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前回のお話
頭から汗が出る人 参照
2.『傷寒論』の辨太陽病脉證并治中第六.に、
「太陽病中風.以火劫發汗.邪風被火熱.血氣流溢.失其常度.兩陽相熏灼.其身發黄.陽盛則欲衄.陰虚小便難.
陰陽倶虚竭.身體則枯燥.但頭汗出.劑頸而還.腹滿微喘.口乾咽爛.或不大便.久則讝語.甚者至噦.手足躁擾.
捻衣摸床.小便利者.其人可治.」
とあります。
まあ要は、カゼ引きで、汗かきまくって体力をかなり失ったものは、頭に汗が出る場合があるよ、っちゅうことだね。
前回は湿邪持ちの人、今回は正気の弱った人。
これは東洋医学をちゃんとやっている人であれば、簡単に見分けることが出来るでしょう。
続く
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この条文の病理を解釈するとしたらこうだ!
と僕は考えているのである(笑)
太陽病中風、火劫をもって汗を発し、邪風は火熱を被り、血気は流溢し、その常度を失す。両陽相い燻灼し、その身は黄を発す。陽盛んなれば則ち衄せんと欲し、陰虚なれば小便難く、陰陽俱に虚竭すれば、身体すなわち枯燥し、ただ頭汗出で、頸を剤りて還り、腹満し微しく喘し、口乾き、咽爛れ、あるいは大便せず。久なればすなわち譫語し、捻衣摸床す、小便利するものは、その人治すべし。
太陽病の中風にかかったのに、誤治して火針などを用いて発汗させ、その発汗により気・津が傷られ陰血不足に陥って陰虚陽亢となる。
風は陽邪であり、熱も陽邪であるので、風と熱が相搏ち、熱が風によって煽られて血分に迫し、生体の正常な血気の循環を乱す。
誤治によって生じた風熱によって少陽枢機が障害されると、火熱が内壅して水津を不散できなくなり、湿熱を形成して肝胆における血分の汚れを胆汁を介して気分へ持ち上げ、便中に排泄していく機能が障害されるため、気分に持ち上げた汚れが排泄できずに血中に溢れて黄疸を生じる。(インチンコウトウを用いる証)
一方、風熱は上に昇る性質を有するため、その熱にあおられて津液も上に巻き上げられ、その熱により?から抜けるので頭汗を生じる。しかし気の降の作用は風熱によって、うまく作用しないため気は下ることができない。したがって津液も下ることができないので、首から下は発汗しない。
また風熱によって陰虚陽亢になった場合には、火邪が内鬱して血に迫るため衄が生じる。陰虚に陥って排泄する津液がなくなると小便は出にくくなり、気血が消耗して陰陽両虚へと発展してしまうと、肌膚が滋養されず身体が乾燥傾向となる。
発汗により津液を失い、風熱で少陽枢機が障害されると全身的な気の升降も阻害される。中焦の気機の阻害により腹満・大便できずという症状が起こり、肺気の升降が阻害されると微喘が生じ、火邪が上炎すると同時に陰虚が起こるため口が渇いて咽喉が爛れるという症状が起こってくる。
これらの状況が長期にわたると、火熱が心神に逆乱し、譫語を生じるし、陰虚陽亢から肝風内動を起こすと、しゃっくりや手足をバタバタさせる、無意識に着衣を触ったり、ベットの縁を撫でまわすといったことをし始める。
そして小便が通利するようになってくると身体内部の津液量が回復してきていること、また少陽枢機の気機が正常となり、気の昇降出入運動がスムーズになり、それに伴って津液の巡りが整ってきていることが理解できる。そのため、「その人治すべし」となるのである。
雲洲先生
おおー。
詳細で専門的な解説、ありがとうございます!!
僕もそう思いますが、何故上焦じゃなくて「頭」なんでしょう?
ここはどう説明付けます??
少陽枢機と「頭」という部位の関連、どうしますか??
聞きたい聞きたいーーー(*‘∀‘)
少陽枢機は三焦・血脈で五臓間をつなげる脈管系統すべてを主ると考えてます。ここで上焦と表現してしまうと、上焦心肺からの発汗となりますが、わざわざ頭汗といって頭から発汗するという部位を限定することに大きな意味を持っています。
たとえば五苓散では「口渇」という表現が出てきますが、これも部位が限定されています。
ここら辺が傷寒論の読解力につながってくるのですが、五苓散証では口渇がない場合にも適応になるケースは多々あります。五苓散を便秘で用いるときには、大腸粘膜が「渇」を起こしていると考えたりすると、なぜ便秘に五苓散が適応となるのかがわかりやすくなります。
つまり部位を細かく記載するということは、「その人の体質によって、汗が出る場所は違うから、どこから頭に限らず、発汗の部位が偏っていないかどうかしっかりと確認しなさい」と言っていると僕は解釈しています。
なぜそう考える必要があるのかについては、最初に言ったように少陽枢機は全身の気血津液の流れに関連しているので、枢機の機能異常を起こした局所で「異常現象」が起こるからです。
それを上焦という広い概念で捉えてしまうと、「局所的」という考えが抜け落ちて、上半身から発汗するという風にしかとらえられなくなってしまう可能性があるからという見解です。そういう意味で、張仲景は部位をより限定して表現していると考えています。
もちろん一般的には風熱は頭部を犯しやすいので、頭に陽熱がたまって、その陽熱のために津液が蒸されるため、頭部からの発汗が出てくるという読み方をするのでしょう。⇒これが教科書的な答えね。
しかし、臨床的にこういうケースはほとんどないですから、臨床的に読むには、「陽熱のため少陽枢機異常が起こっている局所にて発汗する。だからわざわざ頭汗といって部位の例を挙げてやってるんだから、状況に合わせて、部位が変わっても病理的に同じだったら迷いなく治療せいよ!」と言ってくれている認識したほうが、より詳細な弁証につながるものと考えております。(このとき上焦という表現だと、広すぎて曖昧でしょ!?)
そうでなければ、たとえば「口渇」がなかったら五苓散は使われへんのかい!?となってしまいます。五苓散もそうでなく三焦空間における水滞とそれに伴う津液の枯渇のムラは、全身各所で起こる可能性があるから、その人の状況によって口が渇いたり、便秘したり、胃粘膜が渇いたり、皮膚が渇いたりしながら、顔や足がむくんだり、眩暈がしたり、頭冒感があったりすると。。。
傷寒論理論を傷寒という状況から脱して、雑病で応用するためには、こういう読解法が必要だと思います。
答えになってたかな??
雲洲先生
ありがとうございます!
なるほど、面白い☆
答えになってた!
あまり部位に拘泥してしまうと、杓子定規的になるから臨床的には運用しにくい。
鍼灸と似ているところがあるね。
この辺、水本先生、島内先生あたりはどうお考えになるのか、聞いてみたいところですね。
今度会う時のネタにしましょう。(^^)/