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ドライヤーやファンヒーターから出てくる熱風や、クーラーから出てくる冷風は、外邪たりうるか。
答えは「たりうる」。
(と思っています。)
しかしそれはあくまでも、外邪として感受すれば、の話だ。
こういった空調機器、冷暖房すべてが人体に害になる訳では無い。
むしろ益になることが多いから、これだけ普及している訳で。
今の時期、風呂上りに脱衣所が寒いところで、濡れ髪のままにしていたら、その方が外邪としての寒邪、寒湿邪を受ける。
ドライヤーでしっかりと乾かすこと、湯冷めしないように気を付けることで、外邪としての侵襲をかなり回避できる。
この場合は、ドライヤーの熱風は「生理的陽気」を扶助する役割を果たす。
また、ドライヤーを当てたら悪化した、イコール風熱邪を感受した、と即断するのも違う。
体表面(経絡経筋、皮毛レベル)の急激な温度変化から、気(主に衛気)の停滞を起こした、というケースもある。
もともと上熱下寒傾向のある人であれば、ドライヤーを使うと逆上せると仰る人もいる。
何でも
「どういう体質素因の人に」
「どういう刺激(条件)が加わり」
「結果的に何が起こったのか」
をしっかりと聴取し、考えうる可能性を絞り込み、なおかつ現時点での体表情報と合わせて、動かぬ証拠をつかまえた上で、臨機応変に考えるのが、弁証論治の世界。
杓子定規的にやったら、必ず間違う。
2019.04.05
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昨日、「牛車腎気丸」という薬という記事を書きました。
その時に、もう一種類、「治打撲一方」という薬の話にもなりました。
これはどうか。
これは実は、以前紹介した江戸期の医家、香川修庵先生(1683-1755)の創方だそうです。
墓マイラー 9 参照
ですが、真柳誠先生の研究によれば、「治打撲一方」という”名前で”文献に登場するのは、あの幕末から明治の漢方医、浅田宗伯先生(1815-1894)の
『勿誤薬室方函口訣(ふつごやくしつほうかんくけつ)』だそうで、ということは、この薬の名付け親は浅田宗伯になるそうです。
・・・まあ、個人的にはどっちでもいいんですが。(゚∀゚)
この薬の中に含まれる川骨(せんこつ)、樸樕(ぼくそく)という、活血化瘀の効果を持つ生薬は、呼び名からして日本独特であり、中国の処方に含まれることはないそうで、
そういう意味でもまさに日本製の漢方薬だそうです。
(もともとは戦国時代に傷や怪我を治療する秘伝の薬だったのを、香川先生がまとめたんだとか。)
(中国では川骨のことは萍蓬(ヘイホウ、コウホネ、カワホネ)というらしいが、『中医臨床のための中薬学』には載っていませんでした。。)
「治打撲一方」は、昭和になって、一貫堂の山本巌先生が紹介したことで、よく使われるようになった経緯があるそうです。
(今ではツムラのエキス剤になっています。)
これは中医学では血の流れを調える「理血剤」のグループであり、その中でも停滞した瘀血を取る「活血祛瘀剤」のグループで、その名の通り、
打撲や捻挫を治療する薬なんですが、応用的に骨折の後遺症などにも使われるようです。
さらに応用的には、経絡経筋が冷えて、瘀血が停滞した痛みなんかにも使われるそうです。
・・・ということは、外傷はともかくとして、気滞血瘀や瘀血性の疼痛に応用するには、
「経絡経筋に冷えがあり、気が停滞し、血も停滞している」
ということが診断できないとマズい、ということになります。
また、これを適切に運用するには、同じグループの有名な薬であり、現代でもよく使われる
「桃核承気湯」「血府逐瘀湯」「桂枝茯苓丸」「大黄䗪蟲丸」「温経湯」「抵当湯」
なんかとの使い分けができる能力が要求されるはずです。
まあ、治打撲一方に限って言えば、熱邪や湿邪の関与する痛みだったり、気虚や陽虚が関与するものに使ったらドボン、ということでしょうか。
漢方薬というのは、もちろんながら、東洋医学の生命観、疾病観に立脚して考案されたものです。
ここを無視して使用されているような現実があることは、実に残念に感じます。
〇
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2010.09.25
3日前はカンカン照りで、鬼のように暑かったです。
しかしおとといはドシャ降りの雨で突然寒かったです。
(前日との気温差10℃以上!!)
そして昨日は風が強く、メチャクチャ寒かったです。
そしてそして今日は、昨日の夜中からの雨で、朝非常に寒く、しかし昼ごろにはウソのように晴れて、今度はムシ暑かったです・・・。
・・・一体何なんだ!?この天気の感じ!?
患者さんの中にはサスガに風邪をひいてしまわれる方も何人かいました。
この3日間のような、
「急激な温度差や湿度差」
というものが、人間の体に与える影響は絶大です。
こういう時、人体には「東洋医学的に」どのような現象が起こっているんでしょうか?
まず「気温差」ですが、これは
1.急激に下がるパターンと、
2.急激に上がるパターン
の2つしかないですよね?
1.の場合は、「寒邪(かんじゃ)」という邪気に入られやすくなります。
2.の場合はその逆で、「熱邪(ねつじゃ)」という邪気に入られやすくなります。
次に湿度ですが、こちらも基本的には、
A.急激にむしてくるパターンと、
B.急激に乾燥してくるパターン
の2つしかないですよね?
これも、A.の場合は「湿邪(しつじゃ)」という邪気に侵されやすくなります。
B.の場合は「燥邪(そうじゃ)」という邪気に侵されやすくなります。
・・・まあここまでは、単純明快ですよね?
しかし実際は、これらがいくつか複合的に起こったり、もともとのその患者さんの体の状況によって、症状の出方や程度が大きく異なりますので、
治療する上では的確に分析せねばなりません。
こういった自然界の急激な変動、というのは、よく人間の「治る力」を阻害します。
「養生(ようじょう)」の迅速さ、的確さが要求される場面であります。
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2010.01.20
前回は、「寒燥」についてのお話をしました。
今回はその逆の「湿熱(しつねつ)」について書いてみようと思います。
最近の気候は、前回述べたように、まさに「寒燥」という感じであります。
それとまったく逆なので、時期外れのように感じますが、日々、患者さんを診ていますと、今の「寒燥」の時期であっても、この「湿熱」という邪気が問題になることがあります。
・・・コレ、なぜでしょうか?
これは、現代の食生活と、発達した空調機器に、問題の中心があるのではないかと愚考しています。
◆「湿」について
「湿邪(しつじゃ)」というのは、外界では湿度の高さ、人体内では水分の停滞が過剰に存在することで、人体に病的な異常を起こす「邪気」の一つであり、
性質の上から「陰邪」に分類されます。
つまり、「湿邪」というのは、平た~く言うと、
「余分なお水」
を意味しますので、単純に水分(お酒も含む)の摂り過ぎ、あるいは食べすぎで胃腸が弱った場合にも、水分がうまく捌けなくなって、結果として体内に「湿邪」が生じます。
体外の「余分なお水」は、というと梅雨時期や夏場のムシムシ、ジメジメした時期に湿度が高くなる、まさにあれのことです。
(もちろんそれが人体に悪影響を及ぼした時に、”湿邪”という邪気として認識する訳ですね)
◆「熱」について
それに対して「熱邪(ねつじゃ)」というのは性質的には「陽邪」に分類され、からだの内外に存在する”余分な熱”のことを言います。
ここで勘違いしてほしくないのは、現代人は「熱」と聞けばすぐ体温の「発熱」を想像しますが、東洋医学の言う「熱」というのはそれだけではなく、
ある種の咽喉の渇きや便秘、過食傾向、またカゼや感染症の原因などになるもの(邪気)として「熱邪」というものを位置づけています。
こういう、東洋医学と西洋医学の概念の混同が、東洋医学が正確に理解されにくい原因の一つだったりします。
前もこんなようなこと言ったかもしんないけど、カゼひいて熱がある人をみた時に、「すごい熱だね~」ではなく、
「体温がHOTだね~。」
とか、
「HEATだね~。」
とか言ってくれれば、混同されにくいのにな~・・と思います。(笑)
体外の「熱邪」は、というと、夏場の暑い時期や、冬場でも過剰な暖房などで不快なほど熱すぎる状況の時に、人体に悪影響を及ぼした時に「熱邪」と考えます。
(分かりやすく言うとね。)
この2つ、「湿邪」と「熱邪」が合体したものを、東洋医学では「湿熱の邪気」と呼び、「寒燥」と同じように、陰邪と陽邪ががうまいことバランスをとっている、邪気の中でも「手強い奴」な訳です。
現代は、外が寒くて乾燥していれば、家の中は暖房と加湿器を使って快適を得ようとします。
しかしやりすぎれば、秋冬なのに「ムシ熱い室内」になってしまいかねません。
そうなれば「寒燥」ではなく、季節外れの「湿熱」の病になりやすくなります。
また冬場は、寒いからと、あまり外に出歩くことも少ない人が多く、運動不足になりやすく、忘年会や新年会などで、暴飲暴食、過食傾向になりやすいです。
こうなると胃腸は弱り、水分が捌き切れず、体内に余分なお水である「湿邪」が増えます。
さらに、汗もかきにくい時期ですので、体内の余分な「熱邪」を汗によってうまく排出(発散)することも出来ず、結果、体内に「湿熱の邪気」が生じてしまう場合があります。
こうして現代では、冬場なのに「湿熱」の病が問題になることがある訳です。
「湿熱」については、大変面白い部分でもありますので、もっと細かく書こうかなとも思うのですが、時期的に梅雨時期とかの方が実感しやすいかな、
と思うので、その頃になったら、また詳しく述べてみようかなー、と思っています。
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