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「驚」について

2010.02.05

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七情シリーズ、ラストは「驚」についてです。


「驚」という感情は、前回の「恐」という感情とセットで書かれることが多いです。

「恐」について 参照


ダメージがいく臓は「心」と「腎」であります。

 

【参考】

燎原『基礎中医学』P118

『黄帝内経素問 経脉別論(21)』「・・有所驚恐.喘出於肺.淫氣傷心.・・」「・・驚而奪精.汗出於心.・・」

『同 挙痛論(39)』「・・驚則心無所倚.神無所歸.慮無所定.故氣亂矣.・・」

 

 

また、「心の臓」「腎の臓」以外にも、少陽、陽明、少陰、肝の熱など、あらゆる病機で、「驚」という現象が起こることを、『黄帝内経』では教えてくれております。

 


また、当然ながら「驚」「恐」の両者は違います。


「驚」・・・驚く、という感情は、多くは一過性のものです。


ある事柄があって、それに対して2年も3年も継続してずーっと驚き続けている人、見たことあります?


それとか、

「今まさに驚いているところです。」

ということを、驚いている最中に人に話したり、出来ますか?


・・・というのは、例えば物陰から急に飛び出して

「ワッ!」

と脅かされた場合、一瞬、

「うわっ。」

となって「驚」という感情変化をし、その後、腰が抜けたり、ドキドキしたりしますが、すぐに落ち着きますよね?


その直後に大体みんな、

「あ~ビックリ”した”~!!」

っていうのは、すでに過去の話ですよね?


それを考えれば分かるように、「驚」という感情変化は、それ自体が「一過性のもの」という特徴を持っています。

 




それに対して「恐」・・恐れる、という感情は、その対象に対して徐々に蓄積されたり、逃れようのない過去のトラウマ(心の傷)に起因していたりします。


ただし、じゃあ「驚」の方が体に与える影響が軽いかと言うと、そうではありません。


「一過性」であるだけに「慣れにくい」という面があり、同じパターンの事柄に何度も「驚く」という面があります。


また、最初に書いたように、「驚」「腎の臓」にも悪影響を与えつつ、「心の臓」にも悪影響を与えます。


「心」については「喜」のところで出てきました。

 ☞ 
「喜」について 参照


「驚」は主に「心」の、正常な思考をつかさどる機能を障害するため、驚いた時、ドキドキし、訳のわからない行動や言動をしたりする訳ですね。


それを考えると「驚」「恐」もイヤなもんですねえ・・。(苦笑)


そしてこれら2つが、時にセットで生じて、人体の正常な状態を犯す、と東洋医学では考える訳です。


ちなみに、『黄帝内経 素問』挙痛論(39)という項には、

「驚けば気が乱れる」

という記載が出てきます。

 

逆に言うと、何らかの別の原因で「心の臓」や「腎の臓」が弱っていたり、他臓とのバランスが悪くなっていたりすれば、大したことない刺激にも「驚きやすく」なってしまい、

 

全身の気の流れが乱れやすくなってしまいます。

 

これが酷くなれば、いわゆる「精神病」と言われるような状態となっていきます。



また、デカルト科学で有名なデカルトさん(1596-1650)は、その最後の著作である『情念論』の中で、”基本6情念”なるものを定義し、

 

そのトップに「驚(驚き)」を挙げています。


この”基本6情念”というのは、デカルトさん曰く、あらゆる情念の基本となるものとし、色で言えば原色にあたるもの、と考えているようです。


それのトップに「驚」がきているのは大変興味深いですね。


・・・まあ、これ以上は難しくなるので解説はしませんが、興味ある人は読んでみて下さい。(笑)


次回は、「七情について」を、簡単にまとめてみようと思います。




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