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我々がやっている治療を、東洋医学の専門用語でいうと、「弁証論治」と言います。
「”証(しょう)”を”弁(わきま)”えて”論”理的に”治”療する」
でしたよね。
ここで、北辰会方式では、まず治療時点の「証」を弁えるときに、それが「順証」 なのか、「逆証」なのか、という判断をしています。
これは、その患者さんの病が、その術者にとって治せるものであるか、治せないものであるかの、極めて重要な判断です。
簡単に言うと、
順証・・・治せる、治っていく病
逆証・・・治せない、治っていかない病
のことです。
因みに中医学の成書では「順証」「逆証」という言い方は、外科の分野以外ではあまりしないようですが、
「一般に、表から裏へ伝入するのは、悪化する”逆”であり、裏から表へ出るのは軽快する”順”である」
とあります。
(燎原『基礎中医学』P144 参照)
因みに因みに、「順逆」や「逆順」、「順」や「逆」という熟語、単語は、古典では『黄帝内経』『難経』『傷寒論』『金匱要略』にも多数散見されます。
また、日本では江戸期や幕末の川越衡山(1758-1828)や浅田宗伯(1815-1894)が、『傷寒論』を解釈する中で、「順逆」という考え方を使って解説しています。
まあ、もともとの意味としては
順・・・ノーマルな、セオリー通りの病の進み方や組み合わせや、病が快方に向かう時の表現
逆・・・アブノーマルな、イレギュラーな病の進み方や組み合わせや、病が悪化する時の表現
というほどの意味であり、病の予後(転帰)に関していう際は、『黄帝内経素問』平人気象論(18)の
「人無胃氣曰逆.逆者死.(患者さんに胃の気がないものを”逆”といって、逆の人は死んでしまうよ)」
を、基本として理解していいと思います。
そして、順逆は当然、医者のウデによって変わってきます。
ある先生にとっては逆証であっても、ある先生にとっては順証、ということは十分にあり得ます。
これが初診時に正確に判断できれば一番いいのですが、場合によっては少し経過を追ってみないと分からない場合もあります。
仮に、治せない病を、いつまでも診ていた場合、患者さんと術者に、精神的、肉体的、経済的にかかる負担はハンパじゃないです。
また、ここの判断のユルさは、患者さんからの評価を大きく二分します。
ヤブ医者と言われるか、名医と言われるか、です。
前者であれば、辛い鍼灸師人生です。
後者であれば、幸せな鍼灸師人生です。
非常にシビアな判断が要求されます。
そして、全病気、全患者さんの中の、自分が診た場合の「順逆」の割合のうち、順証の割合を極限まで高めるのが、我々鍼灸を天職とする者の使命でしょう。
◆参考文献
『鍼灸臨床能力 北辰会方式 理論編』緑書房
『鍼灸臨床能力 北辰会方式 実践編』緑書房
『中医基本用語辞典』東洋学術出版社
『基礎中医学』燎原
論説『『傷寒論』で少陽病篇が陽明病篇のあとに位置する理由』藤平健
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