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2010.01.20
前回は、「寒燥」についてのお話をしました。
今回はその逆の「湿熱(しつねつ)」について書いてみようと思います。
最近の気候は、前回述べたように、まさに「寒燥」という感じであります。
それとまったく逆なので、時期外れのように感じますが、日々、患者さんを診ていますと、今の「寒燥」の時期であっても、この「湿熱」という邪気が問題になることがあります。
・・・コレ、なぜでしょうか?
これは、現代の食生活と、発達した空調機器に、問題の中心があるのではないかと愚考しています。
◆「湿」について
「湿邪(しつじゃ)」というのは、外界では湿度の高さ、人体内では水分の停滞が過剰に存在することで、人体に病的な異常を起こす「邪気」の一つであり、
性質の上から「陰邪」に分類されます。
つまり、「湿邪」というのは、平た~く言うと、
「余分なお水」
を意味しますので、単純に水分(お酒も含む)の摂り過ぎ、あるいは食べすぎで胃腸が弱った場合にも、水分がうまく捌けなくなって、結果として体内に「湿邪」が生じます。
体外の「余分なお水」は、というと梅雨時期や夏場のムシムシ、ジメジメした時期に湿度が高くなる、まさにあれのことです。
(もちろんそれが人体に悪影響を及ぼした時に、”湿邪”という邪気として認識する訳ですね)
◆「熱」について
それに対して「熱邪(ねつじゃ)」というのは性質的には「陽邪」に分類され、からだの内外に存在する”余分な熱”のことを言います。
ここで勘違いしてほしくないのは、現代人は「熱」と聞けばすぐ体温の「発熱」を想像しますが、東洋医学の言う「熱」というのはそれだけではなく、
ある種の咽喉の渇きや便秘、過食傾向、またカゼや感染症の原因などになるもの(邪気)として「熱邪」というものを位置づけています。
こういう、東洋医学と西洋医学の概念の混同が、東洋医学が正確に理解されにくい原因の一つだったりします。
前もこんなようなこと言ったかもしんないけど、カゼひいて熱がある人をみた時に、「すごい熱だね~」ではなく、
「体温がHOTだね~。」
とか、
「HEATだね~。」
とか言ってくれれば、混同されにくいのにな~・・と思います。(笑)
体外の「熱邪」は、というと、夏場の暑い時期や、冬場でも過剰な暖房などで不快なほど熱すぎる状況の時に、人体に悪影響を及ぼした時に「熱邪」と考えます。
(分かりやすく言うとね。)
この2つ、「湿邪」と「熱邪」が合体したものを、東洋医学では「湿熱の邪気」と呼び、「寒燥」と同じように、陰邪と陽邪ががうまいことバランスをとっている、邪気の中でも「手強い奴」な訳です。
現代は、外が寒くて乾燥していれば、家の中は暖房と加湿器を使って快適を得ようとします。
しかしやりすぎれば、秋冬なのに「ムシ熱い室内」になってしまいかねません。
そうなれば「寒燥」ではなく、季節外れの「湿熱」の病になりやすくなります。
また冬場は、寒いからと、あまり外に出歩くことも少ない人が多く、運動不足になりやすく、忘年会や新年会などで、暴飲暴食、過食傾向になりやすいです。
こうなると胃腸は弱り、水分が捌き切れず、体内に余分なお水である「湿邪」が増えます。
さらに、汗もかきにくい時期ですので、体内の余分な「熱邪」を汗によってうまく排出(発散)することも出来ず、結果、体内に「湿熱の邪気」が生じてしまう場合があります。
こうして現代では、冬場なのに「湿熱」の病が問題になることがある訳です。
「湿熱」については、大変面白い部分でもありますので、もっと細かく書こうかなとも思うのですが、時期的に梅雨時期とかの方が実感しやすいかな、
と思うので、その頃になったら、また詳しく述べてみようかなー、と思っています。
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2023.05.12
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2023年5月8日(月)から、新型コロナウイルス感染症は5類に変更となりました。
5類になったことで、この3年間の騒動も、ようやく一つの節目を迎えた、と言って良いでしょう。
この3年間で、職を失い、生活が全く変わってしまった人、また、感染してしまったことで、お身内や近しい方が亡くなってしまった、という方など、無数の悲しみと不幸が、世界中を襲いましたね。
コロナ以前の当たり前が、当たり前でなかった、ということを嫌というほど思い知らされた3年間だったと思いますし、現在もなお、後遺症で苦しんでいる方が多数おられることと思います。
ですので、5類になったと言っても、なーんかこう、スッキリ!という感じはないですよね。。。
またすぐに新しい感染症のパンデミックが起こる可能性だってありますし、地震などの天災も、不穏なペースで続いていますし、戦争のこともありますから、
まだまだ慎重に、様子を見つつ、徐々に元の生活に戻していこう、というフェイズに入った、というくらいの感じですね。
ところで、たまに聞かれるのでここに書いておきますが、清明院でのコロナ後遺症対応ですが、2020年の段階から、普通にやっております。
(当たり前のことと考え、特に宣伝もしてきませんでした。苦笑)
個人的には、2020年の秋に、第10回、日本中医薬学会学術大会にて「COVID-19 治癒後の諸症状の⼀症例」と題して、症例発表をさせて頂きました。
これは恐らく、日本で最初の、コロナ後遺症を鍼灸のみで扱った症例の、学会発表だったであろうと思います。
コロナ後遺症に関しては、もちろんその後もチョイチョイ、相談されては診ておりまして、いずれも非常に効果的だなあ、という印象を持っております。
・・・というわけで、いくつかの症例を、ここに簡単に紹介しておきます。
◆症例1 50代女性
主訴:全身倦怠感、嗅覚障害、味覚障害、痰
他院の鍼灸師からの紹介
コロナ感染以前からあった倦怠感が、コロナ感染で増悪し、その他の症状も出現し、改善しない。
「肝鬱腎虚」と弁証し、初回治療後、長時間睡眠。数回の治療で改善。
◆症例2 30代男性
主訴:記憶障害、集中力低下、浅眠、頭痛、抑鬱感、倦怠感、胸痛、下痢、腹痛、動悸、唇の荒れ
HPを見て来院
コロナ感染後、諸症状が出現し、無理して仕事を続けて、さらに悪化した。他院の漢方薬で少し改善するも、改善しきらない。
「湿熱中阻>肺腎陰虚」と弁証し、1回の治療で大幅に改善。
◆症例3 40代男性
主訴:関節痛、筋肉痛、下痢、脱毛
清明院患者の紹介
コロナ感染後、脱毛の症状が出る。その1か月後にワクチン接種後、それまでになかった症状が出現。
「肝脾鬱結≧心血不足」と弁証し、5回の治療で大幅に改善。
◆症例4 30代男性
主訴:集中力低下、頭痛、倦怠感、息苦しさ、胸痛、脱毛、動悸
清明院患者の紹介
コロナ感染後、多様な症状が出現。休職を余儀なくされた。
「湿困脾土≧心肝気鬱」と弁証し、6回の治療で職場復帰、15回ほどの治療でほぼ回復する。
◆症例5 30代女性
主訴:嗅覚消失
鍼灸師からの紹介
コロナ感染後、嗅覚が消失。
「肝気犯肺(魄気の異常)」と弁証し、1回で好転。10回ほどの治療でほぼ回復する。
・・・とまあこんな感じですが、挙げていったらキリがない感じです。
(因みに、当院の新規の患者さんのほとんどは、既存の患者さんか、鍼灸師や医師の先生方からの紹介です。(感謝合掌))
ここで強調しておきたいのは、当院では、「コロナ後遺症だから〇〇穴」とか、「コロナ後遺症だから〇〇証」などといった固定的、画一的な考え方は用いず、
あくまでも一例一例において、「その患者さんに」何が起こったのかを東洋医学的に分析、理解して治療に当たっている、ということです。
また最近では、コロナワクチン接種後に起こった、原因不明の体調不良がなかなか改善しない、という患者さんも多数見えており、こちらに関しても、鍼灸治療は非常に有効である、という印象を持っております。
今後も、国の方針としてワクチン接種は続けるのでしょうし、コロナに感染してしまって、後遺症に悩まれる患者さんもおられることでしょうから、これからもコロナ後遺症や、ワクチン接種後の体調不良の対応には、
「日本の医療の番外地」である路地裏の零細鍼灸院として、力を入れていきたいと思っています。笑
2022.06.17
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6.5(日)の朝に行われた、(一社)北辰会会員限定企画である古典ライブ講義を視聴しました!!
今回も岡本一抱(1655-1716)の『万病回春病因指南』を題材に、「嘔吐・翻胃(おうと・ほんい)」というテーマでの講義でした。
これねー、意外と多いんです。
特に若い人で。
最近も、消化器内科の先生から、比較的若い患者さんの「FD(Functional dyspepsia 機能性ディスペプシア)」の患者さんを紹介して頂き、何例か診ているところです。
実は僕自身も、20代のある時期に、一過性でしたが、嘔吐癖のようなものがついてしまったことがあって、以前はお酒を飲んでも相当飲まなければ吐くことはなかったのですが、
少し飲んだだけで吐くようになり、酒を飲んでいなくても常に悪心があるような状態となり、結構苦労した思い出があります。苦笑
また、患者さんでは、もう10年以上前ですが、すい臓がんの末期の患者さんで、亡くなる寸前まで診させてもらった患者さんでしたが、最後はもう黄疸が出て、嘔吐が止まらず、
吸い飲みの水や、自分の唾液を少し飲んだだけでも真っ黄色の胆汁まで吐いてしまい、非常に可哀想だったのをよく覚えています。
(まさに今回の講義で言う”翻胃”、”上膈”の病の状況だったんでしょうね。)
このように、軽症から重症まで、非常に様々な思い出がよぎる嘔吐ですが、今回の講義では「胃の冷え」に注目しつつ、「脾胃は寒熱の偏りを嫌う」ことに着眼せよ、という内容で、非常に参考になりました。
具体的には、嘔吐を治す時に、もし胃の冷えが原因のものであれば、生薬では生姜や山椒が重要になるということです。
酒ばっか飲んで嘔吐する人に、乾姜を使うことが重要とは、湿熱や湿痰を攻下する事ばかりを考えていた、20代の頃の僕にはほとんどない視点でしたね。笑
(・・・あの当時、とある有名な漢方の先生が、僕に対して温剤を処方した意味が、少し分かりました。)
まあ、平たく言えば、吐くことによって邪気を排出する側面と、吐くことによって正気が傷られる側面があり、そのバランスをよく考え、かつ、吐くことの原因を慎重に追及しないと、なかなか治らないよ、ってことですね。
あとは、酒飲んだら、基本的には運動と利尿が重要で、むやみに下したらいけないよ、とか、奥村先生が以前から盛んに研究されている「膜原」に対する理解、というのも、重要な指摘ですね。
やはり膈膜ライン、帯脈ライン、その中心にある胃土エリアは重要だ、というところに行き着きますね。
また、今回も奥村先生の古典研究の精緻さが光っており、日本の江戸期の古典の中に引用されている、中国の古典にさらに当たって、その文章の内容の違いから、
各時代、各国の先生方の考えを類推するという、ベーシックだけど非常に重要な研究方法で、いつもながら、頭が下がる思いがしました。
こうやって、臨床上よくある症状でも、歴史を掘り下げると、非常に奥が深いことがよく分かりますね。
なお、本ライブ配信は北辰会会員限定企画です。
これを機に入会の方はこちらからぜひ!!
2019.12.26
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今日、患者さんが仰った。
「朝、錠剤が飲みにくくて。。。」
と。
私が、
「あれ、錠剤なんて飲んでましたっけ??」
と問うと、
「いやあ、若い頃からたまに陀羅尼助(だらにすけ)を。。。」
と仰る。
まあ当たり前だが、こういう民間薬は、バカにならない。
歴史の風雪に耐えてきた意味、民間伝承の重みがある。
陀羅尼助丸をググると、主に奈良に伝わる伝統的民間薬だそうです。
1300年前、修験道の開祖である役行者(えんのぎょうじゃ)が疫病のために作ったとされる薬だとか。(゜o゜)
主成分は黄蘗(おうばく:ミカン科キハダの樹皮)。
他にゲンノショウコ、センブリ、ゲンチアナ、エンメイソウなどが含まれるという。
黄蘗は清熱の効が強く、有名な梔子蘗皮湯や黄連解毒湯に含まれ、湿熱によく使いますので、暴飲暴食、二日酔いによく使われる傾向があるという印象を持っています。
陀羅尼助丸は一般的には穏やかな胃腸薬として知られています。
おそらく、今日の治療で、明日の朝の陀羅尼助丸は飲み込みやすくなり、排便後、舌の暗紅と白厚膩苔は取れると思います。
伝統民間薬とコラボ。(^^)
〇
2019.05.28
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5.26の日曜日は、高田馬場で行われた(一社)北辰会定例会東京会場に参加してきました!!
今回は朝から実技訓練「脈診・望診・取穴」。
先月と同じテーマでしたが、望診に爪甲診を入れ、取穴のテーマを前回の瘀血から湿熱、湿痰に変えて、蠡溝と豊隆に変更しました。
・・・まあ何と言っても、まずは
の熟読から始まります。
(文字クリックで購入ページへ)
当たり前ですが、学術習得にはそれなりの時間、かかります。
学んですぐに出来るような浅薄なものではない。
でもそれだけ奥が深く、使いこなせるようになれば、素晴らしい世界が待っています。
ですので、たまに勘違いしているアンポンタンがいるけど、「難しいのが売り」というワケではない。
「難しくて高度で、でも素晴らしい世界を、誰でもが共有出来る、分かりやすい理論の次元に落とし込んで、それを時間をかけてじっくりと勉強している」ワケであります。
せっかく、良く晴れた爽やかな日曜日を潰して勉強に来たんですから、頑張って欲しいと思いますね。
午後は関東では久しぶりの「症例レポート」です。
今回は「伝統鍼灸 心月院」院長、坂井祐太先生による「健忘の一症例」です。
「健忘」などという症状を主訴として患者さんが来院するというのも、北辰会方式の鍼灸のいいところでありますね。
本来の伝統的な鍼灸医学というのは、全科疾患を治療してきました。
今回はフロアからたくさんの質問が出て、大変盛り上がりましたね。
たった一症例を、あらゆる角度からナンボでも深めることが出来る、これも北辰会方式の長所ですね。
終了後は、実は同じ日にお茶の水の順天堂医院で開催されていた「良導絡自律神経学会 東日本支部」の勉強会後の懇親会に参加してきました!!
以前このブログに書きましたが、実はこの日は、大阪から北辰会代表理事である藤本新風先生が見えて、特別講演を行っていました。
こちらも非常に盛り上がったようで、良かったです。
良導絡と北辰会、患者さんに対して、全然違うアプローチの仕方だけど、どちらも効果が出ていることは確か。
和風先生と中谷先生のご縁もあるし、こういったコラボも面白いと思います。(゚∀゚)
懇親会では、良導絡の先生方のアツさ、元気さに触れて、面白かったです。
ご挨拶、名刺交換させていただいた良導絡の先生方、大変ありがとうございました!!<m(__)m>
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2019.02.21
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こないだ、患者さんで、
「生理痛にノニジュースが良いと聞いて、飲むようにしたら痛み止めを使わないでもいられるようになった!」
という人がいらした。
この手の話は、臨床をやっているとゴマンと出会うが、バカにしてはならないと思っています。
(藤本鉄風先生の教えですね。)
・・・今回も、ほう、と思って、少し調べた。
清明院から歩いてすぐのところに、巨大なビルが建っている「ノニ」。
こないだ話題になった「青汁王子」じゃないけど、こういった健康食品産業ってのは、スゴイもんだね。(゜o゜)
新宿にビルが建つなんて、鍼灸院ではとても無理っす☆
10代の頃から、朝から晩まで勉強して、臨床して、休みの日は勉強会行って、やっとこさっとこ学術を身に付けて、それでもやっとこさっとこメシが食えているくらいなのに、
とある健康食品を開発して、上手に宣伝して、通販で全国に売ったら、新宿に巨大なビルが建つ。。。
これが社会の現実です。(;’∀’)
・・・まあいいっす、僕は僕で、大都会新宿の片隅で、コツコツとやります。(`・ω・´)ゞ
さてこの「ノニ」ですが、東南アジアからオーストラリアにかけての太平洋熱帯地域全域に生育する常緑低木または小木だそうです。
日本では沖縄に「ヤエヤマアオキ」という和名の自生種があるそうで、古くから果実や根や茎が薬用に使われてきた歴史があるそうです。
まあ、「ノニ」の効果については、色んなサイトで、色んなこと(効果効能)が実に景気よく書かれています。(苦笑)
・・・でもまあ、こちらのサイト様に書かれているように、科学的根拠は不十分、という、いつものやつではないでしょうか。
ただ、冒頭にも述べたように、「科学的根拠が不十分」だから大したものではない、と即断するのは違う。
因みにノニは、morinda属の植物なんだそうだが、同じmorinda属の植物を使う生薬に「巴戟天(はげきてん)」という生薬があります。
毓麟丸(いくりんがん)、巴戟丸(はげきがん)、金剛丸(こんごうがん)といった、聞きなれない処方に使われるようで、中薬学では「補益薬」のグループで、特に「助陽薬」に分類されます。
(まあ、陽気を補うグループです。)
巴戟天は根っこの部分を使うらしいが、腎陽虚+寒湿邪の女子胞の冷えからくる不妊症や生理痛、生理不順などによく使う生薬だそうで、
ノニもこれと似たような効果が期待できるとすれば、生理痛が取れたというのも納得できる。
しかし、熱帯地域にある植物で、冷えを取るとは。
清熱にいきそうなイメージを持っていましたが、陰虚熱、湿熱には禁忌だそうです。。。
意外とこういう、患者さんのいう、健康食品で奇効が得られたという話が、鍼灸治療や、養生研究の役に立つことがある。
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2019.02.10
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これまでのお話し
参照
◆今回の治療と反省
今回、見事に立春とともに起こった、一連の症状でした。
まず時節柄、内傷としての肝胆の異常は頭に置くべきでしょう。
(決めつけてはイカんけどね)
土曜の食事会での緊張からの緩和、東方医学会での緊張からの緩和、この、「緊張からの緩和」の「緩和」の際に症状が重くなるようなものは、
北辰会では、多くは肝気実型の病変と考えます。
今回は、最初の段階で、それにさらに外邪が絡んでいるものと考えた。
日曜の夜の、発熱時の段階での治療が、あまりにもシャープに決まったため、調子に乗って気を抜いたのがミスでした。
いくら軽くても、風邪気味であった場合、完全に治ってからも1週間、最低でも3日は、重々気を付けて過ごすべきでしたね。
その意味で、水曜日の午後、いやむしろ朝、咽喉がおかしい、声が出にくいと感じた時に、即座に病理を分析して手を打つべきでした。
それを放っておいて、講義で喋り、飲み会で喋り・・・、という流れをもって、迂闊にも「嗄声」という病を完成させてしまいました。(苦笑)
こうなると、邪熱の発生源を「肝の鬱熱」と「中焦の湿熱」と考えて、せっせと治療したものの、「排便や排尿、発汗」というイベントを待って、
一定の期間を経過しないと、もはや即座には声は戻りません。。。orz
・・・いやー、いい勉強になりました。
しかし立春(というか時節の問題)、やはり恐るべし。。。
来年は健やかに立春を迎えたいなあ・・・。
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2018.09.14
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これまでのお話・・・
さて、ここまでで、森道伯先生を創始者とする「一貫堂医学」が提唱する「三大体質・五大処方」なるものの基本を説明してきました。
一応断っておきますが、私は鍼灸家であって漢方家ではないので、漢方薬の処方解説はあくまでも理論面しか出来ませんし、鍼灸臨床に置き換えて説明することしかできません。
これまでに出てきた漢方薬それぞれ、実際の実践面、臨床面でどうか、というのは、漢方家の先生方にお任せ致します。<m(__)m>
僕のすべての言説は、あくまでも市井の一鍼灸臨床家の視点からのものであります。
・・・しかしまあ、いつものことなんですが、こうやって東洋医学の真面目な内容を書いていると、アクセス数が減りますなあ~~。(~_~;)
(苦笑・・・みんな、勉強嫌いなのね。)
・・・でもいいです、めげずに書きます!!<(`^´)>
書きたいから書く、言いたいこと言う!!(゚∀゚)
五大処方のうち、前回述べた「解毒証体質」に使われる3つの方剤(柴胡清肝散、荊芥連翹湯、竜胆瀉肝湯)は全て、「温清飲」という薬をベースにしています。
この温清飲は、現代では「アトピー性皮膚炎」の患者さんに使用されていることが多いようです。
・・・ところが、最初から単純に効いていなかったり、ある程度までは効いていても、途中で効かなくなったり、あるいは途中から悪化していったり、
と仰って、清明院にみえる患者さんがチラホラいます。
これについて、どういうことか考えてみましょう。
まず温清飲の中身は、当帰・地黄・芍薬・川芎各3.0g、黄連・黄芩・梔子・黄柏各1.5g、だそうです。
上記の当帰~川芎の部分が四物湯の内容、黄連~黄柏の部分が黄連解毒湯の内容です。
配合の分量の比率を単純に見れば、「四物湯>黄連解毒湯」と読めます。
四物湯とは、補血剤(血を補う薬)の代表格で、主に肝の臓の血(肝血)を補う薬だそうです。
黄連解毒湯は清熱剤(熱を冷ます薬)の代表格で、上焦~下焦まで、三焦に瀰漫した邪熱(実熱)を取り去る薬だそうです。
ということは、温清飲は「肝血虚>邪熱」の虚実挟雑証の場合に使える薬、と考えていいのでしょう。
(・・・まあ、そう一概に言えない面もあるかもしれないが)
だとすると、経過中に「肝血虚<邪熱」のように、主従が入れ替わった時、あるいは「血虚」や「邪熱」が解決して、どちらか一方のみの問題になった時、
あるいは「陰虚」や「気虚」「陽虚」「湿熱」「湿痰」などの、肝血虚や邪熱とは別の病理が主になった時には、サッと方剤をチェンジ(変方)しないと、
効かない、あるいは悪化する、という流れになるのは自明です。
(または、そもそも最初からこういう診立て自体が出来ておらず、病名や症状のみからテキトーに処方したのであれば、最初からいきなり悪化することもありえます。)
まあ、臨床上よく見かけるのは、四物湯の成分が中焦を余計に重たくしたり、黄連解毒湯の成分が脾気や腎気を奪ったり、裏の水滞がきつくなって、
肌膚に津液が行き渡らなくなり、そのせいで見かけ上は余計に皮膚が乾燥して悪化したり、というようなケースが多いように思います。
(熱が取れるはずが、余計に皮膚が乾燥して「なんで??」ってやつね。)
病気、それも慢性で難治性の病気となれば、こういう、その時々での変化流転は当たり前なので、鍼灸でも、このような失敗をしないために、初診時にキッチリと問診を取っておき、
治療に来た現時点での「証」のみでなく、現症に至った「病因病理」をキチンと意識しておくことが大事なのです。
とりわけ、皮膚科疾患の場合、中医学でよくいう「皮損弁証」というような、皮膚の状態(乾燥、熱感、発赤、腫脹等々の有無)を意識した診察ももちろん大事ですが、
かといって皮膚の状態「のみ」から診たてただけの、場当たり的な処方、処置は実に危険です。
要は皮膚が「何で」そんな状態になったのか、というメカニズムを考え、時々刻々と変化する患者さんの状態に合わせて、臨機応変に処方、処置を変えていかないと、
とてもついていけません。
アトピーや喘息なんかの場合、そうやって常に先手先手が打てなかったら、普通に負けます。。。(苦笑)
患者さんから、ヤブ医者!ヘタクソ!アホ!ボケ!カス!!です。。。(苦笑)
また、この辺の詳しい話は、山口の村田先生のブログが非常に参考になります。
(膨大な内容ですが、単語で検索ができるので、漢方薬名や病名で色々検索してみて下さい。あっという間に朝になりますよ。(笑))
ドラッグストアで簡単に漢方薬が手に入る昨今、ネットで得た情報から、素人考えでサプリメント感覚で服用して大失敗をしていたり、知ったかぶりの西洋医学のドクターから、
いい加減な処方を繰り返されて、かえって悪化している患者さんを診ると、実に残念な気持ちになります。
東洋医学(鍼灸漢方)は医学ですので、それ専門に何年も、何十年も学び、経験を積んだ先生にしか、本当の意味では使いこなせません。
まずは、せめてそこんところをよくよく理解しましょう。
続く
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2018.09.10
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これまでのお話・・・
一貫堂医学について 2 参照
・・・さて今日は、森道伯の一貫堂医学の言う三大体質の二つ目、「臓毒証体質」について掘り下げます。
「臓毒証体質」とは、風毒、食毒、梅毒、水毒の四毒に侵された体質、だそうです。
この四毒を少し詳しく言いますと・・・、
「風毒」とは、ここではあらゆる病のもととなるようなキツイ邪気のことを言っているようです。
「食毒」とは、そのまんまですが食べ物の毒、それも急性の中毒ではなく、慢性の毒とも言えるもので、要するに肉食中心の偏った食生活や、
暴飲暴食の過剰な栄養だったり、また現代であれば加工食品や添加物などによる 内臓機能の低下なども広く含まれる考え方だと思います。
「梅毒」というのは性感染症で有名なあの梅毒で、現代では残念ながら増加傾向だそうです。
「水毒」というのは腎機能が低下して不要な水分の排出が滞って、水滞(浮腫みも含む)が起こったもののことを指しているようです。
この「四毒」が体内に蓄積し、単一に、あるいは複合して、健康を害しているようなものを、「臓毒証体質」と名付け、
これらすべてを「防風通聖散加減」で治療していた、というワケです。
この体質のものは、ガッチリしていて若いうちは丈夫だが、壮年期になると癌や脳卒中、痔疾や腎疾患を起こすと言われます。
診断は望診、脈診、腹診であり、
皮膚は黄白色、脈は実脈や堅い脈が中心で、腹は全体が堅いか、あるいは全体が軟満しているか、
だそうです。
防風通聖散は、以前このブログでも紹介した金元の4大医家の一人である劉完素(1120-1200)の著作である『黄帝素問宣明論方』(1172)に出て来る方剤で、
もともと熱のこもりやすい人が風寒邪に罹患し、「表裏ともに実」になったものに使う方剤と言われます。
実はこれ、近年になって”やせ薬”みたいに言われて、「ナ〇シトール」だの「コッコ〇ポA」とかいう商品名がついて製品化されています。。。
(しかし、痩せたいからといって安易に使用するのは、危険極まりないので絶対にやめましょうね。)
まあ、こういうものがよく売れるぐらい、安逸過度や暴飲暴食で実熱証、毒素をため込んでいる人が多いというのは、森道伯先生の晩年の、
第一次大戦後の、未曽有の好景気であった大正~昭和初期の日本と似ているのかもしれません。
しかし、私もたまにのぞかせていただき、勉強させていただいている、山口の村田漢方同薬局の村田恭介先生は、そのブログの中で、
「特殊な状況においてしか使う必要のない、まして現代においては全く必要のない、支離滅裂に近い配合」
と断じておられます。(笑)
・・・うーん、この辺、漢方家からしてどうなんでしょうね。
まあ、防風通聖散の方意を見ると、表は風邪邪実、裏は腸胃の湿熱の実、で、表は疏風して裏は清利湿熱で、表裏双解剤、というわけですから、鍼ではどうやるのが近いでしょうかね。
外関や合谷やりながら、上廉で下すような感じ?しかも養血や和中の穴処も加える??
あるいは上腹部の沈んだ実をややキツ目に瀉すか??
(これだと難易度は高いね。)
まあ、確かなのは、防風通聖散も、単に痩せようと思って長期に服用するなんてのは、バカ丸出しだね。(苦笑)
毎日、メシ減らして走ってりゃ、絶対痩せます。
漢方薬のそういう使い方を聞いたら、天国で森道伯が泣いているでしょうな。
続く
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2018.08.17
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清明院には、毎日アトピー性皮膚炎の患者さんが見えます。
思えば、今から18年前、僕が初めて(一社)北辰会の勉強会に参加したのは、東京衛生学園で行われた、藤本蓮風先生による、アトピー性皮膚炎の公開臨床でした。
(思えばこの時、問診も蓮風先生が公開でとったんだよね。あれが最後じゃないかな。今にして思うと貴重だね。(^^))
清明院のアトピーの患者さんは、まあ程度は千差万別ですが、どちらかと言うと重いものが多いと思います。
それも、いわゆる「生まれつき」のような、病気というよりは「体質そのもの」といったような患者さんが多いと思います。
そういう場合、「一獲千金の劇的効果」みたいなものを狙うのではなく、今の症状が10だとすれば、まずは5を目指して、治療はもちろん、生活上の間違いを見つけては、
場合によってはステロイドなんかの力も借りながら、徐々に徐々に根気良く、生活上の間違いや症状を是正していくことが非常に重要だと思っています。
こないだ、患者さんから聞かれました。
「某メーカーの化学繊維の肌着を着たら悪化した気がする。。。」
と。
さっそくネットで調べると、そのメーカーの肌着を着たところ、悪化したという人と、逆に改善したという人がいます。(苦笑)
基本的に皮膚病の患者さんに化学繊維の肌着は良くない、というのは昔からよく聞きますが、かえって楽になるケースもあるんですね。
最近の肌着は、皮膚にピタッとくっつき、汗をかくとすぐに乾燥するような構造になっているものも多いですね。
単純にポリエステルだから、ポリウレタンだから、とも言い切れず、この化学線維の、特殊な繊維構造まで考えないといけなそうです。
発汗がすぐに乾くことで、必要な津液も飛んでしまい、かえって皮毛における陰虚や血虚が悪化し、乾燥して局所的な内風(風燥)が悪化する人もいると思うし、
発汗が急速に乾くことで、燥湿化痰の効果が生まれ、湿痰や湿困脾土や湿熱邪による皮毛レベルの気の停滞が緩和され、良化する人もいるし、
そもそも肌着の素材の時点で合わず、皮毛レベルの気の停滞がきつくなり、悪化する人もいるでしょう。
アトピーアトピーと一口に言っても、結局はそのアトピーの病因病理~体質素因までがしっかりと東洋医学的に明瞭に斬れているか、というところに帰結すると思いますね。
現代の、安価で機能的な肌着というのも、一考の余地ありだと思います。
ただ、これは多種多様な製品があり、ちょっとバリエーションが多すぎるので、まずは試してもらってみて、主訴がどうなるかで、帰納法的に考察した方がいいように思います。
臨床は千変万化、臨機応変性の大事だね。
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