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これまでのお話・・・
「心包」って何ですか?(その6)
「三焦」って何ですか?
「三焦」って何ですか?(その2)
「三焦」って何ですか?(その3)
「三焦」って何ですか?(その4)
「三焦」って何ですか?(その5)
「三焦」って何ですか?(その6)
「三焦」って何ですか?(その7)
「三焦」って何ですか?(その8)
「三焦」って何ですか?(その9)
「三焦」って何ですか?(その10)
「三焦」って何ですか?(その11)
さあ、「三焦の腑」シリーズ、これで一旦ラストです。
◆「三焦」は孤児(みなしご)!?
前回の最後で、チラッと述べましたが、この「三焦の腑」というのは、臓腑の中でも特別で、ある意味”全身そのもの”ですから、すべての臓腑と関わりをもちます。
そして、その中でも特に関わりの深い臓腑がいくつかあるよ、というお話をしました。
また、「三焦」って何ですか?(その3)で述べたように、「三焦の腑」は”気”と”水”の通り道でもあります。
特に、”水の通り道”という意味では、「肺の臓」、「腎の臓」、「膀胱の腑」と大きく関わります。
この中でも「三焦の腑」だけはやっぱりちょっと特殊で、「孤児(みなしご)である」という記載が、『黄帝内経(こうていだいけい)』という本の中に出てきます。
(『霊枢』本輸(2)です。)
・・・で、この、妙に気になる「孤(みなしご)」という表現。
コレ実は、道家思想の中心である『老子』の中にも出てきます。
「道家思想(どうかしそう)」って何ですか? 参照
そこには、
「故に、貴は賤を以って本と為し、高は下を以って本と為す。是を以って、侯王は自ら、孤、寡、不穀、と謂う。」(老子39章)
「人の悪む所は唯、孤・寡・不穀。而して王公は、以って称と為す。」(老子42章)
・・・と、何やら難しい文章が出てくるんですが、コレは要は、
「一見大事でない、人々が嫌うようなモノ、コトこそが、実は一番大事なんだよ。」
という考え方です。
ですから、先ほどあげた『黄帝内経霊枢』の中の、「三焦は孤(みなしご)」という記載には、
「三焦という孤(みなしご)は、一見端っこにあって、はぐれ者、嫌われ者みたいだけど、実はこれこそが大事なんだよ。」
という意味があるのだと思います。
「三焦の腑」に対する、逆説的強調、ととれるワケです。
しかし一方で、儒教の経典として有名な『論語』の里仁(りじん)篇の中には、
「徳は孤ならず、必ず隣あり。」
と、出てきます。
ここでは、徳のあること(をやる人)というのは孤独にはならず、必ず隣にフォローがつくよ、ということが説かれております。
だからこれを逆にとれば、「てことは”孤”には徳がないってことか?」となりますよネ。(笑)
そして、「てことは儒家的に言えば三焦には徳がないってことか?大事じゃないんじゃないか??」とならなくもない。(笑)
こういう、「道家」と「儒家」の考え方、とらえ方の違いは面白いんですが、東洋医学は、どちらかというと道家思想の影響の方を多分に受けているように思います。
〇
・・・まあ、長々と書いてきましたが、「三焦の腑」というモノの役割というのは、東洋医学の人体観の中では非常に意味が大きいです。
東洋医学では、「気」が凝集して「形」を成し、出来ているとされる”人体”というものを、「陰陽」や「五行」というモノサシを使って、
「五臓六腑」だとか「経絡」だとかに分けて、その働きを説明します。
しかし、それはあたかも「多角形」の角の数をいくら増やしても、結局は「円」や「曲線」と同一にならないのと同じようなもので、
最後は「一」に戻す”設定”が必要なのです。
東洋医学においては、臓腑学説においてそれを担う、特別な、”孤(みなしご)的な”存在が「三焦」なのだ、という訳です。
僕はかつて、これを蓮風先生から教わった時、なんか非常に東洋医学というものに納得がいったのを覚えています。
西洋医学のように、細胞レベル、DNAレベル、分子、原子、電子レベルと、「分ける設定」を使えば、分けるのは無限に分けられるんだけど、
それを「一」に戻せないようだと、けっきょくうまくいかないんです。
有名な分子生物学者の福岡伸一先生が仰るように、「世界は分けてもわからない」わけですね。(笑)
現実的運用の段に、不具合が生じるんです。
細かく分けていく過程で、もともとの「一」という全体像を見失うことになるからだと思います。
古代の中国の医者は、絶え間ない思考実験と実臨床との間で、そのことをよく分かっていたんだと思います。
「三焦」シリーズ、ひとまず終わり。
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