東洋医学 伝統鍼灸 清明院

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「胃」って何ですか?(その10)

2010.08.09

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これまでのお話・・・


「脾」って何ですか?(その9)
「胃」って何ですか?
「胃」って何ですか?(その2)
「胃」って何ですか?(その3)
「胃」って何ですか?(その4)
「胃」って何ですか?(その5)
「胃」って何ですか?(その6)
「胃」って何ですか?(その7)
「胃」って何ですか?(その8)
「胃」って何ですか?(その9)

 


これまで「胃の腑」に関するお話を「脾の臓」とも絡めながら、

・機能
・形態
・症状

なんかに注目しながら、具体例も挙げて話をすすめてきました。

 


・・・まあ、このシリーズは専門家に向けたものではないので、概要としては大体のことは述べてきたかな、と思います。

 


なので「胃ってなんですか?」シリーズは、ここらで一旦完結しようと思います。

 


最後に一つ、ついこの間、患者さんを診ていて、

「あー、これはまずいなー。」

と思ったことがあったので、お伝えしておきます。

 

 


☆「足三里」の危険性

 


その患者さんは、80代の女性です。

 


以前から診ていて、経過もよく、安心していたのですが、最近妙に元気がなく、脈、舌、体表観察所見も「脾胃」の反応所見がよくないのが気になっていました。

 


そんなある日、

「先生、最近食事の後、気持ちが悪くなるんです。」

と、その患者さんは訴えました。

 



詳しく聞くと、のどもよく乾く、便も出にくい、食欲も落ちてきている、体がだるいとおっしゃいました。

 

 


患者さんは、

「夏バテかなあ?」

とおっしゃったが、去年はどうだったか、これまではこういうことはあったかと聞いてみると、

「去年、その前はこんなことはなかった。」

とのこと。

 

さらによくよく聞いていくと、

「先生に鍼してもらってから調子がいいので、もっと調子よくなりたいと思って、足三里にここ最近毎日お灸をしている。」

とのこと。

「・・・それだ!!」

と思い、すぐに中止させたところ、上記の症状は消失。事なきを得た、ということがありました。

 



・・・ツボの中には、たまに、誰でも知っているような超有名選手がいます。

 

 

「足の三里」というツボもその一つです。

 

足三里画像


↑↑これです。

 


この「足三里」というツボは、よく「長生きの灸」とか言って、お灸をすると元気で長生きするとか、足腰が強くなるとか言われ、昔から有名です。

 


テレビや、一部の雑誌や書籍なんかで紹介されてたりすることも少なくありません。

 


・・・コレ、とんでもない話です。

 

 

こういう言い方は、迷信もいいとこです。

 


足三里にお灸をするだけで誰もが例外なく足腰が強く、元気で長生きするんだったら、誰も苦労しやしません。

 


確かに「足三里」は、上手に使えば大きな効果を得ることが出来るツボではあります。

 


しかしそれは、確かな東洋医学的な診断に基づいていて、なおかつ適正な術(鍼か灸か)で、適正な刺激量での処方であった場合にのみ、言えることです。

 


当然ながら、治療に使える、ということは、逆に言うと間違った使い方をすれば悪化させることもある、ということです。

 


上記の患者さんは、もともと「胃の腑」に熱がこもりやすいタイプの患者さんでした。

 


本来ならばその熱を冷ます治療、養生法を行い、どんどん「胃熱」を発散、排出させるように持っていかなくてはなりません。

 


しかし、この患者さんがやった「足三里にお灸」という処置は、どちらかというと「胃の腑」を温める治療になります。

 


つまり逆です。

 

 

熱に熱を足してしまっている訳です。

 


しかも、自分で見よう見まねで適当にツボの位置を決めているため、時には右のみが効いたり、左のみが効いたり、効果にばらつきがある上に、

 

その的確な評価も出来ないため、左右のアンバランスなんかも引き起こしやすいです。

 


高齢者が左右のアンバランスを起こし、それがあまりにもきつくなると、たいがい転倒します。

 


歩行姿勢が左右アンバランスで、不安定になるからです。

 


高齢者にとっては、転倒から骨折でもしたら、寝たきり状態にもなりかねません。

 


そうなってから泣いたってわめいたって遅いんです。

 


東洋医学というのは、誰でも簡単に使いこなせるもんじゃありません。

 


僕も場合によっては、遠方でたまにしか治療に来れない患者さんなど、自宅でお灸を据えてもらうこともありますが、その場合は、安全かつ確実なツボ以外は選びません。

 


・・・まあー、これだけ「医学だ、医学だ」と叫んでも、それはごく一部の人にしか伝わりません。

 

 

甘く見られることの方が多いです。

 


でも、それでも僕は叫ぶことをやめません。

 

 

だって「医学」だからです。

 

 



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