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これまでのお話・・・
肩こりと東洋医学
肩こりと東洋医学 2
肩こりと東洋医学 3
肩こりと東洋医学 4
では、続きいきます!!
◆「肩」という部位と日本人
ここまで、
1.中国も含む外国には、「肩こり」を示す適切な訳語がない。
2.よって、中医学にも、「肩こり」の治療に絶妙な考え方がない。
3.そこで、「肩こり」という現象は日本人独特なのか、という疑問が生じるが、そうではなく、日本人が「肩こり」を過剰に意識し過ぎるから、
よく問題になるのではなかろうか。
4.日本人が「肩こり」を過剰に意識するものだとすれば、そこには色々な原因が想定できるが、文献調査や論文から、一つの仮説として、
江戸期の日本人の社会状況や、「滞り」という病因への意識、按摩の流行などが考えられる。
という流れで話を進めてきました。
さて今日は、
”では日本人の「肩」への特別な意識とは、具体的にどういうところに現れているか”
というお話です。
肩こりと東洋医学 3に書いたように、夏目漱石、樋口一葉あたりが「肩がこる」「肩がはる」という表現を使っていますが、この時点では、
まだ「こる」「はる」というように、”動詞”でした。
これが「肩こり」という名詞として、あたかも”病名”のようになりだしたのはいつごろか、という観点があります。
名詞化されることによって、一つの病名のようになっていくんですね。
「頭が痛い」は「頭痛」に、「熱っぽい」は「発熱」にと、名詞化されることによって、認識が明確化する側面があるのです。
それによって、医者にも患者にも、さらに意識されるようになる。
この辺の話は、立川昭二氏の『からだことば』が参考になります。
「肩こり」という名詞的な使われ方は、志賀直哉(1883年(明治16年)― 1971年(昭和46年))の『暗夜行路』あたりには出て来るようです。
(直子と要の不貞の名シーンですね。)
〇
日本語には他にも、
「肩の荷が重い」
「肩書き」
「肩たたきに遭う」
「肩で風を切って歩く」
「肩をいからせて」
「肩のこる話」
「肩の力を抜いて」
「肩ひじ張らずに」
などなど、”肩”は、緊張や責任、権威や男性らしさの象徴としての、様々な言葉があります。
このように、名詞化されたり、日常生活で使われる言葉になったりすると、暗示効果があるのか、ますます”そういうもの”として意識されだす面があるのです。
そして、意識したところに、気血は集まる。
したがって、そこに気血が滞りやすくなる、という訳です。
江戸時代に(・・まあそれ以前からあったのかもしれないが)、肩こりというものが多くの国民に意識され、様々な過程を経て、現代にいたります。
その流れの中で、「肩」という部位と、日本人のメンタリティーが大きく関わり、医者からも患者からも盛んに「部位的に」意識され、結果的に、
ごくありふれた不快な症状として、全国民に広まっていったんじゃないでしょうか。
続く
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