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10:00~21:00(完全予約制)
2021.09.17
清明院では現在、求人募集しております!!
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9.15(水)の夜は、(一社)北辰会会員限定企画である古典ライブ講義を視聴してきました!!
水曜日は毎週、東洋鍼灸専門学校での講義なので、21:10まで講義なんですが、学校を出て、21:15くらいからスマホで講義を聴きながら、
チャリこいで家に帰り、家で片付けと明日の準備をしながら、講義を聴けるという素晴らしさ。
もう、オンライン講義なしでは生きていけない。。。笑
しかも、分かりにくかったところを翌日にOD配信で確認できるというお得さ。。。
北辰会会員に限らず、対面実技指導が受けられないコロナ禍のうちに、しっかりと学術のレベル、特に「学」のレベルは、最高まで高めましょう。
臨床家にとって、学と術は両輪の輪です。
今回の第5回古典ライブのテーマも
「古典に学ぶ病因病機 ~万病回春病因指南を題材として~」
であり、今回は
「内傷(脾胃)」
にフォーカスした内容でした!
奥村学術部長の圧倒的知識量と、新風代表のサクッとしたまとめ、というコンビネーションで語られるこの講義ですが、回を重ねるごとに分かり易さが増している感じがあります。
今回は、今の晩夏~初秋の時期にタイムリーな「内傷」で、主に金元の4大医家の一人である李東垣(1180-1251)の説を引きながら、
内傷のほとんどは中気(中焦の気≒脾胃の働き)が関係している、従って脾胃に着眼した治療は重要、という内容でした。
(なかなかの極論ではありますが。。。)
食欲の秋であり、また、夏の間にした暴飲暴食の影響が悪い面で出てきやすい時期でもありますので、このことについて知っておく、意識するのはとても重要です。
今回は、なぜか僕だけ(苦笑)画面がフリーズしましたが、どうにかリカバリーできました。(^^;
まあこういう不具合とか操作上の問題なんかも、今後の5Gの時代ではどんどん改善されてくるのでしょう。
こうやって何回もやっていくうちに、講師の方も、視聴者の方も、オンライン講義に慣れて、コロナもまだまだ長引きますから、今後は座学はこれが間違いなく主流になることと思います。
こんな便利なことに慣れたら、もはや以前に戻れるわけないですな。(*‘∀‘)
今回、印象的だったのは、「補中益気湯の中に柴胡と升麻が入っていることの重要性」というお話。
金元の4大医家の中でも、特に脾胃の働きを重視し、”補土派”と言われる李東垣(1180-1251)が創方した薬として有名で、現代の臨床でも非常によく使われる「補中益気湯」という薬(補気剤)があります。
これの中身(構成生薬)は、各古典によって多少の違いはありましょうが、基本的には
人参・白朮・黄耆・当帰・柴胡・陳皮・炙甘草・升麻(by『中医臨床のための方剤学』)
なのですが、この薬の中に入っている柴胡と升麻は、表証の薬(辛凉解表薬)でありながら、補気剤に配合すると升陽作用を発揮します。
これを鍼で表現しようとすれば、脾胃を補う配穴に、臨泣などの木気を巡らせる配穴を足すと、補中益気湯のそういう側面が表現できたりします。
臨床上、上實下虚や上熱下寒、いわゆる冷えのぼせや、人体の上下のアンバランスが起こった状態の患者さんに接する機会は多いですが、
意外と中焦脾胃に注目して「補気昇提」という考え方で治療するとうまくいくケースがあります。
何でも清熱や降気を考えりゃいいってもんじゃない。
中焦を補気し、清陽を押し上げることで、かえって邪気が降りる、足が温もる。
ここもなかなか、東洋医学の臨床家の腕の見せ所でしょう。
改めて、よくよく考えておくべきだと思いましたね。
また、以前から奥村先生が深く研究されている腹診論に関して、先天易と後天易と境界と、木土の五行の相生相剋の話、また、味岡三伯門下で岡本一抱(1655-1716)の同期で、
弟子の中の四傑といわれる浅井周伯(1643-1705)の子孫が記したと言われる「五蔵決用圖」の話など、今回もなかなか含蓄のあるお話を頂きました。
まあ簡単にいうと、江戸期の医家は腹部に宇宙を見て、治療をやっていた、ということですね。
これを壮大で、スケールが違う!美しい!!と取るか、Primitiveととるか、非科学的でとるに足らない、思弁的であり、観念論では病気は治らない、と斬るか。
・・・とまあこのように、2000円では安すぎる、非常に学びのあるこの講座、会員の先生方限定の講座ですが、これを機に入会の方はぜひ☆
「なんちゃって」じゃない、本気の東洋医学の素晴らしい世界が、待っていますよ☆
〇
2019.05.14
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5.12の日曜日は、大阪上本町で行われた(一社)北辰会定例会に参加してきました!!
今回は午前中は実技。
僕は上級班で、風胤堂本院長である油谷真空先生の超絶技巧を目の当たりにしていました。(゜o゜)
午後は久々に、丸々三時間症例検討会。
奈良のタケモトクリニック院長の竹本喜典先生による、「二陳湯加減と鍼灸を併用した三症例」です。
この二陳湯という薬は、このブログにも何度も出てきている、江戸期の多くの医家たちが参考にした、あの『和剤局方』が出典です。
中医学をやっている臨床家であれば、全員持っているであろう、東洋学術出版社の『中医臨床のための方剤学』では、「燥湿化痰剤」の首先に出てくる方剤で、「湿痰」という邪気に使う、超有名選手であります。
二陳湯は、半夏・茯苓・陳皮・甘草で構成されたシンプルな方剤であり、これを生姜、烏梅とともに飲む、と書いてあります。
東洋医学をやっているものにとって、半夏と陳皮のコンビネーションはあまりにも有名ですが、二陳湯の場合、この半夏と陳皮が古いものの方が、
薬性がマイルドになり、より良い、ということで、「半夏と陳皮の二つが陳(ふる)いほど良い。」という意味で「二陳湯」なんだそうです。(^^)
この方剤を、清代の名医である王旭高先生(1798-1862)の「治肝三十法」の考え方を参考に加減して、見事に治してみせた症例を、三例発表して下さいました。
この症例は、今年の6月に新宿で行われる日本東洋医学会学術総会でも、ポスター発表なさいます。
今回聴き逃がした方は、ぜひ新宿に!!(=゚ω゚)ノ
僕も久々に湯液の絡んだ症例で、非常に勉強になりました。
また、中医学をベースにすれば、湯液家とも共通の理論土台の中で討論できるし、やはり中医学理論は有用だなあと思いましたね。
終わった後は呑み。。。
今回、油谷先生が爆裂していました。(笑)
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2019.03.08
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ここまでのお話し
小建中湯について 2 参照
別にシリーズ化する気もなかったんだけど、書き始めたら何となく、
「あれも書いとこ、これも書いとこ。」
ってなって、徐々に続いてしまった、この「脾胃モノ有名漢方薬」シリーズ。(笑)
特に脈絡もなく、患者さんを診ていて、よく使われているものを書いています。
(こんなん書いてたら、キリがないね。。。)
もちろんながら、漢方薬というのは、鍼灸と同じように、芯となる流儀や考え方に基づいて、論理的整合性、一貫性をもって処方されるべきもので、
決して症状のみ、病名のみから場当たり的に処方されるものではないと理解しています。
だから僕は、全くの素人さんが、エキス剤とはいえ、ドラッグストアで簡単に漢方薬を購入できる現状、ネット通販で自分の症状から調べて入手しては、
サプリメント感覚で次から次に試しまくる現状にも、正直反対です。
もちろん、自分で鍼や温灸を買って適当に試すことにも、厳しいようですが反対です。
僕は鍼灸臨床家であり、畑は違いますが、今後も優れた漢方家の先生方と協調しながら、真面目に東洋医学をやっていきたいですね。(^^)
前置きが長くなりましたが、今日は「補中益気湯」です。
(これで一応いったん締めとしましょう。)
実は2013年の記事に、チラッと登場しました。
この方剤の出典はあの中国金元の4大医家の一人、李東垣(1180-1251)先生の『脾胃論』であり、『中医臨床のための方剤学』によれば、構成生薬は
人参9g、白朮9g、黄耆15~30g、当帰9g、柴胡3g、陳皮6g、炙甘草6g、升麻3g
となっています。
効能は補中益氣、昇陽挙陥、甘温除大熱であり、主治は気虚下陥、気虚発熱とあります。
まあ要は、”黄耆”という生薬を主薬とし、結果的には中焦の気(脾気)を補って、気を昇らせ、脱肛や子宮脱などの”中気下陥”の症状を改善させ、
場合によっては気虚発熱を改善するという目論見の薬です。
李東垣は『内外傷弁惑論(1247)』の中で、発熱には外邪が入って邪正闘争の結果発熱するものと、脾胃が弱ったことにって発熱するものがあり、
脾胃が弱った場合については甘温剤で脾胃をフォローすることによって清熱することが出来ると主張しました。
ここで重要なのは、熱証モノは脾胃を補えばいい、という理解ではもちろんなく、その熱証症状、所見が、”何によるものなのか”を鑑別診断できる物差しを身に付けることですね。
この物差しになるのが脈診、腹診をはじめとした”多面的観察”であります!!
患者さんが、
「先生風邪ひいたー。。熱が出たー。。。」
と、言っていたからといって、それがどういう病因病機によるものなのかに対する理解ですね。
意外と臨床上、脾胃を補うことによって熱証症状が取れていくことはあります。
アトピー性皮膚炎なんかでも、たまに経験しますね。
実際に漢方家の先生の中には、補中益気湯を使ってアトピーに効果を挙げておられる先生も少なからずおられるようです。
刮目すべき理論です。
〇
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2019.03.01
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昨日、四君子湯と六君子湯という記事を書きました。
ついでなんで、比較的有名にして、「六君子湯」と似ているところのある「平胃散」についても書いておこうと思います。
・・・まあ、僕は鍼灸の臨床家でありますので、これらの薬の、より臨床的な解説は、漢方家の先生のサイトにお任せするとして、これらの方剤の使い分けの際に考えるような内容が、
我々の臨床においても、微妙に配穴や補瀉やその評価に関わってくるんだよ、という話でも書いておこうと思います。
「平胃散」の出典も、「四君子湯」と同じく、宋代の国定処方集である『和剤局方』であります。
この『和剤局方』は、以前紹介した森道伯先生の臨床にも出てくる、大変重要な処方集ですね。
『中医臨床のための方剤学』によれば、平胃散は「袪湿剤」のグループであり、処方構成は蒼朮15g、厚朴9g、陳皮9g、甘草4gとあり(生姜、大棗を含める場合もあり)、
効能は燥湿運脾、行気和胃、主治は湿困脾胃とあります。
四君子湯や六君子湯と違って、人参、白朮、茯苓ではなく、蒼朮を多めにドーンと入れてあることで、「燥湿(湿邪を乾かす)」の効果を主に狙っている訳ですね。
つまり、湿邪の邪気実によって、脾胃の働きが抑えられているものに対する処方な訳です。
脾・胃 参照
四君子湯、六君子湯の”補法(補気)”をベースとした世界とは違う、”瀉法(袪湿)”の世界ですね。
中国清代の傳山(1607~1684)の『傳青主女科』では、この処方に朴硝(含水硫酸ナトリウム)を加えて、死胎の娩出に使っているというから、興味深い。
清明院もここ最近、二十四節気では「雨水」に入り、「啓蟄」の前であり、月齢では新月に向かい、こないだの雨で気温がガクンと下がり・・・、
という流れの中で、まさに「平胃散証」、という患者さんがチラホラ見えました。
これは鍼でやるなら、足三里や豊隆を瀉法か?あるいは太白を瀉法か??
それとも脾兪や胃兪か?
あるいはお灸でやるか??
どれが一番、平胃散チックか??
こう考えながらやるってのも、楽しいもんだねー(゚∀゚)
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2019.02.28
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こないだ、患者さんで、「四君子湯」という漢方薬を処方されている方がいらっしゃった。
・・・そこでふと、昔のことを思い出した。
ずいぶん前のことだが(15年以上前かな?)、蓮風先生が実技デモで腹診をしながら、
「これは四君子湯の証や!四君子湯と六君子湯は違うぞ!!どう違うか、お前分かるか!?」
と、当時の講師の先生が指されて、その先生が答えられずにアワアワしていたのを思い出した。
そのあと確か、太白に鍼をなさっていたように思う。
・・・で、当時、帰ってから、四君子湯と六君子湯の違いについて一生懸命調べたことがあった。
久々に思い出したんで、ここに書いておく。
〇
四君子湯の出典は中国宋代の国定処方集である『和剤局方(1110)』で、この方剤は『中医臨床のための方剤学』では「補気剤」のグループの薬だ。
(「補気剤」の代表選手、といってもいい方剤みたいです。)
内容は人参6g、白朮9g、茯苓9g、炙甘草6gとのこと。
(本によって別説もあるようだが。。)
効能は益気健脾、主治は脾気虚とある。
人参と炙甘草で津液を補い、白朮、茯苓では湿邪を取る、この相反する作用をもって、全体としては脾の臓の弱りをフォローする薬、というワケだ。
(相反する作用を持つ生薬をあえて配合して、結果的に効果を高める、これを相反相成というそうです。)
それに対して、六君子湯はどうか。
出典は明代の虞摶(ぐたん 1468-1517)による『医学正伝(1515)』だそうで、四君子湯よりもずいぶん後になって考案された処方らしいですが、
これも分類的には「補気剤」のグループで、四君子湯の脾気虚がさらに進んで、脾胃ともに気虚(脾胃気虚)を起こし、さらに湿痰を生じているものに対する方剤で、
前述の四君子湯の4味に加えて、和胃降逆の作用を持つ小半夏湯の内容(半夏・生姜)を加え、さらに理気健脾、燥湿化痰の陳皮と、補脾、養営の大棗を加え、
全部で8味もの、やや複雑な構成になっている。
総じて効能は補気健脾、和胃降逆、理気化痰、主治は脾胃気虚と痰湿、ということになる。
清代の名医で有名な程国彭(ていこくほう 1662-1735)の『医学心悟(1732)』に、
「・・・気虚挟痰、清陽不昇、濁陰不降、即上重下軽、六君子湯主之。・・・」
と、簡潔に述べているように、臨床的には脾胃の弱りによって中焦から上昇(特に上焦)に痰湿が停滞しているものに使うとある。
四君子湯も六君子湯も、どちらも脾気虚を補うという点では同じだが、六君子湯の場合は胃の気虚と痰湿の邪実が射程に入っている、ということですね。
鍼では、四君子湯の場合は大白への補法でいいと思うが、六君子湯の場合は、大白だけで終われるのは相当腕達者だと思う。
二穴に分けるか、腹を使うか・・・。
いずれにせよ、所見も評価も、全然異なる。
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2018.09.09
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前回、一貫堂医学の基本中の基本である、「三体質・五処方」を紹介しました。
今日はこのうちの「瘀血体質」なるものについて少し掘り下げましょう。
「瘀血」という病理産物については、東洋医学では誰でも知っているような重要な概念で、このブログでもチョイチョイ登場しています。
まあ要するに、「使いもんにならん、停滞した血(けつ)」のことです。
あらゆる病気、症状に関わり、あらゆる病気、症状を治りにくくする、病理産物であります。
一貫堂医学では、これを叩くことを治療、予防の3本柱の一つとして、非常に重視してるわけです。
一貫堂のいう瘀血体質というのをもう少し詳しく述べると、要は「体内に停滞した血液を持っている者」のことであり、血液の多くは腹部にあることから、
腹部、それも下腹部、骨盤内(それも左側)に瘀血が停滞しやすい、特に閉経後や月経不順のある婦人に多いと考え、皮膚の色、脈診、腹診などで判断するようです。
(皮膚は赤ら顔、爪は暗赤色、あるいは貧血して黄白色、脈は細実、腹は臍周に緊張、腹直筋が緊張など)
瘀血体質の患者がかかり易いのは脳溢血、片麻痺、喘息、胃腸病、肝臓病、肺結核、痔疾、淋疾、精神疾患、婦人病などなど、とのことです。
(幅ひろー(゜o゜))
・・・で、これらを通導散加減で治療します、と。
通導散というのは、中国明代、16~17世紀を生きたと言われる龔廷賢(きょうていけん 生没年不詳)の著作である『万病回春』に所収されている処方で、
現代でも超有名な駆瘀血剤(瘀血を取り去る薬)です。
この『万病回春』は、江戸時代の日本人の医師に広く読まれた古典であり、極めて実践的な内容で、あの和田東郭や、原南陽も高く評価しているそうです。
つい最近、1989年になって、大塚敬節先生の指示を受けた松田邦夫先生が全訳解説本を出版されたことでも知られています。
この通導散は、『傷寒論』の陽明病の薬として有名な大承気湯に当帰、紅花、甘草を加えた加味承気湯に、さらに蘇木、枳殻、陳皮、木通を加えたもので、
気の停滞、瘀血を取り去る力の強い薬です。
(『万病回春』の原文には”童便、黄酒各一鍾で温服すべし”とありますが、”童便”ってまさか。。。( ;∀;))
・・・で、私は鍼師ですので、さてこれを、鍼でやるならどうするか、という問題にぶち当たる訳ですが、北辰会では瘀血証には三陰交、膈兪、血海、臨泣などを瀉法で使いますが、
通導散のイメージに一番近いものとなると、この中では臨泣でしょうかね。。。
ただし「上手にやれば」ですね。(ΦωΦ)
続く
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2018.08.19
清明院では現在、院内診療、訪問診療ともに多忙のため、
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婦人科疾患と、呼吸器疾患を同時に持っている患者さんも少なくない。
患者さんは、西洋医学の婦人科で薬をもらい、呼吸器科で別の薬をもらい、なかなかコントロールできなくなると、ようやっと清明院に来る。
こういう患者さんをよく診ます。
(苦笑・・・最初の段階で来てくれれば、どれだけ楽か。。。)
これ、東洋医学的には、症状や場所が違うだけで、同じ病気であると考えられることも少なくない。
・・・で、よーく診たてて、吟味した経穴に一本鍼をすると、両方とも良くなったりする。
いやーたまらんね、東洋医学、鍼灸は。(゚∀゚)
かつて、2002年に中国でSARS(重症急性呼吸器症候群)が流行し、多くの死者も出て、かのスペインかぜの様に大流行し、パンデミックを起こすことが危惧された時、
広州中医薬大学の鄧鉄濤(とうてっとう)先生が、東洋医学で立ち向かったという話を以前書きましたが、この時に鄧鉄濤先生が使った「仙方活命飲(せんぽうかつめいいん)※」という薬は、
主に癰瘍毒(ようようどく:キツイ炎症を伴うオデキ)の薬です。
(ちなみにスペインかぜの時も、日本では日本人の漢方家である森道伯先生が大活躍した話がありますね。これもそのうち書きましょう。)
※仙方活命飲・・・『校注婦人良方』が出典。効能は清熱解毒、消腫潰堅、活血止痛。主治は癰瘍腫毒初起。金銀花・陳皮各9、白芷・貝母・防風・赤芍・当帰尾・甘草・皂角刺・穿山甲・天花粉・乳香・没薬各3
また、知り合いの漢方家の先生に伺うと、五味消毒飲(※)などもオデキの薬ですが、これを用いて呼吸器疾患や婦人科疾患を治す、なんてことも普通にあるようですね。
※五味消毒飲・・・出典は『医宗金鑑』、効能は清熱解毒、消散疔瘡、主治は各種疔毒、癰瘡癤腫。金銀花15、野菊花・蒲公英・紫花地丁・紫背天葵子各6
因みに、
「オデキの薬で、なんで肺炎が治るのか」
という問題に関しては、北辰会機関誌『ほくと』57号にて蓮風先生が解説して下さっているので、そちらをぜひ参照してください。
〇
呼吸は、律動性が大事。
月経も、律動性が大事。
それが乱れないのをもって、良しとする。
この律動性が、色々な臓腑経絡の働きで担保されている。
また、呼吸器は、ある意味常に、外界と接している粘膜。
女性生殖器も同様に、常に外界に接している粘膜。
肺は鞴(ふいご)のように袋状の形態、女子胞(子宮)は、懐胎するために袋状の形態。
どちらも大きく伸縮します。
肺の臓の隣(下)には、陽臓である心の臓がある。
女子胞の隣(上)には陰臓である腎の臓がある。
また、呼吸器は体幹の最も上部に位置し、女性生殖器は体幹の最も下部に位置する。
働き、形態が似てて、位置的には上下の陰陽。
この上下の気の交流も、色々な臓腑経絡の働きで担保されている。
肺の臓がある上胸部には、宗気のもととなる天空の清気が充満しており、女子胞がある下腹部には、胎児を妊養するための陰血が豊富に充満しています。
この意味でも、気血の陰陽。
機能的、形態的には相似性があり、位置的、環境的には陰陽関係にある。
これらが、同じ考え方で治療できる。
冒頭で述べた、オデキの治療と同じように、「内から外へ」と邪熱を誘導、発散させて治すのが、常套手段、ということ。
・・・まあ何て言うか、東洋医学最高。(゚∀゚)
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2018.02.17
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前回のお話
では続きいきましょう。
◆暈厥の治療
前回書いた通り、こないだ先輩の起こした暈厥は、当日の過ごし方、倒れた際の情報から、「痰濁上擾>血虚」である可能性が高そうだ、という仮説を立てました。
(あくまで仮説です。)
・・・これがもし真であれば、どういう治療があり得るでしょうか。
『症状による中医診断と治療』では、痰濁上擾であれば治療は行気豁痰で、方剤は導痰湯、と出ています。
方剤については、神戸中医学研究会の『中医臨床のための方剤学』によれば、導痰湯は、厳用和(げんようわ 南宋:13世紀)の『済生方』に出て来る方剤で、
半夏・天南星・枳実・茯苓・陳皮・炙甘草・生姜を含むもので、清代、程国彭(ていこくほう)の『医学心悟』に出てくる、有名な半夏白朮天麻湯と似た方剤なんですが、
天南星と枳実によって、痰に対する去痰効果は強く、脾虚に対する配慮は薄いものと言えます。
因みに天南星はサトイモの仲間、枳実はミカンの仲間です。
身近!!(゚∀゚)
・・・ですので、この場合、背後に一定の血虚があった可能性が高いので、導痰湯よりも半夏白朮天麻湯の方がいいのかもしれません。
また、同書には、血虚の場合の治療は生脈散か人参養栄湯、と出てきます。
生脈散は、金元の四大医家の一人である李東垣(りとうえん 1180-1251)の『内外傷弁惑論』に出て来る方剤で、麦門冬・人参・五味子が入っており、
気陰を補って脈を生じる、という意味でこの名前がついているようです。
これは思いっきり補(扶正)に寄せた薬で、今回のように実が中心の場合は、あまり適さないと思います。
人参養栄湯は宋代の『和剤局方』に出て来る方剤で、人参・桂枝・地黄・茯苓・白朮・黄耆・当帰・芍薬・甘草・遠志・五味子・陳皮の入ったもので、
有名な十全大補湯を少しアレンジして、心の臓や肺の臓にも効くように調整された薬だそうです。
肺・大腸 参照
まあこれも、思いっきり補法に寄せた薬なので、今回のような実が中心の場合には適さないと思います。
・・・そう考えてくると、ここに挙げた薬の中では、半夏白朮天麻湯が一番いいのかな、と読めます。
まあ僕は薬に関しては全くの門外漢なので、この辺は正直分かりませんが。。。
(詳しい先生、ぜひご意見聞かせて下さい。<m(__)m>)
・・・で、翻ってこれを鍼灸で考えると、色々な経穴が浮かびます。
裏の血虚に配慮しながら、痰濁を取る、これにはどんな方法があるでしょうか。
続く
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2014.01.17
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前回のお話
病院での漢方薬の使われ方 参照
今日は抑肝散の話の続きいきます。
『保嬰撮要』の条文によると、抑肝散はもともと、
「抑肝散は小児が肝の経絡の虚熱の
あ
処方は軟柴胡(なんさいこ)と甘
以
また、これを蜂蜜で煉
となっております。
(赤字部分が非常にポイントだと思います。)
母親にも服用させる、というのが面白いですね。
因みに『保嬰撮要』の中に抑肝散の記載は4カ所出てきます。
江戸時代、日本では盛んに抑肝散の加味方が創製され、和田東郭(わだとうかく 1742-1803)は『蕉窓方意解』の中で抑肝散加芍薬(よくかんさんかしゃくやく)として、
喘息や打撲に応用し、本間棗軒(ほんまそうけん 1804-1872)は『内科秘録』の中で抑肝散加羚羊角(よくかんさんかれいようかく)として癲癎に応用し、
浅田宗伯(あさだそうはく 1815-1894)は、『勿誤薬室方函口訣』の中で和田東郭の抑肝散加芍薬に黄連や羚羊角を加え、脳卒中後遺症などに応用しており、
現代でもよく使われる超有名な加味方である抑肝散加半夏陳皮(よくかんさんかはんげちんぴ)は、抑肝散に、湿痰を取る二陳湯を加え、
そこからさらに生姜を除いた処方で、抑肝散の効果+湿痰を取り除く作用を加えており、非常に重用されるのですが、
文献的には浅井南溟の『腹診録』に記載があるものの、なんと誰の作かはハッキリとは不明なんだそうです。。。
(ちなみに上記リンクから分かるように、浅井南溟の『腹診録』ではなく『浅井腹診法』ではないかと思うのですが。。。)
しかし、日本で作られた処方であることは間違いなく、そういうものを”本朝経験方”と言います。
ちなみに昭和漢方の巨人の一人である矢数道明先生は抑肝散加陳皮半夏を北山友松子(?-1701)の創方ではないかと推測しておられるそうです。
↑↑上記内容は
中田敬吾ほか「抑肝散加味方の研究」
真柳誠 抑肝散・抑肝散加陳皮半夏① 古典的解説 を参考に纏めさせていただきました。
・・・まあこんな感じで、抑肝散てのは、中国明代に発表されて以来、特に日本で、臨床家の間でずいぶんゴチャゴチャとこねくり回された処方なんですが(笑)、
要は肝陰、肝血をフォローすることで肝陽、肝気が暴れないようにするのが基本的な目的であり、現代医学的に、”認知症なら抑肝散”、という短絡的な使い方はおかしい、
というのが私の意見です。
当たり前ながら、東洋医学的には、認知症にも虚実寒熱、臓腑、病邪の別あり、だからです。
ここで、変に誤解されて突っかかられたら嫌なので付言しておきますが、僕は、
「ある西洋医学的な病名に対して、ある漢方処方や、ある経穴への刺鍼施灸が、やらない場合よりも優位な効果を示す、というデータを得た、であるからして、現代医学の現場において漢方鍼灸は有用性が高いのだ。」
という研究、論理、主張をすること自体については、おおむね賛成なんです。
しかし、そういう研究結果があるからといって、何も考えずに、現場において、西洋医学的な病名のみから漢方処方、鍼灸配穴を考えるという、
患者さん、東洋医学を扱う上でまったく短絡的で浅薄な態度には大反対だ、という立場なのです。
つまり臨床家としては、抑肝散とその加味方を通じて、肝陰、肝血をフォローしながら肝陽、肝気を抑制する、というやり方は、認知症その他をやるうえで、
臨床上非常に価値の高い方法論である、ということを学べばいいのです。
もうチョイ続く
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2014.01.16
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こないだの病院見学の際、こんなシーンがありました。
病院見学については
ナースステーションのカウンターの上に、ズラーッと並べられた〇ムラの漢方薬の袋。
僕が、
「これは何ですか?」
と看護師さんに問うと、
「”抑肝散(よくかんさん)”です。」
とのこと。
・・・抑肝散とは、もともとは1556年、明の時代に中国で出版された『保嬰撮要(ほえいさつよう)』という書物に出てくる漢方薬で、
現代では主に認知症などの精神疾患によく応用されております。
因みに『保嬰撮要』という本は実は小児科の本であり、薛鎧(せつがい)と薛己(せつき)という、明の時代の名医の親子によって書かれました。
20巻にも渡る超大作で、全て小児科について書かれています。
日本では、約100年後の1655年に中江藤樹が著した『捷径医筌(しょうけいいせん)』や、1745年に甲賀通元が著したベストセラー処方集である『古今方彙(ここんほうい)』に、
『保嬰撮要』の中の抑肝散のくだりが、ほぼそのまま転載されているそうです。
(ちゃんと読んでないけど(爆))
また、
「抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)」
だったり、
「抑肝散加芍薬黄連(よくかんさんかしゃくやくおうれん)」
として、抑肝散に他の生薬を加味したもの(どちらも日本人の医者が創方したものと言われています)が、現代では神経症や不眠症などの精神症状によく使われますが、
抑肝散は成分の中に甘草が含まれているので、よく効くからといってみだりに多用、濫用すると「偽アルドステロン症」という、重大な副作用が起こる場合があり、
注意が必要、ということになっております。
因みにこの問題(甘草含有製剤)については、このブログでも以前チラッと触れたことがあります。
勉強会&謝恩会 参照
ただ、こういった漢方の誤用から起こる諸問題に関しては、漢方薬が犯人なのではなく、訳も分からず処方した人、あるいは訳も分からず買って飲んだ人が犯人なのであり、
さらに言えば、そういうことが起こらないように、医学部や薬学部における東洋医学教育が徹底されていないこと、また、そういうことが起こらないように、
入手方法に関する厳格な法整備がなされていないことに、問題の本質があると思っています。
ん~、長くなったから次回。(笑)
〇
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