東洋医学 伝統鍼灸 清明院

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小半夏加茯苓湯と船酔い 4

2015.03.01

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これまでのお話

 

小半夏加茯苓湯と船酔い
小半夏加茯苓湯と船酔い 2  
小半夏加茯苓湯と船酔い 3
     参照

 


では続きいきます!!


 

ここまでで、和歌山の加太の船の上で、油谷真空先生から何気なく渡された「小半夏加茯苓湯」にインスピレーションを得て、ツラツラと書いてきました。(笑)

 



今日は「小半夏加茯苓湯」を構成する3つの生薬(半夏・生姜・茯苓)に関して、解説しておこうと思います。

 



◆半夏(はんげ)



サトイモ科、カラスビシャクの根茎であり、医歯薬出版株式会社の『中医臨床のための中薬学』によれば性は温、味は辛、帰経は脾胃、とのことですが、

 

まあ簡単に言うと、脾の臓、胃の腑、肺の臓あたりに作用し、温め、余分な水分を飛ばしてくれる生薬です。

 



これは生で食べると軽い毒性がありまして、かつて蓮風先生が若い頃に生で試しに食べてみたら、ノドがカラカラになった感じがして、

呼吸するのもきつく、エライ目にあったという話をされておりました。(笑)

(因みに生で使う場合は外用薬として使い、皮膚の化膿に効果があるようです。)

 



そして、その半夏の毒性を消してくれるのが生姜なのです。

 



◆生姜(しょうきょう)


家庭に良くある、ショウガ科ショウガの根茎。


皆さんよくご存じの、しょうが焼きの生姜であります。

 


性は微温、味は辛、帰経は肺、脾、胃、とのことで、半夏とほぼ同じなんですが、半夏は水分を飛ばす作用が強く、生姜は胃を温める作用が相対的に強い、と見ていいと思います。

 

つまり半夏と生姜のコンビネーションで余分な水を飛ばしながら胃を温める、ということでしょう。

 

 

田畑隆一郎先生『傷寒論の謎 二味の薬徴』では、半夏と生姜のコンビネーションについて

 

「嘔、嘔吐を治す主薬にして、停水、宿飲を除き嘔、嘔吐、喘欬、噦(えつ:しゃっくり)、噫(い:げっぷ)を治す」

 

とまとめて下さっています。

 

 


◆茯苓(ぶくりょう)



これはサルノコシカケ科マツホドの菌核を輪切りにしたもの。

 



主に松の根に寄生する茯苓は、利水作用に優れた生薬として知られています。

 



性は平、味は甘淡、帰経は心・脾・胃・肺・腎とあり、簡単に言うと、心の臓、脾の臓、胃の腑、肺の臓、腎の臓に作用して、停滞した水を動かし、

 

結果的に利尿作用だったり、鎮静作用を発揮する生薬です。

 


これは、分かりやすく言えば松の木の根っこに生えるキノコです。

 


キノコなんですが、地表に顔を出しているわけではなく、地下に生えているジメッとしたやつで、見つけにくいことから、

”幻のキノコ”

とも言われるそうです。(笑)

 



この幻のキノコが、みぞおちのところの深い部分に入り込んで停滞してしまった、余分な水分を動かすのです。

 

 

地面に埋まっているキノコ(菌類)が、人体の深い部分の水を動かす。

 



面白いですね~。(*‘∀‘)

 



そしてこの3つの生薬はどれも植物の”根っこ”、あるいは”根っこに寄生するもの”です。

 



陰陽で言うと、明らかに”陰の場”である地面の下にある”根っこ”と、そこにくっつくキノコを使って、深い部分に支えた水を動かし、結果的に全体としての気を下げる・・・。



古代中国人、面白い発想しますねー☆

 




小半夏加茯苓湯と船酔い 5  に続く

 

 

◆参考文献

 

神戸中医学研究会編著『中医臨床のための中薬学』医歯薬出版株式会社

田畑隆一郎『傷寒論の謎 二味の薬徴』源草社

 



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関連記事: 漢方薬小半夏加茯苓湯について

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この記事に関するコメント

“小半夏加茯苓湯と船酔い 4” への2件のフィードバック

  1. 廣田漢方堂薬局 より:

    面白く拝見させてもらいました!
    もう少し生薬1味1味の特徴を正確にとらえるともっと深く小半夏加茯苓湯の方意を理解できると思いますよ!
    たとえば、半夏は湿痰をさばくけど、なんで五苓散には配合されていないの?
    茯苓と猪苓はどこがちがうの?
    生姜はどこからどこの臓腑にかけての水をさばくことができるの?
    な~んてことを考えてみると、漢方の顔・生薬の顔が見えてくると思います!!

  2. いんちょう より:

    廣田漢方堂薬局さん
    おお!
    これはこれは!
    コメントあざす!(*‘∀‘)
    ・・・てゆーか胸、大丈夫?
    猪苓については次回ちょこっと触れます!
    五苓散や生薬のもっと細かい話についても、触れようかナーと思ったけど、
    それはミチロウ先生のブログにバトンタッチします☆
    やっぱ湯液の話は専門家の話が一番いい!(笑)
    いつも読んでるんで、是非お願いしまっす!!!

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