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2012.04.10
東洋医学をやる者なら、知らない者はいないし、通らない者はいないであろう、古典中の古典に、『傷寒論』という書物があります。
僕もまだまだ全然ですが、こないだも、とある勉強会に参加し、これを長いこと読んでおります。
何度も何度も読んで、解釈し、発見を得ながら、忘れては覚え、一生かけて読むような本だと思っています。
参考 wikipedia(傷寒論)
この書が著された年代は後漢末期の時代、書いた人物は張仲景という人物です。
張仲景については、以前このブログで紹介しました。
過去記事 「張仲景(ちょうちゅうけい)」という人物 参照
この本は、やれ伝染病の治療を論じた本だとか、やれ腸チフスの治療を論じた本だとか、色々な言われ方があるのですが、東洋医学的にいうと、
「寒邪(かんじゃ)に傷(やぶ)られてから、最終的に生命に関わるレベルまでの間に起こる、一連の病理変化の、詳細な様子とその治療法」
が書かれた本です。
「寒邪」については過去記事 「寒燥」について 参照
”傷(やぶ)られる”という表現は東洋医学独特の言い回しですが、要するに”侵入、侵襲される”というような意味です。
寒邪(冷えの邪気)に侵入、浸蝕されて、徐々に正気が弱って、最終的には死んでしまう、その一連の流れを、詳細に詳細に、説いた本です。
ここに書かれた多彩な病理変化の描写と解釈から、東洋医学固有の人体観、生命観が十二分に透けて見え、この本を、決して西洋医学のいう伝染病や腸チフスなどの、
特定の疾病「のみ」の治療方法を述べた本としたり、単なるカゼのステージ分類の本、と落とし込むのはもったいないと、個人的には思っています。
そしてこの本における各病態に対する処置は、湯液(いわゆる漢方薬)によるものが中心です。
鍼とお灸も出て来ますが、どちらかといえば完全に脇役です。
学生の頃、とある先生から、
「『傷寒論』は漢方薬の本だから、鍼灸師が読んでもあんまり役に立たないよ。」
と、聞いたことがあります。
その当時は僕も、へー、そんなもんかなあ・・・、と思って聞いていましたが、今ではその先生の考えは間違いだと思っています。
先ほども言うように、『傷寒論』が漢方薬の本、なんていう、浅すぎる解釈はイカンと思います。
『傷寒論』が、漢方薬を扱う先生方にとっての基本であることは確かですが、我々鍼灸師だって、『傷寒論』の内容をもし知らなかったら、
恐くて外感病の治療なんてできません。
なぜなら、『傷寒論』の内容を知らないと、患者さんの症候も、ある治療をした後の変化も、それが何を意味するか、考えようがないからです。
『傷寒論』には、人が病んでから死に至るまでの各レベルにおける詳細な様子が書かれているため、拡大解釈をすれば、どんな病にも応用が出来るし、
各レベルでの治療法を考えることが出来、予後の予測をすることが出来るのです。
だからこの本は鍼灸師にとっても、必須の書なんです。
『傷寒論』については、まだまだ書きたいことが山ほどありますので、折に触れて、あまり専門的で難しくならないように紹介していこうと思っています。
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