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2022.10.04
清明院では現在、求人募集しております。
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9.29(木)の夜は、第44回の順天堂東医研に参加してきました!!
今回の講師はいつもお世話になっている長瀬眞彦先生。
テーマは
「女性に学ぶ東洋医学」
ということで、婦人科疾患にフォーカスした内容でした。
生理痛、生理不順、PMS、PMDD、子宮筋腫、卵巣嚢腫、子宮癌、卵巣癌、不妊症、不育症、更年期障害などなど、婦人科がらみの症状や病気で苦しんでおられる患者さんは非常に多いです。
婦人科医院の方でも、痛み止めやホルモン補充療法などなど、色々な方法で対処しているものの、なかなか対処しきれていないのが現状ではないでしょうか。
そういうものに、東洋医学(鍼灸・漢方)が意外と効果を発揮します。
清明院でも、婦人科の主訴の患者さんを診ない日はありません。
外科手術を急いでせざるを得ないような腫瘍系の疾患以外であれば、ほとんどのものに、少なくとも有効ではある、という印象を持っています。
私の少ない経験でも、減薬、廃薬に導くことが出来た症例は数多くあります。
今回は、「婦人科三大処方」なんてよく言われる「当帰芍薬散」「桂枝茯苓丸」「加味逍遙散」の3つの方剤を、例題を交えて分かり易く紹介して下さり、学生さんも非常に興味津々で聴いておられました。
また、今回から再び対面ハイブリッド開催になったので、「当帰芍薬散」の煎じとエキス剤、両方の試飲会もやって、煎じ薬とエキス剤の違いについても、体験して学びました。
やはり煎じとエキスでは、香りから味から、同じ方剤でも全然違います。
「こんなに違くて、ホントに同じ効果が出るのか・・??」
と思ってしまいますね。苦笑
漢方のエキス剤という、ある意味偉大な発明をしたのは、実は戦時中の日本人の先生方なんですが、功罪あるよなあ、と改めて考えさせられました。
先日の学生さんのPMSの発表、今回の婦人科基本方剤と続いて、次回、10.27(木)の夜は私から
「女性生理の問診」
「婦人科疾患で注目すべき体表所見」
という、婦人科シリーズでいきます!!
ハイブリッド開催になりますので、全国の医大生の皆さん、ぜひご参加ください☆(*‘∀‘)
お申込みはこちらから!!
2019.03.04
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ここまで、中焦(脾胃)の異常に対してよく処方されている漢方薬を、いくつか紹介してきました。
大建中湯について 参照
前回、大建中湯を紹介したので、なんか小建中湯を紹介しないのは気持ちが悪い。。。
・・・ということで、ついでなんで小建中湯を紹介します。(゚∀゚)
(処方されている患者さんも結構いるしね。)
小建中湯も、大建中湯と同じ「温裏剤」のグループです。
出典はもちろんあの『傷寒論』ですから、約2000年の風雪に耐えてきた名方と言えます。
この処方は非常に有名です。
漢方薬の王様の一人と言っていい、「桂枝湯」という薬がありますが、この桂枝湯の中の「芍薬(白芍)」という生薬を倍の量にしたのを「桂枝加芍薬湯」といい、
それに「膠飴(こうい:みずあめ)」を加えたのが「小建中湯」です。
『中医臨床のための方剤学』によれば、効能は温中補虚、和裏緩急、主治は中焦虚寒、脾虚肝乗とあります。
・・・おっと、ここまで書いたら時間切れ。
続きは次回。(笑)
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2018.09.15
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これまでのお話・・・
さて、マニアックな話、ドンドンいきましょう。
ドンドン読者を置いていきます。
そしてみんな離れていって、終いには一人になりそうです。(爆)
・・・ともかくここまで、一貫堂医学における「三大体質・五大処方」について書いてきました。
よく勘違いされがちなこととして、
「一貫堂って、全ての患者を3つの体質に分類するんでしょ?それも全部実熱でしょ??そんなん、無理あるっしょ~~!!(;’∀’)」
というミスリード。
普通に考えて、そこだけ切り取って、名医・森道伯を語れる訳ないですね。(・ω・)ノ
矢数道斎(格)先生のまとめた『漢方一貫堂医学』には、森道伯先生のほぼ晩年の3年間のカルテに使った方剤が集積して一覧表にしてありますが、
当然ながら「それ以前の」数十年がある訳です。(笑)
まあ、色々な症例やエピソードがあると思うんですが、有名なのは「スペインかぜVS森道伯」のエピソードでしょう。
まず「スペインかぜ」を簡単に説明しますと、1918年~1919年(大正7年~8年)にかけて起こった、アメリカ発の強毒性インフルエンザのパンデミック(世界的大流行)です。
アメリカ発なのにスペインかぜと呼ぶのは、情報源がスペインだったから、だそうです。
ちょうどこの時は第一次世界大戦(1914~1918)の末期であり、このスペインかぜが大戦を早期に集結させた要因の一つである、という見方もあるぐらいの大事件であったようです。
そのくらい被害は大きく、全世界で5億人が感染、死者は5千万人~1億人、とも言われています。
日本にも被害が広がり、現在タレント論客として活躍している竹田恒泰さんの曾祖父君にあたる竹田宮恒久王をはじめ、多くの日本人が感染しました。
この時、森道伯先生はスペインかぜを3つに分類し、
胃腸型・・・香蘇散+茯苓・白朮・半夏
肺炎型・・・小青竜湯+杏仁・石膏
脳症型・・・升麻葛根湯+白朮・川芎・細辛
で治療し、たいへん効果を挙げたそうです。
これらも、現在でもよく使われる、割かしなんてことない処方なんですが、この処方からしても、決して実熱のみを重視していたなんて思えません。
スペインかぜの弁証論治を、非常にシンプルな形に落とし込んだように見えます。
因みに各方剤の出典は、
香蘇散は北宋の国定処方集である『和剤局方』、
小青竜湯は後漢の張仲景(150?-219)による『傷寒論』、
升麻葛根湯は『閻氏小児方論』という本が出典で、有名な葛根湯の変方かと思いきや、やや似て非なる配合の薬です。(笑)
僕のPCに入れてある『東洋医学辞書』では
葛根湯は葛根5.0・麻黄・大棗各4.0・桂枝・芍薬・生姜各3.0・甘草2.0
升麻葛根湯は葛根5.0・芍薬3.0・升麻・乾生姜各2.0・甘草1.5
と出てきますが、『中医臨床のための方剤学』では
葛根湯は葛根12g・麻黄、生姜9g・桂枝、炙甘草、白芍、大棗6g
升麻葛根湯は赤芍6g・升麻、葛根、炙甘草3g
と、ずいぶん違います。
こういうの(同じ方剤名でも時代や文献で構成生薬が違う)も、方剤学のややこしいところですね。(苦笑)
まあともかく、
香蘇散は風寒表証+気滞の薬で、現代ではストレスからくる肩凝りだの胃もたれだのといった、肝鬱や肝胃気滞によく使われる薬です。
小青竜湯は風寒表証+脇下の水飲の薬で、現代では「くしゃみ三回小青竜」な~んていう、実に胡散臭い謳い文句があって、花粉症によく使われる薬なんですが、
何も考えずに長期服用すれば徐々に内熱が籠っていき、別の病を形成します。(~_~;)
西洋薬と比べて、副作用がなくて眠くならないから助かるわ、な~んつって、冬から春に長期服用している患者さん、ホントに多いです。
升麻葛根湯は、小児の麻疹(はしか)の薬として有名で、肺胃の熱毒を叩く薬です。
これらを強毒性のインフルエンザに巧みに応用した訳ですね。
・・・まあいずれにせよ、よく後世派と言われる一貫堂ですが、古方派の使うような方剤も臨機応変に臨床応用していたことが分かります。
(そういえば後世派、古方派についても書いてなかったですね。いい機会なんでこれが終わったら書きましょう。)
次回、感染症に対する東洋医学の考え方を書きます。
続く
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2018.09.14
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これまでのお話・・・
さて、ここまでで、森道伯先生を創始者とする「一貫堂医学」が提唱する「三大体質・五大処方」なるものの基本を説明してきました。
一応断っておきますが、私は鍼灸家であって漢方家ではないので、漢方薬の処方解説はあくまでも理論面しか出来ませんし、鍼灸臨床に置き換えて説明することしかできません。
これまでに出てきた漢方薬それぞれ、実際の実践面、臨床面でどうか、というのは、漢方家の先生方にお任せ致します。<m(__)m>
僕のすべての言説は、あくまでも市井の一鍼灸臨床家の視点からのものであります。
・・・しかしまあ、いつものことなんですが、こうやって東洋医学の真面目な内容を書いていると、アクセス数が減りますなあ~~。(~_~;)
(苦笑・・・みんな、勉強嫌いなのね。)
・・・でもいいです、めげずに書きます!!<(`^´)>
書きたいから書く、言いたいこと言う!!(゚∀゚)
五大処方のうち、前回述べた「解毒証体質」に使われる3つの方剤(柴胡清肝散、荊芥連翹湯、竜胆瀉肝湯)は全て、「温清飲」という薬をベースにしています。
この温清飲は、現代では「アトピー性皮膚炎」の患者さんに使用されていることが多いようです。
・・・ところが、最初から単純に効いていなかったり、ある程度までは効いていても、途中で効かなくなったり、あるいは途中から悪化していったり、
と仰って、清明院にみえる患者さんがチラホラいます。
これについて、どういうことか考えてみましょう。
まず温清飲の中身は、当帰・地黄・芍薬・川芎各3.0g、黄連・黄芩・梔子・黄柏各1.5g、だそうです。
上記の当帰~川芎の部分が四物湯の内容、黄連~黄柏の部分が黄連解毒湯の内容です。
配合の分量の比率を単純に見れば、「四物湯>黄連解毒湯」と読めます。
四物湯とは、補血剤(血を補う薬)の代表格で、主に肝の臓の血(肝血)を補う薬だそうです。
黄連解毒湯は清熱剤(熱を冷ます薬)の代表格で、上焦~下焦まで、三焦に瀰漫した邪熱(実熱)を取り去る薬だそうです。
ということは、温清飲は「肝血虚>邪熱」の虚実挟雑証の場合に使える薬、と考えていいのでしょう。
(・・・まあ、そう一概に言えない面もあるかもしれないが)
だとすると、経過中に「肝血虚<邪熱」のように、主従が入れ替わった時、あるいは「血虚」や「邪熱」が解決して、どちらか一方のみの問題になった時、
あるいは「陰虚」や「気虚」「陽虚」「湿熱」「湿痰」などの、肝血虚や邪熱とは別の病理が主になった時には、サッと方剤をチェンジ(変方)しないと、
効かない、あるいは悪化する、という流れになるのは自明です。
(または、そもそも最初からこういう診立て自体が出来ておらず、病名や症状のみからテキトーに処方したのであれば、最初からいきなり悪化することもありえます。)
まあ、臨床上よく見かけるのは、四物湯の成分が中焦を余計に重たくしたり、黄連解毒湯の成分が脾気や腎気を奪ったり、裏の水滞がきつくなって、
肌膚に津液が行き渡らなくなり、そのせいで見かけ上は余計に皮膚が乾燥して悪化したり、というようなケースが多いように思います。
(熱が取れるはずが、余計に皮膚が乾燥して「なんで??」ってやつね。)
病気、それも慢性で難治性の病気となれば、こういう、その時々での変化流転は当たり前なので、鍼灸でも、このような失敗をしないために、初診時にキッチリと問診を取っておき、
治療に来た現時点での「証」のみでなく、現症に至った「病因病理」をキチンと意識しておくことが大事なのです。
とりわけ、皮膚科疾患の場合、中医学でよくいう「皮損弁証」というような、皮膚の状態(乾燥、熱感、発赤、腫脹等々の有無)を意識した診察ももちろん大事ですが、
かといって皮膚の状態「のみ」から診たてただけの、場当たり的な処方、処置は実に危険です。
要は皮膚が「何で」そんな状態になったのか、というメカニズムを考え、時々刻々と変化する患者さんの状態に合わせて、臨機応変に処方、処置を変えていかないと、
とてもついていけません。
アトピーや喘息なんかの場合、そうやって常に先手先手が打てなかったら、普通に負けます。。。(苦笑)
患者さんから、ヤブ医者!ヘタクソ!アホ!ボケ!カス!!です。。。(苦笑)
また、この辺の詳しい話は、山口の村田先生のブログが非常に参考になります。
(膨大な内容ですが、単語で検索ができるので、漢方薬名や病名で色々検索してみて下さい。あっという間に朝になりますよ。(笑))
ドラッグストアで簡単に漢方薬が手に入る昨今、ネットで得た情報から、素人考えでサプリメント感覚で服用して大失敗をしていたり、知ったかぶりの西洋医学のドクターから、
いい加減な処方を繰り返されて、かえって悪化している患者さんを診ると、実に残念な気持ちになります。
東洋医学(鍼灸漢方)は医学ですので、それ専門に何年も、何十年も学び、経験を積んだ先生にしか、本当の意味では使いこなせません。
まずは、せめてそこんところをよくよく理解しましょう。
続く
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2018.02.17
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前回のお話
では続きいきましょう。
◆暈厥の治療
前回書いた通り、こないだ先輩の起こした暈厥は、当日の過ごし方、倒れた際の情報から、「痰濁上擾>血虚」である可能性が高そうだ、という仮説を立てました。
(あくまで仮説です。)
・・・これがもし真であれば、どういう治療があり得るでしょうか。
『症状による中医診断と治療』では、痰濁上擾であれば治療は行気豁痰で、方剤は導痰湯、と出ています。
方剤については、神戸中医学研究会の『中医臨床のための方剤学』によれば、導痰湯は、厳用和(げんようわ 南宋:13世紀)の『済生方』に出て来る方剤で、
半夏・天南星・枳実・茯苓・陳皮・炙甘草・生姜を含むもので、清代、程国彭(ていこくほう)の『医学心悟』に出てくる、有名な半夏白朮天麻湯と似た方剤なんですが、
天南星と枳実によって、痰に対する去痰効果は強く、脾虚に対する配慮は薄いものと言えます。
因みに天南星はサトイモの仲間、枳実はミカンの仲間です。
身近!!(゚∀゚)
・・・ですので、この場合、背後に一定の血虚があった可能性が高いので、導痰湯よりも半夏白朮天麻湯の方がいいのかもしれません。
また、同書には、血虚の場合の治療は生脈散か人参養栄湯、と出てきます。
生脈散は、金元の四大医家の一人である李東垣(りとうえん 1180-1251)の『内外傷弁惑論』に出て来る方剤で、麦門冬・人参・五味子が入っており、
気陰を補って脈を生じる、という意味でこの名前がついているようです。
これは思いっきり補(扶正)に寄せた薬で、今回のように実が中心の場合は、あまり適さないと思います。
人参養栄湯は宋代の『和剤局方』に出て来る方剤で、人参・桂枝・地黄・茯苓・白朮・黄耆・当帰・芍薬・甘草・遠志・五味子・陳皮の入ったもので、
有名な十全大補湯を少しアレンジして、心の臓や肺の臓にも効くように調整された薬だそうです。
肺・大腸 参照
まあこれも、思いっきり補法に寄せた薬なので、今回のような実が中心の場合には適さないと思います。
・・・そう考えてくると、ここに挙げた薬の中では、半夏白朮天麻湯が一番いいのかな、と読めます。
まあ僕は薬に関しては全くの門外漢なので、この辺は正直分かりませんが。。。
(詳しい先生、ぜひご意見聞かせて下さい。<m(__)m>)
・・・で、翻ってこれを鍼灸で考えると、色々な経穴が浮かびます。
裏の血虚に配慮しながら、痰濁を取る、これにはどんな方法があるでしょうか。
続く
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2018.01.21
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このシリーズ、ちょっと空きましたが、せっかくなんで、『金匱要略』、現代中医学の内容くらいはカバーしましょうかね。(笑)
◆小建中湯と衄
『金匱要略』「血痺虚勞病脉證并治第六」にこうあります。
「虚勞裏急.悸.衄.腹中痛.夢失精.四肢痠疼.手足煩熱.咽乾口燥.小建中湯主之.」
簡単に訳しますと、
「正気の弱りが中心の病で、動悸、鼻血、腹痛、夢精、四肢のだるさや痛み、手足のほてり、口やのどの渇きがあるものは、小建中湯がいいよ。」
となります。
ここで、「小建中湯」という薬は、「麦飯」ってどうでしょう?? 7でチラッと紹介しましたが、有名な「桂枝湯」の中の芍薬という生薬の量を倍にし(桂枝芍薬湯)、
そこにさらに膠飴(こうい:水あめのこと)を加えたものです。
僕も飲んだことがありますが、非常にスッキリと甘くておいしい漢方薬です。(笑)
ここで説かれているのはそもそも虚労の病ですから、体力を回復させる必要があります。
しかし、ここで面白いのは、正気の弱りが本質だとしても、腹痛のような冷えっぽい症状と、鼻血や火照りなどの熱っぽい症状が混在していて、
それを同時に調整するのに小建中湯を使うところです。
だいぶ昔に書きましたが、脾胃は上下や陰陽のバランサーとしての機能があります。
脾・胃 参照
「建中」というくらいで中焦の気を建てることで、バランサー機能を発揮する。
鍼でも非常に色々なやり方で治すことが出来ます。
生理と病理が分かると、大変楽しい世界です。
続く
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2017.09.05
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9.3の日曜日は、(一社)北辰会エキスパートコースに参加してきました!!
(てゆーか喋ってきました!!)
今回は久々の1日座学。
午前中は北辰会の漢方医である竹本喜典先生、鍼灸師で薬剤師、北辰会の特別専門講師である島内薫先生による方剤学講義。
(まあお二方とも、とんでもない勉強量の先生です。( ゚Д゚))
メインテーマは「芍薬」と「肝の臓」です。
「立てば芍薬、座れば牡丹」の言葉で有名な芍薬。
実に色々な漢方に入っている生薬です。
この芍薬周辺の知識を、十分すぎる内容で解説して下さいました。
まあ鍼灸師としては、さあ鍼で「肝の臓」を動かそうとして鍼をするときに、「芍薬的な効果」を意識して鍼をするかどうか、って話です。
(その際に、方剤名や傷寒論の条文まで浮かんでいる先生は少ないと思いますが。。)
まあエキスパートコースですから、基本的なことは理解している人を対象とした内容だったので、漢方薬の勉強をしたことがない人にとっては少しキツかったかもしれませんが、
大変わかりやすい講義でした。
竹本先生の講義に熱が入り過ぎて、島内先生の補足時間が10分になってしまいましたが、あの短時間に
「サスガ!」
と唸ってしまうような素晴らしい補足でした。
午後一は、9月の日本中医学会、10月の日本伝統鍼灸学会で発表させていただく、不肖私の2症例を、本番と同じ発表時間で発表させていただきました。
本番では質疑応答の時間は3分程度なんですが、今回は1症例あたり30分程度お時間をいただき、少しだけではありますが、検討することが出来ました。
因みに竹本先生から再生不良性貧血、辺縁前置胎盤の西洋医学的解説もしていただき、大先輩である佐野先生、奥村先生が過去に色々な学会で発表してこられた、
アトピー性皮膚炎の症例集積の話もすることが出来ました。
まあ、まずまず満足かな。
次は奥村先生の発表「日本における中医鍼灸の受容と役割」。
奥村先生はもはや25年以上、北辰会不動の学術部長で、相変わらずの、圧倒的知識量です。
今回の症例でも、まとめていく過程の中で、竹本先生、佐野先生とともに、かなりお世話になりました。
最後は藤本新風先生による、10月の伝統鍼灸学会で行う発表内容の講義と実技。
ちゃっかり鍼してもらっちった☆
(そしてよく効いた(゚∀゚))
今回、こないだのカゼがまだ完璧ではなかったんですが、まずまず、事なきを得たと言っていいんじゃないでしょうかね。
ふいー、後は本番。
いったん休んで、また集中します。
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2017.07.09
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これまでのお話
では続きいきます!!
◆もち米、東洋医学的にはどうか。
これまで書いてきたように、もち米のことを東洋医学では「糯米(だべい)」と呼びます。
糯米は、古くは単に「稲(イネ)」と呼ばれ、春秋戦国時代には、かの孔子が食養生に薦めたことで有名なようです。
そして、糯米の根やとぎ汁、ぬか、発芽した糯米にもそれぞれ薬効があると考えられており、重視されてきました。
ただ、前回述べたように、糯米は粘りが強く、消化に負荷がかかるため、小児や老人等、消化機能の低下した人には常食はあまりお勧めできません。
常食すると動悸、皮膚炎、眠気、酒とともに摂ると酔いが抜けにくくなるなどと、僕の好きな李時珍先生の『本草綱目』に書いてあります。
(上記の症状への解釈はまあ、熱化する、脾胃をいためる、というほどでいいんじゃないでしょうか。)
性味は温で甘、苦、臓腑では脾肺を養うといわれ、効能としては補中益気、温中止痢、止消渇、止汗とあります。
(肺を養うのが意外な気がしますが、経絡や東洋医学的な肺の生理を知っていると、なるほど、と分かります。)
脾虚による慢性の下利や脱肛、軽い貧血なんかには、お粥にして摂るといいようです。
(ただし、陰虚内熱型にはダメですよ☆)
温性であるため、内熱や陰虚のきつい人が食べてしまうと、状態を悪化させる恐れがありますね。
現代の研究では白濁尿の原因であるフィラリアや象皮病の原因であるマレー糸状虫(いずれも寄生虫の一種)に効くとか。
ちなみに、有名な漢方薬である「小建中湯」に含まれる重要な生薬である「膠飴(こうい)」、つまり水あめの原料は糯米粉(あるいは粳米粉や小麦粉)であり、
糯米から作った膠飴が一番いい、といわれているようです。
(温性、粘り気の観点で、他をリードしているのでしょう。)
桂枝湯の中の芍薬を倍にしたら桂枝加芍薬湯、それに膠飴(水あめ)を加えたら小建中湯、という、『傷寒論』を勉強していると良く出てくる言い回しがありますが、
膠飴は中焦と肺を温め潤しつつ、症状を緩和し、一部の毒を解毒してくれるわけですね。
続く
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2015.06.15
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これまでのお話
「四逆散」というお薬
「四逆散」というお薬 2
「四逆散」というお薬 3
「四逆散」というお薬 4
「四逆散」というお薬 5
「四逆散」というお薬 6
「四逆散」というお薬 7 参照
さて、今日ももう一人いきましょう。
・・・まあ、こんなことやってるとキリがないんだけど(笑)、いい機会なんで、僕が注目してる漢方家の紹介がてら、どんどんいきましょう。
今日は藤平健(ふじひらけん 1914-1997)先生です。
この先生も、昭和の漢方を支えた一人です。
藤平先生は、四国(香川県丸亀市)出身の先生であり、実は「四逆散」というお薬 5で紹介した奥田謙蔵先生のお弟子さんです。
大学生の頃に脊椎カリエスに罹り、それを奥田先生の漢方で治してもらったことから、弟子入りしたようですが、その後の活躍をみると、師匠に負けない、スゴイお弟子さんだと思います。
なんかこう、本を読んでいても、奥田先生と藤平先生からは、優しいというか、心が広いというか、大らかというか、そういう雰囲気を感じます。
(湯本求真先生の反動なんでしょうかね。。。分かりませんが。(笑))
まあともかく、藤平先生の『傷寒論演習』には、
「四逆散は少陰病のところに書いてあるけど、実際は少陽病の薬で、使い方は大柴胡湯と小柴胡湯の中間あたりと考えていたが、使っていくうちにもっと虚証よりだと思うようになったよー。」
と述べ、
「傷寒論の条文には書いていないが、先輩方の言う通り、ノイローゼなどの精神科疾患に良いと考え、使い方としては、細かい症状よりも、腹診が重要だよー。」
と述べ、
「全体の腹力(腹部の緊張)が中等度、胸脇苦満(肋骨下の緊張)が”左右差なく”中等度、心下痞鞕(みぞおちの緊張)が中等度、腹直筋の緊張が強い、
これらが揃えば、四逆散の腹と考えていいよー。」
と述べ、お弟子さんとの対話の中で、
「四逆散には水を捌く生薬は入っておらず、この場合の水邪は二次的なものと考えていいよー。」
とし、真武湯との鑑別や、芍薬甘草湯との違いに注目しているようです。
(抜粋意訳 by竹下)
因みに個人的には最後の部分、重要かな、と思います。
真武湯、四逆湯とだけでなく、芍薬甘草湯と四逆散を比較するのは、四逆散が、芍薬甘草湯に柴胡・枳実を入れた方剤、とみることも出来るからですね。
〇
・・・とまあ、全体としてはそんなに個性的なことは言っていないが、大塚敬節先生、矢数道明先生と同じく、腹診に着眼したことと、四逆散の胸脇苦満には左右差が無いとか、
自身の経験から、独特の見解も少し述べておられます。
大塚先生、矢数先生の見解については、
個人的には、少陽病の薬であるにもかかわらず、左右差が出ない、ということを強調しておられるのは、面白いなあ、と思ったりします。
あくまでも少陽「経」ではなく、内外の不和だ、というメッセージなんでしょうかね。
(単に経験則かもしれませんが、クリニカルパールではないかと思います。)
「四逆散」というお薬 9 に続く
〇
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2015.06.08
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こないだ、
和田東郭という人物
という記事を書きました。
そこに出てきた、有名なお薬である「四逆散」。
今日はこの薬について、まとめておきます。
四逆散が歴史上に初めて登場したのは『傷寒論』です。
ここに、柴胡、芍薬、枳実、甘草という4種類の生薬を配合した漢方薬として登場します。
『傷寒雑病論』【弁少陰病脉証并治 328条】
少陰病.四逆.其人或欬.或悸.或小便不利.或腹中痛.或泄利下重者.四逆散主之.
効能は上記にある通りなんですが(笑)、まあ簡単にいうと、カゼをこじらせたやつで、手足がキンキンに冷えて、咳したり、動悸がしたり、小便が出にくかったり、
腹痛があったり、下痢したり、渋り腹(しきりに便意を催すのに排便が ごく少量で、すぐまた行きたくなる症状のこと。)だったりする者は、
四逆散を飲むとバッチリ治るよ、と書いてあります。
四逆散の”四逆”というのは”四肢逆冷”の略といわれ、手足が非常に冷える症状のことを言っています。
ここで重要なのは、病的な冷えには大きく分けると2種類あって、
1.温める力自体がないもの(陽虚、気虚など)
2.温める力はあっても、何らかの阻害要因があり、それが万遍なく全身に及ばないもの(陰邪を中心とした邪気実によるものや気滞など)
が考えられる、ということです。
四逆散の場合の手足の冷えは、2.の場合なんです。
これについて、和田東郭先生は、
「四逆散というのは、大柴胡湯の応用バージョンです。
腹はみぞおちとか肋骨の下の部分が張って、その凝りが胸にも及ぶ位のもので、両わき腹も強く張るもの。
でも熱実じゃないから大黄、黄芩は使わず、ただみぞおちとか、両肋骨下を緩めることを主とする薬だよ。
全体の腹形、みぞおち、肋骨下の状態をよく診て、それらに悪い反応があって、なおかつ手足がキンキンに冷えるものは、
この薬にて治すといいよー。
本当に温める力が無くなった、重篤な四肢の冷えとは、脈も腹なども、全然違うよーん。」
(『蕉窓方意解』より抜粋意訳 by竹下)
と、述べておられ、また症例として、
「ある女性が、産後、意識もうろうとする症状が出た。
色々あん摩や薬などを試したけど治らない。
診るとみぞおちから肋骨の下から脇腹まで、キツク張って、強くこれを押しても弾力が無く、動悸もなにもなく、吐きそうになる感じという。
その人に、四逆散に生地黄、紅花を加えて飲ませてみたら著効したよん。
この紅花、生地黄は、瘀血に対して使ったのではなく、甘味の四逆散に組み合わせて、肝火の上逆を潤し緩める狙いで使ったよーん。」
『蕉窓雑話』より抜粋意訳 by竹下
とも述べて、四逆散の応用的な使い方も示してくれています。
「四逆散」というお薬 2 に続く。
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