でも、あとからよくよく冷静に考えたら、実は「弁証論治」という言葉を理解すること自体は、意外と簡単なことでした。

 

まず、上に挙げたような、いわゆる哲学用語の「弁証」という言葉と、中医学の言う「弁証」という言葉は、意味が違います。

 

全く無関係でもない、という話もあるんだけど、まずは別物、と考えた方が圧倒的に理解しやすいと思います。

 

東洋医学では、「治療する、その時点における病理状態(病態)そのものや、病態の本質」のことを「証(しょう)」と言います。

 

まずこの「証」を判断してから、それに基づき、論理的に」治療を進めることを「弁証論治」と言います。

 

まさに、

「証を弁(べん)じて治を論ずる」

訳ですネ。

 


東洋医学、中医学の言う「弁証論治」というのは、そういう意味であります。

 

ちょっと難しく(というか詳しく)言えば、

「様々な東洋医学独特の診察法(四診法)のような、具体的な分析方法に基づき、様々な東洋医学独特の手法(鍼灸、漢方薬など)によって、

性質の異なる病変を、論理的に解決する方法、過程」

のことです。

 



 

大事なことなので、ここでさらに説明を加えます。

 

患者さんは、鍼灸院に訪れた時に、その時その場で突然、「今まさに」症状を発症した訳ではありません。

 

鍼灸院にかかるまでの間には、まず、これこれこういう体質を持って生まれ、これこれこういう条件がそこに加わったことがきっかけとなって、今回の症状を発症してから、

 

次にこうなって、次にこうなって、そして最後にこうなったから、今の状態に至った、だから診てもらいたいのだ~!という、言わば「病の歴史」というものがあります。

 

 

 

これを「病歴(既往歴・現病歴)」と言います。

 

 


この「病の歴史(病歴)」を、発症以前のそもそもの体質も含めて、まずは細かくお伺いし、それがなぜそうなったのか、「東洋医学的に」分析し、

 

その結果として、今、この瞬間が、「東洋医学的に」どのような状態なのか、それを表わすのが「証」です。

 

例えるなら、治療するその時点での「病気の断面図」のことが「証」です。

 


「証」を明らかにすることを「弁証(べんしょう)」と言います。

 


そして、「論治」ということは、それを「論理的に治療する」訳ですから、先ほど言った「病の歴史」がキッチリと東洋医学の理論でもって、ピシッと分析出来てなければなりません。

 

なのでよく、中医学の成書では

「弁証は論治の根拠であり、論治は弁証の目的である」

なんて言われます。

 

まあ、それがより正確に、的確に、シャープに出来るようになるために、わざわざ日曜日の度に勉強会に行ったり、飽きもせずに何冊も本を読んだりしてるんです。

 


僕らは毎日毎日、こういうことをやっている訳です。

 


決して超能力者なんかじゃないし、鍼が効くということは、何にも不思議現象、超常現象ではないんです。(笑)

 


もちろん、この医学の大前提としての「気」「陰陽」という、東洋の偉大な自然哲学を「あるものと考えて」こそ、の話ですけどネ。(苦笑)

 

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「八綱」って何ですか?

2010.02.25

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前回まで、

ⅰ.「表裏」

ⅱ.「寒熱」

ⅲ.「虚実」

という、3つのテーマについて書いてきました。

 

 

そして、東洋医学ではこれらの考え方を使って、患者さんの

「どこに(病位)」

「どういう(病性)」

病があり、

 

「その勢い(病勢)」

 

はどうなのかを、まず大まかに診断するんだよ、ということを述べました。

 


この考え方(診断方法)を、

「八綱弁証(はっこうべんしょう)」

と言い、これは東洋医学的な鍼灸治療をする上で、絶対にはずせない診断法(弁証法)の一つです。

 

 

歴史的には、清代の程国彭(ていこくほう)が1732年に撰した『医学心悟』の中の「寒熱虚実表裏陰陽辦」に説かれ、

 

その考えは1742年、呉謙『医宗金鑑』にも引き継がれ、現代中医学の弁証法の基本の一つになりました。

 


なぜ「八綱」と言うのかというと、組み合わせとして、

「表か裏か」の2、

「寒か熱か」の2、

「虚か実か」の2

を掛け合わせると2の3乗となり、2x2x2=8パターンが得られます。

 


すなわち、全部は書かないけど、「表、寒、実」とか、「表、熱、実」・・・とかって組み合わせていくと、8通りの組み合わせが得られ、

 

それを「八綱(はっこう)」と呼び、大まかに病気を分類することが出来る訳です。

 

因みに、ここでしっかりと断っておきますが、上記は私の個人的な考えです。

 

 

中医学の教科書には、どの本にも八の要素を並列に並べて、陰陽、表裏、寒熱、虚実で八綱、という風に解説されていますが、個人的には上記の説に一票、という感じなんです。

 

(何の本で読んだか忘れたけど。。(^^;))

 

 

これは私の「八」に対する解釈にもかかわってきます。

 

 

奇経八脈の八、八法の八、八卦の八にしても、やはり総綱としての「二(陰陽)」があり、それの組み合わせや現れ方の違いのために他の「六」がある、

 

と考えた方が、個人的には納得できることが多いからです。

 

(まあ些末な話っちゃ話だけどね)

 

 


患者さんの病気のパターンが、この8パターンのうちのどこに収まるか、ということは、我々にとってとても大事です。

 


なぜなら、これによって「治療の大まかな方向性」が決定づけられるからです。

 


病気というのは、患者さんが訴える、表面的な「症状」にのみとらわれて、治療や診断そのものが右往左往していては、なかなか治っていきません。

 


大事なのは、その症状を出さしめている本質は何か、要は病の本体は何なのか、ということを常に意識して治療を進めることなんです。

 


そうしないと、治るものも治らないんです。

 

 

これを中医学では「治病求本」といい、2500年前の東洋医学のバイブルである『黄帝内経素問』陰陽応象大論(5)「・・治病必求於本.・・」とある通りです。

 

 


治療を技術論と考えると、本当に治療のうまい先生ほど、この「八綱弁証」が正確で、かつブレないんだと思います。

 


・・・ですから治療経過の中で、多少の症状の増減はあろうと、方向性が正しい訳だから、結果的には徐々に徐々に、確実に治っていく訳ですね。

 

 

ここが正確であれば、術者もフラフラすることなく、一貫性のある治療を進めることが出来るわけです。

 

まあ、ちょっとこのシリーズは難しかったかもしれないけど、とても大事な考え方なので、あえて書きました。

 

・・・ところで、清明院のHPにもこのブログにも、よく「弁証(べんしょう)」とか、「弁証論治(べんしょうろんち)」という言葉が出てきます。

 

コレ、聞き慣れませんよね?次回はそのお話。

 

 

 

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(社)日本東洋医学会

2010.02.15

昨日は、(社)日本東洋医学会、関東甲信越支部、東京都部会に行ってきました。

 

(会場は蒲田にある東邦医大)

(社)日本東洋医学会HP
http://www.jsom.or.jp/html/index.htm

 

午前中は「清代宮廷の漢方治療」というテーマの講義と「漢方薬の効果の経路」、午後は「中医学と盗汗(寝汗)」、「鍼灸治療の可能性」というテーマで、

 

医師の先生方による講義でした。

 

(社)日本東洋医学会は医師が中心となっている学術団体です。

 

その歴史は古く、60年も前からあります。

(社)北辰会とも友好的であり、代表理事である藤本蓮風先生も、これまでに大きな学会に何度か座長やシンポジストとして参加しています。

この日の講義もいい内容でした。

 

詳しい内容は難しくなるので書きませんが、感想としては、医師たちの中にこのように東洋医学を学び、活動する人たちが増えてきていることをとても嬉しく感じました。

若い先生もちらほらいて、今後ももっともっと東洋医学を学ぶ若い医師の先生が増えて来ることを期待したいな~、と思いましたね~。

そうなった時に共に頑張れるように、僕ももっと頑張らねば・・・。

 

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「驚」について

2010.02.05

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七情シリーズ、ラストは「驚」についてです。

「驚」という感情は、前回の「恐」という感情とセットで書かれることが多いです。

「恐」について 参照

ダメージがいく臓は「心」と「腎」であります。

 

【参考】

燎原『基礎中医学』P118

『黄帝内経素問 経脉別論(21)』「・・有所驚恐.喘出於肺.淫氣傷心.・・」「・・驚而奪精.汗出於心.・・」

『同 挙痛論(39)』「・・驚則心無所倚.神無所歸.慮無所定.故氣亂矣.・・」

 

 

また、「心の臓」「腎の臓」以外にも、少陽、陽明、少陰、肝の熱など、あらゆる病機で、「驚」という現象が起こることを、『黄帝内経』では教えてくれております。

 


また、当然ながら「驚」「恐」の両者は違います。

「驚」・・・驚く、という感情は、多くは一過性のものです。

ある事柄があって、それに対して2年も3年も継続してずーっと驚き続けている人、見たことあります?

それとか、

「今まさに驚いているところです。」

ということを、驚いている最中に人に話したり、出来ますか?

・・・というのは、例えば物陰から急に飛び出して

「ワッ!」

と脅かされた場合、一瞬、

「うわっ。」

となって「驚」という感情変化をし、その後、腰が抜けたり、ドキドキしたりしますが、すぐに落ち着きますよね?

その直後に大体みんな、

「あ~ビックリ”した”~!!」

っていうのは、すでに過去の話ですよね?

それを考えれば分かるように、「驚」という感情変化は、それ自体が「一過性のもの」という特徴を持っています。

 

それに対して「恐」・・恐れる、という感情は、その対象に対して徐々に蓄積されたり、逃れようのない過去のトラウマ(心の傷)に起因していたりします。

ただし、じゃあ「驚」の方が体に与える影響が軽いかと言うと、そうではありません。

「一過性」であるだけに「慣れにくい」という面があり、同じパターンの事柄に何度も「驚く」という面があります。

また、最初に書いたように、「驚」「腎の臓」にも悪影響を与えつつ、「心の臓」にも悪影響を与えます。

「心」については「喜」のところで出てきました。

 ☞ 「喜」について 参照

「驚」は主に「心」の、正常な思考をつかさどる機能を障害するため、驚いた時、ドキドキし、訳のわからない行動や言動をしたりする訳ですね。

それを考えると「驚」「恐」もイヤなもんですねえ・・。(苦笑)

そしてこれら2つが、時にセットで生じて、人体の正常な状態を犯す、と東洋医学では考える訳です。

ちなみに、『黄帝内経 素問』挙痛論(39)という項には、

「驚けば気が乱れる」

という記載が出てきます。

 

逆に言うと、何らかの別の原因で「心の臓」や「腎の臓」が弱っていたり、他臓とのバランスが悪くなっていたりすれば、大したことない刺激にも「驚きやすく」なってしまい、

 

全身の気の流れが乱れやすくなってしまいます。

 

これが酷くなれば、いわゆる「精神病」と言われるような状態となっていきます。

また、デカルト科学で有名なデカルトさん(1596-1650)は、その最後の著作である『情念論』の中で、”基本6情念”なるものを定義し、

 

そのトップに「驚(驚き)」を挙げています。

この”基本6情念”というのは、デカルトさん曰く、あらゆる情念の基本となるものとし、色で言えば原色にあたるもの、と考えているようです。

それのトップに「驚」がきているのは大変興味深いですね。

・・・まあ、これ以上は難しくなるので解説はしませんが、興味ある人は読んでみて下さい。(笑)

次回は、「七情について」を、簡単にまとめてみようと思います。

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「怒」について

2010.01.30

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日常で、「怒」という感情を感じること、ありますよね??

ちなみに僕はほぼ毎日あります(苦笑)

・・・ただ、大事なのは、不愉快なことがあった時にこの「怒」という感情を感じること自体はまったく普通(当たり前)のことであり、

いたって健康的なことです。

これが過度になったり、変に我慢したりすると体に悪影響が出る、と東洋医学では指摘しています。

よく「怒」という感情を感じた時、「頭に来る」とか、「てっぺんに来る」とか、あるいは「怒髪天を衝く」なんて言い方、ありますよね。

これは要するに、体の上部に「気」が集まる、つまり上半身、頭部にのぼせる、ということを言っております。

 

こういった記載は、『黄帝内経』の中にも出てきます。

 

【参考】

『素問 挙痛論(39)』「・・怒則氣上・・」「・・怒則氣逆・・」

『霊枢 邪気蔵府病形(4)』「・・若有所大怒.氣上而不下.・・」

『霊枢 五変(46)』「・・怒則氣上逆.・・」、)

だから怒ってばかりいる人は「気」が頭部で渋滞を起こした結果、頭部の血行が悪くなって、鬱滞して鬱熱を生じ、結果的にハゲやすいんです。

(苦笑・・これは半分冗談、半分本気です。)


また、東洋医学には、

「怒は肝(かん)をやぶる」

という言葉があります。

 

『黄帝内経素問 陰陽応象大論(5)』です。)

面白いですね。感情の種類によって、ダメージを受ける部分が違う、という考え方は、現代の最先端の脳科学にも通じるものがあるそうです。


とはいえ、まあいつも言いますが、ここで注意しなくてはいけないのは、東洋医学の「肝の臓」と、西洋医学の「肝臓=liver」は別物だ、ということです。

 ☞ 「五臓六腑(ごぞうろっぷ)」って何ですか?   参照

 

ですので、怒ってばっかりいる人が西洋医学的に肝炎や肝硬変になりやすい、という訳では無いです。

 

 

東洋医学の言う「肝の臓」の病変を発症しやすい、ということです。

 


この場合、東洋医学の言う「肝」の色々な機能のうち、特に

「全身にバランスよく気血を巡らせる働き(中医学のいう”疏泄(そせつ)”の働き)」

が低下し、頭痛やめまいなどなど、上半身を中心に、全身の様々な症状が出てくることが多いように思います。

毎日患者さんを診ていますと、この「肝の臓」の異常によって症状を出している患者さんが、非常に多いです。

 

(ほとんどと言ってもいいと思います。)

現代人は、怒り過ぎ、あるいは我慢しすぎなんでしょうかね・・。(苦笑)

愉快なことがあれば、その分不愉快なこともある、これは当り前の話です。

それに対して「普通に」怒れる日々を送りたいですね。

(・・・コレがなかなか難しいんだけどネ(笑))

次回は「喜」についてです。

 

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「七情」って何ですか?

2010.01.29

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東洋医学では、常に人間の「心」の問題と、「体」の問題との関係性に注目して、この両者を分けずに、医学理論を構築しています。

 

 

講義などで、このことを「身心一如(しんじんいちにょ)」と言って説明することがしばしばあります。

 

 

因みにこの「身心一如」という言葉は、元々は東洋医学の言葉ではなく、仏教の言葉であるようで、日本人では道元(1200-1253)の主著である『正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)』の中でよく語られる言葉で、

 

そのもとは、中国唐代の禅僧である南陽慧忠(なんようえちゅう 675-775)の語である「身心一如、身外無余」という言葉が先なんだとか。

 

岩波『仏教辞典 第二版』P573 参照)


・・・人間の感情って、色々ありますよね?

時には怒ったり、泣いたり、笑ったり、憎んだり、恨んだりと、日々様々に変化します。

そういう人間の感情を、東洋医学ではサクッと7つにまとめています。

 


それを「七情(しちじょう)」と言います。

 

 

その内訳は・・


怒(ど)・・・怒る

喜(き)・・・喜ぶ

思(し)・・・思い悩む

悲(ひ)・・・悲しむ

憂(ゆう)・・・憂う

恐(きょう)・・・恐れる

驚(きょう)・・・驚く


の7つです。


当然、これ以外にも人間の感情というのは数え切れないほどある訳で、東洋医学の聖典と言われる、

『黄帝内経(こうていだいけい・・・約2500年前の世界最古の医学書)』

では、この7つ以外にも少し挙げているんですが、現代の中医学の教科書では、人間の体に、特にマイナスの影響を与えやすい感情として、この7つを挙げております。

 

(燎原『基礎中医学』P114 参照)



「七情」
という言葉には、実はまた別の感情を取り上げた分類もあったりするのですが、ここでは、現代中医学がオーソドックスに採用している、

上記の7つについて紹介します。

・・・「マイナスの影響を与えやすい」といっても、上記の7つの感情を過不足なく、バランス良く感じている分には、まったくの正常な状態であり、

 

健康を害することはありません。


しかし、何かのきっかけで、怒りすぎたり、恐れすぎたり、常にどれか一つの感情に偏ったり、あるいはどれかが足らなかったりすると、

「病気」になる、と考えます。

ここでもやはり東洋医学はバランスを重要視する訳ですね。

また、面白いことに、これらの感情の一つ一つの過不足が、それぞれ具体的に、体のどういう機能に悪影響か、ということについてまで言及しています。


次回から、そのことについて紹介していこうと思います。

 

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「熱があるんですけど…」

2010.01.08

たまーに、治療の予約が入っている患者さんから、その日になって電話がかかってきて、

「ちょっと風邪ひいちゃったみたいで熱があるんですけど、鍼しても大丈夫なんでしょうか?」

と聞かれることがあります。

 

 

僕の答えは当然、

「もちろん大丈夫です。高熱で、歩くのもお辛いような状態じゃないのであればお越しください。鍼にはむしろ熱を早く下げる効果もあります。」

と、答えています。

 

 

ここでもし、

「いやあ、歩くのもつらい状態なんですけど…。」

と言われてしまったら、そのときの状態(症状)を電話で聞ける限り聞き、出来る限りの養生のやり方をお伝えするか、

 

場合によっては救急で病院に行ってもらうのを勧めることもあります。

・・・一般的には、発熱時は鍼灸はやっちゃダメ!という認識が根強くあるようです。

 

 

鍼灸学校で使われる『はりきゅう理論』という教科書では、鍼灸施術の禁忌として「⑤高熱症状を呈している場合」という表現で記載されています。(旧版P28)

 

 

(ある意味、微熱ならいいってことですね。)

 


なぜこうなのかについてはまた今度語ることにして、東洋医学では、数千年も前から、風邪のみならず、熱の出る病気に対しては、あらゆる考え方や方法論が試されています。

 

 

もちろん、古代中国には水銀式の体温計はなかった訳ですから、医者が患者の体を触っての熱感をもって、治療、診断の対象にしています。

そういうものに対して、ちゃんと鍼灸や漢方で対応し、結果を出してきたと、あらゆる文献に残っていますし、現代でも、中国や韓国などでは、

 

風邪をひいて発熱したときに鍼するなんてことは、別に当り前のことだそうです。

 

(韓国では、風邪をひいて発熱した時は、家庭にある鍼で自分で治療を行う、とか、中国でも、高熱を出してぐったりしている状態で中医学の病院に普通に運ばれてくる、なんて話も聞いたことがあります。)

 

 

また、(公社)全日本鍼灸学会の鍼灸論文検索サイト「JACRiD」「発熱」と検索すると、この通り、いくつかの論文が出てきます。

 

 

ここで、

「風邪をひいて熱が上がっている状態」

というのを、東洋医学でどう考えるかというと、外から入ってきた冷えや異物(邪気と呼びます)に対し、患者さんの体の恒常性を保とうとする力(正気)が、

 

邪気を排出しようと一生懸命戦っている状態、と考えます。

 

ということは、体の「陰陽」のアンバランスを整えて、「治る力」を増強する鍼灸治療は、体にしてみたら、この戦いの強い味方なんです。

よって、熱があっても鍼して全然問題ない、むしろやるべき!という風に、僕は考えています。

 


ちなみに、今日来た患者さんでも、風邪をひいて38℃弱発熱している方がおられましたが、治療後体温を計ってみると、多量の発汗とともに36.6℃まで下がっていました。

 


・・・信じられないかもしれませんが、まあ、事実だからしょうがないですね。(笑)

 

 

効くものは効きます。


(ただ、断わっておきますがどんな発熱でも鍼すれば間違いなくその場で下がる訳ではないですよ。誤解なきように!)

 


ですから、最近話題になった新型インフルエンザなんかも、鍼では全くお手上げかというと、学術的には全然そんなことないです。

 


しかし、ああいった感染力の強い、未知の感染症の場合は、保健所への届け出等、法律的な問題も関与してきますので、

 

現状の日本の一般の鍼灸院で診るケース自体が少ない、ない、ということなんです。

 


・・・ちなみに、今日書いたのは、あくまでも僕が思う、「東洋医学的に正しい鍼灸」をやった場合においての話です。

 

 


皆様に、この医学に対する「正しい」認識をどうか持っていただきたい、と思っています。

 

 

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