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これまでのお話
「伝統」とは何か。 3 参照
では続きいきます。
◆「伝統」と「易の三義」
前回、易の三義を説明しました。
「変易」「不易」「簡易」ですね。
そもそもこの易が持つ意味は三つあるよ、という考え方は、漢代の緯書である『易緯乾鑿度(えきいけんさくど)』に「 易一名含三義」と書かれてあるようです。
僕ら伝統医学をやっているものは、単に古典研究をやっているのではなく、あくまでも現実の臨床医学、医療をやっているわけですから、
古典に書いてあることを、ただそのまま忠実にやることだとか、古典の文章を暗記したり、文献研究することに重きを置くのではなく、
現実に目の前で病んでいる患者さんのために、あくまでも古典の世界観、人体観を参考に、実際にどれだけのこと(治療)が出来るか、
を徹底的に追求するべきだと思っています。
この立場を北辰会では「臨床古典学」と言っています。
たとえ『黄帝内経』に書いてあることであっても、現代の現実の病人に対して利用価値が無ければサクッと捨てる、また、古典に書いてあることでも、
現代風にアレンジした方が良い部分があればためらいなくアレンジして運用する(変易)、そういうスタンスです。
ただ、数千年もの間、この医学に通底する「本質」「根本哲学」は変えずに(不易)、医学を志す人であれば誰でも理解できるようにシンプルに(簡易)、
論理的に運用することです。
まさに「簡易」シンプルに、「変易」臨機応変に、「不易」本質は変えずに、です。
因みに、伝統としての鍼灸医学の本質は、いつも言っているように「気一元」「太極陰陽」の世界観に基づいて、
鍼灸で気を動かし、人体の陰陽のバランスを調整する、安定させること、ですね。
この意味からすると、鍼灸を一種の物理療法と考え、鍼灸による神経への物理的刺激によって、特定の反応を期待する療法である、
という考え方は、そもそもの世界観自体が違うので「伝統」や「伝承」ではない、ということになります。
(もちろん、だからといって否定はしませんが。)
・・・まあ、現段階ではこれが僕の考える「伝統」であり、「伝統医学」の現代での理想的な在り方かな。
易については、いつかまた折を見て語りましょう。
一先ず終わり。
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