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昨日、11.24(土)~25(日) 日本伝統鍼灸学会 大阪大会に関して告知しました。
これを読んだ人は全員来ましょう。(゚∀゚)
・・・で、告知が続きますが(苦笑)、今日は12.16(日)に開催される、毎年年末恒例の、(一社)北辰会、東京衛生学園特別講演に関して告知します!!
この特別講演は、かれこれもう10年くらい前から、毎年やっているんじゃないでしょうか。。。
10年くらい前、ある先生方との呑みの席で、パパっと開催が決まったこのイベント。(笑)
確か一発目は、北辰会関東支部の設立15周年記念特別講演かなんかだったんですよね。
以来毎年、藤本蓮風先生をお招きして、普段の定例勉強会とは違う、特別なテーマでの講演会をやってきました。
去年から、(一社)北辰会の代表が藤本新風先生に代わりまして、今後は新風先生をお招きして行う形になることと思います。
私はこの講演会に関しては、企画発案者であることもあって、全回で前座を務めてきました。
今年もやらせていただきます。(゚∀゚)
今年のテーマは何と、1日通して「打鍼縛り」です!!
東洋医学は現在、中国が国家主導で推し進めているTCM(現代中医学)をベースに世界中で教育され、広まりつつありますが、日本には、日本独特とってもいい、
優れた東洋医学の技術や考え方がいくつかあります。
カテゴリ 中医学 参照
そのうちの一つが「腹診術・打鍼術」でしょう。
「打鍼」を含む記事 参照
今回は午前中に尾崎真哉支部長から「腹診・打鍼の歴史」、
午後一は私から「腹診・打鍼の重要点」、
最後は藤本新風先生による「腹診・打鍼の実技披露」と、日本独自の「腹診・打鍼」を知る上では、この上ない内容になっております。
そして終了後は忘年会です☆
(今年もスペシャルゲストが来ますよ~~!!)
これ読んだ人は、全員来ましょう。(ΦωΦ)
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全員ロン毛の講師陣で、お待ちしております☆(*‘∀‘)
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2018.09.17
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これまでのお話・・・
一貫堂医学が今日まで大きな影響力を持っている原因の一つとして、昭和漢方界の中心人物であった矢数道明先生と、その兄君である矢数道斎(格)先生が、
創始者・森道伯先生の弟子であったことが挙げられます。
因みにこちらが矢数道斎(格)先生。
↑↑ インパクト満点、一度見たら忘れないお姿ですね。
(矢数芳英先生(道斎先生の弟君である矢数道明先生の御令孫)よりご提供いただきました。)
矢数格先生は明治26年(1893年)茨城県生まれ、はじめ海軍の軍人を志し、中学に入るも、スパルタ式の無茶苦茶な運動をやり過ぎて、3年の時に体を壊し、
マラリアに罹り、生死を彷徨う。
この時、有名病院から専門病院から、どの医者に行っても一向に良くならず、何を食べても、何を飲んでも吐いてしまい、全く飲まず食わずの状態が続いており、
終いには吐血して、余命宣告までされる始末だったようです。
そこで森道伯先生の噂を聴き、藁をもすがる思いで、骸骨のようにやせ衰えた体で上京し、診察を受けると、僅か2週間で、天丼が食えるほどに回復したそうです。
因みにこの時に、
「この薬が胃に入るようであれば治してやる。」
と仰って、森先生が使った方剤は五積散だったそうです。
(そして五積散の出典は『和剤局方』です。)
マラリアというのは東洋医学では「瘧(ぎゃく)」とか「瘧病」とよんで、古くは『黄帝内経素問』の「瘧論(35)」「刺瘧(36)」の中で詳細に認識されていますし、
『金匱要略』の中にも出てきますし、その後の歴代医家も多くの研究を残しています。
現代中医学でもマラリアを様々に分類し、治療法を提示していますが、「五積散」という選択肢は僕が探した限りでは提示がありませんでしたので、
森先生のオリジナル運用法だろうと思います。
よく名医はこうやって、西洋医学的な病名だの、経過だの、症状の軽重だのに振り回されることなく、自分がよく理解している方剤をシンプルに使って、
きれいに治しますね。
五積散は、風寒外感+内傷寒湿の薬で、解表温裏剤と呼ばれるグループです。
因みに、2015年にノーベル医学・生理学賞を受賞した中国人の屠呦呦(ト・ユウユウ)先生の研究は、中国伝統医学で使われている生薬にヒントを得た、マラリアの治療薬「アルテミシニン」の研究でした。
(因みにこの時一緒に受賞したのは寄生虫薬イベルメクチンで有名な日本人の大野智先生です。)
その後、元気になった矢数格先生は田舎に帰り、学を諦めて自然の中で農作業をする暮らしを4年ほどしていましたが、森先生のような漢方医を志そうと一念発起し、
22歳で千葉医専(現千葉大医学部)に入学しました。
当時は、漢方医の道を志すと言うと、学友から
「お前、頭がおかしいんじゃないか?」
と言われたそうです。
(苦笑・・・この時、矢数君を助けようと、署名が集まった、なんていうエピソードもあるそうです。)
まあ今で言えば、突然変な宗教に洗脳されたとか、精神に異常をきたしたとか思われるくらい、東洋医学の評判は地に落ちていたのでしょう。
医学生3年の時、再び無理をして体を壊し、肺炎まで起こし、入院する羽目になってしまいました。
その時に友人が森先生に電報を打ってくれて、知らせを受けた森先生は、夜中に東京から千葉の病院まで薬を持って往診に来てくれたそうです。
そして、病院のストーブで漢方を煎じて、飲ませると、
「こんなところにいたら殺される。わしが家に連れて行って看病する。」
と言って強引に矢数先生を東京の家に連れて帰ってしまい、本当に治してしまいました。
(このエピソードで思うのは、森先生は、矢数先生の才能に気付いていたんだと思います。)
この時、森先生が使った処方は升麻葛根湯に長ネギを加えて煎じたものだったそうです。
升麻葛根湯は、後にスペインかぜにも使った処方でしたね。
(しかしこの場合は長ネギ(葱白)を入れているところもポイントかもしれませんね。)
升麻葛根湯の出典は宋代の『小児薬証直訣』(1119)の付録である『閻氏小児方論』であり、効能は辛涼解肌、透疹解毒であり、葱白は長ネギの白い茎の部分のことで、
散寒解表、通陽の効能がありますので、肺炎の熱をとり、表は温め、内外に陽気を通じさせる、というイメージでしょう。
この信念、ハンパないですね。。。(゜o゜)
僕も現在、北辰会や東鍼校など、東洋医学教育に”端くれ”として携わっていますが、何といっても、この医学に本気になれるのは、こういうリアルな経験、感動が一番いいですね。
森先生の中では「治るか治らないか」に関する明確な物差しがあり、それを運用しただけのことでしょうが、これをしっかり持っているかどうかが非常に重要だと思います。
森先生は平生、
「わしに西洋薬を使わせたら上手に使ってみせる。」
と言っていたそうで、自分なりの評価の物差しがハッキリしていてブレなければ、どんな薬、どんな処置でも的確に分析できる、という意味からの言葉だと思います。
次回、森先生の臨床エピソードで「僕的に」印象的だった話を紹介して終わりましょう。
続く
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2018.09.16
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これまでのお話・・・
前回、森道伯先生が、大正時代に世界的に流行したスペインかぜ(強毒性のインフルエンザ)に対して、漢方薬で効果を挙げていたことを紹介しました。
また、ずいぶん前ですが、このブログ上で、広州中医薬大学の鄧鉄濤(とうてっとう)先生が、2002年から2003年にかけて世界中に感染者を出した
SARS(重症急性呼吸器症候群)に立ち向かって、漢方薬で効果を挙げたという話も書きました。
鍼灸でも、以前に蓮風先生が非結核性好酸菌症の症例を、内科医の村井和先生とともに『鍼灸ジャーナル 7号』に発表したことがあります。
日本では残念ながら論文数は少ないですが、中国韓国台湾を探せば、鍼灸で感染症を扱って効果を得たものは、他にもあるんじゃないでしょうか。
東洋医学は感染症に無力、と切って捨てる人がたまにいますが、果たしてそうでしょうか・・・?
むしろ東洋医学の歴史は、感染症との闘いの歴史なんじゃないんでしょうか?
現代の新興感染症にも使える叡智が多分に含まれているのではないでしょうか。
・・・で、今日は、一貫堂医学の番外編でもないが、東洋医学の感染症に対する考え方を述べてみましょう。
(一社)北辰会が理論と用語のベースとしている現代中医学の「弁証論治」という基本的な考え方ですが、これの大本は『傷寒論』を著した後漢の張仲景(150?-219)と言われます。
(”弁証論治”という言い方自体が、『傷寒論』の”弁〇〇病脈証并治”という言い方から来ているとか。。。)
・・・で、その『傷寒論』の内容は、『傷寒論』よりさらに前の『黄帝内経素問』の「熱論(31)」の内容や、『難経』58難が元になっていると言われます。
『黄帝内経』よりもさらに以前は、「病気」というのは、悪霊や鬼が患者に憑りついたもの、と考えられており、治療はもっぱら祝由(お祈り、呪い)であったようです。
それを『黄帝内経』では、この世界の全ては「気」から出来ているという「気一元の世界観」、そしてそこに働いている法則性である「大極陰陽論」を前提として、
自然現象である、人間の生老病死の「病→死」を、自然界、あるいは人体内にある「邪気」が、人体の「正気」を傷っていく過程、と考えるようになり、
そしてその「邪気」にはパターン分類があり、人体の側にもまた体質分類があり、それを適切に噛み分けて、何がどうなって病になっているのかを考え、
戦略的に治療すれば、病治しができる、という、医学医術の革新(ある意味科学化)を行いました。
それ以来、その枠組みを前提とした、様々な学説や治療法が開発され、その数千年に渡る膨大な臨床事実の集積は「中国伝統医学」と呼ばれ、
現代にまで脈々と受け継がれている訳ですが、この「邪気」という考え方の中でも、自然界にある外来の邪気、つまり「外邪」と呼ばれるものが、
現代の西洋医学の言う「細菌」や「ウイルス」のことを含む概念です。
(ザッと書いたので、もし間違っていたらご指摘ください。<m(__)m>)
・・・で、東洋医学における感染症の捉え方、治し方は、蓮風先生が以前よく仰っていたことですが、
「ここにアサガオの種があったら必ず発芽するわけではないように、種子が発芽するには土、水、空気などなど、それなりの条件が整わないと発芽しない。
感染症もこれと同様で、細菌やウイルスがあったら必ず発病する訳ではないように、発病しないように、また、発病しても軽く済むように、
患者の側を調えればいいのだ。
細菌やウイルスを顕微鏡レベルで分類し特定して、それを死滅させる、あるいは人体の側を強制的にそれに反応しないようにせしめるのが西洋医学、
それらが増殖しにくいような体内の状況を調えるのが東洋医学、という違いがある。」
ということです。
もちろん、細菌やウイルスがキチッと特定できて、抗生剤などの治療法も確立されているような感染症であれば、西洋医学のやり方は非常に優れていると思いますが、
中にはうまくいかないものもあります。
そういう時に、意外と効果を発揮するのが、東洋医学の論理と手法だと思います。
森道伯先生も鄧鉄濤先生も、そこんところを良く分かっていたんだと思います。
次回、ついでなんで、矢数道斎先生が若い頃、森道伯先生に、マラリアと肺炎の治療を実際に受けた話を書いておきましょう。
続く
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2018.09.14
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これまでのお話・・・
さて、ここまでで、森道伯先生を創始者とする「一貫堂医学」が提唱する「三大体質・五大処方」なるものの基本を説明してきました。
一応断っておきますが、私は鍼灸家であって漢方家ではないので、漢方薬の処方解説はあくまでも理論面しか出来ませんし、鍼灸臨床に置き換えて説明することしかできません。
これまでに出てきた漢方薬それぞれ、実際の実践面、臨床面でどうか、というのは、漢方家の先生方にお任せ致します。<m(__)m>
僕のすべての言説は、あくまでも市井の一鍼灸臨床家の視点からのものであります。
・・・しかしまあ、いつものことなんですが、こうやって東洋医学の真面目な内容を書いていると、アクセス数が減りますなあ~~。(~_~;)
(苦笑・・・みんな、勉強嫌いなのね。)
・・・でもいいです、めげずに書きます!!<(`^´)>
書きたいから書く、言いたいこと言う!!(゚∀゚)
五大処方のうち、前回述べた「解毒証体質」に使われる3つの方剤(柴胡清肝散、荊芥連翹湯、竜胆瀉肝湯)は全て、「温清飲」という薬をベースにしています。
この温清飲は、現代では「アトピー性皮膚炎」の患者さんに使用されていることが多いようです。
・・・ところが、最初から単純に効いていなかったり、ある程度までは効いていても、途中で効かなくなったり、あるいは途中から悪化していったり、
と仰って、清明院にみえる患者さんがチラホラいます。
これについて、どういうことか考えてみましょう。
まず温清飲の中身は、当帰・地黄・芍薬・川芎各3.0g、黄連・黄芩・梔子・黄柏各1.5g、だそうです。
上記の当帰~川芎の部分が四物湯の内容、黄連~黄柏の部分が黄連解毒湯の内容です。
配合の分量の比率を単純に見れば、「四物湯>黄連解毒湯」と読めます。
四物湯とは、補血剤(血を補う薬)の代表格で、主に肝の臓の血(肝血)を補う薬だそうです。
黄連解毒湯は清熱剤(熱を冷ます薬)の代表格で、上焦~下焦まで、三焦に瀰漫した邪熱(実熱)を取り去る薬だそうです。
ということは、温清飲は「肝血虚>邪熱」の虚実挟雑証の場合に使える薬、と考えていいのでしょう。
(・・・まあ、そう一概に言えない面もあるかもしれないが)
だとすると、経過中に「肝血虚<邪熱」のように、主従が入れ替わった時、あるいは「血虚」や「邪熱」が解決して、どちらか一方のみの問題になった時、
あるいは「陰虚」や「気虚」「陽虚」「湿熱」「湿痰」などの、肝血虚や邪熱とは別の病理が主になった時には、サッと方剤をチェンジ(変方)しないと、
効かない、あるいは悪化する、という流れになるのは自明です。
(または、そもそも最初からこういう診立て自体が出来ておらず、病名や症状のみからテキトーに処方したのであれば、最初からいきなり悪化することもありえます。)
まあ、臨床上よく見かけるのは、四物湯の成分が中焦を余計に重たくしたり、黄連解毒湯の成分が脾気や腎気を奪ったり、裏の水滞がきつくなって、
肌膚に津液が行き渡らなくなり、そのせいで見かけ上は余計に皮膚が乾燥して悪化したり、というようなケースが多いように思います。
(熱が取れるはずが、余計に皮膚が乾燥して「なんで??」ってやつね。)
病気、それも慢性で難治性の病気となれば、こういう、その時々での変化流転は当たり前なので、鍼灸でも、このような失敗をしないために、初診時にキッチリと問診を取っておき、
治療に来た現時点での「証」のみでなく、現症に至った「病因病理」をキチンと意識しておくことが大事なのです。
とりわけ、皮膚科疾患の場合、中医学でよくいう「皮損弁証」というような、皮膚の状態(乾燥、熱感、発赤、腫脹等々の有無)を意識した診察ももちろん大事ですが、
かといって皮膚の状態「のみ」から診たてただけの、場当たり的な処方、処置は実に危険です。
要は皮膚が「何で」そんな状態になったのか、というメカニズムを考え、時々刻々と変化する患者さんの状態に合わせて、臨機応変に処方、処置を変えていかないと、
とてもついていけません。
アトピーや喘息なんかの場合、そうやって常に先手先手が打てなかったら、普通に負けます。。。(苦笑)
患者さんから、ヤブ医者!ヘタクソ!アホ!ボケ!カス!!です。。。(苦笑)
また、この辺の詳しい話は、山口の村田先生のブログが非常に参考になります。
(膨大な内容ですが、単語で検索ができるので、漢方薬名や病名で色々検索してみて下さい。あっという間に朝になりますよ。(笑))
ドラッグストアで簡単に漢方薬が手に入る昨今、ネットで得た情報から、素人考えでサプリメント感覚で服用して大失敗をしていたり、知ったかぶりの西洋医学のドクターから、
いい加減な処方を繰り返されて、かえって悪化している患者さんを診ると、実に残念な気持ちになります。
東洋医学(鍼灸漢方)は医学ですので、それ専門に何年も、何十年も学び、経験を積んだ先生にしか、本当の意味では使いこなせません。
まずは、せめてそこんところをよくよく理解しましょう。
続く
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2018.09.12
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これまでのお話・・・
一貫堂医学について 3 参照
さて、今日は三大体質の3つ目、解毒証(げどくしょう)体質について掘り下げます。
(矢数先生・・・、このネーミング、”臓毒証”と紛らわしいんすけど。。。(苦笑))
一貫堂の言う解毒証体質とは、四物黄連解毒剤がフィットする体質のことを言うそうです。
(黄連解毒湯の”解毒”という言葉をとって”解毒証体質”と呼ぶことにしたんだそうです。)
「四物黄連解毒剤」とは、「四物湯」と「黄連解毒湯」を合わせた薬のことで、現代日本の薬局等でも簡単に手に入る「温清飲」というお薬のことです。
簡単に言えば、黄連解毒湯は火熱を取る清熱材、四物湯は血を補う補血剤、この二つを組み合わせた薬が「温清飲」です。
・・・で、一貫堂医学の言う「解毒証体質」の”毒”とは、第一に「結核性毒」のことを言うんだそうです。
ここで、普通の中医学を学んできた者にとっては
「へ?黄連解毒湯の毒が結核毒??なんのこっちゃ??」
となるのが普通だと思いますが、この時代の結核は、予防も治療も、非常に重要な病でした。
国民皆保険もなかった時代、歴代の有名な鍼灸家、漢方家の先生の中には、当時西洋医学が治せなかった結核を、鍼灸漢方で治してもらったのをきっかけに、
鍼灸医、漢方医になったという先生がたくさんおられるようです。
大正、昭和初期の時代の医師にとって、結核を如何に予防するか、なってしまったら如何に治すか、これが非常に大事なポイントだったんでしょうね。
そしてこの「解毒証体質」は、年齢によって3つの方剤を使い分けるようです。
すなわち、小児期は柴胡清肝散、青年期は荊芥連翹湯か竜胆瀉肝湯を使い分ける、といった感じです。
まず柴胡清肝散ですが、これは各時代の書物によって微妙に生薬の配合が違うようですが、一貫堂では上記の温清飲に桔梗、薄荷葉、牛蒡子、天花粉を加えたものだそうで、
要するに「肝経、胆経、三焦経の3つの経絡の風熱邪を叩く薬」なんだそうです。
これらの経絡が喉頭、頚部、耳周辺を流注することから、ここに熱を籠らせないようにし、扁桃炎、中耳炎を起こさせないようにすることが、
幼児期の結核を予防、治療する上で非常に重要と考えたのでしょう。
次に荊芥連翹湯ですが、これも柴胡清肝散の変法であります。
(構成生薬の詳細は、ちょっと複雑なのでここでは省略します。)
これは何を狙っているというと、解毒証体質の場合、小児期は扁桃炎や中耳炎を起こしやすいが、青年期になると蓄膿症を起こすようになると考え、
柴胡清肝散が肝経、胆経、三焦経を狙っているのに対して、より「陽明経(顔面部)の風熱邪にターゲットを寄せている」のだそうです。
(要は上の横か、上の前か、です。)
最後に竜胆瀉肝湯ですが、これも歴代の医家によってそれぞれ生薬の配合が異なるようですが、一貫堂処方では、
「肝を瀉して水邪を捌き、肝を瀉す力を四物湯で少し緩めている方剤」
と、言うことが出来るようです。
解毒証体質者の場合、淋病や睾丸炎、外陰部の炎症など、下焦を病むことも多く、一貫堂処方の竜胆瀉肝湯は、その治療、予防のために長期服用も可能な体質改善薬であるそうです。
まあここまでを簡単にまとめれば、柴胡清肝散であれ、荊芥連翹湯であれ、竜胆瀉肝湯であれ、一貫堂が解毒証体質に用いる薬の大本は「温清飲」なわけです。
・・・で、「温清飲」は清熱解毒の「黄連解毒湯」+補血の「四物湯」です。
「黄連解毒湯」の初出は752年、王燾(おうとう 670?-755)が著した『外台秘要』、「四物湯」の初出は1110年頃、北宋の国定処方集である『和剤局方』だそうです。
で、「温清飲」の初出は一貫堂医学について 2で紹介した『万病回春』(1587)です。
ということは、瘀血証体質の通導散も、解毒証体質の諸薬の大本である温清飲も、出典は『万病回春』ということになります。
また、臓毒証体質の防風通聖散も、『万病回春』の中には何カ所も出てきます。
森道伯先生も、江戸期の和田東郭や原南陽と同じように、中国明代、龔廷賢の書物である『万病回春』をかなり読みこんでいたことが分かりますね。
多くの名医が読んだ『万病回春』、現代で東洋医学を行う者として、避けて通れないでしょう。
長くなったんで続く
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2018.08.27
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これまでのお話
「肺胃不和」という証 4 参照
◆「不和」には五種類ある。
ここまで、僕が臨床上けっこう目にする「肺胃不和」について語ってきました。
ま、「肺胃不和」という熟語は、『中医弁証学』という本なんかでは「病証」としては紹介されていないのですが、清明院の臨床では「肺胃不和」と証を立てて治療し、
うまくいくことは全然普通にあります。
(以前チョロッと紹介したね。)
まあしかし、仮に「肺胃不和」という証が立ったとしても、それで安心はできません。
今日は最後にまとめとして、それを喋って終わります。
「〇〇不和」という証は、他にも有名な「肝脾不和」「肝肺不和」「脾胃不和」「肝胃不和」なんかがありますし、似た言い方では「心腎不交」「脾虚胃実」「肝火犯肺」などなど、
二つの臓腑にまたがる病(臓腑兼証)、というのはよくあります。
それどころか、3臓腑、4臓腑にまたがった病というのもあります。
この時に考えなくてはならないのは、どっちの臓腑がどれくらい悪いか、先に処置するべきはどっちか、という「ウエイト」「優先順位」の問題です。
肺の臓と胃の腑が同時に病んでいて、「肺胃不和」という状況であれば、当然ながら、肺と胃、どっちがどの程度病んでいるか、という考え方は必須です。
で、これ、大きく分けると5パターンあります。
つまり不等号を入れて比較すれば「肺>胃」「肺≧胃」「肺≒胃」「肺≦胃」「肺<胃」の5つです。
この考え方を頭の中で行うことにより、「主従」が明確になり、これにさらに「標本」を考えてタクティカルに治療を進めていくことが出来ます。
「主従」を含む記事 参照
しかもこのウエイトは固定的でなく、治療効果や患者の養生の状況によって、経過の中で変動してきます。
それに上手に合わせることが出来ると、治療がスッスッスッといきます。(^^)
・・・でもこれ、まさに「家庭内不和」と同じで、理論的には簡単でも、実際はなかなか難しかったりします。(笑)
それを冷静に冷静に、根気よく根気よく、調整するのが我々の仕事だと思います。
言わば別れそうになっているカップル、夫婦の「仲直らせ屋」みたいなもんですな。(゚∀゚)
おわり
◆参考文献
『中医弁証学』東洋学術出版社
『中医病因病機学』同上
『基礎中医学』燎原
『全訳中医基礎理論』たにぐち書店
『基礎中医学』谷口書店
『蔵象学説の理論と運用』創医会
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2018.08.24
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これまでのお話
「肺胃不和」という証 3 参照
◆「宣発・粛降」の根拠は??
今から約8年前、このブログ上で、東洋医学の言う、固有の意味としての「肺の臓」とかいかなるものか、という内容を、一般人や学生さんに向けて、
極力専門用語を使わないようにと配慮しながら、12回に渡って書きました。
今読むと、内容の稚拙さに赤面しますが、それも歴史の真実、あえて残します。(笑)
ここで重要なのものの一つとして、東洋医学の言う「肺の臓」というのは
1.気を全身に巡らせる働き
2.気を下げ、降ろす働き
を持っている、というお話をしました。
中医学の成書を読むと、1.の働きを「宣発(せんぱつ)」、2.の働きを「粛降(しゅくこう)」と書いてあります。
今日は、ここから少し突っ込んで、
「肺の臓には宣発・粛降作用がある・・・ほうほう、で、その根拠は??」
という話をします。
別に『黄帝内経』などの古典の中に「宣発・粛降」という言葉がある訳ではないようです。
(まあ『素問』五運行大論(67)に”宣発”という熟語は出てきますが、これは肺の作用のことを言っている訳ではないです。)
中医学の成書では、歴代の諸種の古典を総合して、肺の臓の生理作用を示す言葉として「宣発・粛降」という見出しをつけている、ということでしょう。
で、まず宣発については、
1.気化によって体内の脱気を排出する
2.水穀の精微を全身に巡らせる
3.衛気を巡らせることで汗を排出する
という3つの作用のことを言っています。
これは、『黄帝内経霊枢』決気篇(30)にみえる、
「上焦開發.宣五穀味.熏膚充身澤毛.若霧露之漑.是謂氣.」
という文章から持ってきているのかな、と連想させます。
決気篇での内容は、「気」という概念をさらに細分化して「精・気・津・液・血・脈」の6つに分けた場合、それぞれの定義ってどうなの??
っていう文脈の中での、「気」の話をしている部分に出てくる話なんですが、「肺の臓」の「気」への関わり(肺主気)を考えると、ここに書かれている「気」の働きを、
もっとも直接的にバックアップしているのが「肺の臓」である、というふうに理解した、ということでいいと思います。
続いて「粛降」ですが、単に「降」ではなく「粛清(しゅくせい)」の「粛」を入れて「粛降」と名付けているのはポイントかな、と思っています。
(粛清、怖いですねー)
続く
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2018.07.18
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16日の月曜日は、新風先生も交えて、毎年恒例の、朝から清明院に集まって、講師候補以上の会員の先生方で、内輪の勉強会。
座学、実技指導などの、東洋医学の講義をするのには、臨床とはまた違った技術を求められます。
講師となれば、多くの人の前に立って、講義をし、実技指導をしなければなりません。
また、歴史ある研究会の看板を背負って教壇に立つわけですから、学術に対する理解も、よりシビアなものを要求されます。
基本的なことをまずは徹底的に踏まえ、一定の試験をクリアし、講師候補以上になったら、さらに、講義デビューするためのための訓練を行います。
(そこでまた更に実技試験、筆記試験が待っています。)
言わばこの日は、清明院が秘密特訓基地な訳です。
(ここに書いたら全然秘密じゃねえけど(゚∀゚))
そして、16時に勉強会を終わり、この日は清明院のすぐ近くで行われた積聚会の新会長披露式の二次会に出席してきました!!
積聚会というのは、北辰会と同じくらいの歴史を持つ、日本を代表する伝統鍼灸の流派の一つで、海外でも有名です。
この度、会長を長らく務めた小林詔司先生が退任され、原オサム先生が新会長になりました。
最近、北辰会といい、どこの流派も代替わりが進んでいます。
昭和初期に、明治維新以来、絶滅しかかっていた日本伝統鍼灸の復興を叫んで立ち上がった第一世代が、柳谷素霊先生たちの世代で、北辰会の藤本蓮風先生や積聚会の小林詔司先生たちは第二世代にあたります。
そして今、ついに日本伝統鍼灸の第三世代の時代となりました。
僕もまあ、この伝統医学第三世代の端くれ、ということになるんでしょうか。
・・・さあ、先日書いたように、国際的には伝統医学を振興していく流れがあり、世界的には中国伝統医学の共通概念として「中医学(TCM)」というものが浸透してきている時代。
日本の伝統医学界は、どう変わるか。
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2018.07.09
清明院では現在、院内診療、訪問診療ともに多忙のため、
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去年、諸先輩方にご指導いただきながら、私が書いた二本の症例報告の論文。
一つ目の再生不良性貧血の妊婦さんの症例は、少し前に日本中医学会の学会誌『日本中医学会雑誌』に掲載されました。
そしてもう一つのアトピー性皮膚炎の乳児の症例が、ついに伝統鍼灸学会の学会誌『伝統鍼灸』に掲載されることになりました。
・・・ふいー、長かったわい。
去年の春ぐらいに二例出すことが決まり、夏ぐらいにはあらかた仕上がって、両学会と北辰会の本部で口演発表させていただき、年末には論文化して提出し、
最終的に学会誌に掲載されるまでに、約1年かかっています。
なるほどなー。
このように労力がかかるわけか―。
・・・でもまあ、これで勝手がよく分かりました。
僕は、実験だの文献調査だのアンケートだのをやった結果に関する研究論文とか、それの統計処理とかに関しては、自分でやる仕事としてはほとんど興味がないです。(゚∀゚)
(そりゃ面白そうなのあったら読むけど、読む専門。)
僕が好きなのは、実際の臨床と、そこで得た事実を極力論理的に説明することのみです。
やっぱ現場でしょ☆
・・・まあ、恐らくまた出します。(*‘∀‘)
ヒヒヒ―
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2018.06.14
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去年、金沢で行われた日本伝統鍼灸学会で発表した、アトピー性皮膚炎の乳児の症例と、熊本で行われた日本中医学会で発表した、再生不良性貧血の妊婦さんの症例とが、
論文化も済み、学会側に受理され、学会誌に掲載される手続きも完了しました。
(中医学会の方はもう載っていますね。)
同時期に二症例まとめるのって、なかなか大変でしたが、ようやく全て終わって、ホッとしていました。
ここまでの道のり、ご協力いただいた先生方には、本当に感謝感激であります。<m(__)m><m(__)m>
・・・で、少し休んだので、また新たなる症例報告計画を立てています。(笑)
もちろんながら、今回の反省点を十分に踏まえていきます。
まだ、どこの学会に出すか、どういった形で纏めるか等、水面下で少しづつ進めているような状態ですが。。。
またこの症例を通じて、色々勉強出来る。
その病気で困っている患者さんの福音になる。
同士たちにとって有益な情報になる。
楽しみですな☆(゚∀゚)
・・・まあでも実は、そういった高尚な使命感とかでやっているんじゃなくて、出したいから出す、ただそれだけ。
人が出来ねえことやる、ただそれだけ。
鍼灸の症例が綺麗だから好きなだけ。
そーゆー自己満足が、結果的に他人の満足を生む、最高じゃんねえ。
イヒヒー(=゚ω゚)ノ
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